2022年9月24日、おそらく日本初? となるクワロマンティックのオフ会(クワロマオフ会)を開催した。今回はそのイベントの様子をまとめたいと思う。
そもそもクワロマンティックとは
「クワロマンティック」というセクシュアリティ
クワロマンティックのオフ会と言っても、「クワロマンティック」という言葉自体、まだまだ知られていないのではないだろうか(だからこそ、今回のオフ会は ”日本初” だったと思っている)。
イベントのレポートの前に、クワロマンティックとはそもそもどういうセクシュアリティなのか、改めて概観しておきたい。
恋愛感情と友情を区別できない・区別したくない
クワロマンティックとは「自分が他者にいだく好意が恋愛感情か友情か判断できない/しない」こととされる。相手に好意を感じたとしても、それが恋愛感情なのか友情なのか区別がつかない(区別したくない)、恋人になりたいのか友人になりたいのか分からない(決めたくない)というものだ。
詳しくは「『クワロマンティック』とは何か? 恋愛感情と友情を区別しない①」「『クワロマンティック』とは何か? 恋愛感情と友情を区別しない②」を参照されたい。
つまりクワロマンティックとは「恋愛感情と友情とが区別できない」という状態だけではなく「恋愛感情と友情とを区別したくない」という主義でもあり得るのだ。
クワロマンティックオフ会の様子
クワロマンティックオフ会の流れ
このクワロマンティックのオフ会は、レロ(中村香住)さんの呼びかけで実現したものだ。彼女は「現代思想」2021年9月号「特集=〈恋愛〉の現在――変わりゆく親密さのかたち」に「クワロマンティック宣言 『恋愛的魅力』は意味をなさない!」を寄稿するなど、クワロマンティックについて積極的に発信している。
当日はレロさん達と共に、以下のような流れでイベントを実施した。
・会の趣旨説明・主催陣の自己紹介・グランドルールの説明
・3グループに分かれて30分間のフリートーク
・メンバーをシャッフル、新しい3グループで再度30分間のフリートーク
・20分間の自由交流タイム
・閉会
この「3グループに分かれて30分間のフリートーク」がイベントの肝だったと思う。多くの参加者とは事前にSNSなどで交流する機会があったが、自分からグイグイ積極的にコミュニケーションをとるというよりは、比較的もの静かなタイプの参加者が多いように見受けられたので、いかに参加者が心を開きやすく、打ち解けて話しやすい状況を準備するか、ということに気を配った。
クワロマンティックの「話題カード」
フリートークで話が盛り上がりやすくなるよう、当日は「話題カード」というものを準備して、初対面同士であってもクワロマンティックに関する会話が弾むように心がけた。
主催陣で考えたのが、以下のようなテーマである。
・クワロマンティック(やそれに関連する属性)について自覚したきっかけなど
・クワロマンティック感情をもつ相手について
・クワロマンティック感情をもつ相手をどう呼んでいるか、関係性をどう名づけているか
・クワロマンティック感情の相手や関係性の名付けは一方的なものか、双方向性はあるのか
・周囲の人にクワロマンティックについて説明する時の工夫や苦労について
・クワロマンティック的に読める小説・漫画・アニメ・映画などについて
こういった話題をあらかじめ準備していたことによって、当日は初対面の参加者たちも話のネタに困ることなく、話は尽きないといった雰囲気で会話を楽しんでくれたのではないかと思う。
クワロマンティックオフ会を開催して
クワロマンティックについて語り合った
当日は台風の大雨にも関わらず14人が集まり、クワロマンティックな価値観について語り合った。私は特に、自分の「恋愛感情と友情を区別したくない」「関係性を恋人/友人の2択にしたくない」という感覚について他の参加者と意見を交換することができて、満足感のある時間を過ごせたと思う。
クワロマンティックの自認がしっくりきて参加している人もいれば、流動的でクワロマンティックと言い切れない部分があったり、自分自身のあり方を模索する中で今回の会に参加している人もいた。「相手のセクシュアリティを決めつけない」という前提をもって話せる場を作ることができた。
どういう関係性を構築したいかについても、クワロマンティックな関係性をもちつつも恋人も探したいという人もいれば、恋人がいるけれどもクワロマンティックな関係性の人を新しく作りたいという人もいた。そういった関係性に対する欲求の多様性も、受け止められる場にできたのではないだろうか。
今回参加した人、また参加できなかった人からも「ぜひまた開催してほしい」という声が多かった。また「オフ会に参加して、自分と同じように恋愛に関するモヤモヤや疑問をもったり、他人との関係性を探ったりしている人と会って話せて元気になった!」というコメントもいただき、非常に励みになっている。
家族のような空間を提供する店
会場として利用した 店「FAM333」の皆様も非常に気さくで親切で、いろいろと気を遣って準備をしていただいた。
店名「FAM333」のFAMは「family(家族)」からとっているそうだ。家族のような空間を提供するクラフトビールの店、というコンセプトらしい。「”普通” の家族が作りづらい私達LGBT当事者には、こうやって血縁によらず制度によらず家族になれる場が必要なんだよな・・・・・・」とこの店でイベントができることに縁を感じた。
クワロマンティックに関するライトニングトーク
クワロマンティックの会、ぜひ第2回も開催したいと思う。
次はクワロマンティックに関するライトニングトークの会をやってみたい。ライトニングトークというのは、1人5分以内などの極めて短い時間制限が設けられたプレゼンテーションのことだ。カンファレンスやフォーラムなどで実施されることが多い。
クワロマンティックに関するライトニングトークの会は、1人3分程度でごく簡単にプレゼンテーションをし、最後に皆でディスカッションする、といった構成のイベントにしてみたいと考えている。
こういった形で、クワロマンティックというあり方をきっかけに繋がり、交流が広がっていってほしいと思う。