レズビアンとしてパートナー探しをすることは、至難の業だ。異性愛者と比べて日常生活での出会いが少ない分、自ら積極的に出会いの場へ出かけるなど、行動を起こす必要がある。そこで、これまでさまざまな手段で恋活をしてきたという友人に話を聞いてみた。
レズビアンの恋活にはどんな手段がある?
マッチングアプリしか利用していなかった、私の恋活
私は、レズビアンとしての恋活歴がとても短い。
20代半ばまでセクシュアリティに悩んでいたということもあって、異性同士での街コンイベントなどには参加していたが、同性の恋人を探すためにした活動は、マッチングアプリのみ。
レズビアンとして恋活をすることは、異性愛者としての恋活よりもかなりハードルが高いと思う。
まず、普段の生活の中でセクシュアリティの話をすることはほとんどないから、同じくレズビアンであるという人に出会うこと自体が難しい。さらに、当時私の住んでいた地域には、レズビアンやLGBTQ+御用達のお店なども少なかった。
大学のLGBTサークルには所属したもの、「ほとんど男性しかいない」という説明を受けて結局一度も活動には参加せず。
勇気を出してレズビアン向けのバーに行ってみたときは、持ち前の人見知りな性格がさく裂して、ろくに話もできず、一杯だけ飲んで退散してしまった。
マッチングアプリも、当時はまだ少し抵抗があり、間口の広すぎるものや異性愛者も多く登録しているものには手を出せなかった。使ったことがあるのは、身分証を提示して戸籍上の性別が女性であることを示した人のみが登録できる、今はもうサービス終了してしまったアプリのみ。
だから、他のレズビアンの人たちがどのような恋活をしているのか、ずっと興味があったのだ。
レズビアンの友人に聞いた、さまざまな恋活ツール
先日、レズビアンの友人の一人から恋活事情について話を聞く機会があった。
驚いたのは、その恋活のバリエーションの多さ。
当の本人は「異性との恋活もしていたし、そんなにたくさんの人に会っていたわけじゃないよ」と語っていたものの、複数のマッチングアプリ、掲示板、オフ会、相談所と、意外なほど多くの手段を用いて恋活をしていたことがわかった。
日常生活での出会いなどを除くと、異性愛者との恋活にも引けを取らないレベルの活動ぶりだと思われる。
では、実際に恋活をして、それぞれのツールにどのような特徴があったのか?
パートナーとなる人と出会うためには、どのようなことが大切なのか?
友人自身の体験を聞きながら、レズビアンの恋活事情について探っていくことにした。
オンラインでのレズビアン恋活
友人がまず語ってくれたのは、レズビアン向けのマッチングアプリや掲示板などを利用する、オンラインでの恋活について。
検索機能がキーとなる、レズビアン向けマッチングアプリ
友人が過去に登録したことがあるというマッチングアプリは3つ。
複数のアプリに登録することで出会える人の数を稼ぎたいというのもあったが、アプリによってそれぞれ仕様が違ったことも、複数使いの理由だったという。
特にキーとなったのが、検索機能。
相手の年齢層や住んでいる地域、セクシュアリティなどで検索できる機能があると、アプリの使い勝手が格段に上がったという。
「相手のセクシュアリティもだけど、相手がこっちに求めるセクシュアリティを絞って検索できるのも、かなりありがたかった」と友人は語る。
彼女は、いわゆる「ボーイッシュ」なタイプの女性で、恋活していた当時は「ボーイッシュな人は恋愛対象としてNG」というレズビアン女性も多かったのだという。
そこで、検索機能があるレズビアン向けアプリでは「ボーイッシュNG」という条件を設定している人を検索対象から省き、お互いにとっての手間を省略することができたのだそうだ。
「ボーイッシュな格好の女性っていうだけで、体育会系でサバサバしていて・・・っていうイメージをもたれることもあって。私はボーイッシュだけど、どちらかというと文化系だし、属性だけでひとくくりにされるのは正直やめてほしかったんだけど」
友人は、困ったように笑った。
使い方には工夫が必要? レズビアン向け掲示板
続いて、インターネット上での掲示板を利用した恋活。
こちらは、レズビアン向けの掲示板を1つだけ利用していたという。
ただし、マッチングアプリと比べて、掲示板での収穫はかなり少なかったらしい。
「1人だけ、掲示板づてで連絡を取っていたら意気投合して直接会うことになった人もいたけど、会うとお互い恋愛対象にはなりにくいタイプだってわかって。2回会ってそれっきりになったなあ」
掲示板はアプリと比べて、検索機能などで効率的に相手を探すことができなかったり、そもそもの絶対数が少なかったりという点が、友人には合わなかったようだ。
私は他のレズビアンの人から「掲示板で今のパートナーと出会った」という話を何度か聞いたことがあったので、この話はかえって新鮮だった。
掲示板で女性と出会うまでには、「自分とタイプが合いそうな人を探す」「自己紹介文が詳しく書かれている人を選ぶ」「直感で、気になる文章を書いている人に連絡を取る」など、いろいろなパターンがあるらしい。
マッチングアプリのわかりやすい仕様の中で、詳しいプロフィールや顔写真を載せている相手でなければ安心してやりとりできなかった私にとっては、やや上級者向けのツールであるように感じられた。
オフライン恋活と、レズビアン向け相談所
友人が「一番楽しかった!」と語った恋活ツールは、アプリでも掲示板でもなく、直接レズビアン同士が出会える「オフ会」だった。
直接会えるのが楽しい、レズビアンバー主催のオフ会
もともと人と話すことが好きだった友人は、前置きなしで直接会うことができるオフ会での恋活が性に合っていたという。
「今日はどんな人と会えるんだろう」というわくわく感は、たしかに、アプリや掲示板を見ながらぽちぽちとスマホを操作して連絡を取り合うのとは全く違う魅力がある。
友人が参加していたのは、有名なレズビアンバーが主催しているオフ会のみ。
主催元がしっかりしているので安心感があるため人気も高く、こまめにSNSをチェックしてオフ会の情報が出たらすぐに予約する、ということを繰り返していたそうだ。
「コロナ禍もあったからそんなに頻繁には参加できなくて、月1回行けたら行く、ぐらいの頻度だったかな。当時は仕事が大変だったこともあって、イベントみたいな気持ちで楽しみに行ってたよ」
時には2~3ヶ月先の枠も埋まるほど、人気のイベントもあったという。
オフ会での恋活の弱点、「ボーイッシュ女性」としての参加の難易度
友人が参加したオフ会は、バーで開催されることもあってドリンクオンリーで、参加者同士でおしゃべりしたり、連絡先を交換したりといった交流があったらしい。
ただ、何度か参加したオフ会では、目ぼしい出会いはなかったとのこと。
「そもそも20代限定とか、年齢制限があっていけないイベントもあったんだけど、『ボーイッシュ女性(ボイ)とフェミニン女性(フェム)』という縛りのイベントは、ボーイッシュ女性にとってはめちゃくちゃ競争率が高くて。ありがたいイベントではあるんだけど、すぐに予約が埋まっちゃって行けないことも多かったなあ」
友人の話を聞いていると、同じレズビアンでも女性のタイプによって、恋活の難易度も変わってくるようだ。
私自身が恋活をしていたときは、もともとお相手の属性にあまりこだわりがないこともあり、恋活の難易度に差があるとは感じなかったが、「女性から見ても可愛らしい女性は、レズビアンからもやはり人気が高いようだ」ということはうすうす感じていた。
余談ながら、私がマッチングアプリに登録していたときは「ボーイッシュでもフェミニンでも、中性的でもないと自分では思っています。服装はカジュアルで、パーカーやデニムをよく着ます」という、ものすごくざっくりな紹介文を書いていたので、相手の属性にこだわるタイプのレズビアンの方々はさぞ困惑されたことだろうと思う。
最後の頼みの綱、レズビアン向けの相談所へ
オンラインでもオフラインでも、ピンとくる相手に出会えず、連絡をくれる相手はなぜか癖の強い人が多く、なかなか恋活が順調に進まなかったと語る友人。
悩んだ挙句、彼女が取った手段は「相談所に登録する」というものだった。
マッチングアプリで出会った人から紹介されたというその相談所は、レズビアン向けに、パートナーを探している女性を紹介してくれるというシステムだった。
しっかりと体制が整っていて、安心安全に登録ができるうえ、確実に恋愛対象を求めている人と出会えるという点が、当時の友人にとってはかなり魅力的だったという。
ただし、異性愛者が利用する結婚相談所に近いサービスではあるので、コストはかなりかかってくる。
それでも、他の恋活ツールに限界を感じていた友人は、「お金がかかってもいいから、パートナーと出会いたい」という思いが強かったらしい。
相談所に登録すると、相手に求める条件をヒアリングしたうえで、毎月1人以上の女性を紹介してくれるそうだ。相談所を最後の希望のように感じていた友人は、最初の紹介を前に、いやがうえにも期待が高まっていた。
しかしながら、ここで問題が発生した。
相談所から最初に紹介された女性は、友人が以前オフ会で出会ったことのある人だったのだ。
もちろん、これは十分に起り得ることだったし、相談所も、双方の女性も、誰にも罪はなかった。ただ、期待を高めていた友人にとっては、大きな肩透かしをくらったような印象だったという。
相談所に正直に申し出たところ、紹介した女性と会うのはお断りしたうえで、次のタイミングでは紹介する人数を2人に増やすという配慮をしてくれたとのこと。
手厚いサービス体制には感動したものの、ここでも友人の求める出会いはなかったそうだ。
恋活の結果と、レズビアン恋活の今後
ようやく実ったレズビアン恋活、その経緯とは・・・
さまざまな手段に挑み、レズビアン恋活を続けていた友人。
彼女の恋活がようやく実ったのは、本格的に活動を始めてから2年ほど経った頃のことだった。
お相手と出会った経緯は、なんと「マッチングアプリ」。
相談所に登録するかたわら、ずっと放置していたアプリを久しぶりに再開したところ、プロフィールの時点でピンとくる女性に出会えたのだそうだ。
連絡を取り合い、直接会った後にお付き合いすることが決まり、相談所は退会。数年経った現在も、その女性との交際が続いているという。
恋活のハードルを越えたポイントは、「連絡」と「素直さ」
数年越しに恋活が実ったという友人に、これまでの恋活と、パートナーとなる女性と出会えたときの違いは何だったか? と聞いてみた。
友人いわく、「直接会う前に、連絡を取り合う期間が長かったこと」が大きな違いだったそうだ。
メッセージや電話のやりとりを重ねることで、お互いに見た目の雰囲気や第一印象にとらわれず、また、会ったその場の雰囲気に惑わされることもなく、関係性を築くことができたらしい。
「『ボーイッシュな○○さん』っていう表面的なイメージじゃなくて、自分の内面をゆっくり伝えることができたのは大きかったかな」
「あとは、何度も恋活で失敗してきて、自分を取り繕うのはやめようと思ったのもある! 表面だけ取り繕っても長くは続かないから、ありのままの自分を出そうと意識していたら、相手とも素直にやりとりできるようになったし」
恋活で長く悩んでいたという話を聞いた後だったこともあり、そう語る友人の表情はひときわ幸せそうに見えた。
レズビアン恋活の今後
最後に、レズビアンの恋活事情について、友人と2人で話し合った。
お互い意見が一致したのは、「実生活での恋愛ができるようになったらうれしい」ということ。
普段の生活を共にする、学校や職場、趣味のコミュニティなどで、自分の内面を知ってくれている人と恋愛対象になれたら、もっと自由に恋愛を楽しめるはず。
そのためには、「私はレズビアンで、こういう女性がタイプなんだよね」と、あらゆるコミュニティで気軽に話せるような社会が実現してほしい。
レズビアンであることが特別なことではなく、たくさんあるセクシュアリティのごく一部で、あたりまえのこととして受け止められる世の中であれば、恋愛の可能性が広がるよね、と2人で盛り上がった。
「あとは、主要都市だけじゃなくて、地方でもレズビアン向けのオフ会がたくさん開催されてほしい」と、友人は熱を込めて語った。
恋活の手段は千差万別で、同じレズビアンであっても、恋活事情はそれぞれ異なる。
それでも、高いハードルにめげずにパートナーを見つけられた友人の力強い生き様には、話を聞いただけの私自身も、勇気をもらえたような気がした。