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Writer/雁屋優

LGBT ALLY(アライ)であるとは言葉を選ぶことなのかもしれない

LGBT ALLYになる、とは一体何なのでしょうか。ALLYになることは今日からでもできる、なんて言葉を目にすることもありますが、そもそもALLYになるって具体的にどんな行動をとればいいのでしょう。LGBT当事者の側から見た、ALLYであるとはどういうことかを語ってみましょう。

LGBT ALLY(アライ)とは何なのか

「『差別主義者でない』というだけでは、十分じゃない。私たちは『反差別主義者』でなければならない」テニスの大阪なおみ選手の言葉です。私はここに、ALLYになることが何なのかを示す大きなヒントが示されていると感じました。差別をしないだけでは不十分だと常々私も考えていました。でも、何が必要なのかは言語化できずにいました。

LGBT ALLY(アライ)になるのは今日からでもできる?

LGBT ALLY(アライ)になるのは、今日からでもできる。そんな言葉を見かけたことは一度や二度ではありません。そこにはLGBTの理解や支援をし、その立場を表明するALLYを増やし、ダイバーシティを促進しようという願いもこめられているのでしょう。そして、企業にはLGBTフレンドリーをアピールしていきたいという思惑もあるかもしれません。しかし、ALLYになるって、そんなに簡単なことでしょうか。

まず、ALLYになるには、セクシュアルマイノリティを理解しなければなりません。セクシュアルマイノリティを理解するとは、今までの、生まれた時の性別に違和感のない性自認(シスジェンダー)・性的指向が異性愛(ヘテロセクシュアル)を中心として構成されてきた自分の常識に疑問を持つことから始まります。

・お父さんとお母さんのいる家庭
・付き合うのは異性と、必ず一対一
・性自認と体の性別は一致しているべきで・・・・・・

そんな固定概念は今も私たちの脳を支配しています。ALLYになると決めて、すぐその場でこんなことができるほどにいい教育を、私たちは受けているとは言えません。

ALLYになるには勉強が必要だ

ALLYになるには最低限の知識 が必要です。例えば、ゲイとは何なのか、レズビアンとは何なのか、トランスジェンダーとはどんなセクシュアリティなのか。それを本やインターネット、セクシュアルマイノリティの当事者をはじめとする人との出会いを通して学んでいくうちに、今までの常識の狭さに気づいていくはずです。そうすると、ある日今まで見えていなかったものに気づけるようになるのです。

例えば、性別を問われて男女の二択しかない書式 の多さ。女性には彼氏ができるものと信じて疑わない会話。ここには透明化されているセクシュアリティの当事者が存在します。皆気づいていないけれど、忘れているけれど、こんな人たちもいる、だからこの制度はおかしいと気づけるようになるのです。これがALLYになる最初の一歩でしょう。

ALLYを名乗るのは勇気がいる

ALLYになるとは、セクシュアルマイノリティを理解し、支援し、かつその立場を明確にするということです。それはつまり、自分が差別をしないだけではなく、差別を見過ごさないことも含まれています。差別に気づくにはやはり知識が必要ですし、気づいてそれらを止めるには勇気が必要です。

LGBT当事者の私でさえ、自分が差別されていないときには、他者への差別を見過ごしてしまうことがあります。差別に対して異を唱えること、闘うことは大変疲れるし、消耗するからです。それに、こういった文章を書いていてもなお、差別に異を唱えるときに身がすくむのです。 なぜなら誰かを差別している人々は、平然と誰かを虐げられることをその行動で既に示しているからです。その刃が自分に向くことを考えたら、見なかった振りをしたくなるのも頷けます。当事者であってもこうなるのです。非当事者の人がALLYとして声を上げるのはハードルが高いことなのは、想像に難くありません。

最初は、差別しないことから

ALLYであることの第一歩は、差別しないことだと私は考えます。簡単なように思えて、実は簡単ではないのです。差別は、思った以上に私たちを取り巻いています。それが当然の対応であるかのような顔をすることさえあります。

差別的な空気に流されない

セクシュアルマイノリティに対して差別的な笑いは、今でもこの国に根強く存在します。そういった場にもセクシュアルマイノリティの人々は居合わせ、自らの存在を隠すために、一緒に笑ってみせることもあります。

そこにあるのは、ひどい苦しみです。自分の正体がバレると攻撃されるから、場の空気に流されてみせる。でも、自分を偽るのはつらい。そういった苦境です。

そんなときに、その笑いに毅然とした態度で異を唱えられるのは、ALLYの人々なのかもしれません。「それ、もうおもしろくない」と一言言ってくれる人がその場にいたら、自分を透明にしていたLGBT当事者は息がしやすくなることでしょう。

おもしろくないのだと伝えていく

笑いは、多くの人が笑うからこそ、成立するものです。皆にウケるから、笑いがとれたということになります。「それ、つまらないよね」と言う人が増えていくと、笑いの熱は冷めて、笑いを提供しようとしている側も、「もうウケないのなら、違う笑いのとり方をしよう」と考え始めます。

他人のセクシュアリティをネタにした笑いに、「おもしろくない」と言うこと、もしくはその笑いで笑わないことは、LGBT ALLYの行動の一つと言えるでしょう。

言葉を選んで、LGBT ALLYになる

差別に流されなければ、ALLYと言えるのでしょうか。例えば、女性に、「彼氏はいるの?」と質問する人は、ALLYなのでしょうか。

彼氏(彼女)ではなく、恋人

私は、人と話をしていて、付き合っている人がいるかどうかの話になった場合、基本的に「彼氏(彼女)はいるの?」ではなく、「恋人はいるの?」と聞くようにしています。彼氏(彼女)という聞き方は相手がヘテロセクシュアル(異性愛者)であり、それ以外ありえないというメッセージを強く発信しているからです。

恋人という言葉であれば、同性愛者であっても、異性愛者であっても、違和感なく答えることが可能です。アセクシュアルなどを想定しきれていない表現ではありますが、それでも、彼氏(彼女)と聞くよりは想定範囲が広く、汎用性のある質問の言葉です。

質問一つ、だからこそ意識が表れる

私がそういったことを意識するようになったのは、知人が「〇〇の妻です」ではなく、「パートナーです」と自己紹介するのを聞いたこと がきっかけです。質問や言葉の一つ一つに自らの意識が現れるんだと実感しました。同時に、今まで自分が当たり前に異性愛を前提とした言葉を選んできたことに気づき、自身の 配慮のなさを恥じました。

質問一つです。でも、そこにはその人の意識が表れるのです。「恋人はいるの?」と「彼氏(彼女)はいるの?」の二つの質問で、得られる答えは同じかもしれません。でも、後者の質問をして、もし相手が異性愛者でなかったら、その問いは心を閉ざされるきっかけになりうるのです。

LGBT ALLYとは言葉を選べる人

ALLYとは、こういったときに、できるだけ多くのセクシュアルマイノリティについて考えることができる人のことを言うのだと思います。彼氏彼女よりも恋人、旦那や妻よりもパートナーと口にできる人は、やはりセクシュアルマイノリティの当事者を透明にしないと思うのです。

言葉を選ぶのは難しくもあり、簡単でもあります。それこそ、今日からできるのです。彼氏彼女ではなく、恋人やパートナーって言葉に変えてみるだけでも、意識はぐっと変わります。言葉は、人を形作っていくからです。

LGBT ALLYは自称であり、他称である

ここまで、LGBT ALLYとはどういう人なのかを考えてきましたが、ALLYは実は自称だけではなく、他称もあって成り立つ概念だと気づき始めました。

他人から見ても、理解者であり支援者か?

「今日から私はALLYになる!」と宣言した瞬間から、そうなれるわけではないことは先ほども述べました。自称するだけでは足りないということですね。そう、ALLYになるには自称だけではなく、他称も必要なのです。「あの人はALLYだよね」と他人からも認められること、もっと言えばセクシュアルマイノリティの当事者から「あの人なら安心できるよね」と思われている状態を指して、ALLYであるというのです。

最低限の知識があることももちろん大切ですが、「理解しよう」「配慮しよう」という気持ちが何より大切です。今知らなくても、知ろうとして行動を起こしたとき、ALLYになろうとしていると言えるでしょう。ALLYになろうとしてセクシュアルマイノリティについてスマホで検索するとき、本屋で本を探すとき、ALLYに近づいているのです。

他人からもALLYと認められるためには、差別的な発言をしないだけでなく、差別的な空気に流されないこと、そして、言葉を選ぶことが必要だと私は考えます。差別をしないだけでなく、差別を見過ごさず、それに反対し続ける一人であることが、透明になってしまったセクシュアルマイノリティの当事者を可視化していくのでしょう。

差別にはNOを突きつける

私たちが目指すべきは、ALLYであることが特別ではなく、当たり前である社会です。ALLYであることにリスクもなく、ALLYである人が多数を占める社会です。少なくとも表向きはそうふるまうことが求められる世界です。

そのためには、私たちは差別をやり過ごすのではなく、声を上げていく必要があります。

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