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Writer/Moe

インドが同性婚法制化の検討―意外と知らなかったインドのLGBTQアクティビズム

インドの最高裁判所が同性カップルの結婚を法的に認める検討を開始した。つい2018年までは同性間の性交渉が犯罪だったインド。ここに至るまでのLGBTQ の人権をめぐる動きを見てみよう。

同性婚・LGBTQをめぐるインド法制度

インド最高裁がLGBTQの同性婚承認を検討開始

今年11月、2組の同性カップルが自分たちの結婚を法的に認めるよう、最高裁判所に嘆願書を提出。これを受け11月25日、インドの最高裁が彼らのケースの承認をめぐり同性婚の法整備検討を開始したと、複数のメディアサイトで報じられた。

嘆願書を提出した二組のカップルはどちらも長年パートナー関係だった。それでも、公的な婚姻ステータスが「独身」であること、お互いのパートナーの医療や相続に関する決断に関われないことなどに異議を唱え、異性間のストレートのカップルと同じ権利を認めるよう訴えたのだ。

インド最高裁は政府に対し、4週間以内にこれらのケースに対する姿勢を示すよう要求している。現在のインドの最高裁判事、チャンドラチュード氏はこれまでもLGBTQや女性の権利に関する先進的な判決に関わってきた。中でも、2018年に同性間の性交渉を非犯罪化した判決は、インドにおけるLGBTQ権利の歴史の中でも大きな出来事だ。

LGBTQを差別する植民地時代の法律を撤廃

2018年9月6日、インドの最高裁は刑法377条において「自然の秩序に反する」として同性間の性交渉を犯罪とする部分を、憲法に反した無効なものとし、同性間が合意の上で性交渉をすることは違法ではないという判決を下した。この刑法377条はイギリス植民地時代に作られたもので、1990年代からLGBTQや人権のアクティビスト達の間で批判されてきたものだった。

この判決を受け、インド全土のLGBTQ コミュニティは歓喜に包まれた。同性カップルにとって、これは自分たちが愛し合い一緒にいるということだけで起訴されたり、嫌がらせを受けたりすることがあってはならないという、本来当たり前のことの裏付けとなる。

でも、これはビザ、相続、公的書類・・・・・・など、同性カップルの悩みを全て解決するものではない。同性婚の法的な承認を求めるのは、自然な動きだと言えるだろう。

親が結婚相手を決める「見合い婚」の慣習が根強く残るインド。法制度や偏見・差別の課題は沢山ありそうだ。しかし、インドの文化・歴史を見てみると、LGBTQの権利向上に関して、大きな役割を持ったユニークな存在たちがいるので紹介したい。

インドのLGBTQ権利向上の立役者たち

世界で初めてゲイを公表したインドの王子

2006年、インドのマンヴェンドラ・シン・ゴーヒル王子は王族としては世界で初めてゲイであることを公表した。親族にカミングアウトした当時、マンヴェンドラ王子は40代。両親は受け入れられず、王子にコンバージョン・セラピー(同性愛者の性的指向を変えようとする試み)を強制した。電気ショックなどを使った非人道的な施術を受け、王子は一時精神的に病んでしまったという。

その後、マンヴェンドラ王子は自身の経験をもとにLGBTQ支援活動を始める。2018年、自らの宮殿をLGBTQ+支援センターに改装することを発表。家を追い出され居場所を無くしたLGBTQ+の人々が生活できるようなシェルターとして運営していく意向だ。

また、現在もインドの一部の州を除いて実施されているコンバージョン・セラピーの廃止を訴える運動を続けている。コンバージョン・セラピーは、経験者の自殺傾向を高めるとし、長年批判され続けている。しかし、ヨーロッパやアメリカの多くの地域、そして日本でも完全廃止はされておらず、一部の支持層も根強く存在する。インドでも廃止までの道のりは厳しいかもしれない。

それでも、LGBTQコミュニティやHIV/AIDS支援団体など、国内外で活動を繰り広げ、SNSで勢力的に発信し続ける王子の姿に、そのチャーミングな出で立ちも手伝って、胸を打たれる。

インドに古くから存在する第3の性「ヒジュラー」

インドでは、LGBTQという言葉が浸透する以前から、古くから男性でもなく、女性でもない人々が「ヒジュラー」と呼ばれて認識されていた。「ヒジュラ―」にはヒンディー語・ウルドゥー語で「両性具有者」という意味がある。通常、身体は男性で、服装はインドの女性が着るサリーをまとっている。

インドの宗教、ヒンドゥー教ではヒジュラ―を「特別な力」を持つ聖者として扱い、祝い事や宗教的な儀礼で踊りや歌を披露する存在だ。私はインドに3回行ったことがあるが、普通に旅行していてヒジュラ―達に直接出会ったことは無かった。ヒジュラ―はインドのカースト制度では低い階級で、差別や迫害の対象でもある。そのため、普段は物乞いや売春で生計を立て、スラム街や路上で暮らしていることもあるようなのだ。そんな厳しい状況の中で現代のヒジュラ―たちはグループをつくり権利向上を訴える運動をしている。

2014年4月、インドの最高裁はヒジュラ―のグループの訴えを受け、トランスジェンダー、インターセクシュアルの人々は自分で自分の性別を決める権利があることを認め、法的に「第3の性」を認めた。こうした活動を経て、ヒジュラ―達の社会的地位、生活状況が向上することを願ってやまない。

インドはアジアで2番目に同性婚が法制化される国となるか?

以上、インドという国のLGBTQ事情について、アナタの持っていたイメージを少し変えるかもしれないお話をご紹介した。日本のように、各地方自治体からパートナーシップ制度を試行して広めていき同性婚の法制化を目指すアプローチとは違った、大きな法改正を取るアプローチが興味深い。

もし、最高裁に同性婚が認められたとすれば、インドは台湾に次いでアジアで2番目に同性婚が法的に認められる国となる。そうなれば、世界のLGBTQ活動家からの注目が集まり、日本の同性婚法制化の動きにも刺激となるかもしれない。

■参考情報
India LGBTQ: Supreme Court to Consider Legalizing Same-Sex Marriage – Bloomberg
同性間の性行為禁じる法律は違憲無効、インド最高裁が画期的判断 写真3枚 国際ニュース:AFPBB News
性別は自分で決定、「第3の性」認める インド最高裁 – CNN.co.jp

 

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