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Writer/Jitian

「マリフォー国会メーター」で、国会議員の同性婚賛否が丸分かり

衆議院議員選挙の投開票が、2021年10月31日に決定しました。各政党や候補者から様々な公約が掲げられることと思いますが、LGBTQ当事者は同性婚法制化を掲げている政党や候補者に注目が行きますよね。今回は、投票の際に便利なツール「マリフォー国会メーター」と、現状の国会議員の同性婚に対するスタンスを見ていきます。

まずは覗いてみて! マリフォー国会メーター

グラフィックを多用していてとても分かりやすく示されています。

「マリフォー国会メーター」とは

まず、改めてマリフォーについて紹介しましょう。

マリフォー(正式名称 “Marriage For All Japan”)は、日本での同性婚法制化を目標に活動を行っている団体です。日本で同性婚が認められないことに対して、国に訴訟を起こしています。2021年3月には、同性婚が認められないのは違憲であるという歴史的な判決が札幌地裁で言い渡され、全国的なニュースにもなりました。

そんなマリフォーが2021年10月5日にリリースしたのが、「マリフォー国会メーター(https://meter.marriageforall.jp/)」です。このサイトでは、どの国会議員が同性婚に賛成・反対しているかを簡単にチェックすることができます。

驚愕の事実! マリフォー国会メーターでは賛成と反対の割合がほとんど同じ!

まずトップページを見て驚いたのが、全国会議員の同性婚に対する意見の割合です。「賛成」を表明している議員は、2021年10月12日時点で、全体でわずか28%にすぎないのです。

一方、反対派は約25%です。賛成派とかなり拮抗していますよね。残りの50%近くは「どちらとも言えない」「無回答」です。

なお、マリフォー国会メーターでは議員の意見を以下の6つに分類しています。

◎ 賛成
◯ どちらかと言えば賛成
― どちらとも言えない
△どちらかと言えば反対
×  反対
無回答

ここ1、2年の間で「LGBT」「同性婚」というワードが、LGBTQ界隈だけでなく、全国的なニュースとして、注目度を一気に増しているように感じていました。実際、2021年3月の朝日新聞の世論調査では、65%の人が「同性婚を認めるべきだ」と回答しています。

しかし世間の感覚と違って、賛成派の国会議員って意外と少ないんだと改めて思い知らされました。

各国会議員や政党別でも同性婚へのスタンスをチェックできる

マリフォー国会メーターは、国会議員全体の同性婚に対する立場を概観するだけのツールではありません。五十音順で各議員の回答を見ることもできます。都道府県や政党ごとにチェックすることも可能です。

また、現時点では賛成派は28%に留まっていますが、新しい情報が入り次第、サイトの内容も更新されています。衆院選の選挙活動が本格化したら、割合も大きく変化するかもしれません。

同性婚に対する国会議員の全体的な傾向

賛成・反対の割合だけでなく、各個人がどういうスタンスなのかも見てみました。

同性婚への明確な反対者は、4分の1

先ほども書いた通り、同性婚に反対の国会議員は、全体の約25%です。決して少なくはない割合ですが、現時点では辛うじて賛成派(28%)の方が上回っています。

また、各国会議員の意見を確認してみると、反対派においては「どちらかと言えば反対」が多いようです。その理由は、「同性婚反対!」と強く主張すると世論の反発を受けやすいから「どちらかと言えば反対」としているだけであって、マインドは「反対」と変わらないのではないかと、個人的には勘繰ってしまいますが・・・・・・。

また、「無回答」や「どちらとも言えない」の層も見過ごせません。この層が全体の半分近くを占めるほど、最も多いからです。

「無回答」としている国会議員の中には、訴える・取り組む政策を貧困問題や地方創生など的を絞っているために、結果として同性婚法制化について意見を発信していない場合もあるでしょう。しかし、この層の多くは、同性婚のことを「触れたら面倒な話題」と捉えているのではないかとも思うのです。

賛成としても反対としても角が立つし、そこまで喫緊の課題でもない(と考えている)から、ひとまず静観を決め込んでいる可能性も否定できません。同性婚について関心がないとも言えます。

そのため、「無回答」や「どちらとも言えない」の層は、賛成にも反対にもしばらくは転じないと見ています。「少子化問題」や「高齢化社会」「環境問題」などと同列に「LGBT」が常日頃語られ、社会的な関心事になれば変化するでしょうか?

同性婚「どちらかと言えば賛成」は「知識ある他人事層」?

同性婚反対派と同じように、賛成派の中も、ふたを開いてみると「どちらかと言えば賛成」の人の方が多いように思います。

もちろん、賛成のスタンスを示してくれるのはとても嬉しいです。ですが、やはり「賛成」ではなく「どちらかと言えば賛成」を選んでいるところに、どこか引っかかりを覚えてしまいます。

マリフォー国会メーターの調査結果を見て、私は「どちらかと言えば賛成」を選んでいる国会議員は、「知識ある他人事層」と重なるのではないかと感じました。「知識ある他人事層」とは、2021年4月に電通が公表した調査「LGBTQ+調査2020」で、LGBTQ非当事者をクラスタ分けした際に最も多数派だったグループです。

・LGBTや同性愛について、政党の勉強会などである程度理解はしている。
・自分はLGBT当事者ではないし、周りにもいないけど、世界のどこかには同性愛者を含めたLGBT当事者がいることも分かっている。
・同性婚が認められたからといって、異性婚の権利や、異性愛者が被害を受けるわけでもない。だから、まあ同性婚が認められてもいいんじゃない。

という感覚です。

しかし、マリフォー国会メーターで「どちらかと言えば賛成」と回答している議員は、無回答や「どちらとも言えない」としている議員よりは “働きかけやすい” かもしれません。こういう人たちに今後、積極的に問いかけ、同性婚を自分事として捉えてもらえるか(つまり、アライになってもらうか)が、重要なのではないかと思っています。

政党別に見ると、同性婚法制化に対する傾向がはっきり分かる

政党別に議員のスタンスを見ると、改めて認識する事実とともに、意外なことも分かりました。

自民党は「同性婚賛成派」がやっぱりごく少数

2021年6月、自民党は反対派の意見によってLGBT法案の国会提出を見送りました。そんな自民党の議員には、同性婚賛成派がかなり少ないです(全体のたった7%)。分かり切っていたことではありますが、はっきり言ってこの政党が政権を握っている間は、同性婚法制化は難しいのではないかと思わざるを得ません。

一方、長らく連立政権を組んでいる公明党は、半数以上が賛成派です。これはちょっとびっくりしました。公明党の最新のマニフェストには「自治体パートナーシップ認定制度の推進を図る」とあります。「同性婚」には言及していませんが、「性的指向と性自認に対する理解の欠如に基づく差別、偏見、不適切な取り扱いを解消し、多様性を尊重する社会の実現」も掲げているので、LGBTQにある程度関心を向けていると言えます。

全員「同性婚賛成」は日本共産党、社民党、れいわ新選組

「どちらかと言えば賛成」ではなく明確に「賛成」であると、所属している国会議員全員が表明している政党は、日本共産党、社民党、れいわ新選組です。

社民党とれいわ新選組は、各政党の議員数がわずか2名なので数としては少ないです。しかし、日本共産党は25名全員が「賛成」です。反対派も含めて、ここまで党全体で意見がはっきり統一されている大きな政党は、日本共産党だけでした。

大丈夫? 立憲民主党「同性婚賛成」の割合は・・・

党内各議員のスタンスを見て不安を覚えたのが立憲民主党です。

立憲民主党は、LGBT法案や同性婚法制化に前向きなイメージがありました。実際、最新のマニフェストには「同性婚を可能とする法制度の実現を目指す」とあります。しかし、現職の立憲民主党の議員で、同性婚に「賛成」「どちらかと言えば賛成」としている人の割合は、実は6割にも届いていないのです。賛成を示していない人の大半は「どちらとも言えない」としていますが、よく見ると反対派も何名かいます。

所属政党の方針と議員個人の考えは、必ずしも一致するわけではないことは確かです。しかし、全員「賛成」の日本共産党と比べると、立憲民主党はマニフェストに掲げている割には統制が取れていないのではないかと、どうしても感じてしまいます。枝野代表が独りよがりで掲げた政策でないことを祈っています・・・・・・。

自民党政権、岸田内閣のままで同性婚は実現するのか?

政権与党の中でも、重要ポストに絞ってスタンスを確認してみましょう。

岸田総理、直近の総理は揃って無回答

安部元総理、菅前総理、2021年10月4日になったばかりの岸田総理の同性婚への考えは、全員無回答でした。(特に保守性が強い印象のある安部元総理は、心の内では明確な反対派なのではないかと考えていますが)賛成も反対も表明していないのは、どちらかのスタンスを示すと逆の立場から支持されなくなると考えているからではないでしょうか。

先の自民党総裁選でも
・河野氏は、同性婚賛成(マリフォー国会メーターでは「どちらかと言えば賛成」)
・高市氏は、慎重派(「どちらかと言えば反対」)
・野田氏は、ダイバーシティを訴えていました(「どちらとも言えない」。野田氏のサイトでも、同性婚について明確に言及はされていませんでした)。

これらを考えると、同性婚法制化というトピックにおいても岸田氏が総理に選出されたのは、自民党にとって “無難” な選択肢だったと言えます。

自民党副総裁と幹事長は・・・・・・

さらに、自民党副総裁に就いた麻生氏、幹事長に就いた甘利氏は、どちらも同性婚には「どちらかと言えば反対」です。2人とも、長らく重要ポストに就いてきて、現在も影響力の大きい古参です。この2人が党の重要な役職を担っている間にLGBT法案が通るとは思えないのは、きっと私だけではないでしょう。

衆院選が近付いています。皆さんも実際に「マリフォー国会メーター」を参考に、誰に投票するか決めてみてはいかがでしょうか。

■参考情報
・マリフォー国会メーター
https://meter.marriageforall.jp/

・同性婚、法律で「認めるべき」65% 朝日新聞世論調査(朝日新聞)https://www.asahi.com/articles/ASP3P7DSCP3MUZPS003.html

・2021 衆院選重点政策(公明党)
https://www.komei.or.jp/special/shuin49/wp-content/uploads/manifesto2021_s.pdf

・衆院選2021特設サイト(立憲民主党)
https://change2021.cdp-japan.jp/

 

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