シェアハウスが好きだ。ここ数年、いくつかのシェアハウスを転々として暮らしてきたし、自分でもいくつかのシェアハウスを運営した経験がある。「シェアハウス界隈」に身を置いていると、今の私のように全国を旅しながら暮らすにしても、普通の宿よりはどうせなら各地のシェアハウスに滞在してそこに関わる人達と交流したい、と思ったりする。今回はそういった旅する生活の中で、最近私が訪れたLGBTQ+フレンドリーなシェアハウス「めぞんQ-KURAMAE」を紹介したい。
*なおこの記事では、「めぞんQ」における表記に準じて、「LGBTQ+」という表記を使用している。
LGBTQ+フレンドリーなシェアハウス「めぞんQ」
シェアハウスにはシェアハウス同士の繋がりがあり、私のようにいろいろなシェアハウスに住んだり、自分で運営したりしている人達のコミュニティがある。ここでは、シェアハウス「めぞんQ」のコンセプトや、どういった人に住んでほしいかなどについて説明していきたい。
いろんなセクシュアリティの人がいてあたりまえ!
「めぞんQ」は「いろんなセクシュアリティの人がいてあたりまえ!」をコンセプトとした、LGBTQ+当事者もそうでない人も、ありのままの自分で過ごせるシェアハウスだ。
家族や職場や学校でカミングアウトしていなくてなんとなく気を使ったり、LGBTQ+の話題が出ると息苦しくなる人も、安心して過ごすことができる。
息をするように自然にあたりまえに自分を表現してもいい。楽に呼吸ができる。「めぞんQ」はそういった家を目指している。
LGBTQ+フレンドリーなシェアハウス「めぞんQ」で歓迎される人
身の回りにLGBTQ+当事者がいなくてさみしい。
LGBTQ+当事者とつながりたい。
1人暮らしは物足りないし老後が不安。
LGBTQ+カップルでの住まいを探すのが難しい。
LGBTQ+コミュニティを応援したい。
そんな人達が「めぞんQ」では歓迎される。
このシェアハウスを運営しているのは、大阪でセクシュアルマイノリティ支援をおこなっているNPO法人QWRC(Queer and Women’s Resource Center:くぉーく)だ。大阪の土地に不慣れな人や、大阪のLGBTQ+コミュニティと接点のない人であっても、LGBTQ+当事者が自分らしく暮らすサポートをしてもらえる。
「めぞんQ」で暮らすことがコミュニティへの支援になる
シェアハウスの収益はNPO法人QWRCの活動費となり、相談活動やコミュニティづくりなどの事業の資金に充てられる。LGBTQ+当事者が「めぞんQ」で暮らすことそのものが、コミュニティへの支援になるというわけだ。
お互いがお互いの安心や安全を生み出すことができる。「めぞんQ」が目指しているのはそんな住まいだ。
LGBTQ+当事者と住まいについての課題
LGBTQ+当事者は「住まい」に関してさまざまな課題を抱えている。その課題を解決するための1つの提案として、NPO法人QWRCではこのシェアハウス「めぞんQ」を立ち上げたという。
LGBTQ+当事者と実家暮らし
LGBTQ+当事者の家族は、当事者でないことが多い。そのため、LGBTQ+当事者の気持ちや悩みを理解しづらいこともある。
家族の理解が得られるか分からないために、カミングアウトできず自分のことを話せなかったり、カミングアウトしたとしても家族が拒否的でLGBTQ+当事者のありのままで振る舞うことができず、実家がのびのびと生活できる居場所ではないと感じている当事者もいる。
だから「実家を出て、自分らしく暮らしたい」と願うLGBTQ+当事者には、気軽に入居できるシェアハウスは選びやすい選択肢の1つだと思う。
LGBTQ+当事者と1人暮らし
多くの職場や学校においては、まだまだヘテロセクシズム(異性愛中心主義)や男女をジェンダーで区別する考え方が主流だといえる。
LGBTQ+当事者は、集団の中での会話に違和感を覚えたり、差別や偏見を含む言葉を投げかけられたりすることもある。ちょっとした恋愛の話やファッションの話もなんだか周りとしっくりこないと感じ、したい話ができないジレンマを抱えることもある。
「LGBTQ+の友人も周りにはいないし・・・・・・」
「ちょっと1人暮らしだと物足りない・・・・・・」
「何気ない会話の中で自分のことをあたりまえに扱ってほしい・・・・・・」
と思った時、シェアハウスの仲間と気軽に交流できる環境を、心地よく感じるのではないだろうか。
一緒に暮らせるようなパートナーも、マイノリティの中でそんなに簡単には見つからないかもしれない。でもシェアハウスにいれば、1人じゃない! と感じられるコミュニティを築けるかもしれない。
LGBTQ+当事者と地方暮らし
都市部のようにはLGBTQ+当事者のコミュニティがない、田舎なので近所の人の目が気になって思うように振る舞えない、という当事者の声は多い。
それぞれの地域が住みやすくなっていく未来も望んでいるけれど、とにかく今、もっと自由な生活が送りたい、地元の目を気にせずにのびのびと振る舞いたい、と感じているLGBTQ+当事者も数多くいることだろう。
そんな人も安心して「めぞんQ」に来られるように、NPO法人QWRCのスタッフが、これまでの相談や行政への同行支援の経験を生かしてバックアップしてくれる。
LGBTQ+と賃貸物件さがし
LGBTQ+当事者は、同性カップルとしての住宅ローンも組みにくく、仕事探しもハードルが高い。持ち家よりも賃貸物件で暮らしているLGBTQ+当事者は多いにも関わらず、賃貸物件において同性同士では「カップル」という扱いでは入居しづらいことも多い。
しかし、そもそもセクシュアリティのことが要因で家族と疎遠になっているLGBTQ+当事者も大勢いて、そのような当事者達は賃貸契約の保証人選びに頭を悩ませている。
また、性別移行中で見た目と証明書の性別が違ったり、そもそも大家や不動産屋にどう思われるだろうか・・・・・・ということが不安で物件探しにストレスを感じることもあるだろう。
セクシュアリティのことを理由に住まいが見つけにくい人も、このシェアハウス「めぞんQ」なら、そういったストレスを感じずに入居の手続きを進めることができる。
シェアハウス「めぞんQ」の運営NPO法人QWRC
めぞんQを運営しているのは、NPO法人QWRC 。LGBTQ+などのセクシュアルマイノリティと女性のためのリソースセンターとして、さまざまなセクシュアリティが自由に表現できる社会を実現するために活動している。
NPO法人QWRCの概要
NPO法人QWRCは、2003年4月に任意団体として創立され、2013年からNPOとして活動を始め、行政のLGBTQ+施策を受託するなどの事業をおこなっている。
フェミニズムの視点を重視しながら、多様な性のあり方が当たり前に尊重される社会の実現を目指して活動している団体だ。具体的な事業としては「行政・学校・事業所に向けた研修会の実施や講演会の開催」「居場所の提供」「電話相談やLINE相談、カウンセリングルームの運営、同行支援」「他LGBTQ+当事者の団体のサポート」を実施している。
このようにNPO法人QWRCは、長い間大阪でLGBTQ+当事者のサポート活動を継続してきた。そのスキルを生かして、今回シェアハウス「めぞんQ」に入居する住人の暮らしもサポートしているというわけだ。
さまざまな生きづらさに対応できる
私はNPO法人QWRCのメンバーの数人とは、もう数年来の付き合いだ。その人達と一緒にセクシュアルマイノリティについて考えたり語ったりするイベントを何度も運営してきている。
その経験から言うと、NPO法人QWRCが運営していると言うことが、LGBTQ+フレンドリーなシェアハウス「めぞんQ」に住む最大のメリットといえると思う。
NPO法人QWRCはシェアハウス運営がメイン事業ではなく広くLGBTQ+当事者の支援をおこなっているので、当事者のさまざまな生きづらさに対応できるのだ。
たとえばそれがシェアハウスに住むことでは解決できない問題であっても、NPO法人QWRCのメンバー達と関わることで、別の解決の道を探っていくことができるだろう。
シェアハウス「めぞんQ」での日々
実際に数日間、シェアハウス「めぞんQ」に滞在してきた。ここでは、シェアハウス「めぞんQ」でイベントを開催した時の様子にふれたいと思う。
シェアハウス「めぞんQ」のアクセスの良さ
大阪は堺市、大阪メトロ御堂筋線の北花田駅ならびに新金岡駅から徒歩10分のところにシェアハウス「めぞんQ」は位置している。
最寄り駅前にイオンモールや飲食店・クリニックなどがあり、シェアハウス周辺にコンビニや飲食店なども近い。区役所も徒歩圏内にあり、買い物や生活には便利な場所だ。
天王寺駅や難波駅、梅田など、大阪の中心部までのアクセスも良い。
私のような移動の多い人間にはありがたい立地だと思う。
シェアハウス「めぞんQ」でのイベント開催
NPO法人QWRCのメンバー達と共に、シェアハウス「めぞんQ」のリビングルームで大阪らしくタコ焼きパーティーを開いた。
京都に住んでいる私のパートナーとメタモア(パートナーのパートナー)も遊びに来てくれて、和気藹々と時間を過ごすことができた。LGBTQ+フレンドリーなシェアハウスだけあって、私がポリアモリーであることを話しても、参加者から否定的な反応が返ってくることはない。それをとても幸せだと感じた。
自分達だけでなく、若いLGBTQ+当事者が自分のパートナーを連れてきて、ごく自然に皆に紹介してくれたりもして、各自がのびのびとありのままの自分として振る舞っていくことが感じられ、心がほぐれる時間が流れていた。
こういった居場所が、LGBTQ+当事者にはもっともっと必要だと思う。このような住まいがあれば、生きやすくなる当事者達がより増えていくだろう、と感じられる居心地の良い場所だった。