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Writer/Jitian

ウクライナのLGBTQ当事者を支援しよう

2022年2月24日、ロシアによるウクライナ侵攻が始まりました。ウクライナ情勢が逼迫し、刻々と変わる危機的状況が報じられる日々が続いています。ウクライナやロシアに住むLGBTQ当事者は、現在どのような状況にあるのでしょうか。今回は、プーチン政権によるロシア軍のウクライナ侵攻の渦中にいる、LGBTQ当事者について考えます。

ウクライナ侵攻とLGBTQが関係あるのか?

武力や強権によって罪のない市民の命が危険にさらされるとき、より危険な状況にいるにもかかわらず世間から忘れられがちなのが、マイノリティです。

危機が近いときこそ、一層危険なマイノリティ

「ウクライナ侵攻」と聞いても、LGBTQとはなかなか結び付かないという人の方が多いと思います。ですが、実際にはLGBTQを含むマイノリティは、大きな危険に直面しています。

世界で唯一国連本部に常駐している国際的なLGBTQ支援団体である “OutRight” は、ウェブサイトで “As we know all too well, in times of crisis, LGBTIQ people who are already marginalized face higher risks and cannot count automatically on access to humanitarian and/or social assistance.”

(すでにご存じのように、危機の際には、すでに弱い立場に置かれているLGBTIQの人々はより高いリスクにさらされ、人道的および/または社会的支援へのアクセスに頼ることができません)

と警告を発しています。

ウクライナに侵攻しているロシアは “反LGBTQ” の国

ウクライナに侵攻している国がほかでもないロシアであるということも、LGBTQ当事者こそが危険な立場になり得る理由の一つです。

ロシアでは、”同性愛のプロパガンダ行為” に罰金を科す法律が2013年に成立しています。具体的には、以下のような情報を未成年に広めた場合に罰せられる法律です。

・非伝統的な性的状況を作ることを狙った情報
・同性愛と異性愛の関係が社会的に同等であるという歪んだ理解を持たせる情報

「非伝統的な性的状況」「同性愛と異性愛が “社会的に同等” であるという “歪んだ理解”」・・・・・・。これまでもLGBTQが否定されるときにどこかで聞いたことのあるような表現が、これでもかというくらいに並んでいます。そのような言葉のなかでも特に、LGBTQの人権を真っ向から否定し、認めない姿勢がより鮮明な、攻撃的な表現が使われているように思います。

考えたくもないことではありますが、このような法律を制定させ、長らく施行し続けている国であるロシアに占領されるようなことがあれば、ウクライナに住むLGBTQ当事者の人権が著しく侵害される可能性がかなり現実味を帯びてきます。

命の危険にあるLGBTQ当事者のいるロシアの地域、チェチェン共和国

ロシア連邦内で、文字通りLGBTQ当事者であるというだけで命が脅かされる場所があります。チェチェン共和国です。

チェチェン共和国は、ロシアの南西部、中東に近い場所に位置する、イスラム色の強い地域です。独立を目指すチェチェン共和国とロシアの間で起こった「チェチェン紛争」は、聞き覚えのある人もいるのではないでしょうか。

そんなチェチェン共和国では、LGBTQは認められないどころか、「悪」とみなされています。同性愛者をはじめとするLGBTQ当事者が強制収容所に追い込まれたり、警察から拷問を受けたりしています。最悪の場合、死に至っています。

武力や圧力といった恐怖心やストレスで、性自認や性的指向が「正常」になるわけではありません。それにもかかわらず、LGBTQ当事者を恐怖で締めあげ、最悪の場合殺害して見せしめとする暴挙は、到底受け入れられるものではありません。

チェチェン共和国の人権侵害を野放しにしているロシア当局も、社会的に問われるべきだと思います。

LGBTQ当事者が生きづらい、死の恐怖に直面している状況を生み出し、放置しているロシアが侵攻しているということは、ウクライナのLGBTQ当事者にもとてつもない危険が迫っているということだと、分かっていただけたと思います。

ウクライナのLGBTQ当事者のために、私たちにできることは何か

「支援」と一口に言っても、戦争を助長させることは避けつつ、困っているLGBTQ当事者の生活に直接的に役に立つような平和的・人道的な支援を届けたいと思いますよね。

情報を見極めることがまず大事

今の時代、ネットを開けば様々な情報が溢れ返っています。

あることないことを文章や画像、動画としてSNSにアップし、不安・敵対感情を煽るような、過激なニュースばかりが目に飛び込んできます。プロパガンダにより、嘘の情報が正しいとされ、事実がフェイクニュースだとレッテルを貼られていることもあるでしょう。

住む場所、自分の置かれている立場によって見える景色、得られる情報も異なります。「一体何を信じればいいのだろう?」「何が本当のことなのだろう?」と困惑しても無理はありません。世界から注目されている現在進行形の「戦争」に関する話題となれば、玉石混淆の情報のなかから「正しい」ものを選びとることは、いくらネットリテラシーに自信がある人でも、本当に難しいことです。

ウクライナへの寄付。「その先」も知りたい

ウクライナに住む人々の命や安全を確保できるように貢献したいと思う一方で、支援の「質」にも目を向けたいです。

例えば、ウクライナのLGBTQ当事者が安全に銃弾から身を守って生活できるシェルターを提供したり、国外に一時的に避難して衣食住を確保できるようにしたりするために寄付金が使われるのであれば、こちらとしても寄付金が「役に立った」と安心できます。

一方で、自分が納めた寄付金が ”敵” を倒す銃火器や戦車などに使われるとしたら、どう感じるでしょうか。正直、モヤモヤが残るのではないかと思います。

もちろん、自分の身を守るために、有事の際にはやむを得ず武器が必要だということは理解できます。しかし、互いに殺し合うことは憎悪を助長させるばかりで、根本的かつ平和的な解決にはつながりません。戦線の泥沼化を招いてしまう恐れもあります。それでは、平和のために寄付したはずなのに、本末転倒なのではとも感じられます。

こちらからの「寄付をしてあげた」という上から目線の自己満は持ちたくないとは思いつつも、まずはLGBTQ当事者が安全を確保できるように寄付金が平和的に使われることを確認したいと考えることは、平和を願うからこそ出て来る自然な考え方だと考えます。

信憑性の高い、平和的なLGBTQ組織・団体にウクライナ人道支援を託そう

“OutRight” のほか、ウクライナにもLGBTQ支援団体があります。

国際的なLGBTQ支援団体 “OutRight”

疑心暗鬼の状況のなか、どのようにすればウクライナのLGBTQ当事者を平和的に支援できるでしょうか。

このような際は、NGOなどに支援を託すことをおすすめします。

例えば、さきほども紹介した国際的なLGBTQ支援団体 “OutRight” も、ウクライナのLGBTQ当事者支援のために寄付を受け付けています。

3月1日(日本時間)のインスタグラムの投稿では “We are ready to provide people with everything they need: accommodation, food, medical care, psychological support, if necessary, ARV or hormone therapy.”

(宿泊施設、食事、医療、心理的サポート、必要に応じてARV(エイズ治療薬)またはホルモン療法など、必要なものすべてを人々に提供する準備ができています)

とメッセージを発信しています。寄付金がLGBTQ当事者のことを踏まえた人道的支援に使われていることがわかり、安心できますよね。

私自身も “OutRight” を通して微力ながら寄付させていただきました。現在 “OutRight” のトップページから、ウクライナ支援寄付金ページに直接アクセスできるようになっています。日本円で寄付可能です。2,500円からの寄付金額枠も設定されていますが、任意の金額を設定することもできます。

お手持ちのクレジットカードなどを使って、1分程度で簡単に寄付することができます。「寄付に興味はあるけど、銀行振り込みとか、わざわざATMに行くのは面倒だな・・・・・・」と思っている方は、是非一度 “Outright” のホームページをのぞいてみてください。

ウクライナのLGBTQ支援団体 “Kyiv Pride”

国際的支援団体だけでなく、ウクライナ国内にも公的なLGBTQ支援団体があります。“Kyiv Pride”(キエフ・プライド)です。

そもそも、ウクライナも決してLGBTQに「寛容な国」であるとは言えません。例えば、同性カップルに否定的な感情を抱いている人が8割を超えています。無論、同性婚は法制化されていません。キエフ・プライドは、そんな逆境のなかでもLGBTQ当事者への支援や理解を広める活動を続けている団体です。

キエフ・プライドのインスタグラムでは、昨年の2021年9月に行われたパレードの様子や、11月には立ち上げ5周年を祝っている投稿がなされていることが確認できます。

ロシア軍がウクライナへの侵攻を開始した2022年2月24日のTwitterでは、ウクライナ語では冷静に行動するよう、英語では戦争反対を政府に働きかけるようメッセージを発信しています。今回のウクライナ侵攻では、テレビなどの情報統制やアクセス制限などインターネット・電波攻撃も激しいと言われているなかで、危険を顧みずに発信をしてくれていることに勇気をもらいますし、尊敬します。

国際団体に寄付をすることも支援手段の一つですが、こうしたウクライナの団体に直接支援をすることもできます。キエフ・プライドのインスタグラムから、寄付ページに飛ぶことができます。キエフ・プライドなど寄付先を選べます。

このままでは21世紀最大規模の難民が出てしまうとも言われている、深刻な状況が続いているウクライナ侵攻。微力ながらでも、私たちにできることを少しでも行いたいです。

■参考URL

・DONATE TO SUPPORT LGBTIQ UKRAINIANS (OutRight)
https://outrightinternational.org/ukraine

・ロシアで「同性愛プロパガンダ」禁止法が成立(AFPBB News)
https://www.afpbb.com/articles/-/2953522

 

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