現代社会では、性の多様性がますます認識されるようになり、「LGBTQIAPK」といういくつもの頭文字で表されるセクシュアルマイノリティが存在する。その中でも、特に「キンキー(Kinky)」という言葉は、他とは異なる特殊な “性的嗜好” を持つ人々を指す。今回は、キンキー(Kinky)というセクシュアリティについて詳述すると共に、その意味と社会的な理解を深めていきたい。
LGBTQIAPKの一種・キンキー(Kinky)とは?
LGBTQIAPKとは
「LGBTQIAPK」とは、さまざまなセクシュアリティの頭文字を繋げた言葉だ。
何の頭文字なのか、1つずつ見ていこう。
L:レズビアン(Lesbian)
G:ゲイ(Gay)
B:バイセクシャル(Bisexual)
T:トランスジェンダー(Transgender)
Q:クィア(Queer)
I:インターセックス(Intersex)
A:エイセクシャル(Asexual)
P:パンセクシャル(Pansexual)
K:キンキー(Kinky)
以降では特に、最後のK(キンキー)について解説していく。
キンキー(Kinky)とは?
キンキー(Kinky)とは、「性的嗜好」が一般的なものとは異なっていることを指す。「性的指向」や「性自認」とはまた異なる点におけるマイノリティだ。
この性的嗜好は、通常の性的行為や感覚とは違い、時には非常に特殊なプレイやフェティシズムとも結びつくもの。
キンキー(Kinky)にはさまざまな種類があり、BDSM(ボンデージ、ディシプリン、サディズム、マゾヒズム)やフェティシズム、ロールプレイなどを含む広範な性的嗜好のカテゴリとされる。いわゆる特殊性癖のことで、SMと呼ばれる行為もこの中に含まれる。
「キンキー(Kinky)」という言葉自体は「異常な」や「ねじれた」といった意味を持つ英語の「kink」から派生しているものの、現代においては必ずしも否定的な意味で使われるわけではない。
LGBTQIAPKのなかのキンキー(Kinky)
キンキー(Kinky)の具体例
キンキー(Kinky)の具体例をいくつかあげてみる。
◉「ボンデージ(束縛」)や「SM(サディズムとマゾヒズム)」
キンキー(Kinky)な性的嗜好の中でも特に知られているものだろう。
ボンデージは、ロープや拘束具を使用して相手を縛る行為であり、SMはサディズム(他者に苦痛を与えることに快感を覚える)とマゾヒズム(自らが苦痛を受けることに快感を覚える)を意味する。
◉フェティシズム
特定の物体や状況、身体の一部に対して性的な興奮を感じること。
例えば、足フェチ(足に対する興奮)やラテックスフェチ(ゴム素材の服装に対する興奮)などがある。エナメルやラバー(ゴム)、着ぐるみなどに惹かれる人もいる。
◉パワープレイ
主従関係や支配と服従をテーマにした性的嗜好だ。
ここでは、主導権を握る側と従う側の明確な役割分担があり、心理的および身体的な支配と服従が重要な要素となっている。
キンキー(Kinky)の背景と心理
キンキー(Kinky)な嗜好は、一部の人々にとっては生まれつきのものだが、経験や環境の影響によって形成されることもあるものだ。
幼少期や青年期の経験、特定の出来事がその後の性的嗜好に影響を与えることがある。例えば、ボンデージに魅力を感じる人は、ヒーローもののアニメやマンガなどを通して、幼少期から束縛に関するポジティブな経験を持っている場合がある。
また性的嗜好は、個人の心理的なニーズや欲求と密接に関連しているとされる。例えば、パワープレイに興味を持つ人は、支配や服従の役割を通じてある種の安心感や信頼感を得ることができる。
社会や文化もまた、個人の性的嗜好に影響を与えるものだ。特定の文化やサブカルチャーでは、キンキー(Kinky)な嗜好がより受け入れられやすく、これが個人の嗜好形成に寄与することがある。
LGBTQIAPKにおけるキンキー(Kinky)の社会的受容に向けて
キンキー(Kinky)の社会的受容と課題
近年、L・G・B・Tなどに関する理解は少しずつ進んでいるものの、キンキー(Kinky)な嗜好については、依然としてそこに多くの偏見や誤解があるといえるだろう。
キンキー(Kinky)なコミュニティの人々は、「安全・健全・合意」を信条とし、行動のすべてが参加者の安全と合意に基づくことを重視する。
もちろん、違法行為や無関係な他人に迷惑をかけるようなことは行わない。にも関わらずキンキー(Kinky)な嗜好は、一部の人々にとって「異常」や「不道徳」と見なされることがある。
このような偏見やスティグマは、キンキー(Kinky)な嗜好を持つ人々に対する社会的な圧力や差別を引き起こしかねない。
そのためキンキー(Kinky)な人々は、自分自身の嗜好を受け入れることに困難を感じることが多い。また、家族や友人、パートナーに対してカミングアウトすることも大きな挑戦といえる。
幸いなことに、世界の多くの都市やオンラインのプラットフォームには、キンキー(Kinky)な嗜好を持つ人々が集まり、交流できるコミュニティがある。これらのコミュニティは、情報交換やサポート、理解を深める場として重要な役割を果たしている。
北欧最大のプライド フェスティバルである「ストックホルム プライド」には、毎年「プライド キンキー」というセクションが設けられ、キンキー当事者たちによるパレードや講演などがおこなわれている。
一方で、私は日本の「東京レインボープライド」において全身タイツのフロートでパレードを歩いた際、「あんな変態たちがパレードを歩くのはおかしい」と非難を受けた。
このように日本では、欧米に比べて、まだまだキンキーに対する偏見は根強いといえるだろう。
LGBTQIAPK:キンキー(Kinky)に関する教育とコミュニケーション
LGBTQIAPKへの理解、キンキー(Kinky)な人々に対する理解と受容を進めるためには、教育とコミュニケーションが重要だ。
学校や職場、コミュニティでのLGBTQIAPKに関する教育を通じて、キンキー(Kinky)な嗜好についての知識と理解を深める必要がある。性に関する教育の一環として、安全なプレイや同意に関する情報が提供されることも重要だろう。
また、パートナーや友人、家族とオープンなコミュニケーションを行い、キンキー(Kinky)な嗜好について話し合うことは、自分とは異なる他者への誤解や偏見を減らす一歩となると思われる。
キンキー(Kinky)な人々をサポートするネットワークやマッチングサービスなどを活用することも、理解と受容を進めるためには有効な手段となる。
LGBTQIAPKにおけるキンキー(Kinky)な人々が自分らしく生きられる社会を目指して
他とは異なる特殊な性的嗜好を持つ人々を指す、キンキー(Kinky)というセクシュアリティ。
そこにはボンデージやSM、フェティシズム、パワープレイなど、さまざまな形態がある。キンキー(Kinky)な嗜好は、個人の歴史や経験、心理的要因、社会的および文化的影響によって形成されるものだ。
キンキー(Kinky)に対する社会的な受容と理解を深めるためには、教育やオープンなコミュニケーション、ネットワークを活用するとともに、社会に向けた正しい情報発信が欠かせない。キンキー(Kinky)な嗜好を持つ人々が自分らしく生きられる社会を目指し、性の多様性を尊重することが求められている。
■参考情報
・https://luna-company.com/kinky
・https://jibun-rashiku.jp/column/column-1130
・https://jibun-rashiku.jp/column/column-2010
・https://trp2018.trparchives.com/parade/7384/
・https://www.stockholmpride.org/festivalen/pride-kinky/
・https://www.themarysue.com/kink-at-pride-this-incredible-master-doc-proves-why-it-belongs/
・https://www.washingtonpost.com/outlook/2021/06/29/pride-month-kink-consent/
・https://www.businessinsider.com/kink-at-pride-discourse-explained-kinks-role-in-lgbtq-history-2021-6
・https://www.them.us/story/kink-bdsm-leather-pride