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Writer/Jitian

LGBTQであるとカウンセラーに相談したら・・・

皆さんは、自分のセクシュアリティについて思い悩むことがあったとき、どう対処してきましたか? 相談する相手はいますか?

私は、オフ会などでLGBT当事者と直接知り合いになる前、自分の中でいっぱいになったときに学校のカウンセラーに相談したことがありました。しかしながら、正直言ってそのときの記憶は必ずしもよいものではなく、思い返すと今でももやもやします。

皆さんの中にも精神的に参っているというわけではなくても、トランスジェンダーの人の中には病院で然るべき診断、治療を受けるためにジェンダークリニックに通い、そこでカウンセラーに自分史を語るなどしたことがある人もいると思います。

今回は、私がカウンセラーに相談したときの話を、大人になった今振り返って考えようと思います。相談先がいなくて困っている人、相談したことのある人は、自分の場合はどうだったか/どうして欲しいかなど考えながら、読んでみてください。

なぜカウンセラーに相談したのか

最初に、数ある選択肢の中からセクシュアリティについて、なぜカウンセラーに相談しようと思ったのか、その理由を振り返ります。

ほかに相談できる人や場所がなかった

私は、今でこそほとんど自分のセクシュアリティそのものについて、考え込むことはなくなりましたが、20歳になるころまでは結構悩んでいました。

というのも、それまでは自分がそもそもXジェンダーだということが分かりませんでした。
性別のグラデーションなどの概念も知らず、男女どちらかに属さなければならないと思っていたからです。加えて、性自認と性的指向を分けて考えるということすらも知らず、二つを混同していました。

さらに、色んなメディアから “マイノリティ=生きづらい” というイメージが刷り込まれていて、マイノリティであるということ自体を認めたくなかったので、LGBTQについて積極的に調べようともしませんでした。そのため、自分がレズビアンともバイセクシュアルともトランスジェンダーとも思えず、どれもしっくりきませんでした。

今でこそ、セクシュアリティ・フリーで、昼間に和やかに開催されるオフ会もあります。
しかし、当時はそのようなイベントはセクシュアリティが限定されているか、フリーのものは、クラブ貸切のナイトパーティのようなものが主でした。

人見知りが激しい私は、クラブのような場所は行きたくありません。かといってセクシュアリティ限定の場所は、自認しているとも言いがたいから行きづらい・・・・・・。
セクシュアリティが定まらない自分は、どこに行けばよいのか、どこなら安心できるのか、分かりませんでした。

悶々として、自分の中で精神的に限界が来たときに、思い切って学校に来ているカウンセラーに相談することにしました。実際には、高校と大学、それぞれ1回ずつ相談しました。

否定される可能性が低い

悩みをどうやって解決しようとするのかは、人それぞれだと思います。
信頼できる家族や友人に相談する。本やネットで調べる。何かに打ち込んで忘れる。
今だったら、一番手っ取り早いのはSNSに匿名で投稿することでしょうか。

ただ、私は、私の顔と名前を知っている人には、セクシュアリティについて絶対に言いたくないと思っていました。今でも家族や親戚、学生時代の友人、前職の同僚や上司にはだれにもカミングアウトしていません。

また、当時はまだSNSが今ほど浸透していませんでした(m○xiは流行っていましたが、流行りものに乗らない性格なのでやっていませんでした)。匿名で不特定多数に相談すると言ったら○ahoo! 知恵袋くらいでしたが、すでに上がっている類似の質問に対する答えは、「中二病」など、ひどいものばかりでした。

知人は頼りたくない、知らない人に馬鹿にされたらさらに精神を病むかもしれない・・・・・・。そのときに浮かんだのが “こういうときはカウンセラーなどのプロに相談しよう” という選択肢でした。

カウンセラーだって、どこまで信じられるか分かったものではないと思っていましたが(かなりの慎重派)、顔も名前も知らない、心理学もLGBTQも知らない可能性の高い “素人” に侮辱されるよりかは、100万倍安全だと思ったのです。

そう思い至って、頃合いを見計らってカウンセラーに相談することにしました。
最初に相談したのは、大学受験勉強中の高3でした。

学校のカウンセラーに相談するメリット

カウンセラーと話した内容を具体的に説明する前に、学校のカウンセラーに相談するメリットに触れておきたいと思います。

●費用がかからない
学校が公立、私立に限らず、相談費用は無料。精神科に通おうとすると少なからず診察代などが発生するので、学生にとっては助かります。

●予約を取りやすい
昨今、精神科の予約を取る場合、受診日を土日や平日夜に限定すると、数週間先まで予約が埋まっていることがザラです。思い立ってもすぐに相談できないのでは困ります。
もちろん、学校のカウンセラーに相談するにも、基本的には事前の予約が必要だと思いますが、数週間先にまで延ばされることはあまりないのではないでしょうか。

また、学校内で受けられるのであれば予定も立てやすいです。何より、初めて行く病院より、慣れた場所のほうが安心して話せます。

●守秘義務
個人的に最も気にかかっていたことは、友人などに相談内容がバレないか、相談している姿やカウンセリングに向かう姿を目撃されないか、いわゆるアウティングでした。特に高校までは、学級など閉鎖的なコミュニティで生活するので、アウティングは深刻な問題になりかねません。しかし、結論から言うと、これも問題ありませんでした。

私が受けたカウンセリングのスペースや受付は、学校の中でも人気のない場所でした。大体の場合は、事務的な申請や保健室のような機能も備えているため、それらに紛れて訪れることが可能でしょう。

もちろん、カウンセラーが話を漏らすことはありませんし、友人だけでなく教師などにも相談したことそのものすら伝わりませんでした。また、相談の様子も、外から見えないように工夫されています。

●スッキリする
自分が話したことに対して相手がどう返答するのか、悩みをどう解決できるのかで、相談者の心の持ちようはずいぶん変わると思います。カウンセラーとの交流が期待と異なる場合もあるかもしれません。しかし、その点を置いても、だれかに話して自分ひとりだけで抱える状態から解放されるというだけで、少しスッキリできます。

話してみてどうだったか

さて、ここからは実際に私が相談したときのことを振り返ってみようと思います。

自分でもよく分からない「相談の目的」

前述のとおり、カウンセラーに相談するに至った理由の一つが「セクシュアリティがそもそも分からないから」でした。つまり「自分がどういう状態であるかもはっきりと説明できないし、どうなりたいかも分からないが、長年漠然と悩んでいる」ということです。

恐らく、当時もまとまりなく話したのだと思いますが、自分があまり女と思えないが男でもない、男性も女性も(その他も)好きになるが女性が好きなことの方が多い、今好きなのは女性で友人の一人、大学受験が近いのに集中できない(高校生時)などと相談したと思います。

「10代はそういうときもある」「大人になったらシスヘテになるかも」

カウンセラーの方は、話を遮らず、私の言うことを復唱しながら一通り聞いた後、大抵このようなことを言いました。

10代のうちはそういうことも多い。
大人になったら落ち着くかもしれない。
自分を女性と思えるようになり、男性のみを好きになるかもしれない。

残念ながら、この時点で私の心の扉は閉じてしまいました。
だって私「シスジェンダー・ヘテロセクシュアルになりたい」なんて言った覚え、ないのですが??

確かに、女子校では学生の期間だけ女子を好きになる人も少なくないと聞きます(ちなみに私は高校まで共学で、男女比も半々でした)。だから、こう言われることで気持ちが落ち着く人もいるのでしょう。実際、同じような相談をした後、大人になってシスジェンダー・ヘテロセクシュアルでほぼ固定された人がいたのかもしれません。

しかし、これは結果論ですが、私は大人になってもシスヘテにはなりませんでした。

当時、なぜ私がそこまで悩んでいたかと言えば、私のような人間は、世間から見れば異常だと思っていたからです。トランスジェンダーは「障害」だし、同性愛は「禁断の愛」などと、世間では平気で言われていました。そういう人は異常者で、どんなに頑張っても “普通” の人生は歩めないし、幸せになれないと漠然と思っていました。社会は当時よりはかなり前進しましたが、まだ同じような偏見や差別はあちこちで見られますし、これは今カミングアウトしていない理由でもあります。

“普通の人生” のコースから外れた人は幸せになれないと決めつけられていることに悩んでいた中で、時がたてば “普通” になるかもよと言われましても・・・・・・。その時は “異常” 性が否定されたどころか、むしろ強化されたと感じました。

このままじゃいずれダメなのね、ハイハイ、と次第に耳が遠くなっていきました。

当時の自分に相談されたら、何と返すか

かといって、カウンセラーの専門知識やスキルもない私が、あのときの自分や、同じように悩んでいる人にどう答えればよいか・・・・・・。難しい問題だと思います。先ほども書いた通り、あの時、私が出会ったカウンセラーたちの返答で満足する人もいると思うからです。

ただ私は、具体的な「解決案」を求めるタイプなので、知識を得られたらもっと早く悩みから解放されていたかもしれないと思います。例えば、性自認と性的指向は別物だから分けて考える。性別はグラデーションだから、男女どちらかでなくてもいい。Xジェンダーというものがある、などなど。

私は個人でXジェンダーのことを中心としたブログを運営しているのですが、まれに性自認のあり方についてネットで調べていたら、私のサイトにたどり着いたという方もいます。

カウンセリングを受けたあの時代、自分の悩みには名前があって、悩んでいるのは一人ではないということを知れると、結構楽になったかもしれないと思います。

「LGBTQは幸せになれない」というストーリー

大体バッドエンド(≒死)

少し話の角度が変わりますが、前述のとおり、私の当時の悩みは自分が “異常” で、幸せになれないという思い込みが大きな原因でした。

というのも、ドキュメンタリーやフィクションの映画などでも、LGBTQでハッピーな人はほとんど登場しませんでした。大抵、幸せなシーンは一瞬で過ぎていきます。そして、ほとんどが最初も最後もつらい思いをして、バッドエンド。フィクションの場合は最終的に死ぬこともしばしば。そもそもLGBTQで犯罪者のキャラクターということも多く、 “異常” なことが多い印象でした。

また、マスメディアに登場するLGBTQ当事者は、ほとんどゲイかトランスジェンダー女性で、身体の性別が女性の人は皆無でした。

そして、私が悩んでいたころから10年ほど経った今、LGBTQのコンテンツは確実に増えています。地上波で放送され、全国的に展開するものも増えました。しかし、未だにバッドエンドのものが大半を占めているのが現状です。また、生まれ持った身体の性別が女性の当事者やキャラクターは、ゲイやトランスジェンダー女性に比べれば露出度が圧倒的に低いです(日本は他国と比べてFtMやFtXの割合が非常に高いと言われているにもかかわらず)。

もっとエンパワーメントしたい

こういったメディアについて、どうせフィクションなんだし重く捉えすぎ、などと考えている人もいると思います。しかし、自分の経験からも、これはかなり重要な問題だと思います。小さいころから少しずつ刷り込まれ続けた考え方は、その後間違いだと気づき、頭では分かっても、なかなか抜けきらないものです。

これからも、LGBTQは異常ではないし、幸せになれるということをもっと色んなところで陰ながら発信できたらいいなと思っています。

そして、今は2020年。SNSをはじめとしたツールも豊富にありますし、図らずもコロナ禍によってテレビ電話も浸透して、離れた人とオンラインでつながりやすくなりました。
セクシュアリティで悩んだときは、一人で抱え込まず、できればだれかに相談してみたらいかがでしょうか。(当メディアと同じ母体が運営している「LGBTER」には、様々なセクシュアリティの人のロールモデルを読むことができて、励みになりますよ! 相談にものってくれます)

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