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Writer/雁屋優

ソロウェディング、それは自分との結婚

結婚には、様々な形があると以前の記事で書きました。これから多様になっていく結婚の形。同性婚やパートナーシップの動きは、ますますさかんになっていくことでしょう。近い将来、この国で同性婚が可能になることを私も願っています。そのなかで、私は、自分と結婚するソロウェディングを選択肢の一つとして紹介します。

ソロウェディングとは?

ソロウェディング、と聞いてすぐわかる人はまだ少ないことでしょう。そもそも、結婚は二人でするものです。日本での結婚は異性で、二人で、行うものです。それを、ソロ(一人)とは一体どういうことなのでしょうか。

結婚はしたくないけど、ウェディングドレスを着てみたい

私がソロウェディングを知ったのは偶然でした。誰かを恋愛の意味で好きにならず、性的なことにも興味のなかった私は、当時の友人に、「私、結婚はしたくないんだけど、一生に一度でいいから白無垢かウェディングドレスを着てみたい」と言って回っていました。そんなときに友人の一人が、「それならソロウェディングというのがあるよ」と教えてくれたのです。

早速、ソロウェディングについてスマホで検索してみた私は驚きました。そこには一人でウェディングドレスを着ている人がいました。花の咲くような笑顔は、とても眩しく映りました。一人でも、ウェディングドレスって着られるのかと感動して、その場で思わず申し込むところでした。結婚式は数百万円かかるものと、聞いていたからです。その当時は、一番安いプランでも少し懐に響く状態だったので何とか自制しました。

いつか必ず、ソロウェディングをする

しかし、ソロウェディングのことは今も忘れていません。いつかしたいな、と思っているうちにアラサーが迫ってきます。身体はどんどん老いていくばかりです。お肌のことなんかも考えると、若いうちに撮りたいところです。そこで、改めて調べてみました。

ヘアメイク、ドレスアップ、撮影の一日プランで、何と二万円を切るプランがあるのです。勿論、ドレスのグレードを上げると、追加料金が発生します。それでも、二万円以下からスタートするのはありがたいです。結婚式とは桁が違う気軽さですよね。結婚式は数百万かかってしまうので、それを考えるととてもお財布に優しいお値段です。

ウェディングドレスを着てみたいけれど、相手がいないから無理かなと思っていた方。必見です。相手がいなくても、ウェディングドレスは着ることができるのです。

結婚はしたくないけれど、ウェディングドレスを着てみたい

私は結婚したいというわけではありません。でもソロウェディングはしたいのです。なぜって、ソロウェディングは楽しそうだから。

ウェディングドレスや白無垢には憧れた

結婚生活そのものへの憧れは、毎日のように喧嘩する両親によって跡形もなく打ち砕かれました。そのせいか、恋愛にも心惹かれることはなく、結婚ってこんなに大変なんだな、しない方がいいなと思うようになり、今もそう思っています。また、結婚するために “相手に選ばれる努力” をするのも面倒だなと感じています。

選ばれるために外見を整え、気を遣って会話をし、笑顔でい続けることがどれだけ大変なのか、私は想像でしかわかりません。なぜなら、やってみたことがないからです。ただ、ひどく大変なのだろうな、と感じています。誰かに気に入られようとするのは、とても大変でしょう。

自分にそんな努力ができるとも思っていませんし、きっとしないでしょうけれど、万が一そんな努力ができたとして、それを数年、数十年続けるのはきっと無理がある。そう思っています。

結婚はマッチングなので、私も相手を “選ぶ” 側になるわけなのですが、無理のある関係はやはり続かないでしょう。そんなわけで、私に結婚は向きません。

しかし、綺麗な花嫁に対する憧れはあるのです。花嫁になってみたいときもあれば、花嫁を自分のパートナーとして大切に迎えたいときもあります。ふわふわで、白くて可愛い女性になりたい。そんな女性の隣に立ちたい。どちらも本当の気持ちです。

ハッピーエンドではないけれど、ウェディングドレスを

物語のハッピーエンドの一つのかたちとして、多く挙げられるのが登場人物の、特に女の子、ヒロインの結婚です。幸せそうな花嫁姿は、これまでの彼女を見てきた読者も嬉しくなったり、何だか寂しくなってしまうほど。祝われて、幸せに包まれて、女の子は幸せになって物語は終わるのです。

しかし、ソロウェディングであれ、一般的な結婚であれ、ウェディングドレスを着たからといって、物語は終わりません。むしろ結婚は、長い長い生活の始まりといえます。そこに必要なのは理想ではなく、覚悟なのかもしれません。長い生活をしていく覚悟です。

結婚をゴールインなどと言うこともありますが、結婚はゴールではなく、スタートなのです。それは結婚したくない私でも、何となくはわかります。

それでも、私は白に身を包みたい

私には誰かと生涯生活をともにする覚悟なんてありませんし、これからも多分そんな覚悟はできないでしょう。でも、ウェディングドレスは着てみたいのです。その白に身を包んで、笑って写真を撮りたいです。式も来賓もいらないから、私だけのセレモニーが欲しいのです。

そこに誰かの意思は関係ありません。私の意思だけで十分なのです。エンディングではなく、長い長い生活をスタートするのだという意思があり、カメラの前に立つこと。それだけでいいのです。

パートナーのいないウェディングもあっていい

ここまで書いてきましたが、やはり、「そうはいっても、お金がかかるのには違いない。そこまでしてソロウェディングをやる必要ってあるの?」と、思う方もいらっしゃると思います。パートナーがいるからこそ、お金をかけてドレスを着て、ウェディングをする価値があるといった考え方もあります。しかし、パートナーのいないウェディングもあっていいのだと私は考えています。

きれいな遺影で見送られたい

ウェディングから話が外れてしまうのですが、皆さんは、今お亡くなりになったとして、遺影に使われるのは何の写真だと想像されますか。私はこれに思い至ったとき、ソロウェディングをしたい、と強く思いました。

あるとき、ふと考えたのです。今、死んだら私の遺影って何になるのでしょう、と。遺影になりそうな写真を撮ったのは、大学の卒業式が最後です。つまり、大学を卒業したときの写真が遺影として飾られて、私が見送られることになります。

そう思うと、あ、何か少し嫌だなと思いました。ここには大学卒業時期に関する個人的な事情も絡んでいるのですが、あの写真の自分で見送られるのは嫌だな、と私が感じたことがすべてです。

結婚していたら結婚式の写真があるのでしょうが、私にはそれがないので、きっと私が死んだら大学の卒業式の写真を使われてしまうのです。それは避けたい。本気でそう思いました。

そんな思いもあり、ソロウェディングについて調べ始めたのです。しかし、まだどこかに、「パートナーがいないのにわざわざウェディングドレスを着て、お金を払って写真を残す必要はあるのか」という思いがありました。

パートナーのいないウェディングもあっていいと思うように

そんな私でしたが、パートナーのいないウェディングも、ありなのではないかと思うようになりました。ソロウェディングにおいては、パートナーと結婚する覚悟ではなく、私が私自身と結婚する覚悟を決めるのです。誰かと結婚するのも尊いことですが、自分自身と将来を誓うのも尊いことでしょう。

この先五十年、いえ、人生百年時代と言われていますからそれ以上、でしょうか。自分一人で生きていくという覚悟を決めること。それはやはり、並大抵のものではありません。いざというとき、無条件で自分を支えてくれる相手をもたないことでもあるのですから。

一人で生きていく覚悟も、祝福していい

二人で生きていく覚悟の形の一つである結婚と同じように、一人で生きていく覚悟も、祝福されていいのです。一人で生きていくことにも、一つの区切りがあると気も引き締まる気がしませんか。その形の一つが、ソロウェディングなのです。

自分一人で写真館に行き、メイクアップからドレスアップまでしてもらい、写真を撮ってもらう。言葉にしてしまえばこれだけですが、写真を撮ってもらう瞬間、その写真館の主役になることができるのです。一人で生きていく覚悟を決めた人を主役にした写真は、きっと美しいでしょう。 LGBTと多様化する結婚

結婚は多様化していきます。これは間違いなく言えることです。異性婚でも、『逃げるは恥だが役に立つ』(海野つなみ、講談社)において、契約結婚という、今までにない新しい結婚の形が示されるなど、変革が起き始めています。異性と恋愛し、結婚するだけが結婚ではない時代も、近づいているのかもしれません。

LGBTを理由に祝われることを諦めなくていい

LGBTはマイノリティな存在です。言うまでもなく、その数は少なく、多数決が前提の民主主義において、不利であることは認めるほかありません。しかし、それが祝われることを諦めなければいけない理由にはなりません。

そうは言っても親の理解が得られない、理解してくれる人ばかりではない、というのもわかります。そんなときにこそ、私は自分で祝うという方法を紹介します。祝ってくれる人がいないなら、自分で祝えばいいのです。

自分で祝う方法の一つとして、ソロウェディングを提案します。好きなケーキで祝うのも、買いたかった服を買うのも、いつもより少し贅沢なごはんを食べるのも、祝い方の一つです。祝い方は、人の数だけあります。

私は一人で幸せになる

一人で幸せになる、結婚しないと表明する度に私は「そんなこと言ってられるのは、若いうちだけだよ」などと言われてきました。なかには、「そんなことを言っても理解されないから言わない方がいい」と善意の忠告をしてくる、ありがたくない人もいました。

でも、だからこそ、私は言います。私は一人で幸せになります。その覚悟として、ソロウェディングします。

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