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Writer/Jitian

もうすぐ衆院選。よく分からなくても、まず投票してみることに意味がある

2021年10月19日、衆院選が公示されました。皆さんのところにも、投票用紙や選挙公報が届いているでしょう。今回は、衆院選で各政党がLGBTQに対してどのような政策を打ち出しているのか見ていきます。この記事を読んで、政治や選挙にあまり興味のない人も選挙に行ってみようと思ってもらえたら嬉しいです。

選挙に行っても意味がない? 面倒くさい?

「どうせ自分が一票入れたところで何も変わらない」と思っていませんか?

「生活に困っていないから、行く意味がない」

そもそも、一部の人たちが「コロナ禍になってから初めての国政選挙」「類を見ない短期決戦」「立憲と共産が協力して野党共闘」などと “騒いで” いるところで、日ごろから政治に興味のない人は、衆院選が2021年10月末に行われることすら知らない人もいます。

そういう人たちの中には、「別に自分は生活に困ってないし、わざわざ行く意味がない。選挙は、生活に困っている人や不満がある人が行けばいい」と考えている人もいると思います。

こういう考えで選挙に興味がない人に、私は2つお話したいことがあります。

第一に、「本当に困っていませんか?」ということです。

例えば、同性愛者で、今は特にパートナーがいないけど、経済的にある程度余裕をもって生活できていて、現状に概ね満足している人を想定しましょう。確かに今は問題ないかもしれません。ただ、将来パートナーができて、生活を共にしたいと思ったとき、現状のままでは結婚できません。パートナーシップ制度を利用できる地域は、ここ数年でかなり広まりましたが、全国すべてではありません。そもそも、パートナーシップ制度は法律婚のような “特権” のある制度ではありません。

そういった将来を見据えて、同性婚を実現してくれそうな候補者や政党に投票するのはいかがでしょうか。

第二に、「じゃあ、今困っている人のために投票に行きませんか?」ということです。
アライの方だったら、同性婚を望んでいる知人のために、同性婚法制化を掲げている候補者に投票する。戸籍の性別を変更したいけど、SRS(性別適合手術)までしなければならないことが足かせとなってためらっている友人のために、トランスジェンダーのことまで踏み込んで政策を立てている政党に投票する、といった行動が考えられます。

今の生活に問題がなくても、自分の将来をよりよくしたい人や悩んでいる人のために投票するというのもアリだと思います。

「調べるのが面倒くさい」「よく分からないのに投票していいのだろうか」

選挙や投票自体が億劫な人も少なくないでしょう。誰に選挙しようかニュースやマニフェストをチェックし、候補者や政党の政策を比較・吟味するのは面倒くさそうなイメージがあります。

しかし、現在はグラフィックを多用して、パッと一目で政策の違いが分かるサービスが増えています。

例えば『JAPAN CHOICE』というサイトでは、各政党のマニフェストをテーマ別に○×やチャートで比較できるだけではなく、政権与党の公約実現度も確認できます。(すべてではありませんが)マニフェストにおいては、マニフェストの中で具体的にどのように言及しているのか、要約も読めます。

『JAPAN CHOICE』の「政策を比較する」というページから「ジェンダー・LGBTQ+」というテーマを覗いてみると、政党ごとにスタンスがはっきり分かれているのが一目瞭然です。どのように異なっているのかは、ぜひご自身の目でご確認ください。

「LGBTQのことだけじゃなくてコロナや経済、国際情勢も見なきゃいけない」「死票じゃ意味ないのでは」などと考えている人もいると思います。ですが、色々と考えて投票しないより、とりあえずでも投票した方が良いと私は考えます。

投票しないことは「現状に何ら不満はありません。どうぞご勝手にやってください。私はそれに従います」という意思表示になるからです。NOISE読者の皆さんならば、『JAPAN CHOICE』で「ジェンダー・LGBTQ+」の政策比較を見たら、きっと投票せずにはいられなくなると確信しています。

投票先ってどこをチェックすればいいの?

そうは言っても、何を見て判断すればいいのか迷いますよね。

まずは選挙公報を読む

国政選挙が近付くと「選挙に行こう」「投票しよう」と周りから呼びかけられ、投票用紙は自治体から届きます。しかし、学校などで「投票先の選定方法」は教えてくれません。私もまだまだ勉強中ですが、ここでは私なりの投票先の選び方を紹介します。

第一に、選挙公報には目を通すことをおすすめします。衆院選では、地域の候補者から1人選ぶ小選挙区制と、支持する政党を選ぶ比例代表制の2つがあります。選挙公報では、小選挙区制で投票できる地域の候補者を確認することができます。

衆院選の比例代表は「政党名」を書かなければなりません。つまり、候補者個人の訴えだけでなく、各政党のマニフェストもチェックしておく必要があります(候補者個人の考えと、政党の考えは、必ずしも一致しないことがあるのです)。

選挙公報には、候補者が訴えたいことが小さな掲載紙面に所狭しと書かれています。その中で、自分と同じ考えを持っている候補者がいるのか? そのテーマをどのほど重要視しているのか? といったことが確認しやすいです。

ここ2、3年で「LGBT」が全国区のニュースになるようになりました。しかし、どの候補者も「LGBT」「ジェンダー」「差別解消」「多様性」を重要視しているとは限りません。選挙公報でこういったトピックを大見出しとして取り上げていれば「この候補者はLGBTQ当事者のために、自分事として動いてくれそうだぞ」と考えられます。逆に、まったく触れていなければ、「この候補者は取るに足りない問題と捉えているのかな」と推測できます。

まずは自分の興味のあるテーマをチェックする

しかしながら、前章で紹介した『JAPAN CHOICE』でも、「政策を比較する」ページを見ただけで圧倒されてしまう人もいるかもしれません。

というのも、大きいテーマだけでも17もあり、その中でさらに小テーマを数点取り上げているからです(例えば、前述の「ジェンダー・LGBTQ+」という大テーマのページでは、「同性婚・パートナーシップ制度」を含めて、小テーマが4つもあります)。

もちろん、多くの分野を知っていることに越したことはありません。ですが、個人的には、まずは自分の興味のあるテーマで投票先を選んでOKと思っています。

「政策を比較する」にあるすべての社会問題を熟知し、各政党のカラーを明確に理解している人など、きっと政治家や社会学者くらいでしょう。ですが、選挙権は18歳以上のすべての国民にある権利です。政治家や社会学者並みに政治を知らないといけないという要件はありません。

まずは、自分にとって重要な問題を解決してくれそうな人を選ぶことから始めてみてはいかがでしょうか。

各政党はどのほど「LGBT」を重要視しているのか?

全国の候補者を追うのは難しいので、ここでは政権与党と、共闘している野党5つに焦点を当てます。衆院選では、政党のマニフェストを見るのも大事。今回は、与党である自民党と公明党、野党共闘している立憲民主党、日本共産党、国民民主党、社民党、れいわ新選組に絞って、各政党が「LGBT」「ジェンダー」「差別解消」「多様性」にどのように言及しているのか確認しました。

与党・自民党/公明党は「LGBT理解増進」が中心

まず自民党です。
ジェンダー平等や多様性に重きを置く野党もあるなか、自民党の最新マニフェストPDFで「LGBT」のワードが出て来るのは、66ページ中、なんと終盤の65ページ。
内容としては、一言で言えばLGBT理解増進。同性婚やLGBT差別解消法の制定には触れていません。正直に言ってLGBTに関する問題への関心はかなり低いでしょう。

一方、公明党のマニフェストでは、4つめの重点政策の1つとして「性的マイノリティへの支援」に触れています。スタンスとしては理解増進を中心としていて自民党と大差ないようにも見えますが、重点政策の中に含まれているので、向き合い方は自民党と異なると思います。

野党は「踏み込み具合」が様々

野党も、マニフェストを比べてみるとそれぞれに違いが見られました。

●立憲民主党
5つめの「多様性」の重要政策の中でLGBTQについて触れています。具体的には、LGBT平等法の制定と、同性婚法制化です。サイトではレインボーフラッグの写真も掲げられていて、政党としてある程度重要視しているように見受けられました。

ただし、前回の記事で触れた通り、立憲民主党の候補者全員が必ずしも同性婚法制化に賛成しているとは限りません。小選挙区制の候補者が、同性婚法制化についてどういう考えを持っているのかについては、私が先日書いた記事『「マリフォー国会メーター」で、国会議員の同性婚賛否が丸分かり』を参考にしてください。

●日本共産党
重点政策12個めに「性的マイノリティー・LGBT/SOGI」と掲げています(7つめの「女性とジェンダー」でもSOGIハラなどと関連してLGBTにも言及していますが、よりLGBTに焦点を当てているのは12個めでした)。

記載の順位としては高くないものの、同性婚だけでなく、LGBTQ当事者が具体的に直面しそうな問題にまで、政策がかなり細かく記載されています。例えば、トランスジェンダーについて、性別変更の要件見直しの検討、ホルモン治療の保険適用について触れています。トランスジェンダー当事者にとっては、かなり具体的なところまで踏み込んでいるなと感じます。

●国民民主党
政策5本柱の3つめ「人づくり」の後半でLGBTに触れています。具体的には、「子どもたちの心を育むインクルーシブ教育」でLGBTQ当事者を含むマイノリティを互いに理解し、共に学べる環境を作ることと、LGBT差別解消法の制定です。個人的には、共闘している野党の中では最も取り上げ方が小さいと感じました。

●社民党
「ジェンダー平等と多様性社会の実現」の中でLGBT差別解消法制定と同性婚法制化について明言しています。2021年重点政策では、国連からLGBTQ当事者への差別を禁止するよう勧告を受けている実態にも言及しています。

●れいわ新選組
9つめに掲げているジェンダー政策の中でLGBTQに触れています。義務教育の中で多様な性についての学びを取り入れる、LGBTQ+差別解消法の制定、同性婚法制化などです(なぜパートナーシップ制度ではなく同性婚であるべきかにまで言及しています)。
また、免許証やパスポートでノンバイナリーを選択できるようにすると書かれていました。ノンバイナリーに触れているのは、れいわ新選組だけでした。

各政党のマニフェストをLGBTQという観点だけで見ても、政策やスタンスがこれだけ異なりました。
衆院選の投開票日は2021年10月31日です。投票日に投票場に行けない方、投票場の密を避けたい方は、期日前投票もあります。

まずは投票することで、自分たちはここにいるんだとアピールしていくことから始めましょう。

 

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