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Writer/雁屋優

LGBTの現状を変えるため、選挙に行こう

同性婚の法制化や選択的夫婦別姓を認めるかといった、多様性に関する話題が議論されるようになってきました。LGBT当事者の一人として、私もこの流れを注視し、記事を執筆して発信しています。この秋、LGBT当事者の現状を変えるチャンスがやってきます。それが、衆議院選挙です。政治は、何だか遠いように思えるかもしれませんが、選挙で投票に行くことが、現状を変える、一つの手段なのです。

LGBTの苦悩の多くは、政治に起因する

LGBT当事者の悩みの多くは、社会制度の不備、制度からの排除によって生じていると私は考えています。

LGBT差別禁止法案を国会に提出しなかった与党自民党

「LGBT理解増進」ではなく、「LGBT差別禁止」はなぜ必要かでも書いた通り、LGBT差別禁止法は必要なものです。しかし、それにもかかわらず、現在与党である自民党は、LGBT差別禁止の文言を法案に入れることに対する党内の反発を理由に、LGBT差別禁止法案の国会への提出を見送りました。

「差別は許されない」という当たり前のことを、法律にする。よりよい社会をつくるために必要不可欠なプロセスにストップがかかるのが、現在の日本の現状で、現在の与党自民党の現実です。「差別は許されない」を明記するのに反対だということは、差別をしたいのでしょうか。あるいは、現在差別があることを意地でも認めたくないのでしょうか。

どちらにせよ、褒められた姿勢ではありません。

同性婚が法制化されないのも、政治と関係している

2021年3月17日に札幌地方裁判所で、全国初の「同性婚を認めないのは違憲である」とする判決が出たことを覚えている方も多いでしょう。この裁判は、現在札幌高等裁判所での控訴審を控えています。この違憲判決に応じて、法律を変えたり制度を整えたりするのは、国会の仕事です。

最近では、各党の公約に、同性婚への姿勢も載るようになりました。議論が活発になってきたからこそのことと思えば嬉しくもありますが、その内容があまりに国民の現実とかけ離れていると絶望することもあります。

そのようなときに、国会にどのような議員がいてほしいかを投票の形で伝える場、それが選挙なのです。

性別変更の要件も政治で変わる

さらには、性別に違和感のある人々が性別の変更をする際の要件も、政治によって決められています。現在、性別変更が認められるために5つの要件を満たす必要がありますが、そのなかに、「現に未成年の子がいないこと」というものがあります。

性別に違和感があって、性別の変更をしたくても、子どもが成人するまでは、できないというしくみになっています。このようなしくみを定めたのも政治、つまり国会です。

このように、LGBT当事者が感じる壁は社会制度の不備や制度からの排除によって、生じていると考えられます。それらを決定してきたのは、国会で、国会議員の人々なのです。

一票には、LGBTがおかれた現状を変える力がある

そう言われたところで、「一票の力なんて信じられない」「自分が投票したって世の中は変わらない」。そんな方もいるかもしれません。でも、投票に行く意味はあるのです。

当選しなくても、その一票には意味がある

選挙ですから、自分が投票した候補者が当選したら、嬉しいのは当然です。逆に落選したら、何だか少しがっかりするのも、人間というものです。では、投票した候補者が落選したら、自分の一票には意味がないのでしょうか。

私は、それは違うと考えています。

例えば、ある選挙区があったとします。候補者はAさんとBさんの2人。この2人に、有権者がそれぞれ投票して、Aさんが当選しました。しかし、Aさんは喜んでばかりもいられません。開票結果を見ると、Bさんに投票した人も、それなりに多くいるからです。

つまり、Bさんに投票した人々の厳しい視線が、Aさんには注がれることになるのです。Aさんは、Bさんに入った票数だけ、自分が支持されていないことを意識しながら政治活動をしなくてはなりません。

全員がAさんに投票したのでもない限り、その選挙区にはBさんを支持し、Bさんに投票した人々がいます。Aさんのなかで、Bさんに投票した人々の存在は意識され続けるのです。だからこそ、Bさんへ入れられた票は、無意味ではないと考えられます。

投票は、自分の存在感を示す行為

投票には、年代別のデータも収集されています。「若者の投票率が低い」といった報道を目にしたことがある方もいるかもしれません。年代別投票率の推移のグラフを見ると、20代の投票率の低さは顕著です。

さらに、日本では少子高齢化が進んでおり、高齢の有権者が若い有権者より圧倒的に多いのです。そんな国で若い人の投票率が低いのは、ますます若い人の存在感をなくしていくことになります。

投票に行き、自分の年代の投票率を上げることで、「私はここにいるよ」と政治にアピールすることにもなります。

LGBTやジェンダーに関連するトピックもある

政治家にとって、票は命です。目指す職を得るには、選挙で票を得なくてはならないのだから、当然です。生活もかかっているので、必死です。では、得票するにはどうするのがいいでしょうか。簡単な話です。一票を持つ有権者たちがいいと思うような政策を打ち出すことです。

つまり、政治家は投票に行く有権者に届く政策を考えて、アピールするのです。では、投票に行かない人は、投票率の低い若年層は、どうなってしまうのでしょうか。

残酷なことを言うようですが、今のまま若年層の投票率が低ければ、今より明確に、若年層は政治に無視されます。それは間違いありません。

投票の際に、セクシュアリティがどうであるかといったデータは収集されませんから、LGBT当事者の票が、結果どう動いたかをデータで示すのは難しいでしょう。しかし、同性婚や選択的夫婦別姓など、LGBTやジェンダーに関連するトピックが論点になっている今回は、そのようなトピックへの態度を見ることができます。結果として、LGBTやジェンダーに関してどのような態度を取ると票が得られるのかを、投票によって示すことができます。

選挙に行き投票することは、自身の存在を政治にアピールし、自分が生きやすい社会を実現するために重要な行動です。

「投票のキホン」。政治参加の機会を無駄にしないために

選挙権は18歳から。自分の存在が無視されないために、そして自分の意見を政治に反映するためにも、投票に行きましょう。まずその前に、選挙に関する基本情報を確認します。

今回の選挙の基本情報を確認

今回の第49回衆議院選挙は、2021年10月19日公示、2021年10月31日投開票の日程で行われます。衆議院議員465人を新たに選出する選挙です。衆議院は、内閣総理大臣の指名についても、参議院より強い権限を持っているため(衆議院の優越)、衆議院選挙の結果次第では、内閣総理大臣が変わります。

政権交代が起こるかもしれない、重要な局面の選挙ともいえます。どのような人が立候補しているのか、どのような政策を打ち出しているかなど、選挙についての情報をまとめたサイトも、いくつかあります。

●衆議院選挙2021(NHKWEB)
https://www.nhk.or.jp/senkyo/database/shugiin/2021/

●衆院選2021(日本経済新聞)
https://www.nikkei.com/special/shuin2021

上記は2021年10月19日現在のものですが、すでにたくさんのサイトが選挙関連の特集を組んでいます。また、ボートマッチといって、いくつかの質問に答えていくことで、あなたの考えに近い政党や候補者を教えてくれるサイトもあります。

気軽に行ける、期日前投票

選挙当日は日曜日で、その上ハロウィーンです。コロナ禍ですし、皆で集まって何かをするというわけにもいきませんが、魅力的なオンラインイベントがあったり、仕事があったりと当日に選挙以外の用事がある人もいるでしょう。また、「日曜日に外になんか出たくないよ」という人もいるかもしれません。

そんな人におすすめなのが、期日前投票です。実を言うと、私は、「日曜日に外に出たくない」「体調が不安定なので、当日行ける自信がない」「期日前投票の投票所の方がアクセスがいい」などの理由で、選挙権を得てから、ずっと期日前投票をしています。のっぴきならない特別な事情などなくても、気軽に期日前投票していいのです。

選挙権を使わないより、ずっといいのです。

住民票を移していなくても、投票はできる

若者の投票率が低い原因の一つとして挙げられるのが、「進学や就職で住民票を移しておらず、投票できない」といったものです。住民票を移しておくのが一番よいのですが、そうも言っていられません。

その場合は不在者投票の制度が使えます。住民票のある自治体の選挙区に、今いる自治体から投票できます。

また、留学や仕事などで海外にいる人は在外投票の制度が使えます。しかし、在外投票に関しては、選挙日程が急過ぎたためか、難しい状況になっているようです。

不在者投票、在外投票に関しては、NHKのサイトに詳しく書かれています。

●衆院選2021(NHK選挙WEB) 「投票のキホン」
https://www.nhk.or.jp/senkyo/database/shugiin/2021/knowledge/#absentee-voting

未来をつくるため、選挙に行こう

選挙は、あなたの生活や未来を作る大切な機会です。投票を行い、自分の存在をはっきり示しましょう。

LGBTをはじめとしたマイノリティが生きやすい明日を

LGBT当事者にとって、政治は、権利の獲得にも関わる大事なものです。もちろん、非当事者にとっても、生活に直結する大事なものなのですが、今困難な状況にあるLGBT当事者にとってもまた、深刻なものです。

だからこそ今回の選挙で、LGBTのことを考えた政策を打ち出している候補者に投票することは、LGBT当事者を置き去りにしない政治の実現につながるのです。

差別されない社会への一歩は「投票」

LGBT当事者をはじめとしたマイノリティへの差別が、この社会には存在しています。だからこそ、差別に加担するような発言をした候補や政党以外へ投票しないことや、差別をなくすべく動いている政治家、政党へ投票することで、私たち一人ひとりが「差別をなくすべきだ」と示していくことが大事です。

「たかが一票」?
いいえ。一票が連なることで社会を変えていくことができるのです。

選挙に行こう!
投票して、よりよい未来にしていきましょう。

 

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