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Writer/もさこ

LGBTの中で孤立しやすいバイセクシュアルの悩み

「バイセクシュアルはどうせ異性と結婚する」という話を耳にした経験はありませんか?
バイセクシュアルは、LGBT当事者間での差別や偏見、パートナーへのカミングアウトなど、恋愛や結婚に関する悩みがつきものです。その悩みは、他のセクシュアルとはまた少し異なるため、相談ができる場や機会が少ないのが実情です。ここでは、私の経験も織り交ぜながら、バイセクシュアルが直面する悩みについて説明していきます。

LGBT内でのバイセクシュアルに対する差別や偏見

バイセクシュアルへの差別は、LGBTが主張する「平等な社会」と矛盾するのではないでしょうか? ここでは、LGBTの中で差別されるバイセクシュアルの悩みについて考えていきましょう。

「どうせ異性と結婚する」と言われるバイセクシュアル

LGBTの中では、「バイセクシュアルはどうせ異性と結婚する」と言われることがあります。私はこれを聞いたとき、正直に言って腹が立ちました。当時付き合っていたパートナーは幸い偏見のない人でしたが、そんな風に思っている人たちがいるのかと、呆れたものです。

でも、バイセクシュアルだけでなく、レズビアンやゲイも異性と結婚する人はいます。みんなさまざまな事情があり、不本意で結婚した人もいれば、結婚してから自分のセクシュアリティに気付いた人、本当に好きになって結婚した人もいるでしょう。

「バイセクシュアルだから」「同性愛者だから」なんて分類は関係なく、日本社会では自分のセクシュアリティを越えて結婚することは珍しくないと考えられます。なぜなら、社会が異性愛思考であるからです。世の中がその流れにある以上、自身の性的指向を隠して結婚する人がいても、責めることはできません。

LGBTの世界に入りにくい風潮

バイセクシュアルは同性愛者から敬遠されることがあり、LGBTの社会に入りにくいという悩みがあります。敬遠されるのは、先述した「バイセクシュアルは最終的に異性と結婚するから」という偏見が原因だと考えられます。

実際に、LGBTの恋人募集や友達募集の掲示板では、「ビアンオンリー」や「ゲイオンリー」、「バイお断り」といった文言を見かけることがあります。上記のような言葉を見るたびに、バイセクシュアルへの嫌悪感をあからさまに見せつけられているようで、やりきれない思いです。

LGBT内での差別は、悩みを抱えたまま孤立してしまう人が発生する危険をはらんでいます。門徒を閉ざしてコミュニティーから排除するなら、その受け皿が必要です。

レズビアン・ゲイの友達に話しにくい

差別や偏見の辛さを知っているはずのLGBT当事者の中にも、バイセクシュアルに対する差別や偏見が残っている現実・・・・・・。異性愛も成立するバイセクシュアルは、同性愛者にとって異質な存在なのかもしれません。そのため、私はビアンの友人といるときは自分がバイセクシュアルであることは話していません。わざわざ波風を立てずとも、友人として付き合うことはできます。でも、異性愛者の人たちといるときのように、居心地の悪さを感じるのも事実です。

どちらの世界にも入りきれずに、悩みを抱えているバイセクシュアルがいることも、これからの課題として考えていかなければなりません。

家族のバイセクシュアルへの無理解・誤解

バイセクシュアルはLGBT当事者内の差別や偏見だけでなく、家族の無理解や誤解に苦しむこともあります。両親など家族へのカミングアウトに悩むだけでなく、バイセクシュアルの場合は、異性と恋愛ができることから、家族が誤解をする可能性も考えなくてはいけません。家族の無理解や誤解で生じる悩み、私自身が突き当たった問題についても触れていきます。

異性と結婚すればよいという考え

私は20歳のときに、母にカミングアウトをしています。カミングアウトをした時に言われたのは、「バイセクシュアルなら、男性とも付き合えるってことだよね?」という一言でした。

母としては、事実が受け止められなくて、思わず発した言葉だったのかもしれません。でも、私は「それは女性ではなく、男性を選べということ?」とショックを感じずにはいられませんでした。

バイセクシュアルが両性を好きになるからと言って、必ずしも異性を選ぶわけではありません。性別で好きになる人を決めているわけではないので、異性の中から選びなさいと言われても不可能です。それと同様に、無理やり同性を好きになることもできません。

結婚の押し付け

20代も後半になると、両親や祖父母、周囲の人間から「結婚はまだ?」「彼氏はいないの?」と頻繁に聞かれるようになりました。「彼氏」と性別を限定する質問に、結婚しない理由が「同性愛者だから」という想像はできないのか? と、まだまだLGBTを身近に感じてもらえていない証拠であると感じました。

LGBTであろうが、異性愛者であろうが、恋愛・結婚するのは自由です。異性のパートナーがいても、結婚しないと決めている人もいます。他人から勧められてするものではないのに、未だに結婚が当たり前と思われている社会に、うんざりとした気持ちになります。

パートナーへのカミングアウトに対する悩み

バイセクシュアルは異性と結婚するとき、あるいは付き合うときに、カミングアウトをしたほうがよいのか悩みます。伝えるべきか、秘密にしておくべきか、難しい問題です。
ここでは、バイセクシュアルが直面する恋愛や、結婚の悩みについて考えます。

バイセクシュアルであることを伝えるべきか

異性に限らず、パートナーにバイセクシュアルであることを伝えるか否か。大きな悩みの種です。「本当のことを話して嫌われたらどうしよう」そんな不安を感じますよね。特に異性の場合は、そもそもLGBT への理解があるかわかりません。拒絶されたら、と思うとなかなか切り出せないでしょう。

もちろん、無理にカミングアウトする必要はありませんし、カミングアウトをする場合も、伝えたいと思ったタイミングで伝えればよいと思います。

私自身は、付き合うときにカミングアウトしています。あとから伝えて、拒絶されるのが怖いからです。関係が深くなる前なら傷が浅くて済む、と割り切っています。先に伝えるメリットは、隠し事がなくなり気持ちが楽になることです。

カミングアウトしない場合は悩みを抱え込む可能性も

パートナーにバイセクシュアルであると伝えていない場合、過去の恋愛について詳しく語ることはできません。「どんな人だったの?」「今までどんなタイプと付き合っていたの?」なんて聞かれても、適当な嘘をつく必要があります。

本当のことを言えないって、とても苦しいですよね。罪悪感もあるでしょう。もし異性と結婚することになったとして、私ならずっと隠していくことはできないと思います。自分の中で抱えきれなくなってしまう気がします。

無理に伝える必要はない

自分の性的指向について、パートナーに伝えていなくても、嘘をついていたとしても、それでよいと思います。わざわざ言う必要はない、という考えもあるでしょう。相手に聞かれなければ、あえてカミングアウトしないのも一つの方法です。

バイセクシュアルに限らず、そもそもカミングアウトは非常に難しい問題です。話し方やタイミングによっては、思ったように伝わらないこともあります。心の準備が整うまで、焦らずゆっくりでかまいません。

例えば小学生のころの初恋を、こっそり胸にしまっておくのと同じように、過去の恋愛をそっとしまっておいても、よいのではないでしょうか。

バイセクシュアルの結婚について考える

「バイセクシュアルは結局異性と結婚する」と言われるのはなぜなのか? その理由と、バイセクシュアルにとっての恋愛や結婚について考えてみました。

バイセクシュアルは異性と結婚すると言われる理由

まず、私の話をします。

私はバイセクシュアルですが、なぜか数年前まで「同性と付き合わなければ」という思いがありました。今思うと、「バイセクシュアルはどうせ異性愛者と結婚する」という言葉どおりになるものか、と意地があったのかもしれません。

しかし、最近になって少しだけ異性と恋愛をしたことで、バイセクシュアルが異性と結婚する理由がわかったような気がします。

ずっと同性と付き合ってきたバイセクシュアルの私が、異性と恋愛をしてみて気付いたのは、今の日本は異性と日常を送るほうが圧倒的に楽だということ。同性とでは一緒に住むことさえひと苦労なのに、異性とならすんなり物事が進みます。

同性とばかり付き合っていたときは、まったく気が付きませんでした。バイセクシュアルが、最終的に異性との結婚に収まる理由はこれか、とやっと腑に落ちた瞬間でした。それならきっと、同性婚が認められて普及したら、バイセクシュアルがLGBTの世界で差別されることが少なくなるのでは? というのが、今の私の考えです。

レズビアンが女性を好きになるように、バイセクシュアルが異性を好きになってもいい。人を好きになることに、是非はありません。異性との結婚も、後ろ指を指されるような行為ではないはずです。

自分のセクシュアルを隠すことが、どれほど辛いことなのか、LGBT当事者であればよく知っていると思います。LGBTの差別をなくそうと言っているのに、当事者内にも差別があるのはおかしな話です。

理解しろとは言いませんが、せめてあからさまな態度はとらないで欲しい。相手にも気持ちがあることを忘れてはいけません。それがたとえ、SNSや掲示板の画面越しだったとしても、読んで傷つく人がいるという想像をしてみてください。

結婚を性別や性的指向で差別しない世界へ

とは言え、現在の日本は未だに、異性と恋愛・結婚するのが当たり前の社会です。異性愛者を前提にした社会システムになっているので、バイセクシュアルが「どうせ異性と結婚する」と言われても、仕方のないことだと思います。

自由な恋愛と結婚のためには、性自認や性的指向に対する差別のない社会であることが必須です。同性との結婚が異性との結婚と同等にならなければ、バイセクシュアルが本当の意味で自由に恋愛をできることにはならないでしょう。そして、いわれのない差別もなくなりません。バイセクシュアルだから、LGBTだから、異性愛者だからという偏見のない社会になることを望んでいます。

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