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Writer/きのコ

ポリアモリーの一種「トライアド」を考える

複数の人と同時にそれぞれが合意の上で性愛関係を築くライフスタイル「ポリアモリー」。3人からなるパートナーシップをさす「トライアド」という言葉をご存知だろうか? 今回は、パートナーシップの形態の可能性について考えていきたい。

ポリアモリーの形態のひとつ「トライアド」

トライアドと小説「トリプル」

今回は、ポリアモリーの形態のひとつである「トライアド」というパートナーシップについて考えてみよう。

村田沙耶香の小説『殺人出産』(講談社文庫)に、「トリプル」という短編小説が収録されている。

舞台になっているのは、2人で恋人同士として付き合う「カップル」に加えて、3人で付き合う「トリプル」というパートナーシップが普及し始めた社会。主人公には2人の恋人がいて、3人の「トリプル」として交際している。

が、トリプルを ”ふしだら” な関係として嫌悪する母親には交際を隠していたり、その一方でトリプルでなく「カップル」として2人きりで交際しているクラスメイトが周りから好奇の目で見られているなど、カップルとトリプルとの間にはさまざまな軋轢がある。

現実の私達の世界と比べて、お付き合いのスタンダードが変わりかけている、という世界観なのだ。

トライアド(スラップル)というパートナーシップ

この物語でいわれる「トリプル」という関係性は、ポリアモリーの言葉でいうと「トライアド」というものにあたると思われる。 トライアドとは、3人の人間からなるパートナーシップで、全員が全員とお付き合いしている状態。スラップル(Throuple。3人を意味する「three」と、カップルを意味する‎「couple」を掛けあわせた造語)と呼ばれることもある。

世界のトライアド事例

3人で交際したり結婚式をあげたりしているトライアド(スラップル)の事例は世界中で見つけることができる。以下の記事にも書かれているように、たとえばブラジルやコロンビアでは、3人でのパートナーシップが「結婚に準ずる関係」として法的に認められているのだ。

「3人婚」の届け出を受理、ブラジル初
コロンビアで男性3人が「結婚」、初めて法的に認められる
三角関係の最前線は超円満!…3人のニューヨーカーが示す価値観の多様性

ポリアモリーにおける「トライアド」と「ヴィー」

「トライアド」と「ヴィー」の違い

ちなみに、同じく3人からなるポリアモリーのパートナーシップでも「ヴィー(Vee)」と呼ばれるものは、「1人に対して2人のパートナーがいて、その2人にはパートナー関係がない」というかたちを指す。関係性が三角形ではなくV字型だから、ヴィーというわけだ。

初めての人にポリアモリーの説明をすると、ほとんどの場合、真っ先に浮かぶイメージが「自分に複数のパートナーがいる」あるいは「自分のパートナーに他のパートナーがいる」という、 ”1対他” のパターンのようだ。「3人全員が全員と付き合っている」というトライアドのあり方は、なかなか想像が難しいのだろう。

私のトライアド経験とヴィー経験

私自身、ポリアモリーとして自分1人に2人のパートナーがいた経験もあれば、3人で交際した経験もあるが、3人全員で付き合うトライアドと1人対2人で付き合うヴィーって、一見似ているようで実はわりと違うのではないかと思う。

実感としては、自分1人にだけ複数のパートナーがいる(それぞれのパートナーには自分しかパートナーがいない)って、それなりに大変! 場合によっては、モノガミーとして1対1で付き合うより大変かも・・・・・・。

1人でパートナー全員の相手をする必要があるし、特にパートナー同士が揉めた時には2人の間に立って仲裁をすることもあるのだが、自分まで心が2つに引き裂かれるようにつらくなってしまう。

3人でお付き合いしていると、全員で交際している方が全員の立場が同じで分かりやすいし、嫉妬などによる葛藤も少ないように感じる。それに、皆でデートしたり川の字で眠ったりする喜びは何物にも代えがたいものだ。

トライアドが理想かもしれない

いろいろなポリアモリーのかたちがある中でも、もしかしたら自分の理想的なパートナーシップのかたちはこの「トライアド」なのかもしれない。

「トリプル」の物語のように、3人(以上)でお付き合いをすることも、いつか「ごく当たり前のパートナーシップ」として広まってゆくのだろうか。

ストーリーの中では「トリプル」と「カップル」はお互いに嫌悪を催すような相容れない交際のあり方として描かれていたが、実際にポリアモリーが世の中に知られる恋愛スタイルになったら、ポリアモリーでもモノガミーでも、トライアドでもヴィーでも、誰もが好きに選べる世界になればいいな、と思っている。

 

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