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Writer/Jitian

ハリー・ポッターの世界・魔法ワールドとLGBTQ

児童文学『ハリー・ポッターと賢者の石』が日本で発売されてから、20年以上経った今でも盛り上がりを見せている「魔法ワールド」。そんな魔法ワールドでは、LGBTQはどのように扱われているのでしょうか。今回は、ゲームコンテンツを主として見ていきます。

ゲーム「ホグワーツ・レガシー」の登場人物にみるLGBTQ

最初に日本語音声でプレイした後、2周目に英語音声でプレイし始めた人の中には、驚いた人もいるのではないでしょうか。

年月が経過してもなお多くの人を引き付ける、魔法ワールド

日本で児童文学『ハリー・ポッターと賢者の石』が発売されたのは、1999年。それから20年以上経った現在でも、人気はいまも変わりません。

先月の2023年6月16日から、遊園地としまえんの跡地にテーマパーク「ワーナーブラザーススタジオツアー:The Making of Harry Potter Tokyo」が開園し、6月27日からはスマートフォン/PC向けソーシャルゲーム『ハリー・ポッター:魔法の覚醒』がリリースされるなど、その勢いや人気はいまだ健在です。

原作 “Harry Potter and the Philosopher’s Stone” がイギリスで発売されたのは1997年のこと。

それからイギリスでは2014年に同性婚が法制化されました。

最近日本で制定された「LGBT理解増進法」の道のりを見ると、残念ながらむしろ分断を招いている気もしますが、こちらについては法で作成が定められた理解増進のための政府の方針や、各自治体の計画を待つことにします。

そのような日本でも、性の多様性をめぐる環境は急速に変化していると言えます。

こうした背景を受けて、魔法ワールドでも、性の多様性を前提としたコンテンツ制作が展開されるようになってきました。

「普通」に生きる、トランスジェンダー女性キャラクター

2023年2月にPS 5/PC版がリリースされたゲーム『ホグワーツ・レガシー』。多くのゲーマーや魔法ワールドファンがプレイしていますが(私も4周しました(笑))、例えば、このゲームにはシローナ・ライアンという、トランスジェンダー女性のキャラクターが登場しています。

シローナは、様々な魔法ワールドコンテンツでも重要なスポットの一つとなっている、パブ「三本の箒」の店主です。一見すると、どこにでもいる普通の女性(魔女)という感じで、トランスジェンダー女性だとは分かりづらいでしょう。

実際、彼女がトランスジェンダー女性ではないかと分かるポイントは、極めて少ないと言えます。プレーヤーとの会話の中で、シローナが「私が魔法使い(男性)じゃなくて魔女だって分からない人もいる」などと発言している部分くらいではないでしょうか。

『ホグワーツ・レガシー』が、プレーヤーが決めた性別によって学校の女性寮に立ち入れるか否かが決まること以外には、ゲームを進めるうえで性別はさほど重要な部分とならないことから、シローナのSOGI(セクシュアルオリエンテーション/ジェンダーアイデンティティ)に殊更着目するような内容になっていないものと推測します。

ただ、シローナのSOGIを推測できる、決定的な部分が1点あります。

それは、英語版では身体的性別が男性と思われる人が声優を務めていることです。英語版のシローナの声は、不自然な「オネェ」感を出すこともなく、あくまで普通の日常を送るトランスジェンダー女性として演じているところに、好感を抱きました。

一方、日本語版では女性と思われる人が演じています。1周目に日本語でプレイした人が、2周目に英語でプレイした際、シローナの声に違和感を覚えた人もいるのではないかと思います。

ドラマや映画において、トランスジェンダーの役はトランスジェンダー当事者が務めるべきだという風潮もある中、なぜ『ホグワーツ・レガシー』日本語版では女性声優が務めたのか・・・・・・。

シローナのSOGIが、日本語制作チームにうまく伝わっていなかったなども考えられますが、シローナのSOGIを尊重した演者にしてほしかったなと、魔法ワールドファンのトランスジェンダー当事者としては思います。

同性カップルも登場

ゲーム『ホグワーツ・レガシー』では、同性カップルに出会うこともできます。

ゲーム序盤で出会う研究者、ノラ・トラッドウェル。しばらくゲームを進めていくと、彼女と同姓の旅商人、プリヤ・トラッドウェルと出会います。プレーヤーがプリヤに「ノラさんは親戚ですか?」と尋ねると、プリヤは「彼女は私の妻よ」とごく自然に答えます。ちなみに、イギリスは夫婦別姓でもOKですが、結婚したカップルは女性が男性の姓に合わせることが多いようです。

ゲーム『ホグワーツ・レガシー』は19世紀後半の時代設定なので、実際の当時のイギリス社会では同性婚が認められておらず、LGBTQ当事者への偏見も強かっただろうと推測されます。しかしながら、ゲームを進めていく中でSOGIを理由に差別されるような描写は確認できませんでした。

魔法ワールドのコンテンツでは、性の多様性を認める流れが着実に進んでいます。

最近配信が始まったばかりのソーシャルゲーム『魔法の覚醒』は、『ハリー・ポッター』シリーズ終了から10年後と、現代により近い時代設定です。『魔法の覚醒』ではLGBTQがどのように取り扱われているのか、こちらも注目したいですね。

過去にも見られた、魔法ワールドでのLGBTQ

ゲームにおける魔法ワールドの世界で、性の多様性が見られるようになったのはゲーム『ホグワーツ・レガシー』が初めてのことではありません。

“Hogwarts Mystery” では、同性カップルとしてダンスパーティーに出席可能

魔法ワールドでLGBTQ当事者に配慮した描写や設定が見られるようになったのは、実はここ1、2年の話ではありません。

2018年にリリースされたゲーム “Hogwarts Mystery” では、学校内で行われるダンスパーティー ”Celestial Ball” に、パーティーに一緒に参加するパートナーとして、異性だけでなく同性の学生も選べるようになっていました。

私自身も経験がありませんが、アメリカやイギリスなどの学校では、学校行事としてダンスパーティーが催されるようです。学生はフォーマルな衣装に身を包み、通常異性カップルで参加します。

アメリカなどで行われる「プロム」は、比較的有名かと思います。同性カップルで参加したい! という主人公たちを描いたNetflixの映画『ザ・プロム』もあるくらい、ダンスパーティーと同性カップルをはじめとするLGBTQ当事者との課題は、結構根深いのかもしれません。

日本では馴染みのない、学校行事としてのダンスパーティー

『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』でも、クリスマスイブに開かれるダンスパーティー “Yule Ball” の様子が描かれていますが、同性カップルで参加する学生は確認できませんでした。

『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』の英語版が2000年に発売されたことを考えると、当時はまだダンスパーティーに同性カップルが参加することは想定外だったのかもしれません。

“Hogwarts Mystery” は、『ハリー・ポッター』シリーズより少し前の時代設定です。つまり、『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』のダンスパーティー“Yule Ball” よりも、同性カップルがダンスパーティーに参加することは有り得ないことかもしれない時代。ですが、ゲームではプレーヤーの生きる現代の価値観や時代の流れを考慮したと考えられます。

性の多様性や人権を尊重する現代を無視したコンテンツは、もはや「時代遅れ」なのかもしれません。

LGBTQに関する、魔法ワールドの原作者J.K.ローリングの発言

魔法ワールドにおけるLGBTQを考えるときに、頭に浮かぶのは原作者J.K.ローリングの存在です。

LGBTQに配慮しているはずなのに、『ホグワーツ・レガシー』の何が問題なのか?

以前の記事でも書いた通り、原作者J.K.ローリングは、トランスジェンダー当事者に対する発言で度々「炎上」している人物であるということは無視できません。

実際、前に書いたゲーム『ホグワーツ・レガシー』に関しても、J.K.ローリングに焦点が当たった可能性のある問題が起きました。

ゲームを1から始めてどれだけ早く全クリアできるかを競う「RTA」というイベントにおいて、世界最大規模を誇る ” Games Done Quick”。このイベントでプレイが禁止されるゲームとして「ホグワーツ・レガシーを含むハリー・ポッターシリーズ」と明記されているのです。

魔法ワールドは、原作がそもそも児童文学で、いわば全年齢向けの作品です。『ホグワーツ・レガシー』も、年齢制限を設けるべき描写は見当たらないことは、いちプレーヤーとして断言できます。LGBTQなどの多様性も尊重する描写もたくさんあるのに、なぜ禁止されているのでしょうか。

完全に「クリーン」なコンテンツ制作が求められる時代

大規模なゲームイベントで禁止されるゲームとしては、過度にグロテスクであるなど、年齢制限のあるゲームが主です。たとえば、先日発売された「バイオハザード RE:4」は、激しい暴力表現を含むものとして18歳以上の年齢制限が設けられているので、このイベントでは禁止されています。

しかし、なぜ『ハリー・ポッターシリーズ』のゲームが全面的に禁止されているのか・・・・・・。理由は明らかにされていませんが、トランスフォビア(トランスジェンダー差別主義者)と取られる発言を繰り返している原作者、J.K.ローリングの存在が問題視されているのではないかと考えられています。

ゲーム『ホグワーツ・レガシー』に関しては、公式サイトでも「J.K.ローリングは制作に関わっていない」と明記されています。それにもかかわらず、大規模なゲームイベントで扱ってもらえないということは、いくらゲーム自体が素晴らしいものだとしても、問題発言をしている原作者が直接的に制作に参加していないとしても、多様性を認める風潮に逆らう1点の「曇り」があるだけでNGということではないでしょうか。

個人的には、ゲーム自体はまさに「神ゲー」だと思うので、ゲームイベント側の判断は正直厳しすぎないか? と感じました。

ですが、魔法ワールドのコンテンツに触れるときには、いつも私の頭の片隅にJ.K.ローリングの存在が浮かび、トランスジェンダー当事者の一人としてモヤモヤしていたのも事実。極めて高レベルのクリーンなコンテンツが求められるようになったのだと、ゲームイベント側の判断に一定の理解もできました。

LGBTQ当事者のファンも納得できる素晴らしいコンテンツだとしても、認められないこともある「厳しい」時代になりました。裏を返せば、差別が堅くNGとされているということです。そんな時代に、同性婚などLGBTQ当事者の権利を法的に認める気配が未だにない日本は、どんどん世界に取り残されるのではないでしょうか。

■参考情報
Games Done Quick Game Submission Guide(Games Done Quick)
よくある質問(ホグワーツ・レガシー)

 

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