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Writer/Jitian

日本で初開催! 東京トランスマーチ2021参加レポート

2021年11月20日、日本初のトランスマーチ “東京トランスマーチ2021(Tokyo Trans March 2021)” が新宿で行われました。このトランスマーチに、ノンバイナリー当事者として私も参加しました。今回は、いち参加者からの目線で見た現場の様子をお届けします。

トランスマーチとは

日本ではまだ「トランスマーチ」に馴染みがありませんよね。

11月20日は「国際トランスジェンダー追悼の日」

トランスマーチとは、トランスジェンダーの人権を訴えるために行われるプライドパレードの一つです。世界各地で行われています。

LGBTQの中でも、トランスジェンダーは特につらい差別にさらされているのが現状です。命を脅かされたり、自ら命を絶つ人も少なくありません。自死に至ったり、殺害されたトランスジェンダーを偲ぶ日として、11月20日は国際トランスジェンダー追悼の日と制定されました。そして、トランスジェンダーの人権を主張する目的で「トランスマーチ」が始まりました。

東京トランスマーチ2021は日本初のトランスマーチ

LGBTQの人権を主張するプライドパレードは、日本でも東京レインボープライドを中心に全国各地で行われるようになってきました。

しかしながら、「トランスマーチ」に馴染みがない、知らないという人は、LGBTQ当事者でもかなり多いと思います。というのも、日本でトランスマーチが開催されたのは、今回の東京トランスマーチが初めてだったからです。

実は、今回トランスマーチを開催した団体 “TRANSGENDER JAPAN” とは別のグループが、昨年の2020年にトランスマーチを開催すべく動いていました。しかし、コロナ禍ということもあり、残念ながら叶いませんでした。

多くの人が何とか日本でもトランスマーチを開催しようと準備を重ね、今回ようやく開催にこぎつけられたことを、まずは嬉しく思います。

東京トランスマーチ2021(Tokyo Trans March 2021) 概要

今回のトランスマーチがどのようなものだったかを振り返ります。

大勢の人の前を練り歩く

まずは東京トランスマーチの経路を確認しましょう。

集合場所だった新宿中央公園から、予定通りに14:00にマーチスタート。都庁の目と鼻の先にある、広くて大きな噴水のある公園です。

公園を出て北に進み、青梅街道を東側に曲がると、新宿西口のガード下が見えてきます。ここまで来ると、繁華街に繰り出している多くの人に出くわします。

そのまま東口の方に出て、たくさんの人の前を通りながら靖国通りを歩き、2丁目方面に向かって、新宿公園で終了。計1時間、1.7kmの道のりをみんなで歩きました。

警察官に弁護士まで、万全の体制

東京トランスマーチには、自分の着たい服を着たトランスジェンダー当事者も多く参加していました。残念なことですが、トランスジェンダーを他人事と思っている人からすれば、トランスジェンダー当事者が自分らしさを表現している姿は “異質なもの” としてかなり目を引きます。加えて、日本一利用者の多い新宿駅周辺を休日に歩くとなると、交通量も心配です。

そのため、東京トランスマーチ参加者がトラブルに巻き込まれないように、万全の態勢が整えられていました。出発前に参加者への注意事項として、トラブルが発生したときに自分たちで対応せず、スタッフに必ず対応を求めるように強く言われました。

トランスジェンダーの権利を訴えて大都会を練り歩けば、ヘイトスピーチなどの差別に遭遇する可能性も否定できません。争いに発展すれば、トランスジェンダー当事者やアライ以外の人々の共感を得づらくなることも考えられます。トランスマーチ本来の目的としても本末転倒です。自ら対応せず、適切な第三者を介するという注意の徹底は重要です。

行列のあちこちに警察官も待機していました。信号付近や、行列を横切りたい車両がいるときには交通整理をしてくれました。人と車両でごった返している靖国通りを歩いていても、混乱は起きませんでした。

また、弁護士の方も参加してくださっていました。トランスジェンダーのフラッグカラーである水色、ピンク、白があしらわれた「弁護士」と書かれた腕章をつけた方が何人もいました。警察官と同じように行列のあちこちに配備され、辺りを警戒しながら一緒に歩いてくださいました。私のすぐ近くにも弁護士がいて、もし何か起きてもこの方にまず助けを求めれば大丈夫! と安心できました。

このような体制のおかげで、安心して東京トランスマーチ2021に参加することができました。結果論ですが、もし差別に遭うのが怖くて今回参加できなかったという人がいたら、その点は不安に思わなくても大丈夫でしたよ、と伝えたいです。

東京トランスマーチ2021の多様な参加者

トランスジェンダー当事者だけでなく、色々な人が参加しているのが印象的でした。

東京トランスマーチにはトランスジェンダー当事者以外にも様々な人が参加

今回の東京トランスマーチは、トランスジェンダー当事者だけでなく、他のLGBTQ当事者でもそうでなくても、トランスジェンダーアライであれば参加OKでした。

また、東京レインボープライドのプライドパレードのような事前のフロート申請や説明会の必要もなく、当日集まれば参加可能でした(私も、団体に事前に申し込み不要であることを確認したうえで、個人で当日参加しました)。LGBTQに関心が高いと思われる学生や家族で参加している人、外国人の方もいました。

結果として、トランスマーチに参加した人数は、主催者発表で延べ400人以上にもなりました。主催者側としては参加人数は50人程度だろうと思っていたとのことでしたが、実際にはその何倍も参加者が集まったのです。

ノンバイナリーもトランスジェンダーの一員

何よりも一番うれしかったのは、ノンバイナリーがトランスジェンダーの “一員” として受け入れられていたことです。

東京トランスマーチの当日13:30集合の後、何名かが代表して、トランスマーチにかける思いなどをスピーチしました。その中でXジェンダーコミュニティの “label X” 代表 藤原和希さんも登壇。広義のトランスジェンダーの一つであるXジェンダー・ノンバイナリー当事者団体の代表として、東京トランスマーチに参加する思いなどを話しました。

たくさんの参加者の前でXジェンダー・ノンバイナリー当事者のお一人である藤原和希さんが話し、それを聞いている参加者も連帯を示してくれたということが、私自身にとっても大変嬉しかったです。

東京トランスマーチ2021でのできごと

トランスマーチが来年以降もまた開催されるといいなと思っています。

東京トランスマーチ2021ではトランスジェンダーフラッグが配布

私が2019年に東京レインボープライドのプライドパレードに参加した際は、主催者ブースや多くの協賛団体によってプライドパレード用のグッズが売られていました。手ぶらで行った私は、そこでレインボーフラッグを購入しました。

今回の東京トランスマーチにあたって、事前に私が主催者に当日の物販について問い合わせたところ、物販の予定はないということでした。

確かに、当日も出発地点に出店などはありませんでした。しかしなんと、主催者団体が無料でトランスジェンダーフラッグやメッセージカードを希望者に配布してくれました。私もトランスジェンダーフラッグをいただき、レインボーフラッグと一緒に振りながら練り歩くことができました。

今回、東京トランスマーチに参加しているなかで、フラッグはやはり重要なアイテムだなとあらためて感じました。

フラッグなどのグッズを持たずに参加すると、第一に手持ち無沙汰で歩くことになります。
第二に、沿道にいる何も知らない人からすると、何を主張している集団なのか分かりづらいです。

そして何より、フラッグを振りながら歩くと自分自身もハッピーな気持ちになります。沿道の人に手を振ってもらったり、声援を送ってもらったときにフラッグを振り返すと、とても心が温まります。

コロナが落ち着いて来て、今後プライドパレードに参加したいと思っている方は、ぜひ思い思いのカラーのフラッグをご用意されることをおすすめします。

東京トランスマーチ2021のカンパの総額は約19万円

東京トランスマーチ2021は、主催者をはじめとする関係者が手弁当で開催にまでこぎつけてくれたものです。今回の東京トランスマーチを一過性のものではなく、今後も続けられるようにとカンパを積極的に募っていました。私も微力ながら、トランスジェンダーフラッグにプラスアルファにしかならない程度のささやかな金額ですが、寄付させていただきました。

日本は寄付文化があまりないというものの、当日は多くの参加者が寄付していました。その額は、最終的に19万円を超えたそうです。日本一番の繁華街である新宿駅周辺で再びトランスマーチを開催するにはまだまだ足らない額とは思いますが、今回のカンパをもとに、次回にさらに大規模なトランスマーチができるといいなと祈っています。

東京トランスマーチへの沿道の反応

東京レインボープライドのプライドパレードの際は、沿道にある多くの店もレインボーフラッグを掲げていました。また、沿道の人の多くが笑顔で手を振ってくれたり「ハッピープライド!」と声を掛けたりしてくれました。

今回のトランスマーチは、東京レインボープライドと比べると規模はかなり小さかったかもしれません。それでも、たまたまトランスマーチを見かけた信号待ちの人が「頑張ってー!」と声を掛けてくれたり、バスを待っている人が笑顔で手を振ってくれたりしてくれました。こちらも勇気と希望が湧いてきました。

東京レインボープライドのように街を挙げてのお祭りのようなイベントでない分、特に新宿駅周辺にいた人たちは、トランスマーチが行われることなどまったく知らないような人ばかりだったと思います。

トランスジェンダー当事者は自分の近くにはいないと思っているような大勢の人たちに向けてトランスマーチができたというのは、トランスジェンダー認知度の向上、差別解消へ向けての大きな一歩になったはずです。

近くの参加者の一人は「このトランスジェンダーフラッグの色だけでも覚えてもらえるといいね」と言っていました。まさにオフラインイベントだからこそのアピールをできたイベントでした。

LGBTQ差別禁止法の制定がまだまだ程遠 い日本において、LGBTQの中でも命まで脅かされかねない状況にいるトランスジェンダー当事者。今回初めて国内で開催された東京トランスマーチは、日本におけるLGBTQの歴史に新たに刻まれる大きな一歩であることに間違いありません。

あらためて、コロナ禍で混沌を極める昨今において初のトランスマーチというオフラインイベントを成し遂げた主催者、関係者の皆様に感謝を申し上げます。東京トランスマーチが続いていくこと、それが全国に広がることを陰ながら応援しています。

 

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