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Writer/Jitian

~結婚の自由をすべての人に〜 LUSHが同性婚法制化に向けた啓発キャンペーンを開始

2022年3月17日から2週間、ハンドメイドのソープなどで知られるメーカーLUSH(ラッシュジャパン合同会社)が、同性婚法制化を目指して活動する団体「Marriage For All Japan」(マリフォー)の活動を支援すべく、その名もずばり「結婚の自由をすべての人に」キャンペーンを行っています。今回は、マリフォーの活動を改めて振り返るとともに、初日の17日に新宿店で行われたサイレントデモやオンライントークセッションの様子をお届けします。

Marriage For All Japan:同性婚法制化に向けて

まずは、Marriage For All Japan(マリフォー)と同性婚法制化に向けた今までの動きを振り返ります。

Marriage For All Japan の活動

Marriage For All Japan(マリフォー)は、2023年を目標に、日本での同性婚法制化を実現させようと活動している公益社団法人です。同性同士では法的に結婚できない現状が違憲であるとして、各地で国に訴訟を起こしている同性カップルを支援しています。

顔と名前を公表して活動する同性カップルの方々、必ず差別を解消するという強い意志で活動している弁護団の方には頭が下がります。

画期的だった、札幌地裁の違憲判決

現在、各地で裁判が継続していますが、最初に判決が出たのは昨年の2021年、札幌地裁のことでした。この裁判で、同性カップルが法的に結婚できないことは違憲であると判決が出て、全国的にも大きな話題となったことは、まだ記憶に新しいと思います。

札幌地裁で、国は以下のような主張をしていました。

・同性愛者でも、異性とは結婚できるため、問題ない
・同性同士で結婚できなくても、二人で生きていくことはできるため、問題ない
・結婚とは、異性間での自然生殖を前提としている。そのため、同性カップルが結婚できないのは仕方のないことである

こんなことを国が言っているのか? と目を疑いたくなるような主張が並んでいますが、これらの考えに対し、札幌地裁は国の主張が間違っているという判決を下しました。そして、このような考えのもと同性カップルが結婚できない現状は差別的であり、違憲状態であると述べたのです。

直近では、2022年6月20日に同じ内容(同性同士では法的に結婚できない現状が違憲である)に関して、大阪地裁にて判決が言い渡される予定になっています。7月に予定されている参院選にも強く影響を及ぼす重要な裁判になります。どんな判決が下るのか、チェックしたいですね。

LUSHの「結婚の自由をすべての人に」キャンペーン

2022年3月17日から31日までの2週間、LUSH(ラッシュ)で「結婚の自由をすべての人に」キャンペーン第1弾を実施中です。

LGBTアライ企業、LUSH(ラッシュ)

LUSHは、言わずと知れたハンドメイドの化粧品メーカーおよび小売店です。日頃からLUSHの商品を愛用している人も少なくないと思います。

そんなLUSHには、社会課題に対してアクションを起こす「キャンペーンカンパニー」としての側面もあります。人権や動物、環境問題などに対して店頭やSNSなどでメッセージを発信し、キャンペーン商品の売り上げを団体に寄付しています。

その人権問題の一つとしてLUSHが取り組んでいるのが、LGBTアライ企業としての活動です。日本で「LGBT」という言葉が流行のように話題になる前の2010年代前半から、LUSHの店頭やSNSでLGBT応援メッセージを発信する、東京レインボープライドでブースを設置する、パレードに参加するといった活動を行ってきました。

2019年に個人として東京レインボープライドのパレードに参加したとき、虹色にラッピングされた路面店のLUSHからレインボーフラッグを振ってくれている店員さんたちを見て、ほっこりと明るい気持ちになったことを今でも思い出します。

そして今回、LUSHがマリフォーを応援し、企業として同性婚法制化を前進させるべくキャンペーンを行うことになりました。

札幌地裁の違憲判決を記念して、3月17日

先ほども触れましたが、札幌地裁で同性カップルが法的に結婚できないことが違憲であると判決が下ったのは、2021年3月17日のことでした。その3月17日を記念して、2022年3月17日から2週間、LUSHでは「結婚の自由をすべての人に」キャンペーンを実施しています。

具体的には、以下のような取り組みが行われています。

・キャンペーン商品「結婚の自由をすべての人に」期間限定発売(消費税を除く売り上げをマリフォーへ寄付)
・アジア最大の旗艦店 LUSH新宿店でのサイレントデモ(キャンペーン初日)
・同性カップルを迎えてのオンライントークセッション(キャンペーン初日)

しかも、キャンペーンは今回だけでは終わりません。参院選が予定されている2022年7月に第2弾も予定しているとのことです。

同性婚の法制化を実現させるには、同性婚を自分事として捉え、法制化に向けて具体的に活動してくれる国会議員を、立法機関である国会にできるだけ多く送ることが何より重要です。

札幌地裁での判決から1年後、そして次の参院選。同性婚法制化を実現されるには、どちらも極めて重要な時期。そのタイミングにキャンペーン期間を据えているところにLUSHの「本気度」を感じます。

同性婚ができないために、私たちは「具体的な不利益」で困っている

「家族のかたち」という抽象的で漠然とした不安よりも、同性カップルが今直面している具体的な困りごとに目を向けてほしいものです。

ある日突然、パートナーと一緒に生活できなくなるかもしれない

キャンペーン初日である2022年3月17日18時30分より、LUSH JAPAN 公式YouTubeチャンネルにて、オンライントークセッションが行われ、LUSH、マリフォー、同性カップルで、同性婚にまつわるトピックについて話しました。

ファシリテーターを務めたのは、LUSH マネージャーの小山大作さん。小山さん自身も外国籍の同性パートナーがいて、家族として一緒に暮らしているとのこと。ですが、今回のコロナ禍によって、一緒に暮らせなくなるかもしれない不安を覚えたそうです。

というのも、外国籍の人は、日本人と法的に結婚していれば日本で一緒に暮らせます。しかし、同性カップルの結婚は、仮に海外で法律的に結婚が認められたとしても、日本では認められていないのです。小山さんのパートナーは、現在日本で仕事を持っていることを理由に在留ビザを発行できていますが、もし職を失った場合、帰国しなければならなくなるかもしれないのです。

一緒に暮らせなくなるかもしれないという不安から、二人のパートナーシップを公的に証明するために、昨年2021年にパートナーシップ宣誓をしました。しかし、パートナーシップ宣誓をしたからといって、万が一のことがあっても、パートナーさんの在留資格が法的に確実に保障されるわけではないのです。

「伝統的な家族のかたち」が守られていれば幸せなのか?

LUSHのオンライントークセッションでは、同性婚反対派から聞かれる「同性婚が認められれば、 “伝統的な家族のかたち” が崩れ、社会の根幹も覆される可能性がある」という意見も紹介されました。

この意見に対し、Marriage For All Japan代表理事の寺原さんは「具体的な不利益ではなく、抽象的な不安」と一刀両断。

同性カップルで子どもを育てている茂田まみこさんは「家族のかたちを守れば、その家族は幸せにつながるのか?」と疑問を投げかけました。茂田さんのパートナーである長村さと子さんも「家族のかたちはすでに多様。法律の枠からこぼれた人は、権利を法的に保障されないという考えに違和感がある」と不安を口にしました。

同性カップルや、同性カップルの家族は、言わずもがなすでに存在しています。たとえ同性パートナーシップ制度を利用していたとしても「いつか一緒に住めなくなるかも」「実際には家族として一緒に暮らしていても、法的には子どもとは”赤の他人” 状態」など ”超具体的” な不利益、困りごとを抱えて、今このときも市民として生活しています。

今回、同性カップル、同性愛者のお話を聞いて「今すぐにでも、同性カップルの困りごとが解消されて、安心して暮らせる世の中にならなきゃダメだ」と強く思いました。また、次世代の同性カップルがこのような困りごとを気にすることなく、生活できる世の中を残していかなければいけないと、改めて感じました。

同性婚法制化のムーブメントをより大きくするためにも、同性カップルのお話を聞くことはとても大事です。オンライントークセッションは、LUSH JAPANの公式YouTubeチャンネルからアーカイブ動画を視聴することができます。マリフォーの活動や同性婚について分かりやすくまとめられているので、ぜひチェックしてみてくださいね。

同性婚が実現して、みんながハッピーに生きていける世界を

日本一利用者の多いと言われている新宿駅前に大きく構えている、LUSH 新宿店で取材したサイレントデモは、静かながらも対話を生む、メッセージ性の強いものでした。

静かなピアノの中で掲げられる、切実な同性カップルたちのメッセージ

私は、2022年3月17日、新宿駅東口と東南口の間に位置する、巨大なLUSH 新宿店に向かいました。同性カップル当事者たちによるサイレントデモの、初回である16:00の回に立ち会いました。

当日は、あたたかく穏やかな春の風がふく空のもと開催されました。店頭では数十人以上が見守るなか、ピアノの演奏に合わせて、個性的なウェディングドレスやタキシードに身を包んだ同性カップルや同性愛者たちが入場。手にしたプラカードを静かに掲げました。

皆さんのメッセージは次の通りです。

・同性婚に関心を持つのはほんの数秒のことですが私たちにとっては一生の違いになります!
・ただ一つの願いがあって、一人ひとりを大切にしている、社会になることです。
・歴史を作ってくれてありがとう。今の願いは、誰もが自分の想いを大事にできる世界になること。
・We Can Cross Over The Border. みんながハッピーに生きていける世界!!
・愛は美しい。愛は希望を持つ。愛は未来をつくる。だけど、僕たちが愛を表現することは許されていない。
・Love is one of the strongest feelings. But some love is looked down upon(愛は最も強い感情の一つです。でも、見下されている愛もあるのです)
・全ての人に平等を 全ての人に結婚する権利を
・大好きな人と家族になりたい それだけです。

終始和やかなムードのなか、デモが終わると店頭すぐ近くに陳列されているキャンペーン商品「結婚の自由をすべての人に」には、人だかりができていました。マリフォー一色にラッピングされた店内の区画を撮影する人も。今回のキャンペーンをきっかけに同性婚についての対話が広がっていることを実感しました。

ちなみに、店内だけでなく、店のビルのサイネージも含めてマリフォー仕様になっています。私自身、東南口方面からLUSHのビルを目にしたとき、「本当にマリフォーで埋め尽くされてる!」と感動しました。

まだコロナで予断を許さない状況ではありますが、新宿方面に行く機会のある方は、ぜひ外観からでもLUSHの「結婚の自由をすべての人に」キャンペーンを実感してみてください。

同性カップル、Misiiさんとnagohoさん

今回、LUSHのサイレントデモに参加されていた同性カップルの一組であるMisiiさんとnagohoさんにお話を聞きしました。

普段、キュレーターおよびアーティスト、プロデューサーとして活動しているお二人は、日常から同性カップルの権利などについて声高に発信しているわけではないとのこと。

「デモ」には少し苦手意識もあったなかで、無言で意思を示すサイレントデモという今回の手法と、身近なメーカーであるLUSHに共感し、参加することにしたそうです。

「LUSHは、小さい頃からバスボブで身近な存在でした。そんな会社が今回こういったキャンペーンをしてくれて嬉しいです」(nagohoさん)

お二人は、将来的には子どもがほしいなと漠然と考えていました。しかし、現状は同性婚ができない以上、悩むことすらしていなかったと振り返ります。

「半分諦めていたところがありました」(Missiさん)
「今回のキャンペーンに参加することで、同性婚したいな、二人で子どもを育てたいなって、考えてもいいんだって気付きました」(nagohoさん)

今回のデモやキャンペーンを機に、同性カップルの現状についてまずは多くの人に知ってもらい、対話をしてもらえたらいいなと考えています。

「性別というボーダー(境界)を超えて、みんなでハッピーになれる世の中にしていきたいです」(Misiiさん)

「目指すは世界平和(笑)。その先に結果として同性婚ができるようになったらいいなって思います」(nagohoさん)

商品選びで、同性婚法制化を応援する

今回、LUSHのキャンペーンウェブページに感動しました。同性カップルが法的に結婚できない日本の現状を「人権問題」ときっぱり言い切っているスタンスに、いちLGBT当事者として驚くとともに、勇気をもらったのです。

「LGBTを応援しています」「LGBTの理解増進」などという抽象的な中身や表現ではなく、同性婚法制化という具体的な目標に向けて、マリフォーとともにここまで明確に意思を示して行動している日本企業は、そうそうないのではないでしょうか。

ぜひ他の企業もLUSHに続いて行動してほしいなと思います。

私たちが日常何気なく行っている消費行動は、世の中に変化をもたらす大きな一翼を担っています。みなさんが何かを買おうとするとき、単に「安いから」「品質が良いから」という理由だけではなく、「SDGsの観点で見て適切なプロセスを踏んでいる商品・サービスなのか?」といった消費者の目線、選び方も求められている時代になってきています。

日本での同性婚法制化に向けた行動を、日常生活の商品選びでも実践してみてはいかがでしょうか。

 

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