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Writer/Jitian

LGBTQプライド月間マーケティングは ”便乗” か?

今年もプライド月間が始まりました。著名な海外企業ではプライド月間に合わせてLGBTQを盛り上げる商品を打ち出すところがあるなか、日本国内ではLGBTQ当事者やアライ以外にはまだあまり知られてないように思われるプライド月間。今回は、世界各地でのプライド月間マーケティングについて考えてみます。

プライド月間とは

まず、プライド月間とはどういうものか簡単におさらいします。

プライド月間で行われること

毎年6月は「プライド月間」、英語では “Pride Month“ と呼ばれ、アメリカをはじめとして世界各地でLGBTQを盛り上げるための運動や活動、イベントが行われています。

6月がプライド月間とされているのは、1969年6月にアメリカのゲイバーで起きた「ストーンウォールの反乱」という事件が発端だとされています。この事件は、当時まだゲイバーは規制の対象でしたが、警察官がやって来たときに客が抵抗し、それが暴動に発展したという出来事です。それ以降、この出来事を記念して6月はプライド月間と定められました。

日本ではなじみの薄いプライド月間

一方、日本ではあまりプライド月間は浸透していないように思います。LGBTQ当事者や団体、LGBTQへの支援を主とした企業からはもちろん注目されていますが、まだ日本国内ではまったく認知度がないと言っていいのではないでしょうか。「LGBT」という言葉はマスメディアからよく聞かれるようになりましたが、プライド月間について触れた報道はなかなか見当たりません。

個人的に、プライド月間の認知度が低い理由の一つは、日本で一番盛り上がるLGBTQのイベント「東京レインボープライド」がゴールデンウィークに行われるからだと考えています。また、ゴールデンウィーク中がプライドウィークと称されており、この期間が日本のプライド月間を代替しているように思います。

もっとも、世界の潮流に合わせて東京レインボープライドを6月に移すと、パレードが梅雨で雨天中止になることも考えられます。開催しづらくなるのは本末転倒です。多くの人が休みで、気候としても過ごしやすく、最も参加しやすい時期に東京レインボープライドが行われているのはいいことだと思っています。

プライド月間マーケティング

最近は、プライド月間に合わせて多くの大企業が大々的にLGBTQへの支持を表明しています。

海外の大企業が行っているプライド月間マーケティング

プライド月間では、世界各地の都市でのプライドパレードをはじめとしたイベントだけでなく、企業もプライド月間に着目して企業活動を行っています。

たとえば、GAFAの一つであるAppleでは、Apple Watchの「プライドエディション」のバンドを発売しています。定番の虹色のバンドのほか、人種を想起させるペールオレンジや茶、黒の混ざったものも発売されています。LGBTQだけではない多様性を意識したデザインになっていて好感が持てます。

また、東京レインボープライドのスポンサーでもあるスニーカーブランドのVANSは、プライドコレクションとしてカラフルなスニーカーを何種類か発売しています。

これら以外にも著名な海外企業ではプライド月間を祝い、盛り上げるべくプライドフラッグをもとにした商品を発売していますので、チェックしてみてはいかがでしょうか。

日本企業のプライド月間マーケティングは・・・・・・

一方、日本企業(外資系を除く)でプライド月間に合わせた活動を行っているところは、私が探した限りでは楽天しか見当たりませんでした。

楽天では ”Walk Together with Pride” と題したキャンペーンを6月から実施中。「LGBTQ+コミュニティへのサポートを表現しよう」ということで、塗り絵のテンプレートや壁紙の配布などを行っています。個人的には「LGBT」ではなくて「LGBTQ+」と表記しているところもポイントが高いです。

楽天以外にも、東京レインボープライドのスポンサー企業を中心にプライド月間マーケティングを実施している企業を探してみたのですが、外資系企業を除くと確認できませんでした。

日本ではプライドウィークを中心にLGBTQへの賛同や支援を企業が多いのかもしれませんが、それにしてもこれほどにも注目されていないのかとびっくりしました。

今や「積極的な」人権意識が重視される時代

日本でも、LGBTQだけでなく人権意識の低い言動が問題視される時代になりました。しかし、今や「炎上させなければOK」という消極的な時代は終わったと言わざるを得ません。

たとえば、中国の新疆ウイグル自治区での人権問題について、ユニクロやGUの親会社であるファーストリテイリング社長の柳井正会長が「ノーコメント」と発言したことについて物議を醸しました。自社商品の製作工程で問題がないように監視したり、問題が発覚したら取引を停止したりしているとのことで、あくまで自社は問題ないという姿勢を見せました。

確かに、ファーストリテイリングの中には問題がないのかもしれません。しかし、世界中に取引先や店舗を持つ大企業の責任者が人権問題に「ノーコメント」という姿勢でいいのでしょうか。

これと似たようなことが今回のプライド月間についても言えると思います。つまり、海外の名だたる企業は商品などを通してプライド月間への参加、LGBTQコミュニティへの支持を明確に表しています。

日本企業も「触らぬ神に祟りなし」ではなく、積極的に人権問題への意識を表明すべき時代に来ているということです。

「プライド」の認知度アップに向けて

LGBTだけでなく「プライド」という言葉も近いうちに浸透するのでしょうか。

「何のプライドでしょうね」

2020年のある日、NHKプレミアムで放送されている世界を旅するある番組で、5年以上前に収録された再放送を見ていたときのことです。海外のある街の中のLGBTQコミュニティの集う一角が映されました。商店街のように並ぶ店や道のあちこちにプライドフラッグや「PRIDE」という文字が散見され、私はすぐ「この地域のLGBTQコミュニティなんだな」と分かりました。ちょっとした知識のある人が見ればすぐに分かるレベルのものでした。

ただ、しばらく街の様子を映した後、ナレーションで「何のプライドでしょうね」と笑いながら一言。私は、そのナレーションを読んでいたタレント、ナレーションの原稿を書いたライター、ディレクターなどのスタッフなど多くの人が関わっていても、LGBTQに関する知識がないからこの一角がLGBTQコミュニティだと分からないのかと、ちょっと驚いてしまいました。

しかも、地上波でないとはいえ、初回放送から5年以上経ってもそのまま放送されているという事実にも驚きました。

結局、その番組内ではその街の一角の至る所に虹色の旗が掲げられていたり「PRIDE」と書かれたりしているのかについて掘り下げられることなく、次のシーンに移ってしまいました。あの番組を見ても、あの一角がLGBTQコミュニティだと分からない人は、そのままになったことでしょう。

ホラーゲームのプライド月間マーケティング

そんななか、なんと最近私がはまっているあるオンラインホラーゲーム「Dead by Daylight」で、プライド月間マーケティングに遭遇しました。「PRIDE」というプレゼントコードをゲーム内で入力すると、プライドフラッグのアイテムを無料でゲットできるのです。このプライドフラッグは、ゲームマップのあちこちに置いたり、プレイするキャラクター自身のアクセサリーとして身につけたりすることができます。

ホラーゲームという予期していないコンテンツだっただけに、プライド月間を感じられてちょっと嬉しくなりました。実際にキャラクターに身につけさせると、さながらオンラインでプライドパレードをしているような気分です。

しかしながら、そのゲーム開発元を考えると十分起こり得るプライド月間マーケティングだったなとも思います。開発元はカナダの企業で、キャラクターも老若男女、人種も多様性に富んでいます。日本人のキャラクターも何人かいます。つまり人権意識が元から高いのではないかと考えられるのです。

カナダと言えばLGBTQに特に理解のある国のイメージがあります。そういった国の企業だと考えれば、プライド月間マーケティングに “乗る” のもある意味当然かもしれません。

草の根的プライド月間マーケティング

このゲーム上のアイテムは無料でもらえるということもあって、他のプレイヤーが使用しているのをたまに見かけます。しかし、攻略サイトなどでこの情報を知ってアイテムを入手した人の中で、これがプライド月間マーケティングの一環であると、LGBTQへの支持を表明するものであると知っているプレイヤーが果たしてどれほどいるでしょうか。

前述の通り、アイテムを入手する際には必ず「PRIDE」と打ち込む必要があるのですが、それが「自分のセクシュアリティにプライドを持つ」という意味であるということ、LGBTQに関することだと知ったうえで打ち込んだ人は、先ほどのNHKの番組のことを考えても、実はあまりいないような気がします。

しかしながら、今は知らなくても全然構わないとも私は思っています。いつか、先ほどの楽天のような取り組みに触れて、6月が世界的にプライド月間であることを知り、ゲーム内のキャンペーンもその一環であることを知ったら、もしその人がLGBTQにあまり関心がなかったとしても、少しでもLGBTQを身近に感じてもらえるきっかけになるかもしれないからです。

そのためにも、企業がプライド月間に合わせて企業活動を行うことはとても有難く、重要なことだと思っています。

ぜひ日本企業も海外企業に続いて、レインボープライドの行われるゴールデンウィークやプライド月間にはプライドマーケティングを行ってほしいなと思います。

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