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Writer/雁屋優

アセクシュアルの私が結婚について考え続けている

周囲が結婚していくこと、もしくは結婚したいという気持ちを理解できず、ぐるぐると思考を重ねていたら、「そもそも結婚って何なんだろう?」と思うに至りました。そんな私の思考の過程から、結婚について、捉え直すきっかけになれば幸いです。

アセクシュアルの私と結婚は遠い

恋愛感情を持たないセクシュアリティであるアセクシュアルの私は、結婚から割と遠いところにいます。それでも、結婚について考え続けているのは、同性婚を望む人々の声を目にしたからです。

結婚って、そんなに重要?

同性婚法制化を願う声を見かけるようになったのは、私が自身のセクシュアリティを自覚するようになったここ数年だと記憶しています。結婚したいと思ったこともなかった当時は、結婚する権利を求める人々の気持ちが想像できませんでした。結婚しなくたって死なないのに、なぜそんなに結婚したいのだろうとまで思っていました。

その一方、周りには当然のように将来私が結婚する前提で話してくる人、結婚を何の迷いもなく人生計画に入れる人もいました。結婚することが当然といった周囲の圧力に辟易していたので、強く願って、さまざまな運動をしてまで結婚したいという気持ちが、当時は本当にわからなかったのです。自分のことに手いっぱいで、想像力が足りませんでした。

でも、何のために結婚するんだ? という原初の問いはそこから得ています。

アセクシュアルの私とも無関係ではない、結婚

アセクシュアルだと自認してからは、結婚なんて私には関係ないと、おひとりさまを謳歌していた時期もありました。でも、こうしてNOISEで記事を書き始めたこともあり、同性婚って、そもそもLGBTって、セクシュアルマイノリティって、と考え始めます。また、ちょっと変わった婚活エッセイに出会ったこともきっかけの一つです。

その婚活エッセイとは、『合理的な婚活 ~DINKsを本気で目指すおたくの実録婚活漫画~』(横嶋じゃのめ、ホーム社、2017年)です。DINKsとは、共働きで子どもを意識的につくらない夫婦のことをさします。今では新しくないのかもしれませんが、連載開始当初は、新しく感じられました。また、横嶋さんは別居も条件に掲げています。結婚とは同居を伴うものだと思っていた私は、そこに驚きました。

同居したくないから結婚はなしだなと思っていたけれど、結婚って同居が前提条件じゃないんだなと目から鱗でした。同居が絶対条件ではないとすれば、結婚そのものへの捉え方も変わります。

私と地続きの結婚

アセクシュアルの女性がゲイの男性と結婚する、『わたしは壁になりたい』(白野ほなみ、KADOKAWA、2020年)も衝撃的でした。そんな結婚ならしてもいいかもしれないと思うようになっていたものの、でもそんな相手を探す労力を考えると、別に一人でいいかなと思っていたところに、この漫画との出会いです。

アセクシュアルだから結婚なんて関係ない、ではなく、結婚って何なのか、考える必要があると強く思いました。アセクシュアルと結婚はたしかに遠いかもしれませんが、まったくの無関係ではないのです。

結婚したいのはなぜ?

結婚すると、家庭に縛られる。そう思って、結婚を避けてきました。それは私が見てきた家庭やメディアで描かれる結婚の大半が背景にあると振り返ります。

結婚すると、家庭に縛られる?

私が見てきた既婚女性の多くは、夫や子どもの世話に縛られ、時間の自由がなく、大変そうでした。既婚男性はというと、お小遣い制にされて、自分が稼いだお金なのに、好きに使えないようなのです。この不自由と閉塞感は何なのでしょうか。

自由であることが幸せの前提だというのは暴論ですが、したいときにしたいことができるとか、自分の稼いだお金を好きに使えるとか、そういうことは、幸福であるはずです。不幸になろうとして結婚する人なんていないはずなのに、何で既婚者はそれほどまでに縛られていて不自由そうで、大変そうなのでしょうか。他人事ながら、心底あわれに思ったのです。

そもそも他人と結びつきたい気持ちがわからない

私は基本的に、寂しいという気持ちがあまりわかりません。ゼロではないのですが、多くの人が寂しいと感じるとき、例えば一人きりの夜などを楽しめてしまう方です。どちらかというと孤独を愛する方であるといえます。

孤独死など、孤独を悪とする考え方にも、疑問があります。問題は孤独ではないのに、なぜ問題を別のものにすり替えていくのか、理解に苦しみます。

他人と精神的に結びつきたいという気持ちがわかりません。他人との関わりは得られるものも多いですが、距離が近すぎると疲れます。私は友人でも頻繁に会うと疲れてしまうので、他人と距離を詰めようという気持ちが薄いのでしょう。

結婚って何のためにするんだろう

何で、人は結婚するんだろう。その問いに答えを見つけられずにいました。結婚したいって、どうして人は思うんだろう。一人の身軽さよりも、それは魅力的なのだろうか。私には何もわかりませんでした。わからないままに、放り投げようともしました。放り投げても、よかったのかもしれません。

ただ、NOISEで書き続けていくならば、同性婚の話題はきっと避けて通れません。そのときに、ちゃんと知った上で、意見を表明したいと思ったのです。

結婚についてもっと掘り下げた議論がしたい

結婚って何のためにするんだろう、何で人はそんなに結婚したいんだろう。一緒に暮らすだけじゃダメなのかな。そんな疑問が浮かんで、周囲の結婚したい人やした人に結婚について聞いてみたり、婚活エッセイを読んでみたり、結婚を考察した本を買ってみたりとさまざまなことをしてみます。

何で結婚したいの? と聞いて回った

幸いにして、結婚適齢期と呼ばれる年齢にさしかかっており、結婚したい人、既婚者は周りにたくさんいました。仲のいい友達が誰かの妻や夫になっていくことは、学生時代のまま不変ではいられないのだと思い知らされるようで、変な気分でもありました。

でも、私は結婚というものを知りたいと感じたのです。なりふり構っていられる段階でもありませんでした。結婚をしたい人や既婚者には「何で結婚したの/したいの?」と疑問をぶつけました。直球に過ぎたかもしれません。

一番多かったのは、「この人と一緒にいたいと思った」でした。何で一緒にいたいって思ったのでしょう。好きだからとの答えがこれまた多かったのですが、好きでも距離感が必要な私はまだ納得ができませんでした。結婚が生きていく手段の一つであった時代は、徐々に終わりを迎えつつあります。ならば、なぜ? と思うのです。

婚活エッセイを読み漁った

日常生活を送る中で出会った相手と結婚する人ばかりではなく、婚活といって、結婚相手を探す活動をして、結婚相手を見つける人もいます。結婚相談所、お見合い、アプリなどさまざまで、婚活に関するエッセイ本なども出ています。

結婚相談所の入会金などを調べて、私は叫び声を上げました。た、高い。それに見合うサービスではあるのでしょうが、ここまでのお金を払っても、結婚したいということは、もう覚悟が決まっているとしか言いようがありません。なるほど、同じく覚悟のある人と出会えるからこその価値なのかもしれません。

婚活エッセイ本がたくさん出ており、その多くは冒頭を無料公開しているので、片っ端から読んでみました。先ほど挙げた『合理的な婚活 ~DINKsを本気で目指すおたくの実録婚活漫画~』(横嶋じゃのめ、ホーム社、2017年)もその一つ。この本は結婚したい理由や目指す結婚生活が明確で、とてもわかりやすかったです。

それでもやっぱり結婚とは何なのか、私のなかで答えは出ませんでした。

結婚を考察した本を買ってみた

そんなわけで、ついに私は難しそうな本へと手を伸ばします。それが『最小の結婚 結婚をめぐる法と道徳』(エリザベス・ブレイク、白澤社2019年)です。この本は非常に難しく、未だ完読にいたっていないのですが、結婚を考察する読書の旅は有意義だろうと思わせる冒頭です。

結婚を考察して、結婚が私にとって何なのか、答えを出したいと思います。

結婚はLGBTにもひらかれるべきだ

結婚することによって、さまざまなメリットを受けられるのは誰もが知っていることと思います。そこからLGBTは排除されているのです。

結婚が最善の制度かは疑問が残る

結婚について考えるうち、なぜ結婚の制度があるのか、わからなくなってきました。結婚しているカップルやその間に生まれた子を優遇する各種の制度、政策は何を根拠に結婚している人々を優遇しているのでしょう。

愛があるから? 事実婚のカップルに愛がないわけではありませんし、恋愛によるものでない、友情や利害の一致などによる結婚もあっていいはずです。国家が求める家族のかたちを満たしているから、というまことに身勝手な理由が今もっともありえそうに思えます。

現在の形の結婚は、本当に人々の幸せのためのベストな考えなのでしょうか。私にはわかりません。結婚はたしかにいいものではあるのでしょう。でも、それって最善ですかと聞かれて答えられない私がいます。

結婚していないことに対する差別

そして、誰かを優遇するということは、別の誰かを冷遇することでもあります。例えば事実婚カップル、そしてその間に生まれた子どもです。結婚していないカップルの間に生まれた子どもは、非嫡出子と呼ばれ、さまざまな不利益があります。その他にも結婚していないというだけで、結婚している人々より多くの税金を納めなくてはならないなど、不利益があります。

ならば結婚すればいいじゃないか、というのは間違った主張です。差別される構造そのものがおかしいのであり、差別されないために相手の思うようにするというのは、筋が通りません。結婚していないカップル、独身者への差別は、ひどいものです。変えるべきはその構造であり、差別されている人々の行動ではないのです。

LGBTにも結婚の選択肢が必要

そして、LGBTの人々に結婚の選択肢がないのも、差別にあたると考えています。LGBT、特にレズビアンやゲイ、バイセクシュアルの人には結婚の選択肢が用意されていないのです。結婚は、一部の人にしか許されていないのです。これは、不平等といえます。

結婚の価値ーーー。私にはまだわかりませんが、結婚が一部の人を排除する仕組みになっているなら変えていかなければなりません。

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