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Writer/Jitian

同性パートナーシップ制度より、やっぱり同性婚法制化を

先日、群馬県が同性パートナーシップ制度を導入する検討に入ったと発表しました。群馬県に導入されることになった場合、都道府県レベルでの制度導入はこれで3例目になります(まだ47都道府県中たった3つしかないのか、とも思いますが)。群馬県民でなくとも喜ばしいニュースだなと感じました。

しかし、個人的にはやはり地域限定の同性パートナーシップ制度でとどまらず、国として同性婚を法制化してほしいと改めて強く思いました。今回は、LGBTQ当事者たちがなぜ同性婚の法制化を望んでいるのか、ということを「同性婚のデメリット」を主軸に考えます。

なぜ同性婚の法制化を望むのか

現在、主に一般社団法人Marriage For All Japanが、同性婚法制化に向けた活動を行ってくださっています。しかし、同性婚が自分事でない人たちの中には「別に同性パートナーシップ制度があれば、わざわざ同性婚を法律にまでしなくてもいいんじゃないの?」と思っている人たちも少なくないのではないでしょうか。

まず、なぜ同性婚の法制化を望む声が上がり続けているのか、その点を改めて考えます。

人権問題である

この記事全体でこれから主張することはすべてこれに帰結するのですが、パートナーシップが法的に保障されることは、人権の一部です。つまり、現状は同性愛者の人権が侵害されているのです。と言うと「本当に同性愛者の人たちは、人権が侵害されているのか?」と感じる人がいると思うので、ここで一つ例えを出しましょう。

地元で有名な地主のAさんと、実業家として名を馳せているBさんは結婚を望み、市役所に婚姻届を提出し、受理されて晴れて結婚しました。

一方、病気で仕事をお休みしているCさんと、学生のDさんが結婚も同じように結婚したいと思ったので市役所に行って婚姻届を提出しましたが、受理されませんでした。理由は、所得が低いから。低所得の二人には所得税を課せず、むしろ生活保護レベルなので税金が出ていくだけだから、そういった人たちが家族になってさらに税制優遇されるようでは困ると判断されたのです。

こんな話がもし本当にあったら理不尽だと大変な騒ぎになるでしょう。結婚は身分に関係なくみんなが選択できるべき、重要な権利です。しかし、現状、性別だけを理由に実際に同性婚は叶わないのです。

実際に、知り合いの同性カップルで、受理されないことを分かっていて婚姻届を提出し、受理を拒否され、その自治体の首長から受理されなかった理由書を取り付けた人もいます。

おかしいと感じませんか?
なぜ、性別の話になると途端に「別に結婚できなくてもいいだろう」という主張がまかり通るのでしょうか? 同性愛は異常だから、結婚は異性同士ですべきだから人権なんて認める必要などない、ということなのでしょうか?

様々な不利益や不便さ

実質的には家族として同居し生活を共にしているとしても、同性カップルの場合、法的には家族として認められず、色々な公共・私サービスを受けられないことがあります。

例えば、現在の群馬県は、法的な家族でない場合、病院での面会、診察への同行、公共住宅への入居などに制限があります。同性パートナーシップ制度が導入されることで、群馬県内では、こういったバリアが一部なくなることが期待されています。

しかし、言うまでもなく同性パートナーシップ制度は、全国的に見ればまだまだ限られた自治体で認められたものにすぎません。異性カップルであれば、日本国内で法的に結婚したら、どこに住んでいても夫婦として認められ、あらゆる制度やサービスを受けられます。

ですが、同性パートナーシップ制度を利用したければ、同性カップルはわざわざその地域に引っ越さなければなりません。同性カップルはなぜそこまでしなければならないのかと、疑問を感じませんか?

同性カップルは現在どう対応しているのか

それでは、法的に結婚できない現状に対して、同性カップルはどのように対処しているのでしょうか。自治体の同性パートナーシップ制度以外の方法をいくつか例に挙げます。

海外で結婚する

同性婚が法制化されている海外で結婚するという方法です。例えば、アジアでは台湾が最初に同性婚が法制化されたことは記憶に新しいと思います(台湾は世界的に見て「国」かどうかというと微妙なので、ある意味ではまだアジアで同性婚が法制化された国は一つもないとも言えます)。

実際、日本では認められていないものの、海外では法的に婚姻関係として認められている同性カップルの知人を知っています。

養子縁組を利用する

法的に家族として認められることを優先して、パートナー同士で親子関係の養子縁組を結ぶ方々もいます。つまり、実質は同性カップルだけど、戸籍上は親子ということです。
この方法はLGBTQ当事者ではよく知られている手段の一つですが、LGBTQは別の世界の話と思っている人たちからすると、そこまでしている人もいるのかとびっくりするかもしれません。

個人的には、本当はパートナー/カップルなのに、法的にはどうしても認めてもらえないという現状と法的関係でのギャップと、こういった「抜け穴」が実際に使用されていることを考えれば、いっそ同性婚を法制化した方が実態に合う人たちが続出して、よりよいのではないかと思うのですが・・・・・・。

結婚しない(事実婚状態、もしくは単にパートナーとして付き合う)

養子縁組のような例もありますが、法的に結婚できないなら仕方ないと事実婚状態(同棲)をキープしたり、生涯を共にするパートナーシップを誰かと築くことすら、そもそも諦めたりしている人が大半なのではないかと思っています。実際、色々な同性パートナーシップの形をとっているカップルを知っていますが、やはりほとんどがこれに当てはまります。
また、同性パートナーシップ制度を利用することによるアウティングを懸念して、制度を利用しない人もいます。

同性婚の法制化によるデメリット?

同性婚法制化の話になると、反対派から「デメリット」や、法制化してはいけない理由がよく聞かれます。

法律が悪用されるのではないか

同性婚が悪用される懸念があるから、法制化すべきではないという声があります。しかし、「悪用」という言葉だけではピンとこない方も多いのではないでしょうか。ここで言う「悪用」とは、具体的には、同性婚を利用して結婚したら受けられる権利(公的には、扶養控除や税制優遇など)を乱用する人たちが出るのではないか、ということです。

実際、これは同性婚が法制化したら頻発するような重大な問題なのでしょうか?
異性婚では起きる可能性のない問題なのでしょうか?

例えば、結婚した相手を殺して保険金を手に入れる保険金殺人事件はすでに起きています。
つまり、同性婚を法制化する前に、すでに異性の婚姻制度から受けられるメリットを悪用している人は存在するのです。しかし、実際には例が少なく、カップル、自治体、国、それぞれの恩恵の方が多いです。このことから、同性婚を法制化してもこうした「悪用」に関する状況は変わらないと思われます。

恋愛結婚ではない結婚が出て来るのではないか

恋愛結婚ではなくて、例えば親友同士での結婚が増えるのではないかと懸念する声もありますが・・・・・・。

一体、それの何が悪いのでしょうか?
パートナーシップは、恋愛を必ず経ていないといけないという決まりがあったでしょうか?
恋愛を経ていないパートナーシップは、恋愛を経たものよりも意味がなく、破綻しやすいという統計があったでしょうか?
現状の異性同士の結婚制度では、恋愛結婚でないものは存在しないのでしょうか?

恋愛関係ではないけど、互いを支え合う同性同士のパートナーシップも十分成立すると私は考えます。実際、最近同性「カップル」ではないけど同性パートナーシップ制度を利用してパートナーシップを築いた女性同士の友人二人がいました。パートナーシップは、あくまで家族かそれに近い関係性なだけで、そこに絶対に恋愛要素が必要とは限らないのだと思います。

同性婚が少子化を加速させる?

最近の足立区議の発言にも通じますが、恐らく最もよく聞かれる同性婚法制化への反対理由は「同性婚が少子化を加速させるから」ではないでしょうか。以前も近いことを書きましたが、同性婚で少子化が加速することはありません。

セクシュアリティは自ら進んで選ぶものではない

セクシュアリティは、原則「なる」「選ぶ」ものではありません。すでにそうだったか、そうであることに後から気付くのです。同性婚が法制化されたからといって、自身を異性愛者だと思っていた人が、同性愛者や両性愛者だったと気付く可能性はゼロではないですが、自ら選んで意識的に同性愛者に「変わる」ということはありません。

異性同士の結婚が減るわけではない

同性婚が法制化されて同性婚を決める人々は、現在異性との結婚しかできないのなら自分は結婚しない(できない)と思っている人たちです。無論、現状の異性カップルの結婚制度はそのまま存続します。

つまり、同性婚法制化を理由に、異性愛者が減ることも、異性愛の結婚が減ることもないのです。現状、子どもを産み育てる家庭のほとんどは異性カップルであることを考えると、同性婚の法制化は子どもの数の減少に拍車をかけることはないと言えます。
また、実際に同性婚が法制化されている国々では、同性婚の法制化と少子化に因果関係は見られません。

これ以外にも国が対処すべき様々な問題は常に山積しているので、同性婚の法制化の問題はつい後回しにされがちです。しかし、足立区議の発言が全国レベルで話題になったように、世間での同性カップルや同性婚への注目度は確実に高まっていると感じています。

こうした契機を掴んで、日本も台湾に続いて早く同性婚が法制化されることを心から祈るとともに、これからも活動家の方々を陰ながら応援できればと思います。

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