2019年4月28日、29日の2日間、『東京レインボープライド2019』のメインイベントである「プライドフェスティバル」が、代々木公園で開催されました。LGBTをはじめとするセクシュアルマイノリティの存在を社会に広め、「 “性” と “生” の多様性」を祝福する、アジア最大級のこのイベント。28日には、LGBT当事者とアライ、合計1万人以上が渋谷・原宿をグルリとまわるパレードも開催され、沿道は多くの見物客で賑わいました。そんなパレードの様子や参加ブースなどを、当日の会場よりレポートします!
東京レインボープライドの歴史
今年のテーマは「I HAVE PRIDE」
いまから50年前、1969年6月28日。ニューヨークのゲイバーで、LGBTが平等な権利を求める活動の発端となった「ストーンウォールの反乱」が起こりました。
この事件が大きな波紋を呼び、翌年には、現在のプライドパレードの起源となるデモ行進が、ニューヨークなどの都市で行われることとなります。
「ストーンウォールの反乱」から25年後の、1994年8月28日。日本で初のプライドパレードが東京で開催され、約1,000人が参加しました。
この「8月28日」という日は、過去にマーティン・ルーサー・キング牧師らが人種差別撤廃を求めて行進し、「I Have a Dream」の演説が行われたことでも有名な、「ワシントン大行進」と同じ日でした。
そこからさらに25年が経った、2019年。今年の『東京レインボープライド』のテーマは、「I HAVE PRIDE」。
一人ひとりが持つ「PRIDE」が尊重され、輝いていくこと。そして、「I」がいずれ「We」へと結びついて、真に公平な社会が実現する未来への希望が込められています。
セクシュアルマイノリティにとって歴史的転換点となった「ストーンウォールの反乱」から50年、日本で初めて開催されたプライドパレードから25年という節目の年。
そんな記念すべき2019年に、「『PRIDE』の原点に立ち戻ろう」という想いも込められた『東京レインボープライド』が開催となりました。
参加者1万人以上! 笑顔溢れるパレードに感動
52団体、約1万1,000人が参加
『東京レインボープライド』の中でも、特に重要なイベントであるパレード。「フロート」と呼ばれる、カラフルに装飾された山車に先導され、今年は過去最大の52団体、約1万1,000人が、笑顔で渋谷・原宿の街を行進しました。
パレードは、代々木公園(渋谷側)からスタートし、公園通りを下ってから明治通りを通って原宿方面へと向かい、再度代々木公園(原宿側)へと戻ってくるルート。このルートは、イベント中、Googleマップにも虹色で表示されていました。
車道を行進するということもあり、多くの人々の注目を集めていたパレード。フラッグを持って歩道で待機しつつ、参加者に声援を送っている応援者のほかにも、パレードの存在を知らず、「え、何やってるんだろう?」と立ち止まって興味を示す人も多かったです。
『東京レインボープライド』初参加、パレードを見るのも初めてだった筆者が抱いた感想は、「こんなにもたくさんの当事者が存在しているんだ!」という、純粋な驚きでした。
2018年、電通ダイバーシティ・ラボが発表した調査結果で、「11人にひとりがLGBT当事者」という情報自体は頭で知っていても、実際に目の当たりにすることがない光景に、なんだか胸がいっぱいになってしまったのです。
また、レズビアンやゲイのカップルだろうと思われる参加者も、とても多かったです。東京では、新宿二丁目以外でこれほどたくさんの同性カップルが、堂々と街を歩くさまを目にする機会はありません。手を繋いで、幸せそうな笑顔で行進する彼らを見ていて、本当に心が温まりました。
過度な露出行為などは禁止されているものの、皆さん思い思いのカラフルなファッションに身を包んでいました。服装はもちろんのこと、レインボーのフェイスペイントやメイクをしている人も多く、見ていてとても華やいだ気持ちに。
そしてやっぱり、皆さんとびきりの笑顔なんですよね!
もしかしたら、パレード参加者の中には、周囲にはカミングアウトしていなかったり、普段はなるべく目立たないようにと、息をひそめながら生活しているLGBT当事者もいたかもしれません。
でも、そういう方が、この日ばかりは胸を張って、堂々と、仲間たちと笑顔で東京を代表するカルチャー街である渋谷を闊歩する。
制度的にも、まだまだ生きづらい社会とはいえ、こうしたイベントが存在していることは、本当に幸せなことなんだと感じられました。
カラフルなブースを紹介
イベント会場となった代々木公園のステージでは、アーティストパフォーマンスが開催されていたほか、企業や有志による数多くのブースも出展されていました。
オフィシャルグッズ
今年のオフィシャルグッズはこちら!
普段使いにもOKなTシャツやトートバッグのほか、その場で身につけられるプライドフラッグやシリコンバンド、サングラスなども販売されていました。
自分用にはもちろん、会場に来られない友人や家族へのお土産にもぴったりです。
レスリー・キーの撮影会も!「OUT IN JAPAN × ADASTRIA」
こちらは、カミングアウト・フォト・プロジェクト「OUT IN JAPAN」とカジュアルファッションを展開するアダストリアのコラボブース。
ここでは、限定グッズ販売のほか、「OUT IN JAPAN」のカメラマンとしても知られる世界的な写真家、レスリー・キーによる撮影会が開催されていました!(写真左でカメラを構えているのがレスリーです)
当日の飛び入り参加もOKのようで、プロによるメイクを施してもらった後に、その場でレスリーに写真を撮影してもらえます。
見学客からも、「こんなに綺麗にメイクもしてもらえるんだ、すごーい!」という声があがっていました。
毎年完売必至のレインボーTENGA 「TENGA」
フェス系イベントの出展で目にすることが多い「TENGA」は、「性差別という問題においても伝えられるメッセージ、支援できることがあるのでは」という想いから、LGBTの支援活動を行なっているそうです。
毎年人気だというレインボーTENGAは、とにかくビジュアルのインパクト大! 多くの人が手に取っていました。
ほかにも、コンドームの無料配布などもあり、普段は隠されがちな性に関するメッセージが、とてもポジティブな形で発信されていました。
インスタ映えするブースが多数!「ギリアド・サイエンシズ」「電通」
“HIVと生きるすべての人のために。” をテーマに出展していた「ギリアド・サイエンシズ」のブースは、ピンクでとってもフォトジェニック!
ブースのデザインには、東京ガールズコレクションプロデュースなどで話題のクリエイター・五十嵐LINDA渉さんが起用されているのだとか。
「電通」のブースでは、ブース全体がフォトスポットになっている「レインボーリサーチDX展」を開催。昨年実施した「LGBT調査2018」のデータを、カラフルでハッピーな形で展示しています。
このように、フォトスポットが用意されたインスタ映えするブースがとても多く、SNS時代の色を強く感じられました。
ファッションやメイクもレインボー「リーバイ・ストラウス ジャパン」「SHISEIDO」
リーバイスやGAPなど、有名ブランドによるブースもカラフルに彩られていました。
「リーバイ・ストラウス ジャパン」のブースでは、レインボーのロゴTシャツやアクセサリーを販売。
7色のフラッグが立つ「SHISEIDO」のブースでは、一人ひとりの肌の測定とスキンケア、メイクアップ体験ができるとあって、大行列ができていました!
フェイスペインティングができるブースなども多く、どこもたくさんの人で賑わっていました。
大使館や行政も参加「国立市」「豊島区」
海外の大使館や、行政によるブースも多数出展されていました。
「行政系はちょっとお堅そうだしとっつきにくいかも?」と思っていましたが、まったくそんなことはなかったです!
「パートナーシップ制度」がスタートした豊島区では、申請受付や相談のほか、その場で受理証明書を発行して記念撮影ができるサービスも。
スタッフの明るい声掛けもあって、とても入りやすい雰囲気でした。
飲食ブースにも注目! 「STARBUCKS」
最後に、見逃せないのが飲食ブース。多くの屋台のほか、レインボーカラーのフードを提供している店舗も見受けられました。
常に行列ができていた「STARBUCKS」のキッチンカーでは、レインボーのタンブラーも販売。お手製のレインボー餃子が食べられるお店もありました。
LGBT理解への間口が広げられた、貴重な場所
今回、イベントに初めて参加してみて思ったことは、「LGBTに関する間口が広いながらも、深い部分まで掘り下げることもできる場」だということです。
お祭り気分で誰でもライトに楽しめるようなブースから、LGBTを取り巻く社会状況についてディープに考察できるブースまで、会場には幅広い選択肢が用意されていました。
そして、海外の方が思った以上に多かったのも印象的でした。日本在住なのか、このイベントに合わせてわざわざ旅行で訪れたのかはわかりませんが、「今年は外国人が多いね」と話している人もいたので、例年と比べても増加傾向にあったのかもしれません。
小さなお子さんを連れている家族も意外に多く、幼い頃からこうした多様性に直接触れられる、貴重な場でもあるのだと感じました。
来年は自分も一緒に、パレードを歩きたいな。
そう思えるような、とても素晴らしい1日でした。