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アセクシュアルの私が、恋をする日が来るかもしれない。【前編】

穏やかさと芯の強さ、2つの要素を併せ持つ金井美希さん。饒舌なタイプではないが、これまで生きてきた中で起こった事象の1つ1つを、やわらかな言葉遣いで丁寧に語ってくれた。恋愛感情や性的欲求が少ない “アセクシュアル” だと自認した時、「ホッとした半面、寂しさもあった」と話す金井さん。今、笑って前を向けている理由は、人との出会いにあった。

2019/07/11/Thu
Photo : Tomoki Suzuki Text : Ryosuke Aritake
金井 美希 / Miki Kanai

1998年、新潟県生まれ。父・母・2人の妹との5人家族で育ち、小学校から高校まで地元の学校に通った後、カウンセラーを目指して新潟県内の大学に進学。19歳の時に「アセクシュアル」を知り、自身のセクシュアリティを認識する。現在は、県内のLGBTサークルに参加しながら、大学院への進学を目指している。

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INDEX
01 地元を離れずに成し遂げたい夢
02 互いに補い合うような家族の関係
03 好きなものを気ままに楽しんだ時代
04 友だちに合わせ始めた思春期
05 「好きな人とつき合いたい」という感情
==================(後編)========================
06 認められなかったアセクシュアル
07 周囲に打ち明ける覚悟と意味
08 可能性に賭けた “おつき合い”
09 セクシュアリティは変化していくもの
10 これからの自分にできること

01地元を離れずに成し遂げたい夢

人の話を聞く仕事

2019年4月に大学4年生になったばかりだが、就職活動はしていない。

「臨床心理士になりたいんです。資格を取るには、大学院に行かないといけないので、就活はしてないんです」

通っていた中学校に、とても話の聴き方がうまい教師がいた。

「その先生と出会って、カウンセリングのような、人の話を聴く仕事がしたい、って思いました」

「だから、心理学が学べる大学に進んだんです」

「心理学って面白そうなイメージがあったんですけど、実際は違いましたね(苦笑)」

入学前は、メンタリスト・DaiGoが行うような、ショー要素の強い授業を想像していた。

実際は、心理学を提唱した人物の歴史を辿るといった座学がほとんど。

「心理療法の授業とかは、絵を描いたり心理テストをしたり、面白いんですけどね」

それでも、カウンセラーという夢は消えなかった。

「まずは大学院に進んで資格を取って、病院などの現場で働きながら知識を蓄えたいです」

活動の拠点

いずれは独立して、社会人を対象にカウンセリングを行っていきたい。

「学校にはスクールカウンセラーがいるけど、企業にはいないところも多いですよね」

「特に中小企業にはカウンセラーがほとんどいないので、社会人が気軽に来られる相談室を作れたらいいなって」

その拠点は、生まれ育った新潟にしたいと考えている。

「LGBT当事者の方だと、地元にはセクシュアルマイノリティの団体が少ないから上京したい、って人も多いですよね」

「でも、私は、新潟には団体が少ないからこそ、留まって活動していきたいんです」

都会と田舎が共存する新潟は、穏やかで自由な人が多い街。

「新潟が好き、って気持ちも大きいですね」

「自分から動いてみよう」

「昔は友だちの後ろをついていくタイプだったんですけど、大学に入って変わりました」

大学では、勉強の仕方を誰も教えてくれない。

自ら授業を選択し、学びたいものを追求していく中で、能動的に動けるようになった。

「大学の先生方や先輩、尊敬できる方と出会えたことも大きいですね」

自分の周りには、ボランティア活動などに積極的に参加している人が多い。

その姿を見て、影響を受けてきた。

「自分でやろう、自分から動いてみよう、って思えたんですよね」

大学に通う3年間で、自分で道を切り開くことができる人間になれたように感じる。

02互いに補い合うような家族の関係

似ていない姉妹

幼い頃は引っ込み思案で、意見を主張しないタイプだった。

「内向的で、誰かがやっていることを一緒にやることが多かったです」

「おとなしい子でしたね」

妹は2歳下と4歳下の2人。仲がいいが、性格は似ていない。

「一番下は元気ではしゃぐタイプだし、真ん中は私より落ち着いてます(笑)」

「4歳離れてるとギャップを感じることもあるんですけど、昔からよく一緒に遊んでましたね」

3姉妹の誰かが友だちを家に連れてくれば、みんなで一緒におやつを食べた。

「幼い頃の方が、年齢差は感じなかったかもしれません」

「ケンカもしょっちゅうしてましたけど(笑)」

門限に厳しい母親

「父は楽観的で、何事も『自由にしな』みたいな感じです」

「その反面、母はすごく厳しくて、特に帰る時間にはうるさいんです」

幼い頃から門限にうるさく、高校時代は部活が終わったらすぐに帰らなければいけなかった。

「部活終わりに、友だちとマクドナルドに寄ることもダメだったんです」

大学に入ってから門限の時間は延びたものの、22時には家にいなければならない。

「サークルの飲み会があっても、一次会が終わったら帰る感じですね」

「母はよく『女の子だから、あんまり遅いと心配』って、言ってました」

最寄り駅から自宅までの道のりは、徒歩40分。
夜遅い時間に、子どもがひとりで帰ることを心配する気持ちはわかる。

「それでも、つき合いが悪くなるのがすごく嫌だな、って思ってました」

父親の助け舟

「大学に入ってからめちゃくちゃ抗議して、門限を延ばしてもらいました(苦笑)」

今は「終電まではOK」と、言ってくれている。

「抗議した時は、結果的に両親で話し合ってましたね」

「反対する母に、父が『大学生なんだし、いいんじゃないか』って、言ってました」

最後には、父が「俺が迎えに行くから大丈夫」と、母を説得してくれた。

「娘からすると、対照的な両親は、お互いに補い合ってるようにも見えます」

役割が明確だからか、両親に対して反感を覚えたことはない。

「ついこの間、母に頼み込んで、初めて友だちの家にお泊りしたんです」

親との約束を勝手に破ることはしない。

説得し、了承を得た上で、ステップを踏むようにしている。

03好きなものを気ままに楽しんだ時代

本に魅了された幼少期

幼稚園から小学校にかけては、部屋の中で本を読んだり、絵を描いたりしている子どもだった。

「はしゃいだりすることは、そんなになかったです」

「クラスの中でも、本が好きな友だち数人と固まってましたね」

「1人でいるのも嫌じゃなかったし、本を読んでいられればよかったんです(笑)」

当時から、ファンタジーが好き。

「特に『ダレン・シャン』シリーズをよく読んでたし、絵本も好きでした」

「小学生の頃は家にゲームとかがなくて、ずっと本を読んでいた記憶があります」

「体を動かくことが、あんまり好きじゃなかったんです(苦笑)

本を読み始めたきっかけは、祖母の家。

「おばあちゃんの家にはたくさんの本が置いてあって、それを見てたからかもしれません」

休日になると、近所の友だちと互いの家を行き来して、遊んだ。

「家の中でお話ししたりテレビを見たり、普通だけど楽しかった思い出がありますね」

覚えられない同級生の名前

当時、教師や友だちの親から「あんまり人と関わらないよね」と、言われていた。

「通知表には『積極性を持った方がいいよ』って、書かれてました」

しかし、大人のアドバイス通りに改善しようとは思わなかった。

「問題を起こしてるわけではなかったから(苦笑)」

「大人から『みんなと遊ばないの?』って言われても、『そうですね』って言いながら、本を読んでました」

みんなの輪に混ざりたい、という気持ちもほとんど湧いてこなかった。

「周りに興味がないというか、人の名前を覚えることが苦手なんです」

小学校はひと学年90名、ひとクラス30名と、同級生が多いわけではなかった。

それでも、全員の名前を把握したのは、卒業間近。

「仲がいい子はすぐに覚えるんですけど、あんまり話さない子は名前を呼ぶ機会もないので(苦笑)」

「覚えよう、とも思っていなかったんでしょうね」

だからといって、孤立しているわけではなかった。

修学旅行の時など、決められた班で行動することは、苦ではなかった。

「仲いい子はいたけど、絶対にその子たちと一緒にいたいわけでもなかったです」

小学生までは、周りに流されることもなく、好きなものを自由に楽しめていた。

04友だちに合わせ始めた思春期

目立つグループの一員

中学校に上がった時、不意に周りの視線が気になった。

「みんなと離れて1人でいるのって、人と違うのかなって・・・・・・」

「誰かに何かを言われたわけではないんですけど、ふと感じたんですよね」

「やっぱり人と関わんなきゃいけないんだと思って、友だちと一緒にいるようになりました」

中学生になると、男の子と女の子でグループが分かれていった。

そういった環境の変化もあり、女友だちと過ごす時間が増えていく。

「たまたま席が近くて仲良くなった子が、イケイケな子だったんです(笑)」

クラスの中でも目立つタイプの子だった。

「その子の周りの友だちも目立つ子たちで、気づいたらそのグループに入っていた感じでした」

「学校にいる間はいつも一緒にいたし、おそろいのものを持ってましたね」

意図せずに、目立つグループの一員になっていた。

興味を持てない話題

友だちと一緒にいることは、楽しかった。

「自分からついていっている部分もありました」

「ただ、会話の内容には、興味を持てないところがありましたね」

友だちの興味の対象は、ファッション。

休み時間には、雑誌に載っているビビッドな色合いの服を見ながら、「これ流行ってるよね」「あれ買った?」と目を輝かせる。

「当時の私は、パンツにシャツって地味めな服ばかりで、興味も薄かったんですよね」

「だから、みんなの話も『ふ~ん』って、聞いてるだけで(苦笑)」

好みも合わなかったため、おそろいのものを持つことにも、ワクワクしなかった。

「友だちが『おそろいにしよう』って言うから、みんなに合わせて持ってる感覚でした」

中にはまったく欲しくないものもあったが、友だちと一緒にいることを優先した。

「でも、居心地は悪くなかったから、3年間ずっとその子たちと仲良くしてましたね」

純粋に楽しんだ部活

中学時代の部活は、ソフトテニス部。

テニスがしたくて入部したわけではない。

「女子が入れる部活が吹奏楽部、陸上部、ソフトテニス部の3つしかなかったんです」

「部活には絶対に入らなきゃいけなかったから、なんとかできそうなソフトテニス部にしました」

「でも、友だちもソフトテニス部だったので、楽しかったですね」

強い部活ではなかったからこそ、部員同士で楽しく活動できていた。

少ないコートを使ってわいわい練習し、ときどき大会に出る。

「なんだかんだで3年間続けましたね」

05「好きな人とつき合いたい」という感情

好きになる相手

小学生の頃、初めて男の子のことを好きだと思った。

しかし、つき合いたいという思いには至らない。

中学1年生の時、同い年の女の子のことが気になった。

「その時もつき合いたいとかじゃなくて、ただ周りにいる人たちよりは好きってぐらいでしたね」

当時、バラエティ番組や保健体育の授業を通じて、ゲイやレズビアンの存在は知っていた。

「だから、自分はもしかしてあのレズビアン? って、思いました」

「だけど、男の子を好きになったことがあるし、レズビアンではないのかもしれない、って気持ちもありましたね」

同級生に「自分はバイセクシュアルだ」と、オープンにしていた子がいた。

「その時にバイセクシュアルって言葉を知って、私もそうなのかなって思い始めましたね」

自分がレズビアンやバイセクシュアルかもしれないと感じた時、否定的な気持ちは湧かなかった。

「セクシュアルマイノリティであることに対して、嫌だって気持ちはなかったです」

「単純に、私はそういう名前がつく人なんだな、ってくらいでした」

その一方で、男の子への想いは恋愛、女の子への想いは友情なのだと、型通りに考えてもいた。

「普通っていうか、マジョリティの感覚に寄って捉えていたのかもしれないですね」

“恋人” という関係

「高校生になって、みんなが話す恋愛と私の好きな気持ちは別物じゃないかな、って思い始めたんです」

「好きな人がいる」と話すと、友だちから「好きなら告白しちゃいなよ」と言われる。

しかし、告白しよう、という気持ちは起きなかった。

「友だちに『つき合ったら?』って言われるたびに、『う~ん』って悩みましたね」

「友だちからは、『本当に好きなの?』って、言われたんです」

好きな気持ちに偽りはないが、つき合うとなると話は別だった。

周りの友だちは、恋人と呼ぶ相手と特別な関係を築いているように見えた。

相手との距離を詰め、手をつなぎ、友だちよりも特別な間柄にあるような雰囲気。

周囲も、恋人同士の2人に気を使っているようだった。

「私も、好きな子と一緒に話したい、って思うことはあったんです」

「相手に好かれたい、っていう気持ちもありました」

「でも、みんなみたいに、おつき合いに発展する、っていう発想はなかったんです」

自分はレズビアンでもバイセクシュアルでもなく、別の何かなのかもしれない・・・・・・。

 

<<<後編 2019/07/14/Sun>>>
INDEX

06 認められなかったアセクシュアル
07 周囲に打ち明ける覚悟と意味
08 可能性に賭けた “おつき合い”
09 セクシュアリティは変化していくもの
10 これからの自分にできること

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