LGBTQ+である私が、日常的に「どうにかならないものか」と悩んでいる質問がある。それは「結婚」に関すること。ひと言で答えにくい質問をされたときに、どう返すのが最もスマートで、傷つかずに済むだろうか?
「結婚は?」という質問の威力― LGBTQ+としての実感
LGBTQ+当事者として「頻繁に聞かれるわりに、答えにくくて困ってしまう」質問の代表例のひとつ、それが「結婚」に関することだ。
LGBTQ+にとって鬼門である「結婚」に関する質問
30代に入って、特に最近、実感することが多い。
周囲でも結婚している人、子どもが産まれたという人が増えてきて、ふとした瞬間に「そういえば結婚しないの?」と質問されることがある。
センシティブな話題だから、この頃はそういった質問をする人も減ってきた・・・・・・かと思いきや、意外と聞かれる場面は多いし、聞いてくる相手は「何の気なしに、悪気なく」結婚の話を持ち出してくる。
私は比較的セクシュアリティをオープンにしているので、親しい相手であれば「付き合っている相手が女性なので、結婚はできなくて」「でも一緒に住んでいるし、ほとんど結婚しているようなものです!」と答えることはできる。
ただ、答えられるということと、答えたい気持ちかどうかというのは、また別の問題だ。
私自身、質問された瞬間は「それを聞かれてイヤな気持ちになる人のことを想像していないのだろうか?」と思ってしまい、素直に自己開示をする気が失せてしまうこともしょっちゅうある。
LGBTQ+であることを明かさないと、途端に難易度が上がる「結婚」の質問
微妙なところではあるけれど、たとえば「彼氏はいるの?」という質問には、そこまでムッとしなくて済むのだ。
「彼氏」という言葉選びはさておき、パートナーと呼べる存在がいるかどうか、という質問を他人にしたくなる気持ちは、私にも理解できるから。
私の場合は「彼氏はいないけど、彼女はいますよ」あるいは「(彼氏は)いませんよ」「付き合っている人ですか? いますよ」など、LGBTQ+であることを明かす/明かさないにかかわらず、スマートに返しやすいから、というのもある。
でも「結婚」に関する質問には、どうしても「結婚=善いもの」という固定観念とプレッシャーを感じてしまうし、なぜわざわざ「結婚しているかどうか」「結婚する気があるかどうか」が聞きたいの? と反射的に警戒心を抱いてしまう。
あまりLGBTQ+であることをオープンにしたくない相手には「結婚していませんよ」「する予定も、当分ないですね」といった答え方をするのだけど、そうすると後からさらに質問が飛んでくることもある。
「どうして結婚しないの?」
「付き合ってる人はいないの?」
「えっ、いるの? いるのに、結婚はしたくないの? なぜ?」
「もしかして、何か事情があるの?」
自己開示をしたくない相手に限ってどんどん質問を重ねてきて、挙句の果てに「結婚したほうがいいよ」「きっと後悔するよ、将来不安じゃないの?」などと言い募られる。
令和の時代にここまであけすけに聞いてくる人がいるのか、と驚いてしまうのだけど、実際、いるのだ。困ったことに。
「結婚」についての質問にどう返すか? LGBTQ+としてのシミュレーション
いざというときに自分が困りたくないから、スマートな「結婚の質問」への答え方はないものか? とシミュレーションしてみることにした。
「結婚の質問」への回答シミュレーション― LGBTQ+であることを明かすパターン

まずは、LGBTQ+であることをオープンにする前提でシミュレーションしてみる。
私は、自分がLGBTQ+であると開示することも多いのだけど、それはそれで微妙な雰囲気になってしまう場面もあるのが困ったところ。
「結婚は?」と聞かれて「私、レズビアンなので結婚できないんですよ」とズバリ言ってしまうと、相手は「悪いこと聞いちゃった!」というような顔になるし、周りもなんだか「そうだったんだね・・・・・・」と神妙な空気になることがある。
これは、私自身もあまり気持ちがいいものではない。
ただ、前の章でも書いたように「付き合っているのが女性なので・・・・・・」とイチから説明をすると、途端に話が長くなる。
別に悪いことではないのだけれど、できればもう少しスマートに、サラッと答えたい気持ちがある。そもそも結婚の話なんて(私は)したくないのだから。
「結婚の質問」への回答シミュレーション― LGBTQ+であることを隠すパターン
では、自分がLGBTQ+であることを相手に伝えない場合はどうなるだろうか。
「まあいいじゃないですか」「その話はやめましょう」などと、中途半端に濁してしまうと、相手もかえって興味を引かれるかもしれない。
かといって、正直に「(結婚)していません」「する予定もありません」と言うだけでは、さらなる質問攻撃がくる可能性もあるし、そうでなくても「あ、そうか。ごめんね、変なこと聞いて」と謝らせてしまう場合もある。
謝るぐらいなら最初から聞かないでよ! とつい思ってしまうけれど、私だって他人に失礼な質問をしてしまうことはあるだろうから、必要以上に謝らせてしまうのも居心地が悪い。
以前の私なら「したいんですけど相手がいなくて~」「推し活に夢中なので、結婚とか考えられないです!」と過度に「結婚できないアピール」をしてごまかしていただろう。
でも、自分がLGBTQ+であることを隠すために道化を演じるのは疲れるし、無駄に自分を偽ってしまっているような気持ちになって、あとで後悔することも多かった。
俳優さんに学ぶ「結婚の質問」へのスマートな返し方
実は最近、ひょんなことから「結婚に関する質問」へのスマートな回答例、といえそうなものに出会うことができた。
「結婚に関する質問」へのスマートな返し方― 俳優Aさんの場合

きっかけは、SNSで「俳優さんの記者会見」についての記事を見かけたことだ。
その俳優さん(仮にAさん)は、劇団を退団するという発表に際し、記者会見で「結婚の予定は?」と質問を受けていた。
わざわざそんなことを聞かなくてもいいのに・・・・・・とつい思ってしまうような質問だけれど、俳優Aさんは明るく「ちなみに、あなたは結婚されていますか?」と返したのだ。
「結婚のいいところは?」とさらに質問を重ね、記者からの回答に「参考にさせていただきます」と茶目っ気たっぷりに答えた俳優Aさんの姿は、とてもまぶしく見えた。
「質問に質問で返す」というのはかなり意表を突く行動に思えたけれど、SNSには「よくぞ言った!」というファンからの声援がたくさん流れていた。
「(結婚の予定は)ありません!」と朗らかに答える俳優さんや「本当にそういう質問がくるんですね~」と、おどけてまぜかえす俳優さんの返答はこれまでに見たことがあったけれど、俳優Aさんのふるまいは新鮮で、LGBTQ+である自分にとっても参考にしたくなるようなスマートさを感じた。
「結婚に関する質問」へのスマートな返し方― 俳優Bさんの場合
また別のタイミングで、俳優さん同士の対談についての情報をSNSで見かけた。
話の流れで「好きな女性のタイプとか、結婚についてはどうですか?」という質問が出た際、質問された俳優さん(仮にBさん)は「逆に聞きたいです! 結婚されてどうでしたか?」と、既婚者である相手に質問を返したのだ。
気さくな間柄だったのもあるのか、なごやかに「結婚されたきっかけって何だったんですか?」と質問を重ね、素敵ですねえとしみじみ返す俳優Bさんからは、ごまかしている雰囲気もおどける調子も感じられなかった。
「結婚に関する質問」の威力をあっとうまに打ち消すような、フレンドリーでやさしい場の空気の持っていき方に、読みながら思わず膝を叩いてしまった。
俳優Aさんと俳優Bさん、奇しくもふたりともが「質問に質問で返す」というリアクションを選んでいた。
俳優Aさんは、一方的に質問を繰り出す「記者」と質問をされ続ける「俳優」という関係性のアンバランスさにメスを入れるような、あざやかで軽やかな返し方が見事だった。
また、俳優Bさんは「仲のいい俳優同士」という関係性の中で、いかに場の空気を気まずくさせず、盛り上がる話に持っていくかという点で尽力されているのが伝わってくる、こちらも素敵な返し方だった。
これは、私たちLGBTQ+にとって「結婚に関する質問」への返し方のヒントになるかもしれない。
「質問される」というシチュエーションに慣れているプロの俳優さんならではのふるまいから、日常生活での学びを得られたような気持ちになった。
LGBTQ+が「結婚の質問」をされたら? 私が考える「現時点での最適解」

折しも、先日ちょうど「結婚についての質問」への返し方を試す機会が訪れた。
年齢も性別もばらばらな、ほぼ初対面の人たちとの集まり。
すぐに全員と打ち解けて、他愛のない話もするようになったのだけど、ツッコミとして「お前、童貞か!」と躊躇なく言う人や、それに対して爆笑する人が何人かいたのもあって、カミングアウトする気にはあまりなれなかった。
そのメンバーで飲み会をした際、結婚している人が「早く帰らなければならない」という話をした流れで「結婚って大変だね。どう(思う)?」と声を掛けられた。
ストレートな質問の形ではないけれど、遠回しに「結婚しているかどうか」「パートナーがいるかどうか」という質問も兼ねた聞き方だな、となんとなく察した。
俳優Aさんと俳優Bさんの返し方を思い浮かべ、質問に質問で返そうか? と考えたものの、一瞬ためらってしまった。
相手があいまいに聞いてきたのだから、この場合は「あいまいに返す」でいいのかもしれない。
とっさにそう判断し、その場では「どうでしょうねえ。人によりますよね」と答えて、話を終わらせた。
「逆にどう思いますか?」と返していたら、むしろちょっと角が立ったかもしれないな・・・・・・とあとで胸をなでおろしたものの、なんとなく「スマートな返し方」のニュアンスはつかめたような気がした。
「結婚の質問」のターゲットを「自分」からずらしたうえで、必要以上に反応せず、あくまで軽く、さらりと返す。
LGBTQ+であることで気まずくなりたくない、場の雰囲気も壊したくないという場合には、それが最もスマートなリアクションかもしれない。
コミュニケーションの試行錯誤を続ける、いちLGBTQ+当事者の「現時点での最適解」として、参考にしていただければ幸いだ。


