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Writer/あさか

大学でSOGIハラを申し立てたらめっちゃしんどかったのはなぜか?

わたしは去年、通っている大学でSOGIハラスメントの申し立てを行いました。受けていた授業でトランスジェンダーへの差別発言などがあったからです。申し立てのプロセスを経験するなかで、なぜSOGIハラが大学で適切に対応されづらいのか、なぜ申し立てがこんなにしんどいのか、見えてきました。

実質カミングアウト? そもそもSOGIハラに抗議しづらい理由

たくさんの時間と労力をかけて申し立てを行ったにもかかわらず、結果は希望通りにはならず。申し立て結果を知らされたときは、燃え尽き症候群になりました。

SOGIハラとは?

SOGIとは、性的指向(Sexual Orientation)とジェンダー・アイデンティティ(Gender Identity)の頭文字をとった言葉。

SOGIハラスメントとは、LGBTQ+当事者のみに対するハラスメントではありません。

性的指向や恋愛的指向、ジェンダー・アイデンティティなどにまつわる、マジョリティであるシスジェンダー・ヘテロセクシュアルも含む、すべての人が対象となるハラスメントを指します。

・外見から勝手に判断し「○○ちゃん」「△△くん」と呼び分ける
・その場に異性愛者しかいないと決めつける
・「オネエっぽい」「レズっぽい」など差別的な用語を使う
・「女なんだから○○しなさい」「男らしくいなさい」など、ジェンダーバイアスのある発言をする
・性的指向やジェンダー・アイデンティティを本人の許可なく他の人に伝えてしまう(=アウティング)

などがSOGIハラにあたります。

以前、NOISE記事「クィアな大学生から見た、学内のSOGIハラとマイクロアグレッション」で書いたように、近年では、多くの大学でSOGIハラ防止のための取り組みが行われています。

わたしが受けたSOGIハラ

※トランスジェンダーやノンバイナリーに対する差別的な言動に触れます。辛い気持ちになったり、呼吸が苦しくなったりする方もいるかもしれません。ご注意ください。

SOGIハラを経験した際、ハラスメント防止委員会などで申し立てを行える大学もあります。

わたし自身、一年前、大学の生物学の授業で、教授からSOGIハラを受け、大学のハラスメント防止委員会で申し立てを行いました。

問題の授業は、「性の多様性」というタイトルのオンライン授業。400人くらいが参加していました。

タイトルとは裏腹に、教授が授業内で行ったSOGIハラは以下のようなもの。
・「なぜ男と女という2つの性別しかないのか」という問いを立て、ジェンダー・アイデンティティの多様性を無視した
・シスジェンダー女性を「ふつうの女性」。トランスジェンダー女性を「純粋な女性でない」と表現した
・受講者にトランスジェンダーや同性愛者がいないことを前提として発言した

授業を受けている間、トランスジェンダーの友人のことをおもって涙が出ましたし、ほかの学生が400人もいるのに、誰ひとりとしてその場で反論してくれなかったことに強い孤立感を覚えました。

また、配慮と知識があまりにもないまま授業を行い、不用意にトランスジェンダーやノンバイナリーを傷つけた教授に対し、腹立たしくも思いました。

カミングアウトできないから、SOGIハラを受けても泣き寝入り

わたしが経験したことは、SOGIハラだった。そのことは、授業を受けた直後から明確でした。しかし、わたしは、直前まで申し立てするかどうか迷いました。

迷いの大きな理由は、カミングアウトがともなってしまうこと。

SOGIハラを受けた本人が申し立てする場合、自分がLGBTQの当事者だとカミングアウトすることがどうしても必要になる場面があります。

実際、わたしも申し立てのときは、自分が「クィア当事者としてSOGIハラを見過ごせなかった」と説明することになりました。

「当事者ではないけど気になりました」というふうに申し立てることもできたかもしれません。でも、明確にカミングアウトしていなくても「申し立てるってことは当事者なのかな?」と、防止委員会の教員や職員に思われて、居心地が悪くなるのは、容易に想像できます。

申し立てを行うと、誰がなぜ抗議したのか、ハラスメント防止委員会の教員や職員にはもちろん、その周辺の教員にも伝わってしまう場合があります。

そのため
・申し立てをすると、広範囲の人に望まぬカミングアウトが必要になってしまう
・カミングアウトすると今後の学生生活に支障が出てしまうかもしれない

などと考えて、わたしのようにSOGIハラの申し立て自体をためらう・やめてしまうことは多いのではないでしょうか。

SOGIハラの申し立てをしても「どれが差別か」が噛み合わない

結局、わたしはカミングアウトがともなってしまうのは「しかたがない」と考え、一緒に同じ授業を受けていたクィアと2人で、申し立てすることにしました。しかし、どうにか申し立てまで漕ぎつけても、まだまだ困難は続きます。

SOGIハラなのに「自由な議論をさせたかっただけ」??

最近、SNS上や出版物などで、差別や偏見、配慮の不足を指摘した人に対し、「表現の自由をさまたげるのか?」と反論している人を見かけたことはないでしょうか。

わたしが大学で申し立てをしたときも、似たようなことが起こりました。

わたしが大学でSOGIハラを訴えたとき、先ほど紹介した言動以外にも、以下のようなことを申し立て内容に入れていました。

・目的を明確にしないまま、同性婚の法制化に「賛成・反対」の投票を学生にさせた
・そのうえで、同性婚に「反対」票を入れた生徒に「なぜ反対なのか」と質問し、差別的な発言をゆるした

まずそもそも、生物学の授業で、なぜ同性婚法制化という、法学・社会学的なことを議論させる必要があったのか疑問です。明確な目的の説明はなく、教授が「賛成・反対、どのくらいの割合か、ちょっと見てみたい」という野次馬精神から投票をさせたのかな、と勘ぐってしまいます。

加えて、同性婚に「反対」票を入れた学生にその理由を聞くとなれば、わたしたちのようなクィアに対する差別的な発言が出てきてもおかしくありません。

不必要と思える調査をしたあげく、授業の冒頭にたとえば「この場に、今回のテーマに関して当事者性をもっている人がいるかもしれない、という前提と配慮をもって発言してください」といった呼びかけもなく、同性婚「反対」側の意見を聞こうとする。

この授業にLGBTQ+当事者もいることを想定していないという意味で、明らかにSOGIハラであると感じました。

しかし、対象の教授から「僕の授業では活発な議論を推進しています」「議論の自由ではないでしょうか」と言われてしまいました。とても驚き、腹がたちました。

このように「○○はSOGIハラであるから、今後起こらないようにしてほしい」と申立てしても「いや、そうではなく、自由な議論をさせたかっただけ」と返されてしまうことがあります。

こちらがSOGIハラだと思っても、申し立ての相手やハラスメント防止委員会が納得してくれるとは限らないのです。

授業内で「どれだけクィア当事者として不安になったか」「それを防ぐためにどのような知識や配慮が必要か」がまったく伝わらず、歯がゆい思いをしました。

SOGIハラ申し立ての結果は「教授の自由」

「○○の自由があるから、SOGIハラとして認められない」と言ってきたのは、残念ながら相手の教授だけではありませんでした。

申立てから約3ヶ月後。わたしたちは、ハラスメント防止委員会との再度の面会に呼ばれました。そのとき、申し立て結果として言い渡されたのは、わたしたちの教授への申し立て内容が却下されたということ。

そしてなんと、却下の理由として防止委員会から「教授の自由があるから(=教授には何を教えるかを決める自由があるから)SOGIハラとしては認められない」と説明されたのです。

同性婚法制化の投票については、百歩譲ってSOGIハラではなかったとしましょう。

でも、そのほかの直接的な差別発言やノンバイナリーを存在しないものと扱うことは、明らかにSOGIハラです。それらを「教授の自由があるため、授業内容はこうなってしまってしかたがない」と、論点をすりかえてしまっては、実際にあった差別や偏見を温存し、助長することにつながります。

また、差別的な言動が「教授の自由」とするなら、ハラスメント防止委員会の存在意義がないようにも感じました。何を申し立てても「それは教授の自由です」と返せるのですから。

ハラスメント防止委員会を設置し、ハラスメント防止ガイドラインを公開する。そんな「よさそう」な取り組みをしていても、内実は委員会が機能していない。

大学組織の矛盾と不誠実さを見たようでした。

SOGIハラ申し立てのプロセスがどうして大変なのか?

ほかのハラスメントと比べて、なぜSOGIハラの申し立てが大変なのか。次は、ハラスメント防止委員会の構造に注目して、考えていきます。

SOGIの知識がある教員・職員が少ない

SOGIハラ申し立てが困難な理由として実感したのが、SOGIにまつわる知識をしっかり身についている教員や職員が、ハラスメント防止委員会にはほとんどいないということ。

多くの大学で、ハラスメント防止委員会は、大学の教員や学事の職員などで構成されています。

たとえば、わたしが申し立てした際、担当してもらうハラスメント防止委員を、委員会の教員・職員リストから選ぶことができました。

しかし、リストにある教員・職員たちを順番に調べていったところ、ジェンダー・セクシュアリティ研究をしているのは1人だけ。しかも、その教員がトランスジェンダー差別的でないかどうかはわからない状態でした。(最近はフェミニストなのにトランスジェンダー差別をする人もいるからです)

しかし “ほかに選びようもないし・・・・・・” と、いちかばちか、その教員に担当してもらうことにしました。結果的には、担当してくれた教員は、ラッキーなことにSOGIにまつわる知識が充分にあり、比較的早く話が進みました。

SOGIハラ申し立て時に「説明」が必要・・・そして二次被害

知識のある教員でよかったと思ったのは束の間、担当は2人以上の委員という決まりがあり、もう1 人が申し立ての際に同席していました。その教員は、明らかにSOGIについて無知でした。

そのため、申し立てをしたわたしたちか、ジェンダー・セクシュアリティを研究している教員が、そのあまり知識のない教員に対して、基礎的な説明をしなければならないことも多々ありました。その教員とは、さきほどの「何がSOGIハラか」も頻繁に食い違いました。

それだけでなく、申し立ての場で、その無知な教員からマイクロアグレッションも受けました。

「最近の人たちはセンシティブですから」などと言われたのです。実際は、生物学の教授の言動に問題があったからわざわざしんどい思いをしてまで申し立てたのに、あたかもわたしたち「最近の人たち=若い世代」が繊細過ぎて、トラブルを起こしたかのように聞こえます。

このように、ハラスメントを相談した先でまた差別や偏見にあうことを「二次被害」といいます。

申し立てするだけでひどく疲れているのに、SOGIについて知らない人に防止委員として応対されて、わざわざSOGI用語を「説明」しなければならなかったり。ひどいときには二次被害にあったり。散々です・・・・・・。

なぜSOGIについて無知な教員・職員が多いのか?

わたしの大学を含め、ハラスメント防止ガイドラインを出している大学の多くは、大学の教員や職員に対して「ハラスメントの研修を行っている」と公開しています。

しかし、ほかの教員と話していたときに小耳に挟んだところ、実際、わたしの大学では教員・職員あてに「ハラスメント防止研修動画」なるものが毎年一回送られ、各自視聴するように通知されるだけだそう。

オフラインでのリアルな研修のように、参加の有無を把握していないということは、研修がほんとうの意味で義務化されているとは言いがたいです。また動画のなかで、SOGIハラスメントがどの程度触れられているのかは不明です。

そんな状況だから、ハラスメント防止委員であっても、SOGIハラスメントに対応できない委員が山のようにいるのだと思います。

SOGIハラ申し立ては時間がかかるし疲れるけれど・・・

しんどすぎるプロセスを経て、申し立てを行いましたが、明らかに差別的な言動があったのに申し立て内容はSOGIハラと認められず。そればかりか、SOGIハラを行った教授に対するわたしたちの要望は却下されました。要望自体は、謝罪文と修正後の資料を受講者向けにアップロードするという、いたって簡単なものだったのですが。

要望が却下されたことに、落ち込みましたし、憤りもしましたが、同時に「そうだろうな」という諦めのような予感もありました。すでに、申し立てのプロセスで、ハラスメント防止委員会がいかに機能していないのか思い知らされていたからです。

このように、申し立てを通して、在籍する大学のハラスメント防止委員会の課題が、より理解できたように感じます。それだけでも「収穫」だったと自分に言い聞かせて、今も卒業まで同じ大学に通っています・・・・・・。

 

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