LGBTQ+当事者にとって身近なメンタルヘルスの問題。わたし自身も、悩んだり落ち込んだりすることが多く、3年ほどカウンセリングに通っています。悩みや落ち込みには、自分のジェンダーやセクシュアリティが関わっていることもしばしば。でも、カウンセリングでそれらについてオープンに話し、理解されるのは簡単ではありません。カミングアウトをどのくらいするのか。カミングアウトしてもカウンセラーがLGBTQ+のことを知らなさすぎる。そんな問題がつきまとうからです。
LGBTQ+当事者のメンタルヘルスとカウンセリングの必要性
さまざまな調査で、LGBTQ+当事者は、そうでない人と比べてメンタルヘルスに問題を抱えやすいことがわかっています。LGBTQ+当事者であることにより、いじめやハラスメント、差別などを受けやすいことが原因とされることもあります。
カウンセリングはなんで必要? LGBTQ+コミュニティが共倒れする可能性
わたし自身は高校生くらいの時から、希死念慮などに悩まされてきました。
NOISE記事『なぜ無理ゲーなのか? 大学のLGBTQ+サークルの運営はカミングアウト問題だけじゃない』で書いたように、わたしは大学でクィアサークルを立ち上げたということもあり、友人のほとんどがLGBTQ+当事者です。
そして、その多くがメンタルヘルスの問題を抱えています。
そのため「きついから友達に相談しよう」と思っても、相談したい友人も大変そうなことがしばしば。
相手もメンタルが不調な状況で相談をしたり、ケアを要求したりすることで、共倒れになってしまう可能性もあります。
以前、ある友人が家出し、その友人を家に受け入れた別の友人も精神的にまいってしまい、相談を受けたほかの友人もしんどい気持ちになり、それを愚痴られたわたしが「もう無理~!」となったことがありました。
そうやって共倒れしないためには、友人ではなく、誰か別の人にケアしてもらうことが不可欠です。
その1つの方法がカウンセリングを受けること。
実際、カウンセリングで思いっきり泣くことで、その出来事の悩みを解消し、わたしはようやく「共倒れのループ」を止められたように感じました。
大学のカウンセリングを受けて・・・
大学のカウンセリングを無料で受けられることを知ったのは3年ほど前。
それからわたしは週に1回、カウンセリングを受けています。
もちろん、カウンセリングに行けばいつでもすぐに「ほしいケアが得られる」とは限りません。
「なんかこのカウンセラー、話しづらいな」
「もうちょっと質問してほしいのに、黙ってるな」
「・・・・・・解決策は求めてないよ」
などと、カウンセリングを受ける側のニーズと、カウンセラーのスタイルがマッチしないこともあるからです。
そして、LGBTQ+であればなおさら、自分のセクシュアリティについて「どの程度カミングアウトできる・したいか」「カウンセラーはどのくらいLGBTQ+に理解があるか」という問題が浮上します。
カウンセリングを始めたはいいけれど、カミングアウトする? できる?
3年前、初めてカウンセリングに行ったとき、わたしはだいぶ緊張していました。
すぐにカミングアウトできない・・・

カウンセラーを信用できるかわからない。
どのくらい深い話ができるんだろう。
自分の悩みの種をわかってもらえるかな。
そんな不安や不信感のようなものがあったのです。
そのため、最初の数か月は、探り探り相談していたような気がします。カミングアウトはもちろんできませんでした。
しかし、カウンセリングで話す回数を重ねていくうちに「カミングアウトしないままパーソナルな話をする」ことは、難しくなっていきました。
わたしは女性の元恋人について話しているのに、カウンセラーは男性だと思っている。
わたしはノンバイナリーなのに、カウンセラーは女性だと思っている。
そうやって食い違うことが増えていったのです。
とうとうカウンセリングでカミングアウト
このままでは、カウンセリングで表面的な会話しかできなくなってしまう。それでは相談する意味がない。そろそろカミングアウトしないと。
そう思い始めたわたしは、カウンセリングを始めて数ヶ月後、カウンセラーにとうとう自分のセクシュアリティの話をしました。
すきになる相手は男性ではないこと。
自分の女性性に違和感があること。
それらを伝えたところ、反応は「ああそうだったんですね」というあっさりしたもの。
正直、わたしがカミングアウトしなくても「LGBTQ+当事者かもしれない」という前提でカウンセリングをしてほしかったですが、とりあえずわたしが当事者だとわかってもらえたことは、ひと安心でした。
カミングアウトをしても続く、カウンセリングでのマイクロアグレッション
カミングアウトしたからには、もう自分の悩みの前提をわかってもらえるだろう。そんな楽観的な気持ちでいたわたしは、それが間違いだったと思い知ることになります。
カミングアウトは何回も必要? カウンセリングが逆効果に・・・

「男性はすきにならない」と伝えていたのに、現在の恋愛の話になると「相手は男性ですか? 女性ですか??」と聞かれて、もう一度「男性ではない」と答えなければならなかったり。
しかもそこでは、ノンバイナリーは想定されていなかったり。
メンタルヘルスを改善するためにカウンセリングに通っているのに、むしろカウンセラーからマイクロアグレッション(意図しない差別・偏見)を受けて、メンタルが悪くなる。
そう感じることが積み重なっていったのです。
そもそも、わたしがカミングアウトするまで、この人わたしのことシスヘテロだと思ってたんだよな。
LGBTQ+のこと全然知らないじゃん。
わたしが毎回、セクシュアリティの用語を説明しなきゃいけないの、きついよ。
一度カウンセラーに不信感を抱くと、払拭するのは難しくなります。結局、そのカウンセラーにはもう相談できないと感じ、カウンセリングを始めて1年後、別のカウンセラーに担当してもらうことにしました。
今回はカウンセリングですぐにカミングアウト
新しいカウンセラーには、初回からはっきり、自分がレズビアンでありノンバイナリーであることをカミングアウトしました。
自分のセクシュアリティは、メンタルヘルスを語るうえで、やはり避けて通れないと感じたからです。
今回は、カミングアウトを早々に済ませたことで、だいぶ気が楽になり、カウンセラーに話せることが増えたように感じました。
カウンセラーも、最初からわたしのジェンダーやセクシュアリティを前提にすることで、わたしを理解しやすくなっているように見受けられました。
例えば、わたしが性嫌悪の話をしていたとき。
「それは、女性性への違和感と関係があるんですか?」と質問してきたり。
セクシュアリティの話にセンシティブになり「傷つけないようにしよう」とするだけではなく、LGBTQ+当事者だとわかったうえで、踏み込んで理解しようとしてくれる。
そんなカウンセラーの態度に、カウンセリングに対する不信感がだいぶ取り除かれました。
一件落着とはいかない。カミングアウト後のマイクロアグレッションに謝られて・・・
順調に進んでいるように思えた、新しいカウンセラーによるカウンセリング。でも、マイクロアグレッションは、カミングアウト後も、やはりゼロにはなりませんでした。
特に続いてしまうのが、代名詞の問題。
カウンセラーには、わたしのパートナーについて「彼女」という代名詞を使わず「パートナーの方」「あさかさんのパートナー」と言及してほしい、と伝えています。しかし、どうしても会話の中で「彼女」と言われてしまうのです。
カウンセラーの方も、意識はしているようで「ごめんなさい、また言っちゃいました」と言われることがほとんどなのですが。
一方で、謝られると「大丈夫ですよ」と返してしまう自分もいます。
結局、カウンセラーも人間なので、わたしも少し気を遣うからです。でもそんなとき、自分自身もパートナーの代名詞をリスペクトしていないみたいで、モヤモヤします。
マイクロアグレッションをされた側が気を遣って「ゆるす」必要が出てこないよう、カウンセラーは謝るのではなく「次は気をつけます」「間違えました」とだけ言ってくれればいいのかもしれないと、わたしは思います。
セーファーなカウンセリングのために
わたしはカウンセリングを通して、カミングアウトをすることの困難や、カミングアウトしたあとも続くマイクロアグレッションのしんどさを経験してきました。より安全なカウンセリングの空間をつくるには、どうすればよいのでしょうか。
カウンセリングする人にも研修が必要

正直、カウンセリングでのマイクロアグレッションは、カウンセラーが「学ぶ」ことでどうにかなるものが多いように思います。
カウンセリングを受ける人にはLGBTQ+当事者もいること。
相手やその周りの人の代名詞や呼ばれたい名前を尊重すること。
「どちらの性別」など、男女二元論を前提にした言葉遣いに気をつけること。
初歩的なLGBTQ+にまつわる知識をつけるだけでもだいぶ、カウンセリングにおけるマイクロアグレッションが減る気がします。そのための、カウンセラー向けのLGBTQ+研修があったらいいのかもしれません。
AIからカウンセリングを受ける?
最近、周りのクィアな友人たちと話しているのが「AIにカウンセリングしてもらう」可能性について。
AIだったら「カミングアウトしたらどんな反応されるんだろう」と心配することもなく、情報として、自分のジェンダーやセクシュアリティの話を「インプット」できますし、AIがなにかを間違えたり、マイクロアグレッションをしてきたりしたら、気を遣わずに指摘できます。
実際、わたしも対人カウンセリングに通いつつ、時々、AIに感情の整理を手伝ってもらうことがあります。
もちろん、AIにだってバイアスがありますし、人間に相談するときと感覚は違います。でも、カミングアウトやマイクロアグレッションの問題に悩まされがちなLGBTQ+当事者にとっての、ケアの一方法として、試してみてもいいかもしれません。
■参考情報
・「セクシュアルマイノリティとメンタルヘルス」松本洋輔(2021年)(PDF)



