LGBTQ+当事者ほど、身近な場所で恋人を探すのは難しいとよく言われる。では、実際にマッチングアプリなどのツールを使って恋人を探すとしたら、何に気をつけたらいいのか? どんなメリット・デメリットがあるのか? 友人と語り合ってみた。
LGBTQ+当事者である私のマッチングアプリ体験
レズビアン同士が出会う手段の中でも「マッチングアプリ」は安心感がある?
私は現在のパートナーと、マッチングアプリで知り合った。
「もしかしたら自分はレズビアンかもしれない」と気がついてから数年、身近な人や友人に恋心を抱いたこともあったけれど、異性愛者である人や、セクシュアリティがわからない人に片想いをするのがだんだん苦しくなり、ずっと恋愛に踏み出せないでいた。
「レズビアン 出会い方」で検索すると、出てくる手段は
・レズビアンバーに行く
・オフ会(イベント)に行く
・掲示板に書き込む
・マッチングアプリで探す
などこれまでの人生では触れたことのないものばかり。
かろうじて心理的ハードルが低かったのが、オンラインで始められて、比較的安全性も高そうに思える「マッチングアプリ」だったのだ。
私が利用したマッチングアプリは、女性同士が出会うことを前提としたものであったため、「身分証の提示」が必須だった。
つまり、戸籍上女性であることが証明された人のみがそのアプリを利用しているということ。(※当時のアプリはすでになくなってしまったけれど、2025年11月現在も同じような仕様のアプリは存在する)
だからこそ、少しは安全かもしれないと思えてアプリを利用することができたものの、当時は周囲にマッチングアプリを使っている人も、積極的に恋人探しをしているLGBTQ+の知人もおらず、相談できる人がいないまま、完全に手探りの状態で恋活を進めていた。
LGBTQ+の「マッチングアプリ体験」について話し合おうと思った理由
マッチングアプリを始めたばかりの頃は全然勝手がわからず、マッチングした人と実際に会うところまで、なかなか至らなかった。
そもそもアプリ上でのマッチングもあまりうまくいかなくて、何度もインターネットで情報を調べ、時にはよくわからない情報に惑わされたりしながら、プロフィール文を書き換えたり写真を入れ換えたり、相手に送る文章を工夫したりしていた。
そのうち疲れてしまい、恋人探しをあきらめて、アプリを消してしまうことも何度もあった。
LGBTQ+当事者が恋人を探すなんて、やっぱり一筋縄ではいかないか・・・・・・と暗い気持ちになってしまったこともある。
最終的に今のパートナーと出会うことはできたものの「LGBTQ+の恋人探し」の難しさは未だに深く心に刻まれている。
そこで、同じくLGBTQ+当事者である友人と、あらためて「マッチングアプリで恋人を探した体験」について話し合い、恋人探しのコツのようなものをふたりで考えてみることにした。
LGBTQ+のマッチングアプリ体験は苦労の連続?
話し合った友人はノンセクシュアルで、やはりマッチングアプリで恋人を探し、数年前に結婚相手を見つけることができたという。(関連記事はこちらNOISE記事「ノンセクシュアルの友人が結婚する-LGBTQ+の恋活事情」)
マッチングアプリでLGBTQ+当事者が直面する困難とは

私はマッチングアプリをひとつしか使わず、そのアプリも数週間利用しては消し、しばらくしたらまたダウンロードして・・・・・・を繰り返していたのだけれど、友人のほうは複数のマッチングアプリを駆使し「短期決戦で」恋人探しをしていた。
「短期決戦っていっても、間に失恋も挟んでいるし、今の夫と出会うまで1年くらいはかかったけどね」
友人は涼しげにそう言い放っていたものの、私はその胆力に圧倒された。
なぜなら、LGBTQ+当事者がマッチングアプリで恋人を探すには、マジョリティの人たちとはまた違った苦労があるからだ。
マッチングアプリでLGBTQ+であることを表明した結果
友人は、自分が「恋愛感情を抱くものの、他者への性的欲求は抱かない」ノンセクシュアルであることに30代になってから気がついた。
それまで、自分の恋愛感情と性的欲求のバランスに悩み、自分は一生結婚できないのかもしれないと思い詰めていたところに、LGBTQ+についての情報を知り、自分のセクシュアリティを知ったのだ。
自分の性質がきちんと他人に説明できるのであれば、恋愛も結婚もあきらめなくていいはず! と気づいた友人はすぐさまマッチングアプリをダウンロードし、プロフィール文に「自分がLGBTQ+であること」の説明を丁寧に書き込んだ。
性的な行為や妊娠・出産が難しいかもしれないという可能性についてプロフィール文で説明するというのは、マッチングの確立を大幅に下げてしまいそうに思える。
実際、プロフィール文をよく見ずに連絡してきた相手に、まったく同じ説明をメッセージ送信すると、半数以上から返信は届かず、音沙汰がなくなったのだという。
それでも、LGBTQ+当事者である友人にとって、その手順は必要不可欠だった。
「体感として、6割はそのまま返信が来なくなって、3割はセクハラっぽい発言をしてきたり、まともに取り合ってくれなかったりする男性が多かったかな。実際に会おうと思えたのは、残りの1割くらい」と彼女は語る。
マジョリティの異性同士でもなかなか確認しづらい「性行為や性的欲求について」の話題をしょっぱなからダイレクトにぶつける友人の手法は、マッチングアプリを利用している人の中ではちょっと異質だったかもしれない。
しかし、交際を始めたあとでセクシュアリティを打ち明けるのではなく、最初から自分にも相手にとっても重要な情報をオープンにした状態で、それでもなお「会いたい」と言ってくれる相手を探すというのは、ある意味では手っ取り早かったのだろう。
友人はそこから10数名の男性と実際に会い、現在のパートナーさんと出会ったそうだ。
LGBTQ+ならではの苦労を直球勝負で乗り越えて、しっかりと成果をあげる彼女のマッチングアプリ術は、さながら「就職活動」のようだった。
レズビアン向けマッチングアプリの「細かい検索条件」
一方、私は女性向けマッチングアプリひとつを細々と利用していたのみで、友人と比べてマッチングした人の数も、実際に会った人の数も圧倒的に少ない。
短期間にたくさんの人とやりとりしたり、会って話をしたりするのは苦手分野だったので、それくらいのペースが私にとっては心地よかったのだ。
ただ、私は友人とはまた異なるLGBTQ+ならではの苦労があった。
その理由は「レズビアンの恋人探しは、条件が複雑である」という点にあった。
当時、交際経験がなく知識もあまりなかった私にとって、女性向けマッチングアプリの仕様は驚きの連続だった。
まず、自分の情報について、簡単なプロフィール以外に「レズビアンか、バイセクシュアルか、FTMか、あるいはその他か」「タチか、ネコか、あるいはリバか」「ボイか、フェムか、あるいは中性か」などを選ぶ項目があるのだ。
「???」と頭の中にハテナを飛ばしながら検索すると、それらは自分の詳細なセクシュアリティ、性行為における役割分担、見た目の特徴などを示す用語であることがわかった。
なぜこれらを細かく登録する必要があるのかといえば、マッチングしたい相手を検索するときの「検索条件」になるからだ。
女性が恋愛対象である女性の中でも、好みのタイプや性的指向に合うタイプは人によって異なる。
「私はネコ(性行為において受動的なタイプ)のレズビアンだから、相手はタチ(性行為において能動的なタイプ)の女性がいい」
「相手のセクシュアリティは問わないけど、中性的な雰囲気の人に恋愛感情を抱きやすい」
というように、お互いに自分の条件に合った人とマッチングできるよう、自分自身も詳細なプロフィール登録が必要になってくるのだ。
私はおそるおそるプロフィールを入力したものの、まったくの未経験では自分のセクシュアリティも特徴もよくわからず、ものすごくぼんやりとした人物像しかわからない状態で登録してしまい、案の定ろくにマッチングすることができなかった。また、相手に求める条件もよくわからないままだと、検索機能もうまく使いこなせなかった。
その後、試行錯誤を繰り返してプロフィールの文章も少しはましになり、現在のパートナーと出会うことができたけれど、もう一度同じことをしろと言われたらゲンナリすると思う。
それくらい「自分のプロフィールを詳細に明かす」ことと「条件で人を選ぶ」ことは私にとってストレスフルだった。
マッチングアプリでLGBTQ+が恋人と出会うコツとは?
私も友人も、結果的にマッチングアプリを通じてパートナーと出会うことができたけれど、しいて言えばどこに出会いのコツがあったのだろうか?
マッチングアプリのコツは「数をこなすこと」と「会う前の電話」

友人いわく、マッチングアプリで恋人を探すコツは「最初はとにかく割り切って、数をこなすこと」「会う前に必ず電話をすること」だそうだ。
マジョリティも利用するような大手のマッチングアプリを使う場合、とにかく相手の母数が多くなる。
そこから「自分のセクシュアリティを受け入れてくれそうな人」を絞り込むために、とにかくたくさんの相手とメッセージをやり取りすることが重要だという。
最終的に「会おう」と思える人は、マッチングした相手のうち1割しか残らないのであれば、そこまでの過程はビジネスライクに淡々とこなすに限る、というのが友人の持論だ。
その方法で毎日のように複数人とメッセージのやりとりをし、時には他府県まで遠出してデートに通った結果、現在のパートナーさんと結婚できたのだから、友人の「自分に合った方法」を見つける能力には感心する。
また、会う前に電話を挟むことで「少なくとも話が合うかどうか」「話をしているときの相手がどんな雰囲気か」はわかるから、デートの際に相手がイメージと全然違う! となって落胆することは減ったらしい。
「そこまで努力して会っても、結局セクシュアリティのことは理解してくれていなくて、性行為を求めてくる人もいたけどね」と友人は苦笑した。
LGBTQ+の恋人探しは、最後の最後まで気が抜けない。
マッチングアプリの検索条件を見直すことで、出会いの可能性を広げる!
私の場合は、そもそもマッチングする相手の母数が少なかったのだけど、パートナーと出会うために「検索条件の見直し」は必須だった。
何度目かの挫折を経験してから「自分の行動範囲で恋人を探そうとするのはあきらめよう!」と決心し、相手の居住地の検索条件を大幅に広げることにした。
居住地や年齢、セクシュアリティといった条件はできるだけゆるく設定し、むしろ「プロフィールの文章が誠実そうか」といったあいまいな部分を重視して探した結果、今までは検索に引っかかってこなかった人たちとマッチングすることができ、その中に現在のパートナーも含まれていた。
友人も、現在のパートナーさんは年下かつ、新幹線でしか会えない距離に住んでいた人だったため「マッチングアプリで行き詰ったら、年齢や居住地は条件をゆるめたほうがいいと思う!」と力説していた。
マッチングアプリだからこそ「出会えた」こと

マッチングアプリは「恋人(またはそれに準ずる関係性の人)を探すためのツール」だから、そのこと自体に抵抗をおぼえる人もいる。
お互いに恋人候補として出会うのではなく、もっとフラットな環境で出会って、自然と好意が芽生えるような恋愛がしたいと思う気持ちは、私も恋活中に何度か味わった。
ただ、友人と意見が一致したのは「マッチングアプリで出会うからこそ、いつもと違う自分の一面が出せることがある」という点だ。
職場や学校、趣味の場や以前からの友人関係だと、自分のキャラクターがある程度固まってしまっているけれど、マッチングアプリで新しく出会う相手の前では、家族や友人といるときとも違う、新しい自分のキャラクターを出すことが可能になる。
私も友人も、むしろそちら(恋人候補の人と会うときの自分)のほうが素の自分に近いと感じた。
だからこそ、普段のコミュニティでは出会ったことのないタイプの人と出会うことができたし、同時に新しい自分の一面も知ることができた。
LGBTQ+当事者がマッチングアプリを利用するには困難もつきものだけれど、「マッチングアプリならではの良さもある」ということを、最後にしっかり伝えておきたい。

