わたしは約1年前、通っている大学で友人たちとLGBTQ+サークルを立ち上げました。当事者もアライも誰でも入れるサークル。間口は広いのに、設立1年ですでに存続の危機に瀕しています。わたしの入っているサークルだけでなく「大学のLGBTQ+サークルは運営が大変だ」「消滅しやすい」とよく耳にします。どうして運営や存続が難しいのでしょうか。独自の視点で探っていきます。
LGBTQ+サークル創立の難しさ。カミングアウトにまつわる問題
約1年前、大学3年生になってから友人たちと立ち上げたLGBTQ+サークル。立ち上げるには、さまざまな困難がありました。
LGBTQ+当事者だと、カミングアウトしている人が少ない
わたしが大学に入学したとき、わたしの通っているキャンパスには、LGBTQ+のためのサークルは1つも存在しませんでした。
サークルがないのは残念でしたが、正直「LGBTQ+サークルがなくても、ほかのクィアとつながれるだろう」「カミングアウトすること・されることも多いだろう」と思っていました。
しかし、大学生活を過ごすなかで感じたのは、周りにカミングアウトしているLGBTQ+当事者の少なさ。
わたしのキャンパスにはLGBTQ+にフォーカスした授業やゼミがほぼゼロ。
だからなのか、そもそもLGBTQ+当事者だとお互いがわかる状態になることが、ほぼありませんでした。わたしは大学1年生のとき、学内で自分以外の当事者は、3人しか知りませんでした。
一方、わたしの大学では、サークルをつくるために5人以上のメンバーが必要です。そのため、LGBTQ+のサークルを立ち上げようにも、そもそも条件がそろっていませんでした。
人は集まったけど、本名を出したくない? カミングアウトの困難
大学2年生になり、偶然が重なって友人とお互いにクィアだと知ったり。パレスチナ連帯のイベント参加者にLGBTQ+当事者が多かったり。わたしと同じようにクィアをテーマにした研究をしている人と知り合ったり。
2年生の終わり頃には、LGBTQ+当事者の大学の友人が7人ほどできていました。
ようやくLGBTQ+サークルをつくれるかもしれない、そんな希望を持ったのも束の間、新たな問題が浮上しました。
というのも、大学のサークルとして正式に登録する場合、各メンバーの本名と学籍番号を学校の事務に申告することが必須だったのです。そして、教員による認証も。
つまり、学生5人以上、事務と教員に「LGBTQ+サークルのメンバー」として、本名を知られてもいい人が必要だということ。
「親しい友人の間ではジェンダーやセクシュアリティのことを話すけれど、本名でLGBTQ+サークルに登録するのはちょっと・・・・・・」
「教員に自分の個人的なセクシュアリティを知られたくないな・・・・・・」
7人の友人のなかには、そのように感じて、登録をためらう人もいました。
サークルは、LGBTQ+当事者ではないアライの人たちも参加可能にする予定でした。
そのため「メンバーになること=LGBTQ+当事者だとカミングアウト」というわけではありません。
しかし、メンバーになると「LGBTQ+当事者なのかな?」と邪推されてしまうというのも事実です。
そのため、登録に心配がつのる気持ちが痛いほどわかり、LGBTQ+サークル結成への申告を友人たちに「どうしても」と、お願いすることはできませんでした。
LGBTQ+サークルがようやくできて・・・
去年2025年4月、サークル創立の計画を始めてから数ヶ月後。最低人数ぎりぎりの5人が、サークル結成の申告に同意してくれたため、ようやく実際にLGBTQ+サークルを立ち上げることができました。
匿名性が高いDiscordのグループを開き、メンバーを招待したり。
初めてのサークルイベント企画をしてみたり。
サークルのSNSアカウントをつくったり。
グラウンドルールを設定したり。
サークルの結成に向けて、目まぐるしい初期設定をしているなかで、問題になってきたのが広報でした。
大学のLGBTQ+サークルは、広報が難しい? カミングアウト問題だけでなく
LGBTQ+サークル発足当時、メンバーと話し合わなければいけなかったのは「新入生歓迎イベントをどうするか」でした。
サークルでどこまで顔出しOK? またもやカミングアウトの困難

わたしのキャンパスでは、入学時期の4月と9月に、サークルの新入生歓迎イベントが行われます。現役生が新入生に、サークルの内容や雰囲気を説明する会です。
当日は、たくさんの人が食堂に集まり、新入生はお目当てのサークルのブースをまわります。このイベントがきっかけで、サークルに入る新入生が多いです。
しかし、わたしたちが心配したのは「わたしたちLGBTQ+サークルで~す」「LGBTQ+当事者のためのイベントをやってます!」と、ほかの学生が大勢いる前で宣伝できるかどうか、ということでした。
繰り返しになりますが、メンバーの全員が周りにジェンダーやセクシュアリティをカミングアウトしているわけではありません。
知り合いも参加しているかもしれない大きなイベントで、新入生勧誘のためにLGBTQ+サークルの宣伝を行うことには「期せずしてジェンダー、セクシュアリティを知られてしまう」というリスクがともないます。
カミングアウトに近い行為になってしまうのです。
わたしたちは結局、新歓イベントのブースは出すものの、メンバーはそこには座らず、ポスターだけ置いておくことにしました。
ほかのサークルは「呼び込み」なども行っている一方、わたしたちは積極的なPRができなかったので、新入生に素通りされてしまったことも多かったのではないかと思います。
実際、あとから「新歓、行ったんですけど人がいなかったから雰囲気がわからなくて・・・・・・」と新入生から言われることがありました。
「あの時、ブースにいたら、もっとたくさんの新入生が気づいて、参加してくれたかな」と残念な気持ちになりました。
「政治的なポスターはダメ」事件。LGBTQ+への差別に反対するのは政治的?
広報の難しさは、カミングアウトにまつわるものだけに留まりません。
次に起こったのは、「政治的なポスターはダメ」事件でした。
ある日、イベントの広報ポスターを持って、掲示の許可をとろうと、事務局に向かいました。ポスターを事務員に見せると「書き直してほしい」とのこと。
なぜかと聞くと、答えは「このポスターは政治的だから」。
わたしたちのポスターには「トランス差別に反対します」と大きく書かれていました。
当時、ちょうどSNSなどで、トランスジェンダー差別が激化した時期でもあったため、トランスジェンダーとの連帯を示そうと含めた文言。
その部分が「政治的だから掲示できない」と言われたのでした。
正直、差別に反対するということが、とくべつ政治的だとは思いませんし、もし政治的だとしても「政治的なコンテンツは掲示できない」というルールが校則などに明記されているわけではありません。(そもそも、政治的でないものなんて、世の中にはないんじゃないかなとも思います・・・・・・。)
しかし、事務に「そんなルールはないじゃないですか!?」と言っても「ダメです」の一点張り。結局泣く泣く「差別に反対します」という言葉を消して掲示するしかありませんでした。
LGBTQ+サークルなのだから、LGBTQ+に対する差別に反対することは当たり前です。ポスターに含めるのも必然的だと思いますが「わたしたちのメッセージをそのまま広報すること」の難しさを実感した一件でした。
LGBTQ+サークルのイベント。参加者は集まっても、運営が難しい
広報が難しいとはいえ、わたしたちのLGBTQ+サークルは、この1年で、だいぶ人数が増えてきました。イベントに新しく参加してくれる人も、毎回ちらほら。一方で「運営メンバーが足りない問題」がだんだんと表面化してきます。
LGBTQ+サークルは、兼サー率が高い?

参加者はたくさんいても、運営に携わってくれるメンバーが少ない理由の一つ。
それは、LGBTQ+サークルは、兼サー(複数のサークルをかけもつこと)している人の割合が大きいこと。
LGBTQ+サークルは、週に複数回、練習があるような体育会系のサークルなどと比べて、単発でイベントに参加する人が多いです。だからか、メンバーの話を聞いている限り、ほかのサークルとかけもちで参加している人がほとんどです。
そのため、参加はできても、企画や運営まではしない・できない人が大半。
わたしたちのLGBTQ+サークルも、Discordには30人近く参加してくれていますが、企画やSNS運用などをしている運営メンバーは、3~4人ほど。
少人数で運営し続けるのには無理があります。わたし自身、自分の研究やバイトで忙しいときは、ほとんど何も企画できず、今年の2月もそんな感じです・・・・・・。
LGBTQ+当事者のメンタルヘルスの課題
運営メンバーが集まらない理由は、ほかにもあります。
わたしが何度も深く実感している理由の一つが、LGBTQ+当事者のメンタルヘルスの現状です。
さまざまな研究で、LGBTQ+当事者は、そうでない人たちと比べて、不安症やうつ病など、メンタルヘルスの問題を経験するリスクが高いとされています。
実際、わたしたちのLGBTQ+サークルでも、運営メンバーを含め、メンタルの問題に悩んでいる人が多いです。
わたし自身も長らくカウンセリングに通っており、正直自分のメンタルが落ちているときは、LGBTQ+サークルの運営に割くエネルギーはありません。
そんなことも重なって、LGBTQ+サークルがせっかく立ち上がり、参加者が集まってきても、企画など運営に必要な活動を担える人が、圧倒的に足りないという問題が起こるのです。
LGBTQ+サークルを存続させたい気持ちはあるけど

立ち上げたあとも、広報や運営に困難がつきまとうLGBTQ+サークル。
創立メンバーの1人として、このLGBTQ+サークルを続けていきたいと思いつつも、運営・存続の大変さに少し絶望的な気持ちでもいます。
一方、大学に入学して1年間、ほかのクィアを3人しか知らなかったときの孤独感を思い出すと、やはり「LGBTQ+サークルが存在している」ということ自体に価値があるように思います。
もしかしたら、ほかのサークルやゼミとコラボしたり、講演会など人がもっと集まるものを開いてみたり。そういうことを地道に続けていけば、メンバーも増えて、運営に携わってくれる人も多くなり、現運営メンバーの負担が減るのかもしれません。
今後もさまざまな方法を試してみつつ、いろいろな人と話し合い、助けを借りながら、もう少し踏ん張って活動していきたい気持ちでいます。
■参考情報
PEACEMIND『企業のためのLGBTQ支援とメンタルヘルス:心理専門家の視点から』



