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Writer/遥

政治とLGBT。レズビアンの私が、クィアの友人と会話でモヤモヤした理由

LGBT当事者なら、みんな政治に関心がある。レズビアンの私には、そんな思い込みがありました。しかし、実際には政治への関心の持ち方も距離の取り方も人それぞれ。そのことに気づいた出来事を通じて、マイノリティ同士の「温度差」とどう向き合えばよいのかを考えました。

レズビアンの私にあった「LGBT当事者=政治的であれ」という期待

LGBTコミュニティで人と関わるなかで「当事者ならセクシュアリティ関連の用語や、昨今のLGBTニュースに詳しいはず」「マイノリティである以上、政治に関心を持たなくてはならない」という空気を感じることがあります。私自身もそんな期待をどこかで抱いていました。しかし、レズビアンの友人との何気ない会話をきっかけに、その思い込みが揺らぎます。

レズビアンの友人と政治の話。LGBT当事者同士の「違い」を実感

ある日、レズビアンの友人と久しぶりに会い、なりゆきで政治の話になりました。

LGBTの権利やパレスチナ・イスラエル戦争のニュースを例にあげて「最近こういうニュースがあったね」と私が話すと、友人は「正直、政治ってよくわからないし、あんまり興味がないんだよね。LGBTのこともそっとしてほしい」とさらりと言いました。

その言葉を聞いて、私は「そういう考えもあるよね」と思い、すぐに別の話をしました。しかし、友人と別れて自宅に帰ったあと、友人との会話を思い出しながら、モヤモヤした感情が胸の奥に残っていることに気づきました。

「関心がない」と言われて感じた、モヤモヤの正体

私にとって、政治はLGBTの権利や、私たちの生活を守るために不可欠な「基盤」のようなものであり、常に情報を追いかけることを当然だと感じていました。

そのため、友人が「政治に関心がない」と言ったとき、正直なところ戸惑いと違和感を覚えました。

しかし、それは友人が間違っているからではなく、私のなかに「セクシュアルマイノリティである以上、政治に関心を持つべきだ」という無意識のプレッシャーがあったからだと気づいたのです。

自分のなかにあったLGBT当事者に対する理想と現実のギャップ。これを自ら意識したのは、このときが初めてでした。

LGBT当事者でも政治への関心度合いやスタンスは人それぞれ

LGBT当事者という共通点があっても、政治への距離感は人によって違います。その背景には、個々の経験や価値観、置かれた環境の違いがあると気がつきました。

レズビアンを公言するチャペル・ローンの主張から考える「クィア幻想」

友人との会話でモヤモヤしたときに、私はレズビアンを公言しているアメリカのシンガーソングライター、チャペル・ローンの発言をふと思い出しました。

チャペル・ローンは2025年3月にポッドキャスト番組『Call Her Daddy』に出演した際に「私が同性愛者だから『政治的に正しい考えや深い知識を持っている』と思われがちです」「私が関心を持つトピックの何もかもを知っているわけではありません」との旨を語りました。

彼女は「これからも、できる限りのことは学んでいきたい」という意向を示しつつも、同性愛者であるがゆえに人々に期待されてしまう現状についての違和感を吐露しました。

チャペル・ローンの言葉は「セクシュアルマイノリティだからといって政治や社会問題に対して同じ熱量や知識を持つとは限らない」という現実を改めて教えてくれたような気がします。

そして、理想を押しつけて正しさを強要することは、相手を傷つける刃となりうることを、彼女の言葉を思い返しながら痛感しました。

「政治に関心がない」の背景にある、LGBT当事者それぞれの事情

友人が「政治に興味がない」と発言したのは、決して無知や無関心が理由ではないと思います。

その言葉の背景には、日々の生活で優先したいことや心の余裕、置かれている環境など、さまざまな事情があるのだと考えています。

たとえば、同性同士の結婚の法制化や戦争といったトピックスよりも、介護や教育、労働賃金の改善など、より身近に感じやすいテーマが重要だと考えている可能性もあります。

相手がこちらを「深い話ができる間柄」だと思っていない、もしくは距離感を測りかねているケースもあるでしょう。

また「LGBTのこともそっとしてほしい」と感じるのは、過去に差別された経験など、そう感じるに至る背景があるからかもしれません。

日々の生活を送るだけで精一杯で、政治に目を向ける余裕がないこともあります。

私自身も、パートナーがいなかった時期にはLGBT関連のニュースを自分ごととして受け止められず、関心を持てずにいた過去があります。このように、政治への距離の取り方には、その人の経験や状況が深く関わっているのだと思います。

レズビアンの私が考える、LGBT当事者同士の「違い」や政治との向き合い方

同じLGBT当事者であっても、抱える背景や日々の生活環境は一人ひとり異なり、その違いが政治への関心度合いや姿勢にも表れます。だからこそ、簡単にはすり合わせられない複雑さがあると感じます。

「正しさ」ではなく「現状・経験」を起点に話す

LGBT当事者に限らず、誰かと政治や社会の話をするときに、自分の考えを「正しい」と押しつけることは、お互いの理解につながりません。

たとえば、同性同士の結婚の法制化やLGBTの権利を強く求める人がいる一方で、仕事や人間関係、将来への不安から政治に関心を向けられない人もいます。

ここで大切なのは、まず相手の「現状・経験」に耳を傾けることだと思います。

もし、相手と深い話をできる間柄であるなら「なぜ今は政治に関心を持ちにくいのか」「これまでクィアとして生きてきて、つらいと思った経験があるか」をさりげなく聞いてみると、相手の置かれている状況や気持ちを理解しやすくなります。

ただ、相手が政治の話題に関心がなさそうだったり、会話を終わらせたい雰囲気だったりする場合は、無理に話を続けないようにしています。

そもそも、よほど親しい間柄でない限り「政治」「宗教」などの話題は、個人の思想や信条に密接に関わっていて、意見の対立から人間関係を損ねる可能性があります。

もし対話をするのであれば、相手を変えるためではなく、互いの違いを知り、尊重するためのものだと意識しています。

LGBT当事者として、今の日本の政治に危機感。でも押しつけたくない

レズビアンの私は、同性同士の結婚の法制化が実現していない現状や、LGBTの声が軽視されがちな社会に強い危機感を覚えています。私たちの権利や尊厳が政治のあり方に左右される以上、関心を持つことは大切だと感じます。

しかし同時に、それをほかのLGBT当事者に押しつけることは違うとも思います。

政治への向き合い方は人それぞれで、沈黙にも理由がある。だからこそ、互いの立場や思いを知るための「対話」を大切にしていきたい。最近はそう考えるようになりました。

私は「みんなで同じ方向を向くこと」よりも「違う立場を尊重しながら声を上げられる社会」を目指したいのです。

正直なところ「今の日本はもう、きれいごとでは済まされないところまで来ている」と感じる瞬間もあります。

だからこそ私たち一人ひとりが、できる方法で声を上げたり、話し合ったりすることが大切なのだと思います。

小さな対話の積み重ねが、やがて社会を少しずつ動かしていくと信じています。

 

■参考情報
BuzzFeed 人気歌手「私がレズビアンだからといって…」同性愛者に寄せられる”期待”に違和感、ネットで議論に
The Hollywood Reporter Chappell Roan Says People Expect Her to “Play by Different Rules Because I’m Gay”

 

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