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男女どちらでもなく、男女どちらでもある “かわいい” 自分。それが僕のXジェンダー。【前編】

ほっそりとした容姿に、小動物のような愛らしい仕草。パステルトーンのファッションに身を包んだ向原雄樹さんに出会った瞬間、思わず「かわいい」と口に出してしまいそうになる。誰からもかわいがられるキャラクターであるからこそ、目立ってしまっていじめの対象となり、疎外感を感じていた時期もあった。そんな苦しみから逃れることができたのは、少女漫画やアイドルの存在があった。

2022/07/06/Wed
Photo : Mayumi Suzuki Text : Kei Yoshida
向原 雄樹 / Yuki Mukaibara

1990年、広島県生まれ。3人きょうだいのまん中っことして育ち、周りからかわいがられる存在へと成長。思春期に入り、恋愛や性についての話題に対して拒否反応を示す自分に疑問をもち始める。福岡大学文学部卒業後は、企業の外食産業部門に勤めたが、「やりたいことは、いまやろう」と演劇の道へ進む。現在は主に、シナリオライターや構成作家、俳優として活動している。

USERS LOVED LOVE IT! 5
INDEX
01 姉に逆らえず、弟にナメられて
02 少女漫画の主人公のように
03 「ぶりっ子」「女っぽい」
04 ハロプロが好きだからオカマ?
05 かわいがられる技はアイドルから
==================(後編)========================
06 恋愛感情を“推し”に変換
07 登場人物に自分を重ねて
08 自分には性欲があるのかないのか
09 Xジェンダーという言葉を知って
10 いつか誰かと一緒にいられる時間が

01姉に逆らえず、弟にナメられて

LINEでつながる5人家族

2つ上の姉と4つ下の弟。そして両親。
現在それぞれ離れて暮らすほかの家族4人とは、LINEでつながっている。

「家族のLINEグループがあるんですが、お父さんが、いきなり自撮りを送ってきたりとか(笑)」

「最近、ちょうど実家が引っ越したところなので、以前の家に住んでた頃の写真を集めて、僕が動画にしてシェアしたりとかしてます」

いまでこそ仲のよい家族だが、実は、小さな頃は姉が怖かった。

「なにかのきっかけで姉を怒らせたことがあって、僕の大切なハロプロ(ハロー!プロジェクト)のカセットテープからテープをビッと引き出されて、聴けなくなってしまったんですよ・・・・・・」

「もう、それ以降は姉に逆らえなくなっちゃいました。姉に逆らうと痛い目をみる、と思い知ったので(笑)」

「カセットテープが聴けなくなってしまったショックが大きすぎて、仕返しもできないし・・・・・・。あのとき、完全に心が折れました」

そして、弟からは「ナメられてる感じ」だった。

「姉のことは “さん” 付けで呼ぶのに、兄である僕のことは呼び捨てなんですよ(笑)」

「まぁでも、そんな風にムカつくところはあったけど、お互い大人になってからは、会うと『イェーイ』ってハイタッチとかするような仲です」

父との入浴は試練の時間

父もまた、幼い頃の自分にとっては怖い存在だった。

「結婚する前の写真を見ると、髪をリーゼントにして、ヤンキー座りをしているような感じの人だったみたいです(笑)」

「で、母は、そんな父にベタ惚れしていたそうで」

そんな父との入浴時間が苦痛だった。

「僕、水が苦手だったんですが、お父さんと一緒にお風呂に入って、髪の毛を洗ってもらうとき、顔に水がかからないように上を向いていると、お父さんは絶対に下を向かせるんですよ」

「だから、『お父さんとお風呂入るのイヤだ!』って言ってましたね(笑)」

「あと・・・・・・僕が扇風機の首を折ってしまったり、なにか悪いことをしたときには、必ずお父さんに怒られてましたね」

「僕、物をうっかり壊すことが多かったんですが、その度にすっごく怒られました」

そして母から教わったことは、節約という生活の知恵。

いつも「お菓子は100円まで」と決められていて、お年玉をやりくりして、欲しいものを買う習慣が身についた。

「あとは、誕生日とかに欲しいものを買ってもらったり」

「お父さんが衝動買いするタイプなので、ゲームを買ってきてくれることとかもありました。で、一緒にやったりしてましたね」

02少女漫画の主人公のように

「お姉ちゃんみたいになりたい」

“逆らえない存在” だった姉は、“憧れの存在” でもあった。

「姉は、みんなにかわいがられて、誰にでも愛されるタイプなんです」

「そんな姉を見て、僕は5歳くらいから、ずっと『お姉ちゃんみたいになりたい』って思ってました」

「姉が『美少女戦士セーラームーン』のおもちゃを持ってたら、同じものを欲しがったり・・・・・・。その点、姉は飽き性だったので、姉が遊ばなくなったおもちゃをもらって、よく遊んでました」

「そんな感じで、いわゆる “女の子の遊び” も、よくやってました」

とはいえ、どちらかというと男の子が好む『きかんしゃトーマス』のおもちゃでもよく遊んでいて、例えばセーラームーンごっこをしていたとしても、両親など周囲から「男の子なのに」と咎められることはなかった。

人前に立って、演技をしてみたい

また、姉の影響で少女漫画もよく読んでいた。

「『セーラームーン』から始まって、『ママレード・ボーイ』とか『ご近所物語』とかを好きになって。このあたりは繰り返し読んでました」

「あと、『こどものおもちゃ』!」

「主人公のサナちゃんみたいになりたかったんです」

「芸能界で活躍している小学生なんですが、いつも明るくて、元気で、ちょっとおもしろい子で。僕も、サナちゃんみたいに人前に立って、演技をしてみたい、と思って」

この作品に出会ったことが、現在の俳優としての活動の基盤になっている。

このように少女漫画が大好きだったこともあり、女の子の友だちも多い小学校時代だった。

女の子の友だちグループ5人に、男の子は自分1人だけで交換日記に参加したり、放課後にそのうちの誰かの家に集まったり。

そんなふうに女の子と仲良く過ごす日もあれば、男の子の友だちグループで集まって、ゲーム『ポケットモンスター』で遊ぶことも。

男女問わず、遊びたい相手と好きなことを一緒に楽しんでいた。

03 「ぶりっこ」「女っぽい」

かわいがられるポジションに

女の子とも男の子とも仲がよかった小学生の頃の、クラスでの立ち位置は「変なところにピョンと浮いているような存在」だった。

「それは、いままでずっと変わっていないかもしれない(笑)」

「自分自身も、みんなとは違う、そのポジションに居たいって気持ちもあったんだと思います。だから、いまもそこに」

「女の子からは『かわいい』って言ってもらえて、男の子からも、まぁまぁかわいがられるポジション(笑)」

「それでいて、友だちとして対等に接してくれていたと思うし」

しかし、小学校高学年になり、そのポジションに居ることが、周りからからかわれる理由となってしまった。

「女の子と遊んでいると、『おまえ、あいつのこと好きなんだろ!』とか言われるようになってきて」

そう言われても、気にせずに女の子と仲良くしていると、「そうやって、かわいこぶって、女子に気に入られたいだけなんだろ」とも言われた。

耐えきれずに泣き出す日も

かわいこぶっているとされ、“ぶりっこ” と呼ばれることも。

「そうして、だんだん “かわいがられるポジション” に居づらくなってしまって。仲良くなった女の子とも距離ができてしまったり」

「でも、“ぶりっ子” って言ってくる男の子に、なにも言い返せなくて、ただ黙って・・・・・・言葉を飲み込んでました」

仕方なく、女の子と話すのを控えることにした。

また、周囲からかわいいといわれる振る舞いを見て、「女っぽい」「おまえ、女かよ!」とからかう男の子もいた。

「そうなってくると、女の子だけじゃなくて、男の子ともしゃべりたくなくなってきちゃって」

「で、からかわれると、感情が爆発して、耐えきれずに泣き出してしまうこともありました」

その様子を見た担任の先生から、両親に連絡することもあった。

「なにを話していたのかは、わかりません」

「僕が、学校で泣いてしまって手がつけられなくなったことを両親に報告していたんだと思うんですが、そのあと、お母さんが、そのことについて話すこともなかったですし」

「でも、ただ、お母さんが、先生からの電話で、ずっと長電話していたことだけは覚えてて・・・・・・申し訳ないなって思ってました」

「悩ませてしまってごめんね、って・・・・・・」

04 ハロプロが好きだからオカマ?

背が伸びて、顔もオッサンみたいに

中学生になると、新しい友だちとの出会いなど、いい変化があった反面、受け入れがたい出来事もあった。

「自分の声が一気に低くなって、背が伸びて、顔も、なんかオッサンみたいになって・・・・・・。小学生の頃と比べると、一気に “男” になってしまったという感じがしました」

かわいいキャラとは違う方向へ、自分が成長していくことに抵抗を覚える。

「あと、小学生の頃からずっとハロプロが好きで、以前は同級生もみんな好きだったのに、中学生になったら『ハロプロが好きなおまえは女だ、オカマだ』って言われるようになってしまって」

好きなことを好きだというだけで、いじめの対象になる。
そうなってしまうと、「ハロプロが好きだ」とは言えなくなってしまう。

そもそも、中学校では同好の士を見つけることもできなかった。
それでも、好きな気持ちは止められない。

だからこそ苦しかった。

黙っていないで戦おう

「つらかったですね」
「でも、中学生になると、自分以外でも、いろんなところでいじめが起きていて」

黙っていじめられていたら、自分への言動がどんどんエスカレートするかもしれない。

「だから、小学生の頃はなにを言われても泣くだけで、黙ってましたが、中学生になってからは、黙っていないで戦おうと思ったんです」

懸命に “男らしく” 振る舞おうと努めた。
揶揄する言葉を投げかけられたら、精一杯言い返した。

「あと、生徒会にも入ったので、そこが自分にとっての “避難所” みたいになりました」

しかし、生徒会に入り、人前に立つことで、より多くの生徒から、いじめのターゲットとして見られることもあった。

「なんか知らない生徒から『あいつの声、気持ち悪い』と言われて」

「それまでは、自分の声が変だとは思っていなくて、言われて初めて『そんなに変なんだ、気持ち悪いんだ』と思ったんですが、でも、どうやって声を変えたらいいかわからないし、男らしく振る舞おうとしたら、妙にわざとらしくなってしまうし・・・・・・」

「すごい悩んでましたね」

生徒会に入ったせいで目立ってしまって、悩みも増えることとなったが、生徒会のメンバーには救われていた。

「メンバーは女の子が多くて、僕の話をひたすら聞いてくれました」

「ある時期は、生徒会室に避難して、もうその子たちとしか話さないこともあったくらい、すごい助けられてましたね」

05かわいがられる技はアイドルから

保田圭さんや嗣永桃子から

ハロプロのなかで、最初に好きになったのは「モーニング娘。」の保田圭さんだった。

「すごく自分のアピールがうまくて、惹かれました」

「テレビのカメラが、センターの後藤真希さんを写しているときに、保田さんが後ろから、こう、グッと割り込んできて、テレビに映る、っていう」

「うちの家族みんなでテレビを観てて、『なんか、この人すごいね』ってなって、そのうち家族で “推し” として応援するようになって」

ハロプロのほかのメンバーに比べて出番が少ないことで、かえって応援したくなる気持ちが煽られたというのもある。

「一曲に、保田さんの歌うパートが3文字だけとかだったけど、テレビを観ていて、『あ、パートがきた!』って感じで、保田さんが映ったら、もうなんかすごいうれしいんですよ」

ほかにも、“推し” としてハマったメンバーはいる。

「ももち(嗣永桃子)さんも、自分のアピールがうまくて。テレビにかわいく映る方法を常に研究している感じなんですよ」

「集合写真で、ほかのメンバーが、まっ正面を向いてポーズをとっているなかで、ももちさんだけ、顔に手を添えて上目遣いで映る、とか」

「このポーズいいなぁ、と思ったら自分でも真似してやってみたり(笑)」

「そうやって、ももちさんをはじめ、ハロプロメンバーから、自分をよりかわいく見せる方法を学んでました」

いろんな人からかわいがってもらおう

自分をかわいく見せて、かわいがられたい。
その思いは、姉への憧れの裏返しでもあったともいえる。

「幼いときから、かわいがられたい気持ちが強かったんです」

「姉が、やっぱりすごいかわいがられていたので、それに比べて僕が両親からあんまりかわいがられていない、見てもらえてさえいない、って思ってた時期もあって」

「じゃあ、もう、家族からかわいがられることにこだわらず、いろんな人からかわいがってもらおう。そんなことから、“かわいいキャラ” を目指し始めたんだと思います」

とはいえ、“かっこいいキャラ” にまったく憧れなかったわけでもない。

「強くなりたいって気持ちはありました。パンチで壁を破れたらいいな、とか思ったり(笑)」

「中学生の頃からは、姉ではなく弟と一緒に遊ぶことが増えたので、忍術の真似をして遊ぶこともありました」

しかし、第二次性徴期に入ってからの自分の成長については、髭も、伸びていく身長も、すべて「かわいさが失われていくようでつらかった」。

「鏡を見るたびにイヤで。でも成長は止められないし・・・・・・」

「中学生になって、一気に顔が老けた感じもしたし、なんかすごいイヤでした」

 

<<<後編 2022/07/09/Sat>>>

INDEX
06 恋愛感情を“推し”に変換
07 登場人物に自分を重ねて
08 自分には性欲があるのかないのか
09 Xジェンダーという言葉を知って
10 いつか誰かと一緒にいられる時間が

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