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Writer/あさか

セックスはしたくないけど触れ合いたい ~アセクシュアルや性別違和のある人にとっても必要なバウンダリートーク~

*この記事には一部性的表現が含まれるため、18歳未満の方の閲覧はご遠慮ください。また、性的な表現が苦手な方や不快に感じられる方は閲覧をお控えください。

「セックスはしたくないけど触れ合いたい」という声を、アセクシュアル以外の人からもときどき聞きます。特にノンバイナリーやトランスジェンダーで、性別違和(割り当てられた性別に対する違和感)がある人などは「性的な行為のうち○○はやりたいけど□□はやりたくない」と思う機会が、ほかのセクシュアリティよりもあるかもしれません。そんなとき、相手とどんなコミュニケーションを取っていけるのでしょうか。

セックスはしたくないけど触れ合いたい? アセクシュアルじゃなくても・・・

以前ある人が「セフレじゃなくてソフレがほしい」と言うのを聞いたことがあります。

セフレじゃなくてソフレがほしい?

「ソフレってなに?」と聞き返すと、どうも「添い寝フレンド」の略語だそう。セックスする相手ではなく、添い寝できる相手がほしい、と言っていました。

あとからもう少し詳しく聞いたところ、その人は、アセクシュアル(他者に性的に惹かれないセクシュアリティ)でも、ノンセクシュアル(性的欲求をもたないセクシュアリティ)でもありませんでした。

セクシュアリティが理由ではなく、過去の経験からセックスを「積極的にやりたくなるほど楽しいものじゃない」と思っているようでした。

セックスしたくない理由 アセクシュアル? 性別違和? ひとりが楽?

※トラウマに言及します。具体的な描写はありません。

「セックス/性的な行為をしたくない」と誰かが言っているのを聞くと、自動的に「この人アセクシュアルなのかな?」と思う人が多いかもしれません。

でも、ソフレがほしいと言っていたその人のように、セックス/性的な行為をしたくない理由は、アセクシュアルなどの性的指向に関係があるとは限りません。

例えば
・性的な行為が苦手、性嫌悪がある
・性的快感やオーガズムの感覚が嫌い、怖い
・性別違和があるから性器を意識する行為をしたくない
・トラウマを思い出す
・セルフプレジャー/マスタベーション/オナニーして性欲を解消した方が楽

など、さまざまあります。もちろん、体調や時間などによって、「今はセックスしたくない」という場合もあるでしょう。

セックスしなくても触れ合いたいのは・・・?

セックスをしたくない、という理由は性的指向に限らずさまざまです。「ソフレがほしい」と言っていた人のように、セックス/性的な行為はしたくないけど、誰かと触れ合いたい、という人もいると思います。

別の人からも、似たようなことを聞いたことがあります。

性的ではなくても、誰かと触れ合うことで

・安心する
・疲れがとれる
・相手との親密さを感じられる
・気持ちがよい
・体温を感じてよく眠れる

といったように、人とのスキンシップそのものの楽しさや、自分にとってポジティブな効果を感じる人もいます。

「今日は疲れたからセックスはしたくないけど、ハグしたまま寝たいな」と思うときだってあるでしょう。

「セックスはしたくないけど~」を、どうやって伝える? どうやって受け取る?

では「セックスはしたくないけど触れ合いたい」ということを、相手にどうやって伝えればいいのでしょうか。あるいは、セックスフレンドやパートナーにそう言われたとき、どんな会話をすればよいのでしょうか。性的同意やバウンダリーから考えていきます。

性的同意とは?

まず大前提として、性的な触れ合いをする場合は、関係をもつ人と性的同意をしあう必要があります。

性的同意とは「性的なことをする気があるよ/したいよ」と表現することです。

相手が「セックス/性的な行為をしたくない」と思っている場合、性的同意は取れていない状態になります。

ここで重要なのは、そもそも性的同意が成立するのは
・セックスをしたくない。「嫌」と言える環境が整っていること
・同意する人たちが対等な関係であること・積極的な同意であること
・同意が続いていること

です。

たとえば、職場における上司と部下の場合。いくら成人であっても「上司」と「部下」は対等ではありません。そのため、なかなか部下側が「嫌」と言えません。

そのため、もし部下が「性的なことをする気がある」と性的な行為の前に上司に伝えた場合。それでも部下が性行為中やその後に「やっぱり嫌だった」「拒否すればよかった」「拒否しづらい雰囲気があった」というふうに感じたら、その部下と上司の間に性的同意が成立していたとは言えないでしょう。

また、最初は「性的なことをしよう/したい」と言っていても、性行為が始まってから「やっぱりやめたい」となったら、その時点で性的同意は成立しません。

途中で拒否してもいいのです。

そして、誰かから性的な行為にさそわれて「あんまり気乗りしないけどしかたがないからやるか・・・・・・」と思って「いいよ」と言った場合も、性的同意は成立していないことになります。積極的に同意しているわけではないからです。

このように、性的な行為をする際は、さまざまな状況を考慮しつつ、互いに性的同意が積極的にあることを、セックスが終わるまで継続的に確認する必要があります。

性的同意はしないけど、触れ合いたいとき

セックスを求められ「セックスや性的な行為はしたくないけど触れ合いたい」と伝えた場合でも、性的同意は成立していません。性的なことをしたくないと、少なくとも片方が思っているからです。

同時に、どちらもが「非性的な触れ合いはしたい」と思っていることもあるでしょう。そのようなとき、性的同意がないことの確認だけでなく、どんな会話が必要なのでしょうか?

そこで鍵になるのが、バウンダリー(境界線)です。

セックスや触れ合いにおけるバウンダリーとは?

バウンダリーとは、自分と他人の境界線のことです。そのなかには身体的なバウンダリー、感情的なバウンダリー、時間的なバウンダリーなど、たくさんの種類があります。

この記事で使うバウンダリーとは、主に身体的なこと「セックス/性的な行為や触れ合い」に関する内容です。

セックス/性的な行為/触れ合いに関するバウンダリーは「したいか・したくないか」という二択だけではありません。

・身体のどこなら触ってほしいか/触りたいか
・どんなふうに触られる/触ると気持ちがいいか
・どんなペースやスピードで触れ合うと安心するか
・どこを触ってほしくない/触りたくないか

など「○○してほしい/ほしくない」「○○はここちがよい/わるい」といった、境界線も含まれます。

例えば
・向かい合ってのハグは基本的にいいけど、バックハグは苦手
・ずっと同じ身体部位が触れ合ってるよりも、動きがあった方が気持ちがよい
・ゆっくりなでてほしい
・キスはいいけどハグはしたくない
など。

もちろん、人によっても体調によってもさまざま変わりうるものです。

バウンダリーにまつわる会話をしていくことで「性的な行為はしたくないけど、スキンシップはしたい」と思っている人にとっての「したいスキンシップ」が、実際には何を指すのかを話し合うことができます。

そして、お互いにとって「(性的でないとしても)何がここちのよい触れ合いなのか」を見つけていくこともできるでしょう。

バウンダリーについて話し合うことの安心感と楽しさ

セックスなどの身体的なバウンダリーについて話すことには「難しい」「大変そう」という印象を抱く人もいるかもしれません。でも、実際には、バウンダリーについて話し合うことが楽しかったり、関係性をよりよいものにしたりすることが大いにあると思います。

パートナーに話してみた

わたし自身、ノンバイナリーであり、性別違和を感じるときがあります。そして、したくない/されたくないスキンシップがいくつかあります。

たとえば、胸を触られるのは、誰が相手でもどんな時でも嫌です。胸を触られると、相手がわたしをノンバイナリーではなく「女性」として見ていると感じるので、どうしても違和感があるからです。

また、長いこと「頭をなでられる」というのにも抵抗感がありました。

以前、とても仲の良かった男性に頭をなでられたとき、気持ち悪くなってしまったことがあります。たぶん、「頭をなでる」という行為が「男性から女性へ」というイメージと重なり、性別違和がギュンと強まったのだと思います。

でも、セックスや身体的な触れ合いなどの自分がもつバウンダリーについて、他の人と話すことは、ずっとためらっていました。特に話しづらかったのは、つきあっていたり、身体的に触れ合うことがあったりする相手でした。

「性別違和は『自分の話』なのに、つきあわせてしまって申し訳ない」「相手に悪気はないから、気持ちが悪いと思ってしまうことは伝えづらい」などと感じていたのかもしれません。

でも、今のパートナーには以前、思いきって話してみたことがあります。すると、パートナーのバウンダリーの話も含め、お互いにとって「どんなスキンシップがいいか/したいか」という話になっていきました。

身体的なバウンダリーについて、お互いに話すことができるという安心感が、ふたりの関係性に対する安心感のベースになった気がします。

その後ふしぎなことに、パートナー限定ですが「頭をなでられる」ことへの苦手意識が消えていきました。

パートナーに「女性として頭をなでられるのは嫌だ」と伝えられていたからこそ、パートナーがわたしの頭をなでるときは「わたしを女性として見ているわけではないだろう」「人としてかわいがられている気がする」という感覚になるからだと思います。

バウンダリーについて話し合うことで、互いをより理解でき、相手とのスキンシップをもっと楽しめるようになりました。

欲望のかたちが見えてくるバウンダリートーク

以前、複数人がバウンダリートークをしているアダルト動画を見たことがあります。「どんな行為をしたい/したくないのか」というトピックで話しているものです。そこでは

「自分からするより相手からされる方がいい」「今どういう感情や状況なのかを読み取ろうとしながらコミュニケーションしてほしい」
「胸はつかまないでほしい」
「セックスに参加するよりも、みんなのセックスを見ながらマスタベーションがしたい」
「罵倒などの言葉責めはやめてほしい」
「デミセクシュアルだから、セックスする前に情緒的なつながりがほしい」

などのバウンダリートークがありました。

参加者のひとりが「みんなが特にどういう行為でオーガズムを経験するか知りたい」と言うと

「あそこで見つけたセックストイがよさそう」
「普段はバイブレーターとディルドを同時に使う」
「女性にリードしてもらうと興奮する」
など、更に話は発展していきました。

バウンダリーは性的/身体的なものに限らない

これらのバウンダリートークを見ていると、人によって異なる「したい/したくないスキンシップ」や欲望のかたちがあって、ほんとうに面白いなと思います。

また、性的・身体的なものに限らず「どんなコミュニケーションを求めているか/いないか」という意味で、感情面でのバウンダリーの話も出てきます。

「どういう言葉をかけてほしいか/ほしくないか」「何についてなら質問されたり話したりしてもいいか」「自分の持ち物のどれなら使っていいか」など、他者とどういう関わり方をしたいのかについての話は、広くバウンダリートークと言えます。

このように、広くバウンダリートークができる場。つまり、それぞれにとって「よりよいセックス/触れ合い」「よりよいコミュニケーション」について話し合える場があったら、セックスや触れ合いも、安心感がありつつ、クリエイティブなものになりそうです。

バウンダリートークはクィアな「セックス」を可能にする?

セックスというと、なんとなく挿入をともなう性行為を想像しがちです。まずキスから始まって、オーラルなどの前戯をして、挿入し、オーガズムに達して終わり、といった一連の流れを想像するでしょうか。

そもそも「セックス」って?

無意識に異性愛者のセックスを「スタンダード」としている人もいるかもしれません。

でも、レズビアン間のオーラルセックスなどを例にとればすぐに分かるように、挿入をともなわない性行為はいくらでもあります。また、オーガズムが「最終地点」ではないセックスもあります。

射精をすることに違和感をもっている男性やノンバイナリー、トランスジェンダーもいますし「オーガズムはマスタベーションのときだけでいいや」という人もいるでしょう。

そうやっていろいろなセックスの可能性について考えていると「どこからどこまでがセックスだっけ?」「性的な触れ合いってそもそもなんだっけ?」という考えが浮かびます。

バウンダリートークで新しい可能性が見えてくる?

例えば
・手をつないだり
・ハグをしたり
・フェザータッチ(軽く優しく触れること)をしたり
・頭をなでたり
・くすぐったり

などは「性的な触れ合い」にもなりうるけれど「性的でない触れ合い」にもなりえます。

相手や場所、体調が違えば、同じ行為を性的に感じたり、感じなかったりすることもあるかもしれません。

そのような、細かいさまざまなバウンダリーについて話し合うと、いわゆる「スタンダード」だけでない、他者とのいろんな関わり方が見えてきます。

挿入をするよりも、フェザータッチの方が気持ちがよいと感じている自分を発見するかもしれませんし、オーガズムを感じるよりもキスする方が楽しいと気づくかもしれません。あるいは、自分や相手のSM的な部分が見えてくることもあるでしょう。

バウンダリートークをすることで、相手や自分を傷つけないセックスやスキンシップの可能性を探ることができるだけでなく、「スタンダード」ではないさまざまな「クィアな『セックス』」の可能性が、見えてくるのではないでしょうか。

 

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