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Writer/shu

NVCを学んで気づいた、クワロマンティックの私が自分や他者とよりよくつながる方法

みなさんは「NVC」という言葉を知っていますか? 詳しくはのちほどご説明しますが、私なりの言葉で言うと、“自分にも他者にも共感の心を持って対話するためのやさしいコミュニケーションの手法” です。今回は、NVCを通して自分と向き合ってみたお話しをしたいと思います。

NVCを使えば自分や他者ともっとよくつながれるかもしれない

私は「NVC」を学ぶなかで、自分や他者とつながり方をもっとよくすることができるんじゃないか、と思っています。

NVCは「評価をせずに心に何が息づいているか」を表現する

「NVC」は、” Nonviolent Communication” の略で、日本語では “非暴力コミュニケーション” や “共感的コミュニケーション” と呼ばれるコミュニケーションの手法。

アメリカの臨床心理学者マーシャル・B・ローゼンバーグ博士によって考え出されました。観察・感情・ニーズ・リクエストという4つのプロセスを通して、自分の心とつながり、他者の心に寄り添って対話をする方法です。

4つのプロセスを簡単に説明すると、
① 観察:判断や評価をせず、事実をありのまま捉える
② 感情:観察したことを受けて、心や身体がどう感じているか
③ ニーズ:自分がいまこのような感情を抱くのは、こんなことを必要としているから
④ リクエスト:相手にどんな行動をしてほしいか、肯定的な言葉でお願いをする

といった感じです。

これらを元に自分の心の中を整理して書き出してみたり、相手に伝えてみたりします。

大事なのは、自分の心に息づくものにフォーカスして表現してみることです。

私はNVCが持つ可能性を感じた

私がNVCと出会ったのは今から3〜4年前。

きっかけはなんだったか思い出せないのですが、NVCを初歩から学ぶオンライン講座に参加しました。その後、NVCについての本を買って読んだり、ワークショップに参加したり、ゆっくり時間をかけて学んでいます。

自分の心や身体の感覚に寄り添うことで出てきた感情を、「そう思っていたんだね」とやさしくつつみこむ。
本当は必要としているのに、蓋をしてしまっていて出てこないニーズを取り出して、「それを必要としていたんだね」となでてあげる。

私にとってNVCはそんな感覚で、自分や他者ともっと対話しやすくなるやさしいコミュニケーションだと思いました。

そして、クワロマンティックとしての私が、NVCを通じて自分や他者とのつながりをさらに深く理解できるのではないか、と思い始めたんです。

大切な他者とのつながりでNVCを使ってみたい、クワロマンティックの私の場合

まずは “クワロマンティックとしての自分” とつながってみる

私はNVCを学んでいてまず実践したいと思ったのが、“大切な他者” とのつながりについてです。

ここで言う “大切な他者” は、「友達であり、仲間でもあり、味方でもある、ある程度の自信を持って自己開示してもいいと思える相手」とします。

クワロマンティックの私は、そんな相手に抱くおもいをうまく言葉にするのが難しいと思ってきました。

「この気持ちはなんて言ったらいいんだろう」
「うまく説明できないなあ」

というおもいを持つ私でしたが、NVCを知って、大切な他者との間でどんな感情を抱くことがあるのか、その奥にはどんなニーズが隠れているのか、向き合うことにしてみました。

クワロマンティックの私の場合は、「愛を持ったコミュニケーションを取りたい」「受け入れられることを必要としている」「気楽さがあるといい」といったニーズがあります。

それが満たされて「あたたかさ」を感じ、「ほっとする気持ち」になることで、大切な他者となっていくんだと思っています。

つながり直したいと伝えることは、大切な他者とつながる1つ

自分とつながることができたら、次は大切な他者に直接伝えられたらいいなと思います。

なぜなら、お互いにとってより「よくつながるためのきっかけ」になるかもしれないと思うからです。そのためには、クワロマンティックだとカミングアウトまでする必要はないかもしれないけど、どうしてつながり直したいかを伝える必要はあると思います。

例えば、
① これまでのあなたとのつながりにとても感謝している
② その上で、あらためて関係性を見つめ直したい
③ 「あのときのコミュニケーションは、◯◯というニーズが満たされて、△△という気持ちになったから、今後もそれができたら いいね」とか、「あの話はもっと〜という言い方をしてくれたほうが、□□というニーズが満たされるから心地いいんだ」とか、もっとよくつながるための話がしたい

っていう感じで。

今大切な他者と呼べる関係性の人は、NVCを知っている人、もしくは知らなかったとしても伝わりやすそうな人が多いのですが、それでも誠実に伝えることを忘れないようにしたいです。

NVCを使えば、他者と深くつながることをあきらめなくてもいい

あの日あの時あの人は、〇〇と思っていたのかもしれない

NVCを知って「大切な他者とよりよくつながることができるかもしれない」と、満足しかけましたが、「いや、待てよ?」と引っかかることがありました。

それは、自分から壁をつくってしまった過去の自分です。

クワロマンティックを自認する私は、いわゆる「恋バナ」になかなか入っていけません。そんな状況で困ってしまうのが、「好きな人いる?」「恋愛しないの?」といった質問。

聞かれるたびに、「あ〜またか。答えようがないんだよな。どう言ったらこの話終わるかな」と思って、相手を理解しようとすることをあきらめていました。NVCで言うなら、「配慮」や「あたたかさ」といったニーズが私の中にあった気がします。

ここで相手の質問についてNVCを通して考えてみます。

もしかすると、「交流したい」「理解したい」「仲良くなりたい」というニーズを持って私に質問してくれたのかもしれません。

そう考えると、「あの時なんでもっと、気持ちを想像してあげられなかったんだろう」と、NVCを学んでいる今は余計に強く思います。

今後私はNVCで行動したい

ありがたいことに、最近は答えづらい質問をしてくる人はいません。でも今後そういう機会が来るかもしれない。そんなときにNVCを使えたらいいなと思っています。

ただ、相手がNVCを知らない可能性が高いと思うので、わかりやすく言い変えて伝えたいと思います。

例えば、「恋愛しないの?」という質問をされたとして
①感情とニーズを想像し、質問して確認する
→「私に対して、仲良くなりたいって思って聞いてくれている?」

②相手が伝えてくれたことをどんなふうに受け取ったか、自分の感情とニーズとともに伝える
→「いま私には2つの気持ちがある。1つはうれしいって気持ち。それは私もあなたとのつながりを大事にしたいから」
「もう1つは少し困っている。それは、私が恋愛の話をすることに少し抵抗があるから」
「でも、あなたとも交流したいので少しどうしたらいいだろ〜って思っている」

というふうに。

いつかこんなふうに話せたらいいなあと思います。

 

■参考情報
・マーシャル・B・ローゼンバーグ著 安納 献監修 小川 敏子訳 日本経済新聞出版社発行 『NVC 人と人との関係にいのちを吹き込む法 新版』(2018)
・マーシャル・B・ローゼンバーグ著 今井 麻希子,鈴木 重子,安納 献訳 海士の風発行 『「わかりあえない」を越える――目の前のつながりから、共に未来をつくるコミュニケーション・NVC』(2021)

 

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