私は同性のパートナーと暮らし始めてもうすぐ4年になる、いわゆるレズビアンカップルだ。持ち物をおそろいで買うことも多く、区別のために色違いを選ぶことも多い。ただ、その色選びには、意識的に気をつかっている部分がある。
レズビアンカップルが「色違いアイテム」に抱く葛藤
私たちレズビアンカップルは、毎回ばらばらな色を選ぶ
世の中には色違いのアイテムというのがあふれていて、レズビアンカップルである私たちも、それらを買ったり、あるいは他人からもらったりすることが多々ある。
ただ、私とパートナーは、色違いのアイテムを持つ場合「どの色がどちらの担当」と明確には決めていない。
たとえば、わが家にあるものでいえば、おそろいのキーケース(赤と青)。お弁当箱(赤と青)。小鳥の形の箸置き(白と黒)。部屋着のスウェット(オレンジとグレー)。革バンドの腕時計(ブラウンとブラック)。
ざっと部屋を見渡しただけでも、これだけの色違いアイテムがある。
そして、私とパートナーがそれぞれに選ぶ色は、あえてルールを設けないことにしている。
キーケースは私が青、パートナーが赤だけど、お弁当箱は私が赤、パートナーが青。小鳥の箸置きは私が黒、パートナーが白。部屋着のスウェットは私がオレンジ、パートナーがグレー。腕時計は私がブラウン、パートナーがブラック。
こんなふうにばらばらな色選びをしているのは、私もパートナーも「色に紐づいたイメージで判断されたくない」という思いがあるからだ。
レズビアンカップルであっても「色に紐づいたイメージ」で見られたくない
たとえば、異性の夫婦に贈り物をするとき。
「赤と青」のような色違いのアイテムを贈ると、無意識に「女性が赤、男性が青を使うのだろう」と思ってしまうことはないだろうか。
あるいは、ピンクとブルー、白と黒、ブラウンとブラックなどの組み合わせでも「暖色や淡い色は女性、寒色や濃い色は男性」という無意識の性別イメージが紐づいてしまってはいないだろうか。
私とパートナーはレズビアンカップルではあるけど、見た目の印象では髪の長い私が女性的、ボーイッシュな服装と髪型を好むパートナーが男性的なイメージで見られることが多い。
私たちは、そのイメージに「NO」と主張したいし、いつでも自分たちは自由に好きな色を選ぶ権利があると思いたくて、毎回ルールのない色選びをしているのだ。
「レズビアンカップルらしさ」にとらわれて好きな色を選べなかった頃
今でこそ色選びに敏感になっている私たちだけど、付き合い始めた当初は、自分たちですら色のイメージから自由になれていなかった。たとえば、私はパートナーと付き合い始めてすぐの頃、やたらとピンク色の服を着ていた時期がある。
好きでもない「ピンク色」に執着してしまった体験

初デートの日に「レズビアン同士のデートとはいえ、少しでも相手に可愛らしいと思ってもらえたほうがいいだろう」と考え、ピンク色の小物をコーディネートに取り入れたことから始まった。
パートナーはボーイッシュなタイプで、付き合う相手に求めるタイプは「フェミニンな雰囲気の人」だと、レズビアン向けマッチングアプリのプロフィールにも書いていた。
それに合わせるつもりはなかったし、パートナー自身も「好きな服を着てくれていいんだよ」と言っていたのだけど、付き合いたての高揚感と焦りもあってか、私は無意識に「パートナーに少しでも好かれるような見た目になりたい」と思ってしまったらしい。
ピンク色はもともと苦手なほうだったのに、ピンク色の冬用コート、ピンク色のチェック柄スカート、ピンク色の手袋を買い、叔母のおさがりであるピンク色のニットを着て、ワードローブの3割ほどがピンク色に染まった。
おそらく、実家の家族が私のクローゼットを見たら「何が起こったのか?」と訝しがるほどの変化だった。
当時のパートナーと私のツーショット写真は、ボーイッシュでアースカラーの服ばかり着るパートナーと、ピンクや淡い色の服を着る私という組み合わせで、たしかに以前の自分がイメージしていた「レズビアンカップルらしい」見た目ではあったと思う(今振り返ると、それは「レズビアンカップルらしい」というより「ステレオタイプな異性カップルを参考にしたかのような」組み合わせなのだけど・・・・・・)。
ただ、好きでピンク色を選んでいたのならよかったのだけど(そして自分自身は「好きでピンクを選んでいる」と信じ込んでいたのだけど)、私は次第にピンク色への興味をなくし、クローゼットからは再びピンク色が消え去った。
「レズビアンカップルらしさ」で色を選ぶのは「他人軸」だと気がついた
ピンク色のアイテムをあらかた手放した頃、私が思ったのは「他人軸で色を選ぶのはもうやめたい」ということだった。
決してパートナーに強制されて色を選んでいたわけではなかったけれど、フェミニンな雰囲気の人が好き、スカートを履いているところも見てみたい、というパートナーの言葉に感化されて、ついつい相手に喜んでもらえそうなファッションを選んでいたのは事実だ。
ピンク色の服は可愛かったし、ピンクを身にまとった自分もそれなりにいいとは思えたけど、私がパートナーとの間に感じたのは「お互いに相手を消費してしまっているのではないか」というざらりとした手触りだった。
私自身とパートナー自身ではなく、いかにもレズビアンカップルらしい組み合わせ、ボーイッシュなパートナーとフェミニンな私、というイメージだけで相手を見てしまい、お互いを大切にできていないという気がしたのだ。
それ以来、私はピンク色のアイテムを積極的に選ぶことはなくなったし、パートナーも「フェミニンな雰囲気の人が好き」とは口にしなくなった。
そして、色違いのアイテムを選ぶときは「お互いのイメージにとらわれず、単純に好きな色を選ぶ」もしくは「直感で適当に選ぶ」という方法をとっている。
自由な色選びで「ステレオタイプなレズビアンカップルらしさ」に対抗する
レズビアンカップルの話題で「どういう組み合わせのカップルが典型的か」というテーマが出ると、ふと言葉に詰まってしまう瞬間がある。たとえばイラストレーターの方が「レズビアンカップルが寄り添っている絵を描いてください」と依頼を受けたとき、どのような組み合わせの絵を描く人が多いのだろうか。
「レズビアンカップル」である私たちが感じる居心地の悪さ

近年『作りたい女と食べたい女』や『彩香ちゃんは弘子先輩に恋してる』など、レズビアン女性を描いたTVドラマが増えているように感じるけれど、いずれも描かれているのは「髪の長い、どちらかといえば女性的な印象を受ける女性同士の組み合わせ」だ。
「世の中には、ボーイッシュな女性同士や中性的な女性同士のレズビアンカップルもいるのに、フィクションではあまり描かれることがないのは寂しい」という、レズビアン当事者の意見を見かけたこともある。
私自身は自分を “フェミニンな女性” だと思ってはいないけれど、あえて見たの印象をわかりやすく伝えるとすれば、私とパートナーは「ボーイッシュな女性とフェミニンな女性」の組み合わせだ。
一見した印象では、異性カップルに近い雰囲気に見える。異性カップルに見間違われたことも、私たちが知らないだけで何度かあるだろうと思う。
この事実が、レズビアン当事者としては、少し居心地悪く感じられるときもある。
異性カップルではないのに、異性カップルのように見えるレズビアンカップル。
見た目がボーイッシュとフェミニンだからといって、男性的な/女性的な役割分担があるわけではないのに、そのように見られてしまうことがあるのだ。
私たちがあえて決まった色を選ばず、毎回ばらばらな色選びをしている理由は、そういった居心地の悪さにもある。
「ボーイッシュなレズビアンらしさ」に縛られていたパートナーの変化
前述したように、私は「ボーイッシュなパートナーに似合う、レズビアンカップルにふさわしい自分」を意識しすぎて、ピンク色に執着してしまっていた時期があった。
そして、同じようにパートナー自身も「ボーイッシュなレズビアンである自分」を意識しすぎていた時期があった。
パートナーはアースカラーのファッションがもともと好きで、洋服や小物はモノトーンやカーキ色がほとんどだった。
だから、色違いのアイテムを選ぶときも、私に「好きなほうを選んでいいよ」と言いつつ、自分から選ぶならより彩度の低い色、いわゆるメンズアイテムによくある色を選ぶことが多かった。
そんな彼女の色選びが変化したのは「推し活」にハマったから。
サンリオのキャラクター「ハンギョドン」のグッズ集めにハマり、その影響で淡い水色のアイテムを選ぶことが少しずつ増えていった。
以前から好きだったYouTuberグループへのイベントにも参加するようになり、推しのメンバーカラーであるオレンジ色のアイテムを買うことが増えた。
そして、今年開催された大阪万博に行く際は、オリジナルキャラクターであるミャクミャクのグッズに合わせて、あざやかな赤のスマホストラップを事前に購入していた。
パートナーの持ち物に、やわらかな色やあざやかな色が増えていくにつれ、私は毎回ちょっとうれしい気持ちになる。
以前は「可愛いキャラクターにはあまり興味がないし、自分らしくない」と言っていたパートナーがサンリオを好きになり、推し活を楽しむために自由に色選びをしている姿は、「レズビアンカップルらしさ」に縛られていた頃よりずっと楽しそうで、のびのびとしているように見えるから。
ランダムすぎる歯ブラシの色選びに込めた想い

今、わが家で使っている歯ブラシは、ネット通販で購入した30本入りのものだ。
30本の内訳は、赤・黄・緑・青・オレンジがそれぞれ5~6本ずつ。
定期的に歯ブラシを入れ替える際、私とパートナーは毎回「何色がいい?」「なんでもいいよ~」という会話を交わしている。
大抵は私がランダムに2本選び出し、そのときの気分で「こっちが私、こっちがあなたでいい?」とパートナーに確認している。
先月は、パートナーがオレンジ、私がグリーンだった。
野菜のにんじんをイメージした組み合わせで、パートナーの推しのメンバーカラーがオレンジなので、そちらを譲った結果だ。
今月は、パートナーが赤で、私が黄色。
冬だからあえて明るい色にしようと思い、私の好きなポムポムプリンのイメージカラーである黄色と、並べたときに華やかに見える赤を選んだ。
あまりにもルールがないため、正直なところ「ごめん、どっちの歯ブラシが私のだったっけ・・・・・・?」というやりとりもしょっちゅうある。
それでも、これぐらい手探りの色選びをする日々が、私とパートナーにとっては大事な意味をもっている。

