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人と違う自分に、誇りを持って生きてきた。「ゲイって悪いことじゃないよ」と伝えたい【後編】

人と違う自分に、誇りを持って生きてきた。「ゲイって悪いことじゃないよ」と伝えたい【前編】はこちら

2021/05/19/Wed
Photo : Rina Kawabata Text : Koharu Dosaka
都 雄介 / Yusuke Miyako

1982年、東京都生まれ。物心ついた頃からゲイを自認していた。高校1年生で新宿二丁目デビューし、ゲイコミュニティで出会った人々から多大な影響を受ける。20代には、ゲイクラブのGOGO BOYとして6年間活動。現在はフリーランスのクリエイターとして働くかたわら、俳優業にも積極的に挑戦中。

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INDEX
01 俳優・都雄介のルーツ
02 “ホモ” と呼ばれた小学生時代
03 変わり者の生存戦略
04 真夜中は別の顔?
05 ハプニング勃発!
==================(後編)========================
06 ゲイ業界のスター・GOGO BOYに
07 曲げられないアイデンティティ
08 ゲイをオープンにする生き方へ
09 LGBTに必要なのは「安心できる仲間」
10 人と違うことに誇りを持って

06ゲイクラブのスター・GOGO BOYに

ゲイの世界が自分を成長させてくれた

高校卒業後は、大学に通いながらゲイバーでバイトを始める。

まだ未成年でお酒は飲めなかったが、さまざまな仕事に就いている大人たちと知り合った。

「みんな社会のこととか会社のこととか、いろんな話を聞かせてくれて、アドバイスをくれて。一緒に働いてた人にも、敬語や礼儀を教わりました」

学生時代から広い社会と接点を持つことで、一足先に社会人のような経験ができた。

そのおかげか、周囲の友だちからは「いろんな世界を知ってるよな」と言われることも。

「自分の知識やものの見方を深めてくれたのは、確実に “こっちの世界” だと思います」

ゲイクラブのパフォーマーである「GOGO BOY」を初めて生で見たのもこの頃。

キラキラ輝いている姿がまぶしくて、強烈な憧れを抱く。

好きなGOGO BOYができたときには、勇気を出して連絡先をゲットした。

「毎朝『おはようございます』とか『いい天気だね』とか、健気にメールしてました(笑)。付き合いたいとかは思わず、完全に憧れでしたね」

「GOGO BOYになりたい!」という、新たな夢ができた。

念願のGOGO BOYデビュー!

20歳の頃、家庭の事情で大学を中退することに。

「やむを得ず辞めたけど、いつかは大学に行き直したい、大卒資格だけは取りたいって気持ちが強くて。20代は、学費を貯めるために必死で働いた時期でした」

就いた仕事は、広告会社のwebディレクター、ゲーム制作ディレクターなどのクリエイティブ職。

このときに積んだ経験は、デザインやコンサルティング業を主軸にする今の仕事にも活きている。

「大学に行き直したいって気持ちと同じくらい、GOGO BOYになる夢も大切でしたね」

「それが22歳のときに叶って、2人組ユニット『MATAGI』としてデビューしたんです」

「他のGOGO BOYさんはパンツ一丁で踊ってエロさを表現する感じだけど、自分たちはアイドル路線でした(笑)。可愛い衣装にこだわって、やんちゃなイメージで売ってて」

途中でソロになったが、GOGO BOYの活動そのものは 28歳まで続ける。

「今は雰囲気が柔らかいとか優しいとか言ってもらえるけど、当時はもっと気取ってカッコつけてました(笑)。人気商売で、闘わなきゃいけない世界だったから」

「実際、有名な人以外は、GOGO BOYだけじゃ食べていけないんですよ。学費も貯めたかったし、当時は寝る暇もない生活でした」

昼は会社で仕事、夜は踊って、そのまま寝ないで次の日も仕事。

仕事と夢の両立は大変だったが、やりたいことには制限をかけず、どんどん挑戦した。

07曲げられないアイデンティティ

ありのままの自分で働きたい

社会人になって以来、セクシュアリティについては「聞かれたら隠さずに言う」スタンスにシフトした。

「ゲイバーのお客さんから、ゲイを隠して過ごす苦労について聞いていて。隠しながら社会人をやるのって大変なんだ、って知ったんです」

就職先には、ベンチャー、IT、デザイン系など、比較的受け入れられやすそうな会社を選ぶ。

職場では、自分のセクシュアリティについて勘づいている人には嘘をつかなかった。

「『結婚してるんですか?』とか『しないんですか?』と聞かれたら『同性婚ができるようになったらね』と答えてました」

「ランチに行けるくらいの仲になったら、自分から『実は彼氏がいて・・・・・・』と言うこともあったかな」

今まで働いたほとんどすべての会社で、セクシュアリティについて打ち明けている。

「どの会社も若いメンバーが多くて、恋愛や結婚に関する話が多かったんですよね。その話題が出るたびに女が好きな男を演じるのには、やっぱり抵抗があって」

「ありのままでいたかったから」

高校までは完全な集団生活。
ゲイだと知られたらいじめられるかもしれないと思い、学校での顔とLGBTコミュニティでの顔をきっぱり分けていた。

一方、社会人は自分で環境を選びやすい。
「合わなければ転職してしまおう」と思えるおかげで、幾分気が楽だった。

アイデンティティと夢の狭間

GOGO BOYや大学進学と並ぶ夢のひとつだった、俳優や声優としての活動。

持ち前の行動力でチャンスを掴み、事務所も決まって声優デビューまであと一歩、というところまで漕ぎつけたことがある。

しかし、ここで大きな壁にぶつかった。

「ノンケ役を演じるのにどうしても違和感があって、やめてしまったんです」

「自分とは違う人間を演じることはできても、女の子を抱くようなノンケ役だけはできなかった」

声優や俳優として「演じる」表現をすることを、ずっと夢見ていた。

それでも、自分の大切な要素であるセクシュアリティを偽ることには耐えられなかった。

「自分を偽る仕事はできないって気持ちが、核としてあるみたいで。セクシュアリティを置き去りにして仕事や活動をするのは、なんか違うなって」

セクシュアリティと夢の間で葛藤する場面には、この後も何度か遭遇する。
最終的にはいつもセクシュアリティを選んでいた。

08ゲイをオープンにする生き方へ

女性からの告白で知った、誰かを傷つけるリスク

長年の「聞かれたら言う」スタンスを改め、最近はゲイであることを積極的にオープンにしている。

「数年前、身近な女性が自分を異性愛者だと誤解して告白してくれて、傷つけちゃったことがあったんです」

「聞かれたら言う」姿勢を貫けば、気づかない人はいつまでも気づかない。

自分の振る舞いによって誤解が生じるリスクを自覚し、思いきって方針転換した。

「正直、カミングアウトっていいことばかりではないんですよ」

「そんな気はまったくないのに、飲み会の席で男性に『狙われちゃう(笑)』とか言われたり、優しくしたら好意持たれるんじゃないかって誤解されたり」

ゲイだと言わなければ、そういう目で見られることもなかったはず。
後から「やっぱり言わなければよかった」と思うこともあった。

一方で、ゲイであることも含め、自分を尊重してくれる人と出会うこともある。

過去に勤めていた会社の代表もその一人だ。

「LGBT系の会社に転職するために退職を申し出たんですけど、辞める理由について嘘がつけなくて、正直に『ゲイなんです』って話したんですよね」

「そしたら、社長が直々に相談に乗ってくれたんです。わざわざ個室でランチして、じっくり話を聞いてくれて。その気持ちが本当にありがたかったですね」

オープンにすることは「自分が自分らしく生きる手段」

カミングアウトにはメリットもデメリットもあることを理解したうえで、「自分らしくいられるのであれば、してもしなくてもどちらでもいい」という考えを持っている。

人それぞれだと思うが、自分の場合はカミングアウトする生き方を選んだ。
「自分らしく生きること」をなにより優先したかったからだ。

「自分が若い頃は、『男は男らしく』みたいな価値観がまだまだあって。もしゲイだって言えてなかったら、『可愛い』と言ってもらえるありのままの自分も出せなかったと思います」

「そういう意味では、オープンにしててよかったかな」

「カミングアウトしたいけど怖くてできない」という人には、先に同じセクシュアリティの仲間をつくることを勧めている。

「カミングアウトって当事者じゃない人にするイメージだけど、自分のセクシュアリティについて口に出すのは、相手が当事者でも別にいいと思うんですよね」

「そこで自分のことを話すのに慣れれば、そのうち当事者じゃない人にも話せるようになるかもしれないし」

セクシュアリティの悩みを、ひとりで抱え込まないでほしいという思いもある。

「同年代のLGBTの人たちって、案外たくさんいますよ。仲間ができれば、どうやってカミングアウトするかも一緒に作戦会議できると思います」

09 LGBTに必要なのは「安心できる仲間」

学校だけが世界のすべてじゃない

過去の自分と同じように、セクシュアリティについてオープンにできない学生に、伝えたいことがある。

「学校みたいな閉鎖的な空間でうまくやるコツは、嗅覚を働かせて、自分に似た人たちを探すこと。同じことで悩んでる人たちって、学校にも絶対いるはずだから」

「自分は、クラスが違ってもすぐにウワサを聞きつけて、そういう子たちに『お友だちになろう』って声をかけてきました。似た人たちと仲良くできれば、少しは安心できると思う」

また、「学校が世界のすべてではない」と思っていたおかげで割り切れた部分もある。

学校はあくまで、人生のサブ的な存在。
学校生活をそつなくこなせるに越したことはないが、もしうまくいかなくても、悩む必要はない。

「通信制の学校もあるし、仮に辞めてもどうにか取り戻せるから。今学校生活で悩んでる子には、そこだけにとらわれなくていいよって伝えたいです」

大切なのは、支え合える仲間の存在

「学校で友だちをつくるのが難しい場合は、ネットで同年代の仲間とつながれたらいいのかなって」

「今はゲイ向けのアプリもあるから、昔よりもずっと気軽に出会えますよね。名前も本名じゃなくていいし、顔や個人情報を出さなければ身バレの心配もないし」

「LGBTの人っていい人が多いから、怖がらずに友だちを作ってみてほしいです」

LGBT特有の悩みも、同じセクシュアリティの友だち相手なら気軽に相談できる。

何かあったときに頼れる仲間のありがたみは、自分も身に染みて感じていた。

「高校時代に知り合った仲間のおかげで、学校の友だちにバレそうだったときも乗り切れたんです。ストレートが多い世界でどう振る舞うべきか、年上の人に教えてもらったこともありました」

「LGBTの横のつながりができれば、自分が生きやすくなるためのいろんなことを学べるのかなと思います」

「まずは安心できる場所、ありのままでいられる場所をつくること」

当事者以外のカミングアウトは、その後でいいと思う。

10 人と違うことに誇りを持って

ゲイは悪いことなんかじゃない!

子どもの頃から、男の人が好きな自分をごく自然に受け入れている。
男性への想いを悪いことだとか、病気だと思ったことは一度もない。

「多くの人がセクシュアリティについて悩むのって、男の人を好きなのを悪いことだと思ったり、周りの人にそう言われたりするからなのかな、って思います」

「でも、ゲイって全然悪いことじゃないんです。そんなことを言ってくる方が時代遅れだし、ナンセンス」

「同性と付き合うのが犯罪になる国じゃないから、その幸せを楽しんでほしいな」

人と違うことの素晴らしさも、身をもって知っている。

「自分はゲイであることに誇りを持って生きてきました。変だと言われても、目立てることが嬉しかったし、そのおかげで素敵な人たちと出会えた」

「みんなと違うのって素敵なことなんです。自分を責めたりせず、胸を張って生きてほしいですね」

自分の生き方で、悩める誰かを勇気づけたい

ありのままの自分を受け入れてきた一方で、セクシュアリティとは関係なく、自分を好きになるための努力も重ねてきた。

「若い頃から、努力はたくさんしてきたと思う。やりたいことにはどんどん挑戦したし、自分から積極的に人とコミュニケーションを取るようにしてました」

「仕事も、セクシュアリティを理由に切られないようにすごく頑張ってきたんです。『ゲイだろうがなんだろうが、都さんがいてくれなきゃ困る』って言ってもらえるように、一生懸命働いて実力をつけて」

「おかげで、自分のことをもっと好きになれました」

自分を好きだという核があれば、逆境にも負けない強さが身につく。
いろんな世界に飛び込む勇気も湧いてくる。

たとえどこかのコミュニティでうまくいかなくても、自分には別の世界があると思える。

「どんな人でも、受け入れてもらえる場所は絶対にある。マイノリティの世界でも、趣味の世界でも」

「二丁目では『捨てる神なし』って言われてるくらい、LGBTの世界にはいろんな好みの人がいるんです。どんな人にも優しいし、どんなタイプでも取りっぱくれがない」

「だから、勇気を出して一歩を踏み出してほしいですね。どうしても勇気が湧かなかったら、こっそり連絡ください。自分でよければ悩みを聞くから」

素敵な仲間や新しい世界との出会いで、自分をもっと愛せるようになった。
今度は、自分自身の生き様で誰かの背中を押す番だ。

「『ゲイでも幸せに生きてるよ!』って姿が、ひとりでも多くの人の希望になったら嬉しいですね」

あとがき
黙っているとクールにも見える雄介さん。実際には、とても朗らか。雄介さんの幸福度の源泉を考えてみた。①細やかに感謝できること。相手の気持ちを想像したあたたかな言葉を取材後、何度も頂いた。人を寄せる理由のひとつでもあると納得する■[どうして自分がこんなことに?]。陥りやすい考えのループ。そこにとどまっていると気づいたら、繰り返し考えることに意味があるのか、自分に決断を迫りたい。これは、雄介さんの幸福度の源泉②でもあるかな。(編集部)

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