INTERVIEW
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Xジェンダーという言葉や存在を知ってもらいたい。知ってもらうことで社会が変わるきっかけになればいい。【前編】

大学で専攻している心理学の論文や書籍が詰まったリュックを背負って現れた鈴木彩音さん。大学院を目指し、論文作成で忙しい中、インタビューに答えてくれた。本当は人付き合いが苦手だという鈴木さんだが、はにかみながらも幼少期からの思い出や今思うことをまっすぐに語ってくれた。ジャニーズや高校の友人の話など、好きなものについて語る鈴木さんは、ひときわキラキラ輝いていた。

2018/09/17/Mon
Photo : Taku Katayama Text : Mayuko Sunagawa
鈴木 彩音 / Ayane Suzuki

1995年、神奈川県生まれ。母親の影響で幼少期からジャニーズの熱烈なファン。神奈川大学人間科学科心理コースに在学中で、臨床心理士の資格を取得すべく博士課程への進学を目指す。昨年、「Xジェンダー」というワードを知って自認に至り、LGBTのNPO活動に参加している。

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INDEX
01 勉強とジャニーズが好き
02 家族関係と自分の性格
03 女と認識されることへの嫌悪
04 人生が好転したターニングポイント
05 女性が好きな自分は何者?
==================(後編)========================
06 心理学の知識を活かした仕事を
07 Xジェンダーの答えにたどり着く
08 大切な人にだけわかってもらえればいい
09 Xジェンダーのこと、自分のことを知ってほしい
10 セクシュアリティの問題に捉われすぎないで

01勉強とジャニーズが好き

勉強はすごく楽しい

勉強が好きだ。

「自分の知らない知識が増えていくのが、今はすごく楽しくて」

「法律とか、自分の生活に関わることを勉強するのが好きなんです」

気になることがあると没頭して調べる性格。

学校の授業も好きだし、本もよく読む。

現在、大学で心理学を勉強している。

今一番面白いと思うのは、臨床心理学と社会心理学だ。

「人間が社会生活の中で取る行動が、すべて理論づけられているところに面白さがあって」

「人間の行動一つひとつに名前がついていて、それに理論的な解説がつくというのがすごいですよね」

将来的には、学んでいる心理学を活かした仕事に就きたいと思っている。

生まれた時からジャニーズは人生の一部

母がSMAPのファンだった。

生まれた時から家にSMAPの曲が流れていたし、TV番組もSMAPが出演しているものをよく見ていた。

「気がついたら自分もジャニーズ好きになってました(笑)」

いわゆるジャニヲタ。唯一の趣味だ。

ジャニーズに触れる毎日の中で、自分の意志で初めて好きになったのが嵐だった。

小学1年生の時だ。

嵐の曲に何度も励まされ、助けられた。

嵐のメンバーの生き方や考え方に、自分も近づきたいと思うこともある。

「嵐に対する愛情が強すぎるんで」

「自分にとって嵐は家族と同義です」

自分に大きな出来事が起きたら自然と嵐のことを想うし、嵐のことがニュースになれば、それをすごく考えてしまう。

もし嵐がなくなってしまったらきっと、身内に不幸があったように深く悲しみ、喪失感に打ちのめされるだろう。

「自分にとって嵐はなくてはならない存在だし、いつも心の中に生きています」

02家族関係と自分の性格

家族との関係

昔は父も母も、家族みんなで仲が良かった。

誕生日には毎年、家族でディズニーランドに行ったのを覚えている。

妹は9歳も年が離れているため、一人っ子のように可愛がられる時期が長かったように思う。

しかし、家族の中で大きな事件が起きてから、家族がだんだん壊れていってしまった。

「それが起こった時にはすごく動揺しましたが、年月が経ち、今は冷静になれています」

今の家族関係は表面上はおだやかで、争うことはない。

でも、親同士の会話はないし、けっして仲が良いとは言えない。

「父のことは、正直家族だと思ってないです」

「父親だとは思っているし、血のつながりが消えることはないと思うけれど・・・・・・」

尊敬や信頼といった父親像はあてはまらない。

父のことはどこか他人事だし、特別な感情は何もない。

「母は、わりと子どもの考えを尊重してくれる親だと思います」

母とは小さい頃は仲が良かったが、大きくなるにつれてしだいに距離ができてしまった。

長く話さない時期もあった。

「9歳下の妹に手がかかったというのもあって、母の注意はそちらに向いていました」

「中学に入る頃になると、自分も反抗するようになりましたし」

母は厳しく、何かと押さえつけられることも多かった。

厳しく勉強のことを言われたし、門限は高校生になっても夜8時だった。

約束を破ったら、携帯を3ヶ月も没収される。

「今思えば自分のことを思って、厳しく接していたのかもしれません」

「でも、当時は素直に受け取れませんでした」

母が自分のことをどう思っているのかわからなくなったし、必要とされてないから怒るんだ、と思うこともあった。

年月を経て自分が成長したことで、母とやっといい距離間で付き合えるようになった。

自分らしく自然体でいたい

小さい頃は、木登りをして遊ぶような活発な子どもだった。

でも、物心がつくにつれて、だんだんおとなしい子どもになっていった。

「ゲームセンターにあるボールプールに入った時、みんなごちゃまぜになって遊んでいました」

「でも、自分は初めて会った知らない子たちと同じ空間で遊ぶことができなかったんですよね」

昔から人付き合いは得意ではなかった。

人と接する時にはスイッチをONにして、人あたりのいい自分を演じている。

本当は誰とでもフレンドリーに話せるわけではない。

本当は自分のペースを守りたいし、楽しくないのに笑えない。

自分のパーソナルスペースに不用意に入ってくる、距離感の取れない人が苦手だ。

ただ、人に対して興味はすごくある。

本当は人とうまく関わりたいとも思っている。

だから自分が仲良くなりたい、この人とは仲良くなれそうだという人には心を開いて、本当の自分をさらけ出すようにしている。

「自分が友だちと思える境界線が高いんです」

「だから、ほとんどが知人ですね(笑)」

「自分らしく自然体でいられる友だちは、片手で数えるくらいしかいません」

「だけど、その友だちがいるからいいやって思ってます」

03女と認識されることへの嫌悪

スカートは履かない

物心ついた時から、「スカートだけは履かない」と思っていた。

レースやフリル、花柄も嫌だった。

ありがたいことに、母親は着たい服を自由に選ばせてくれた。

祖母が裁縫してくれた女の子っぽい洋服をもらってきた時には、「これ着たい?」と聞いてくれた。

自分が嫌だと言えば、無理に着せることはしなかった。

中学生になると制服を着なければいけない。

ものすごく嫌だったが、制服のスカートはしぶしぶ履いていた。

「スカートを履いているって考えたら耐えられないから、服についてはあまり考えないようにしました」

「自分の意志で着ているわけじゃない、って言い聞かせていました」

それでもできるだけは履きたくなかったから、吹奏楽部の活動の時はジャージで参加することもあった。

先生に怒られたが、なぜ制服で部活に出ないといけないのか理由がわからなかった。

先生は「ルールだから」というけれど、なんでそんなルールがあるのかも納得できなかった。

当時は、自分がなぜそこまでスカートが嫌なのかがわからなかった。

今思えば、スカートを履いている自分を人に見られるのが嫌だったのだ。

「自分が、いわゆる “ステレオタイプ的な女の子の格好=スカート” でいることが耐えられなかったんです」

「自分の姿を他の人が見た時に『あの人は女なんだな』って認識されるのが嫌でした」

それは今でも同じだ。

性自認

小学校高学年になり、男女の差が出るようになってくると、「自分は周りの女の子と違うのかな」と思うようになった。

「同じクラスの女子たちは可愛い服を着て、髪を結ぶようになって」

「自分は男の子用の服を着てたし、髪の毛も結びたくないからいつもショートカットでした」

それでも、自分のことを女性だと思っていた。

「ちょっと自分は変わっているけれど、女だろうなって」

女だと思っていたから、生理が来てもなんとも思わなかった。

ただ胸が大きくなるのは嫌だった。

胸が大きくなることで、周囲から女だと認識されてしまうのが嫌だったのだ。

「でも、どうしようもないから、いかに目立たないようにして生活するかということを考えていました」

とはいえ、セクシュアリティについてすごく悩んでいたということもなかった。

それよりも、レベルの高い高校へ進学することを目指していたので、勉強のこととか、親との関係で悩むことのほうが多かった。

04人生が好転したターニングポイント

あこがれの高校を目指して猛勉強

中学では周囲とあまりなじめなかった。

クラスでは地味なほう。友だちとは表面上の付き合い。

信頼できる先生もいなかったし、先生から可愛がられるということもなかった。

居場所がなく、いつも窮屈だと感じていた。

中学までの人生はつまらなくて苦しかった。

「高校生活は、中学までの自分から変わりたいという気持ちがありました」

「誰も知らないところに行けば、新しく始められるんじゃないかと思ってました」

だから、高校は中学の人が誰も来ない学校に進学しようと決めていた。

また、高校では制服のスカートを履きたくなかったので、私服で通えるところを探した。

「小さい頃からテレビドラマが大好きで、将来は役者になりたいと思っていたので、演劇部が強い高校というのも条件に挙げてましたね」

志望校を選ぶ際に、いくつか高校を見て回った中に、一目ぼれするくらい素敵な高校があった。

「もうこの学校しかない!」

「ここに行けなかったら、自分の人生は終わる」

本気でそう思った。

魅力的だったのは、見学に行った時に生徒のみんながすごく楽しそうで、キラキラ輝いて見えたところ。

自由で個性的な人たちがたくさんいた。

「みんなイキイキしていて」

「誰一人として、この場にイヤイヤいるという雰囲気がなかったんです」

自分も「こういう人たちになりたい」「この学校に必ず行こう」と心に決めた。

しかし、志望した高校はレベルが高く、猛勉強しなければいけなかった。

大好きなテレビも嵐も封印して、勉強に没頭する日々を送る。

そのかいあってか、第一志望の行きたかった高校に見事合格することができた。

大切な仲間に出会えた高校生活

あこがれだった高校は、実際に通ってみてもイメージ通り。

すごく楽しかった。

やりたいことがある人ばかりで、とてもエネルギッシュな環境。

個性がある人、自分のやりたいことがある人が集まる場所だった。

「最初はイキイキした人ばかりで気後れしたけど、いろんな人がいて良い刺激を受けました」

演劇部に所属し、舞台への出演も裏方も経験できた。

「演劇に限らずいろんな分野で才能のある人がたくさんいたので、自分が凡人であることをまざまざと見せつけられました」

初めは周りと比べて自分の才能のなさに落ち込んだが、信頼できて何でも話せる友だちができたからいいと思えた。

「1年生の時に、演劇で使う大道具の製作チーフを友だちと任されて、2ヶ月間ずっと一緒にやっていました」

「ずっと話して笑ってて。どうでもいいことがおかしかったし、大道具の仕事も楽しかったんです」

その友だちとは今でも一番の仲良しだ。

高校へ行って一番変わったのは、「楽しい」と思うことが増えたことだ。

自分の人生はここから始まっていると思える。

制服がなく私服だったこともあるが、学校の人たちは服装で人を判断しなかった。

それが、自分にとってはありがたかった。

一人の人として見てもらえるのがすごくうれしかった。

05女性が好きな自分は何者?

初めてできた彼女

真剣な恋愛として初めて付き合ったのは、高校の時だ。

仲良しグループのうちの一人で、ずっと一緒にいた友だち。

可愛い女の子だった。

他の子と話しているのを見るとやきもちを焼いたり、用がないのにメールを送ったりしてしまう自分がいた。

好きだと気がついた。

「付き合おうという言葉はありませんでしたが、お互い好きだったから、なんとなく付き合うようになりました」

初めての恋は楽しかったけれど、つらいことや苦しいことも多かった。

「自分はマイナスのことを考えてしまいやすく、相手のことを想いすぎてだんだんつらくなってしまいました」

今思えば甘えていたと思うが、当時は「恋人ならすべて受け止めてほしい」「自分はこんなに尽くしているのに・・・・・・」という気持ちで揺れていた。

しだいに自分が依存しすぎて、相手がそれに堪えられなくなっていってしまったのだと思う。

結局、その彼女とはお別れしてしまった。

自分はバイセクシュアル?

小さい頃からテレビをよく見ていたから、セクシュアルマイノリティの存在は認識していた。

ゲイやレズビアンといったワードも知っていた。

自分事として、セクシュアルマイノリティについて考えるようになったのは、高校生の時だ。

初めての彼女ができた時に、「同性愛 レズビアン」といったキーワードでいろいろ調べるようになった。

「高校の時には、自分はバイセクシュアルだと思ってたんです」

「当時、友だちには女の子も好きだと伝えていました」

だから大学生になって、インターネットで知り合った男性とも付き合ってみたことがある。

しかし、女性には感じた愛おしさやときめきが、その男性には微塵も湧かなかったのだ。

結局あまり好きになれなかった。

そんな経験から、自分はバイセクシュアルじゃない、と思うようになった。

ただバイセクシュアルではないと思う反面、自分にピタリとはまるセクシュアリティを見つけることはできなかった。


<<<後編 2018/09/17/Mon>>>
INDEX

06 心理学の知識を活かした仕事を
07 Xジェンダーの答えにたどり着く
08 大切な人にだけわかってもらえればいい
09 Xジェンダーのこと、自分のことを知ってほしい
10 セクシュアリティの問題に捉われすぎないで

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