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誰かを好きになるって幸せなこと。レズビアンでもそれは変わらない【後編】

誰かを好きになるって幸せなこと。レズビアンでもそれは変わらない【前編】はこちら

2019/04/19/Fri
Photo : Tomoki Suzuki Text : Sui Toya
渡辺 泰羽 / Yasuha Watanabe

1996年、埼玉県生まれ。両親と父方の祖母、4歳下の弟の、5人家族の中で育った。小学校6年生のときにいじめを受けたことから、私立の女子中学へ進学。中学から大学まで女子校で育ち、高校のときにレズビアンであることを自覚した。4月から新社会人。自分の周りに、LGBTへの理解者が少しでも増えればと考えている。

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INDEX
01 泣き虫な幼少期
02 人に頼るのが苦手
03 いじめの傷
04 イベントの憂鬱
05 先生への恋心
==================(後編)========================
06 女性が女性を好きになること
07 レズビアンの自覚
08 レズビアンじゃないでしょうね?
09 母の価値観
10 「普通」は存在しない

06女性が女性を好きになること

進学クラス

中学校から私立の一貫校に通っていたが、「新しい環境でやり直したい」という理由で、別の高校を受験する子も一定数いた。

受験するかどうか迷ったが、高校には外部から入ってくる子もいる。

新しい友だちもきっとできるだろうと思い、内部進学することを決めた。

「両親に、高校からは進学クラスに行きなさいと言われてたんです」

「目指していたのは、文系の国公立大学進学クラス」

「内部進学でも試験があって、だから、中学受験時と同じくらい勉強を頑張りましたね」

勉強の甲斐あって、目指していたクラスに無事に入ることができた。

やっと少し休めると思ったのも束の間、先生たちからは、「いまから大学受験を意識しなさい」と口を酸っぱくして言われた。

小テストの後などは、授業が説教で終わることもあった。

何かに追いつめられているようで、毎日がとてもしんどかったことを覚えている。

好きな先輩

高校に入ると、中学のとき好きになった英語の先生への気持ちは、次第に薄れていった。

ほかに好きな人ができたのが、その一因だ。

「高校に進学し、茶道部の顔ぶれも少しだけ変わりました。高校から新しく茶道部に入ってくる子もいたんです」

「私が好きになったのは先輩で、その方も、高校から茶道部に入部した方でした」

髪が長くて、優しい先輩。

気づいたときには「この人のことが好きだな」という気持ちが膨らんでいた。

「文化祭のお茶会では役割分担があるんですが、先輩と同じ役を割り当てられて、すごく嬉しかったですね」

「この人と組めるんだ、と思って、文化祭が待ち遠しくて仕方なかったです」

当時はもう、女性が女性を好きになることを、変だとは思っていなかった。

しかし、世の中には、さまざまな価値観の人がいる。同性同士の恋愛を、嫌がる人もいるかもしれない。

そう思い、自分の気持ちを誰かに打ち明けることはせずに、胸の内にとどめていた。

「女子校では、女の子同士で付き合っているカップルも多いって聞きますよね」

「でも、うちの学校では、そういう噂が一切なかったんです」

「むしろ、そういうことを言ったら引かれそう・・・・・・というムードでした」

07レズビアンの自覚

LGBTという言葉との出会い

高1の保健の授業で、男性の先生が、同性愛について話したことがあった。

「カリフォルニア州に行っていたことのある先生でした」

「カリフォルニア州では同性婚が認められていて、男性同士で手をつないで歩いている人もいると教えてくれたんです」

「このクラスにも、そういう人がいるかもしれないと言っていて」

「私のことだ、って思いました」

同性婚が認められている国もあることを、そのとき初めて知った。

家に帰り、パソコンで、同性婚ができる国についてこっそり調べてみた。

「そのときに、『レズビアン』や『トランスジェンダー』という言葉を知ったんです」

周囲に受け入れてもらえないかもしれないという懸念はあったが、人としておかしいことではないと思った。

レズビアンであることを知ってほしい

自分がレズビアンであることに、葛藤はなかったが、周りに言わないのは、隠し事をしているようで居心地が悪かった。

だから、高2の個人面談のとき、担任の先生に思い切ってカミングアウトをした。

「先生のことを信頼していたので、一度相談してみようと思ったんです」

「個人面談の日にちが決まったときから、どう切り出そうか準備していました」

個人面談では、勉強や受験校に関する悩みのほか、学校生活全般についても相談していいことになっていた。

先生から「何か相談したいことはありますか?」と聞かれ、このタイミングしかないと思った。

「実は女性が好きなんですけど、周りには言わないほうがいいでしょうか?」

そう伝えた。
心臓がドクドクいっているのがわかった。

本当は、先生が背中を押してくれることを期待していた。
でも、「周りの人には言わないほうがいいと思うよ」というのが先生の答えだった。

誰もが肯定してくれるわけじゃないし、女子校は噂が広まるのが早い。
否定的なことを言われて、傷付くこともあるかもしれない。

先生からは「いまの環境では、オープンにしないほうがいい」と言われた。

友だちの反応

期待通りの答えが得られず、少し落ち込んだが、先生の意見に従うことにした。

「先生も、まさか個人面談でこんなことを相談されるなんて思ってなかったと思います」

「驚いているというより、面白がっていましたね」

「そっち方面にいっちゃったの? みたいな感じ(笑)」

高校のときにカミングアウトしたのは、その先生のほかに一人だけ。

先生に相談したのと同じ頃、中学から一番仲良くしていた子に、「実は女の子が好きなんだよね」と言ってみたのだ。

「この子なら信頼できるから、言ってもいいなという気持ちでした」

「先生と同じように『そっちいっちゃうの?』っていう反応でしたね(笑)」

「その子は、カミングアウトした後も、変わらずに接してくれました」

08 「レズビアンじゃないでしょうね?」

またいじめに

高2では、宿泊学習で沖縄に行った。

「高2のクラスは仲が良かったので、みんなでクラスTシャツを着て、写真を撮りました」

「楽しい記憶もあるんですけど、海に行ったときにクラゲか何かに刺されちゃって、足が腫れてかゆかったことが、一番印象に残ってます(笑)」

高3のクラスでは、人間関係に悩むこともあった。いつも誰かをターゲットにして、悪口を言うクラスメイトがいたのだ。

「体育祭のある競技で、クラスのみんなを誘導して移動させなければいけなかったんです」

「でも、当日になって、移動場所が変更になっていて、それを知らされていなかったから、結果的に進行を妨げてしまったんですよね」

そのことが原因で、悪口を言うクラスメイトに目をつけられた。席替えで隣になると「最悪」とつぶやかれることもあった。

「小学校でいじめに遭ったときほどじゃないけど、やっぱりつらかったですね」

男性が怖い

高校生のときの夢は、声優になること。アニメに詳しくはなかったが、声優のアイドルグループが好きだった。

専門学校への進学が頭をかすめたこともある。

「高1のとき、親に『専門学校とか短大はダメなの?』って相談したら、四年制大学に行きなさいと言われました」

「大学卒業後に、どうしてもやりたいなら、自分のお金で専門学校に通いなさいって」

国公立大学に進んでほしいというのが、両親の希望だった。

一方で、自分は女子大に行きたいと思っていた。

「中学に入ってから、男性を見ると『怖いな』って思うようになっていることに気づきました」

「小学校でいじめられた記憶がずっと残っていて、特に男の子からのいじめが怖かったんですよね」

「だから、大学の構内に男性がいるという状況には、耐えられないだろうなって思ったんです」

しかし、国公立の女子大は数が少ない。

結果的に、実家から通える県立女子大に進学することを決めた。

母からの詰問

大学受験が終わったあと、入学式に着て行くスーツを買ってもらうことになった。

「スカートタイプのスーツは嫌いだから、パンツスーツがいいって言ったんですよね」

「そうしたら、母から『変なこと言ったらダメだからね』って言われたんです」

「女の子なのにスカートが嫌いなんて、変だと思ったんでしょうね」

「続けざまに『レズビアンじゃないでしょうね』って聞かれました」

考える間もなく「そうだよ」という返事が口をついて出た。

それまで、「私は女が好き」と母に伝えたことはなかった。

両親は、マジョリティを普通と捉えているタイプ。

ことあるごとに「将来は結婚するんだから」と言われていた。

「それに対して、私が『相手の性別なんて関係ないよね』とか『同性婚が認められている国もあるんだよ』とか言ってたので、勘づいていたのかもしれません」

母から返されたのは「気持ち悪いからやめなさい」という一言。

「私だって、なりたくてなったんじゃない」と反論したが、母は「カウンセリングを受けなきゃダメだな」とつぶやくばかり。

それ以上、その話を続けたくないようだった。

「私も当時は、反論するほど知識がありませんでした」

「病気じゃないということを説明したかったけど、うまく言葉にすることができなかったんです」

09母の価値観

理解者がほしい

母が、同性愛に対して否定的であることはわかっていた。

ずっと前、テレビで同性愛に関するニュースが流れたことがある。

そのときに、母と祖母が「気持ち悪いからチャンネル変えよう」って話していたのを聞いたからだ。

「当時は、もう性指向を自覚していたので、母と祖母の会話はショックでした」

家族の中に味方がほしい。

そう思い、大学入学後、母にもう一度話してみたが、「気持ち悪い」の一点張りだった。

弟と祖母にもカミングアウトをした。しかし残念ながら、どちらも否定的な反応だった。

「それ以来、家族の前ではこの話を出してません」

「お父さんには言ってないけど、たぶんお母さんから聞いて知ってるんじゃないかな」

一歩踏み出すために

大学では、日本舞踊部に入った。

受験前から、この大学に受かったら、日本舞踊部に入ろうと思っていた。

引っ込み思案だった小さい頃の自分。
いじめられていた小6の自分。

その残像を引きずったまま、10代を過ごしてきてしまったと感じていた。

一歩踏み出せる自分になるために、いろいろなことに挑戦したいという思いがあった。

「大学生活の中で一番大きかったのは、2年生のときに、NPO法人が主催するインターンシップに参加したことです」

「フィリピンに行き、現地でボランティアをしたり、さまざまな職業体験をしたりしました」

「それ以来、フットワークが軽くなったと自分でも感じます」

「前はじっくり考えないと動けないタイプだったけど、すぐに行動に移すのも大事なんだなって」

フィリピンに行くまでは、時間きっちりに電車やバスが来ないと、イライラすることが多かった。

しかし、フィリピンでは遅れるのが当たり前。

「自分の価値観が必ずしも正しいわけじゃない。違いを受け入れるということを、身をもって体験したんです」

「セクシュアリティの違いも、こうやって受け入れてもらえたらいいのに、って思いました」

SNSのプロフィール

大学2年生からは、アルバイトも始めた。

飲食店で、3年間接客を続けている。

「バイトの同僚には男性もいるので、最初は緊張してました。でも、いざ一緒に働いてみると、全然怖くありませんでした」

「小学校のときのトラウマを克服できたなって思いましたね」

中高時代よりも、自由になるお金が増え、遊びの範囲も広がった。

イベントに参加するために、一人で地方遠征に行くこともある。

「同じ趣味の人と、SNSでやりとりすることもあります」

「みんな年上なので、友だちって呼んでいいかわからないんですけど(笑)」

「SNSでは、レズビアンであることも公開しています」

「私のセクシュアリティを認めた上で、仲良くしてくれるのが嬉しいですね」

10 「普通」は存在しない

リア友へのカミングアウト

大学の同級生など、リアルの友だちには、まだカミングアウトできていない。

「家族に言ったときみたいに、否定されたらどうしようという不安があって・・・・・・」

「でもやっぱり、友だちに隠し事をしているっていう気持ちがあるので、機会があったら言いたいとは思ってます」

1年生のときに、フランス語の授業で仲良くなった友だちがいる。

「その子とは、LGBTの当事者を招いた特別授業を、一緒に聴講したことがあるんです」

「レズビアンであることを打ち明けても、その子なら理解してくれるかなっていう希望はありますね」

女子大のせいか、自分の周りだけなのかわからないが、友だちと恋愛の話をすることがほとんどない。

友だちから、「好きな人いるの?」と聞かれたこともない。

「もし、そういう話題になったら、隠さずに言おうと思ってます」

「とはいえ、セクシュアリティをオープンにすることが、必ずしも正しいとは思いません」

「受け入れてもらえないと苦しいし、自分が生きやすいほうを選べばいいのかなと思うんです」

マジョリティが正ではない

高校生のお昼休みを思い出す。

お弁当を食べると、眠くて午後の授業に集中できなくなるため、いつも放課後に食べるようにしていた。

あるとき、そのことを母に話すと「それは変だ」「協調性がない」と言われてしまった。

「理由があってそうしているのに、人と違うだけで変だと言われることが、ショックでした」

「人と違うことの何が悪いか、お母さんに聞いても、きっと答えられないと思うんです」

「ただ、お母さんもそういう価値観を小さい頃から刷り込まれてきただけなんじゃないかな」

恋愛も同じだ。

男性が好きになるのは女性で、女性が好きになるのは男性という前提を前提にしたメディアやサービスが、世の中には多い。

でも、その枠に当てはまらない人もいることを知ってほしい。

「うちのお母さんは、よく『普通が一番いい』って言うんです」

「男性と女性が結婚して、子どもを産むというのが、たぶんお母さんの言う普通なんですよね」

「LGBTの人たちが生きづらいのは、そういった考えの人が、まだまだ多いから」

「普通なんて、どこにも存在しないんです」

身近な人に気づいてほしい

最近、祖母が、テレビでトランスジェンダーの特集を見ていて、「こんな人もいるのね・・・・・・」と興味深そうにつぶやいていた。

「4年前にカミングアウトしたときは、頭から否定されました」

「でもいまは、ちょっとだけ理解の幅が広がってるのかな、って感じるんです」

「情報が増えることで、受け入れる幅も広がっていくのかもしれないなって」

知らないことをネガティブに捉えてしまうのは、誰でも同じ。

自分も、新しい環境に馴染むのは相変わらず苦手だし、知らない人と話すときは緊張する。

でも、新しい扉を開くことで、価値観が広がっていくことを、22年間生きてきた自分はもう知っている。

「いまは、こういうセクシュアリティがあることを、多くの人に知ってほしいっていう気持ちが強いです」

「できれば、身近な友だちにも理解してほしい」

社会人になるまでに、友だちに話せるかどうかはわからない。

「LGBTERの記事が、ひとつのきっかけになればいいなと思ってます」

あとがき
「ありがとうございます」がとても多い泰羽さん。自分のこととは言え、説明がつかない気持ちもあるだろうと想像したが、投げかけた問いに一所懸命向き合って下さった■「普通なんて存在しない」。泰羽さんは、静かに強く言った。[ふつうは・・・]がもつ強制力はすごい。あたかも大多数の人から支持され、同意を得ているようなニュアンス。孤立さえ生む。自分が何気なく発した言葉で、誰かを社会から引き離してしまわないように、と思う。(編集部)

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