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セクシュアリティで悩む若者を生み出さないために。【後編】

セクシュアリティで悩む若者を生み出さないために。【前編】はこちら

2018/07/02/Mon
Photo : Rina Kawabata Text : Kei Yoshida
高橋 拓也 / Takuya Takahashi

1996年、新潟県生まれ。小学生の頃から “男らしさ” や “女らしさ” という言葉に違和感を覚え、中学生の時に同級生の男子を好きになったことから、自らの性指向に気づく。現在は地元の大学の人文学部に在籍しながら、インターン生として東京の企業で働き、主にLGBT向けのイベントの企画運営を担当している。

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INDEX
01 リアルに人と関わる仕事を
02 閉鎖的な環境からの脱出
03 男らしくとか女らしくとか
04 エックスジェンダーという性
05 自分を否定することの辛さ
==================(後編)========================
06 この苦しみを繰り返したくない
07 初めての恋人はイタリア人
08 LGBTのサークルを立ち上げよう
09 カミングアウトするかしないか
10 仲間は身近にもいるんだよ

06この苦しみを繰り返したくない

本当の気持ちを誰かに

そうして高校時代は、心を閉ざしているうちに終わってしまった。

しかし、わだかまりが残った。

「中学ではカウンセラー以外に、誰にも言えなかったから、高校では本当の自分の気持ちを誰かに言おうと、決めていたんです」

「だから、卒業したあとになってしまったけれど、その彼にメールを送りました」

自分が男性同性愛者であること、辛くなって自分から距離をおいたこと、そのことを申し訳ないと思っていること。

そして、彼のことが好きだったこと。

包み隠さず、伝えた。

「ものすごく長いメールだったと思います(笑)」

「そしたら、『なんとなくは気付いていた』って返事がきて」

「メールでは、僕を受け入れてくれた感じでした」

「僕に気を遣ってくれたのかもしれないし、実際に会ってないから分からない部分はありますけどね(笑)」

中学生の時は、打ち明けたあとに関係が変わってしまうのが嫌だから言えなかった。

しかし、大切な友だちに言うことで自分なりのけじめを付けられた。

わだかまりを払拭することができた。

身近なロールモデルとして

「誰にも言えないまま、ずっとずっと毎日、同じようなことをひとりで考え続けていました」

「考え続けた結果、こんな風に悩んでいるのは自分だけじゃない、同じように苦しんでいる人は他にもいるってことに目を向けたんです」

自分が性的マイノリティであることを、誰にも言えない苦しみ。

自分が生まれてきたことさえも、否定してしまいそうになるほどの苦しみ。

それは、もしかしたら、自分より先に人生を歩んできた人たちも味わった苦しみかもしれない。

「僕は、この苦しみを次の世代に繰り返したくない」

「自分がものすごく苦しんだのと同じように、他のだれかに苦しんでほしくないんです」

「テレビやネットで、LGBT当事者の活動家の人がいることは知っていました」

「僕には彼らのようなタレント性があるわけではないけれど、だからこそ身近なロールモデルとして、多くの人と共有できる部分があるんじゃないかと思うんです」

なんで生まれてきたんだろう、という問いの答えはここにあった。

これ以上、性自認や性指向を理由に悩み苦しむ若者を生み出さないことが自分の使命。

そのために、自分は生まれてきたのだと思った。

「大学に入ったら、すぐにLGBTの活動に参加したいと思っていたんです」

「でも、大学にLGBTのサークルはなく、地元には活発に活動しているようなNPOなどもなくて」

LGBTの活動を実行するならば、自分で新たに団体を立ち上げるしかない。

しかし、大学入学時の夢は、もうひとつあった。

それは、フランスへの留学だった。

07初めての恋人はイタリア人

フランスへの語学留学

趣味は、お菓子づくり。

子どもの頃はパティシエになりたかった。

その本場であるフランスに興味が湧いたのは、自然な流れだった。

「第2外国語としてフランス語を勉強して、大学2年生の時に9ヵ月間、フランスのナントへ交換留学しました」

留学先の大学ではフランス語の授業をフランス語で受ける、という大変さはあったが、憧れの国フランスは刺激に満ちていた。

「大学の寮に滞在していたんですが、いろんな国の留学生がいました」

「それに、ひとりでフランスを旅行したりもしたんですよ」

「Airbnbを利用して宿泊先を手配したり、街中で道を聞いたり。そういうこと、日本でもやったことなかったのに(笑)」

フランスでは、初めてのひとり旅だけでなく、初めての恋愛も経験した。

相手は、フランスに留学中のイタリア人。

音楽大学に通うバイオリニストだった。

「僕の1年前の交換留学生である先輩と彼が知り合いだったみたいで」

「Facebookを通じて、つながったんです」

しかも、彼は地元の大学で日本語を学んでいたらしく、日本語も話せた。

フランスでの生活が始まって、仲良くなるのに時間はかからなかった。

そしてある時、彼から「付き合ってほしい」と告白されたのだ。

告白されたうれしさ

「実は、その時にはお互いの性指向なんて知らなくて」

「でも、何と言うか・・・・・・、告白されたのなんか初めてだったし、自分のことを好きになってくれる人がいるんだって、うれしくて」

「1週間くらい返事を待ってもらってから、付き合うことになりました」

付き合いを始めるにあたって、自分がゲイなのかエックスジェンダーなのかは伝えず、「男性が好き」だということだけは伝えた。

「でも、付き合いのやりとりのなかで、違和感はなかったですよ」

「あんまり、“付き合う” ということがどういうものか分からなかったけど(笑)」

留学中の冬休みは、ずっと彼と過ごした。

「一緒にいて理解し合える感じがあったので、安心感はありました」

「それに、日本語で話せますしね(笑)」

共に過ごす時間が増えていくにつれ、ゆっくりではあるが、少しずつ彼のことを好きになっていった。

08 LGBTのサークルを立ち上げよう

奇妙な三角関係

初めての恋愛は、実は楽しいというよりも、かなり複雑だった。

「彼と共通の友だちの日本人女性がいたんですが、彼女は彼に好意をもっていたんです」

「だから、早めに僕たちの関係を彼女に伝えました」

「そしたら、その人は何だか変わった結婚観をもっていて、よく分からない三角関係みたいになってしまったんです」

恋愛感情があるなかで、結婚をしたくない。

恋愛感情は長くは続かないから、結婚をして、法的に結ばれてしまうと面倒なことになる。

だったら、恋愛関係にない相手と結婚して、恋愛は別の人とすればいい。

そんな結婚観だった。

「対して彼は、いつかは日本で就職したいと思っていたんです。でも、就労ビザを取得するのは難しいし」

だったら、日本人と結婚して配偶者ビザを取得すればいい。

でも自分はゲイで、日本では愛する人と結婚はできない。

ならば、割り切った付き合いのできる日本人女性と結婚すればいい。

そこで利害関係が一致したのだ。

無関心な日本を変えていきたい

「彼と彼女が結婚関係で、彼と僕が恋愛関係で、彼女と僕が養子縁組を組めば、みんな一緒にいられると」

「最初は、デメリットがないなと思っていたけど、いや違うと気付いた時にはすでにドロドロした感じになってて(苦笑)」

「耐えられなくなって、帰国する前に別れました」

そんな苦い想いもしたフランスでの恋愛だったが、恋愛という視点でフランスを見て、改めて気付いたこともあった。

「フランスでは同性婚もできるし、そもそも恋愛がオープンなんですよ」

「友だちと食事をした帰り道、駅のホームで電車を待っていたら、隣で男性同士がキスをしていて、びっくりしました(笑)」

「日本では、まだ同性婚は認められていないし、そもそもLGBTの話題について寛容というよりも、無関心なんだと思います」

そんな日本を少しでも変えていきたいと、LGBTの活動に対する想いを新たにした。

大学にサークルがないなら、自分で立ち上げよう。

留学中にツイッターでメンバーを募集し、帰国後に活動をスタートした。

「現在は、ライングループに10人くらいのメンバーがいます」

「まだまだ募集しつつ、活動内容をまとめていきたいです」

09カミングアウトするかしないか

好機と捉えて前向きに

自分が通っている大学で、LGBTのサークルを立ち上げはしたが、公にカミングアウトしているわけではない。

「ツイッターでメンバーを募集するのは、サークルのアカウントなので、自分の名前は出していないんです」

大学の親しい友だちであっても、自分が性的マイノリティであることを知らない人がいる。

「隠しているつもりはないので、聞かれたら話します」

実際に、友だちに話したとしても「へーっ」程度の反応で、そもそもあまり聞かれない。

「今まで自分と付き合ってきてくれた友だちだからこそ、隠し事をせず、もっと仲良くなりたいから、とカミングアウトする人もいます」

「でも僕は、どちらかというと昔からの知り合いよりも、これから付き合いを始める人の方が話しやすいです」

「新しい知り合いなら、僕のことを知った上で、仲良くなれるか、拒絶されて終わるか・・・・・・」

「シンプルでいいと思います」

打ち明けたあとに関係が変わってしまうのが嫌だ。

やはり、その気持ちは強い。

「でも、昔からの知り合いに、聞かれても話しますよ。それは打ち明けるチャンスだと思うので」

「逆に、そこで打ち明けなかったら、今後もずっと嘘をつき続けなければならないから」

関係を守るためとはいえ、嘘をつき、自分を否定し続けるのは辛い。

だったら、相手との関係が変わってしまうことを覚悟して、この時を好機と捉え、前向きに行動を起こそう。

そう思えるくらいの強さは身につけた。

言うべき時が来たら

ただし、家族に打ち明けるのは大学を卒業してからと考えている。

やはり家族に心配はかけたくない。

就職して、自立してからでなければ。

「両親は・・・・・・どんな反応するかな」

「今まで、家族で恋愛の話をしたこともないし、妹や弟が恋人を連れてくることもなかった」

「想像もつかないけれど、言うべき時が来たら、それをチャンスだと思うようにします」

苦しくて、悩んで悩んで、悩み抜いて、やっと見つけた “自分の使命”。

自分が歩んできた道を振り返り、オープンに話すことで救われる人がいるかもしれない。

その想いがまた、自分に強さを与えてくれる。

「LGBTERの記事を読んでいると、本当に共感することが多くて」

「男か女かの二元論で悩んでいたエックスジェンダーの方の話とか」

「仲間がいる。そう思って、ホッとしました」

今度は、自分が誰かをホッとさせてあげたいと思っている。

10仲間は身近にもいるんだよ

地方にコミュニティをつくりたい

インターン先で行っているLGBT当事者向けの就活支援イベントは、仕事として取り組んでいるが、それ以上に得るものがある。

「集まってくる人が当事者ばかりなので、ゲイやレズビアンの方だけでなく、エックスジェンダーの方もいて」

「そもそも、『賢者屋』にも性的マイノリティの方がいるので、普通に恋愛の話もできる環境があります」

「もう、ひとりで悩むことはなくなりました(笑)」

ひとりで思い悩んでいた頃に、そんな環境があったなら。

誰もが自分を隠さず、普通に恋愛の話ができる、当たり前の環境。

そんなコミュニティをつくりたい。

「東京には、新宿二丁目をはじめとするコミュニティがあるけれど、地方にはあまりありません」

「新潟に住んでいた頃は、東京に行けばコミュニティがあるのは知っていたけれど、学生の身分では実際に行くことは難しいし」

「自分の生活とはかけ離れた、別の世界のように感じていました」

だから、地方にこそコミュニティをつくりたい。

地方に住む当事者たちの居場所を用意したい。

自分からアクセスすること

「大学のLGBTのサークルも、大学の垣根を超えて、サークル同士が協力し合ったら、もっと大きな活動ができるんじゃないかと思ってます」

テレビに出てくる人や東京にいる人だけじゃない。

決して別の世界のことではなく、身近にも仲間がいるんだということに気づいてもらいたい。

「同じ当事者もいるし、受け入れてくれるアライもいるんだって、実感してほしいんです」

「テレビやネットで触れられる情報だけでは、狭い世界で完結してしまいがちだと思います」

「その情報から一歩踏み込んで、例えばネットで見つけたサークルやコミュニティに参加してみることが大切」

自分からアクセスする。

それは、とても勇気のいることだ。

中学生の時にスクールカウンセラーに相談し、高校卒業時に友だちにカミングアウトを果たし、フランス留学という夢を叶えた。

すべてが、自分からアクセスした結果だと言えるだろう。

「悩んでいたあの頃は、いまの自分がいるなんて、ぜんぜん想像できませんでした」

「今後はLGBTの活動をさらに進めていきたいと思っています」

あとがき
拓也さんは大人しそうに見えて、冒険ができる人。静かに笑う表情には、いたずらっ子? 枠にはまらない?? 感じがあった。そう、[今]よりも[先]を見ている。昔、夢みたことが現在の日常になっていると、すでに体験しているのだ■家族へのカミングアウトはこれから。打ち明ける時、LGBTERの記事が少しでも拓也さんを支えるものになればと願う■どこで、誰と、何を、どのように、どんな気持ちをもって・・・ 叶えたいか? ひと足ずつ、ひと足ずつ。(編集部)

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