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LGBTとかアライとか関係なく、自分と相手を大切に思える人を増やしたい。【後編】

LGBTとかアライとか関係なく、自分と相手を大切に思える人を増やしたい。【前編】はこちら

2018/11/28/Wed
Photo : Taku Katayama Text : Shinichi Hoshino
蔭山 夏月 / Natsuki Kageyama

1996年、東京都生まれ。法政大学経営学部経営学科に通う大学4年生。大学2年のときに行ったアメリカ留学で様々なマイノリティに出会い、大きな影響を受ける。帰国後、イベント企画サークルでの活動を経て、自ら「NGO Diversity cafe」を立ち上げる。社会的にマイノリティとされる人との交流会やイベントを通して「自分とは違う部分も同じ部分も尊重できる人を増やす」活動をしている。

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INDEX
01 違いを認めるイベント活動
02 自己主張の強いキャラからおとなしいキャラへ
03 昔から家庭に不穏さを感じていた
04 衝撃だらけのアメリカ留学
==================(後編)========================
05 帰国後、イベント企画サークルへ
06 イベントを通して気付いたこと
07 LGBTを取り巻く環境
08 アライを名乗ることの素晴らしさ

05帰国後、イベント企画サークルへ

これまでと同じ生活は送れない

大学に入ってからは、塾講師のアルバイトをしたり、簿記の資格を取ったりした。

とはいえ、ごく普通の大学生だった。

しかし、アメリカ留学を境に、自分のなかで大きな変化があった。

「日本に帰ってきたら、これまでと同じ生活は送れないって思ったんです」

「やりたいことが何なのか分からないけど、とにかく何かしよう! って(笑)」

留学先には、自分と違う相手、相手と違う自分を認めて、どちらも大切に思う文化があった。

「毎日、みんながお互いを褒め合ってるような感じでした」

「私は、自分のこと大切に思えなかった時期があったけど、アメリカでは、自分のことを大切だと思わせてくれるシャワーをどんどん浴びせられるというか」

「自分は愛されていると思わせてくれることとか、自分はここに居ていいんだという自尊感情を持たせてあげることって、すごく大事なことだなって思ったんです」

アメリカで感じた「みんなが笑っていられる空気感」が日本にもあったらいいなと考えるようになった。

そういう日本になってくれたら嬉しいし、いろんな人が居心地良くなるはずだと思った。

誰もが留学して、異文化に触れて、気付きを得るような経験ができるわけではない。

「だけど、イベントでそういうことができるんじゃないかって」

「留学は少しハードルがあるけど、イベントくらいなら誰でも気軽に行けるんじゃないかって思ったんです」

そんなおもいから、帰国後、イベント企画サークルに入った。

自分のやりたいことを見つけるのも兼ねていた。

「とりあえず、いろんなイベントをやってみたら、やりたいことが見つかるんじゃないかなって」

最初のイベント

最初に企画したイベントでは、「日本の女の子たちの自己肯定感を高めるには?」というテーマを掲げた。

女の子たちとカフェで雑談しながら、「自分が、人と違うって思ったことはありますか?」と、投げかけた。

「そうすると、みんな何かしら人との違いを持ってるんです」

「でも、その違いはアメリカだったらポジティブなこととして出てくるのに、日本だとネガティブなこととして出てくるんです」

たとえば、「自分は声が大きくて嫌だ」という子がいた。

「声が大きいことが嫌だって思ってるのは、過去に何かしらショックを受けた経験があったからだと思うんです」

そんな過去の経験について、話せる子は話してもらい、言いたくない子は紙に書いてもらった。

「紙に書くのはグリーフレターって言うんですが、私自身がグリーフレターを書いて楽になった経験があったんです」

「自分の内面に向き合って、つらい経験をしたときの自分に言ってるんだと思って書いてみたら、すっきりするよって」

「家に帰ったら絶対書かないから、今ここで書いて帰ろうって」

「このイベントは、参加してくれた女の子たちに喜んでもらえました」

06イベントを通して気付いたこと

違いを認められる人を増やしたい

自分でイベントを企画して、いくつかのイベントを開催した。

イベント企画のノウハウも蓄積され、主催者としての成長も感じている。
イベントを通して、自分のことを知ることもできている。

「昔は、自分のいいところは素敵な友だちがいることだけだと思っていたけど、今は、前よりも自分のいいところを知ってます(笑)」

参加者に喜んでもらえれば、手応えも感じられる。

「私はこれができる! っていう、強みの発見になったりもしてますね」

イベント企画を通してやりたいことを見つけるという点でも、気付きがあった。

あるときは女の子、あるときはLGBT、あるときは障がい者と、様々なテーマでイベントを重ねるなかで、「自分は何がしたいんだろう?」と自問してきた。

「そこで気付いたんですけど、私が関心があるのは、LGBTとか障がい者とか、それそのものではないんだなって」

「そうじゃなくて、自分とあなたは違うっていう大前提を、受け止められる “心” に関心があるんだって気付いたんです」

関心があるのは、特定のカテゴリではなく、すべてにつながっている「違いを認める心」。

「自分は居ていいんだって思えて、かつ、あなたは居ていいんだよって言える人を増やしたいんだということに気付きました」

自分のことを大切だと思えることは、大事なことだ。

「でもそれだけじゃなくて、あなたは大切なんだよって、相手に思わせてあげられる人が増える必要があるなって」

自分も相手も大切に思うためには、そもそも、あなたと私は違う人であるという当たり前を認める必要がある。

だから、違いを認められる人を増やしたいと考えた。

大学卒業後は、教育系の企業への内定が決まっている。

「最初は、教育分野なんて全然考えてなかったんですけど、“そんな人を増やす” って教育が近いと思ったんです」

心の中のわだかまり

相手のことを認められないのはなぜか?
違いを認められず、否定するのはなぜか?

「その人は、きっと自分のことを認めることができてないんだと思います」

「自分の心のなかに、何かしら、わだかまりがあるんだと・・・・・・」

「その人が、接する誰かのことを受け入れられたときが、自分のことを認められるときだと思います」

「私は、ダイバーシティとか言ってますけど、その裏には、自分自身に結構、偏見が多いっていう自覚があるんです」

「私自身、誰かのことを認めて、自分の心の中にあるわだかまりも認められるようになりたいと思っていて」

「Diversity cafeをやっているのは、そういうのも裏理由としてあるんです(笑)」

07 LGBTを取り巻く環境

ひと言では片付けられない

イベントを企画するようになって、LGBTの人たちと関わることが増えた。

ダイバーシティ・カフェの関係者にも、LBGTの子がいる。

「LGBTを取り巻く環境って、ひと言では片付けられないなって、最近すごく思います」

イベントの参加者にも、いろんな人がいる。

LGBTにはまったく興味がないという人。
もっとLGBTのことを知りたいという人。
LGBTに会ったことはないけど、偏見を持っていない人。
普通にLGBTを受け入れている人。
LGBTは嫌いだという人。

当たり前だが、LGBT当事者の “前提” もみんなそれぞれ違う。

「最初のカミングアウトで受け入れられた人と、そうじゃなかった人では、前提が違うというか」

「その後の動きやすさとかも、全然変わってくると思うんです」

あっけらかんとオープンにできる人もいれば、カミングアウトは絶対無理だという人もいる。

アメリカでは、西海岸は特にダイバーシティが進んでいて、LGBTの人たちもオープンだと言われる。

「でも、アメリカにも大嫌いって言う人もいるわけで。受け入れている度合いはみんな違うわけだし、一概には言えません」

「日本はLGBTが進んでいるとか遅れているとか、そんな簡単には片付けられないと思います」

「ただ、アメリカのほうが、LGBTフレンドリーの企業とか、学校の取り組みとか、そういうのは盛んだと感じました」

誤解が生まれないように素直に話す

LGBTに限らないが、目の前の人と自分は違う人。
常に誤解が生まれるおそれはある。

「だからこそ、お互いが分かり合えるように、素直に話すようにしています」

「たとえば、トランスジェンダーの人の気持ちを分かりたいと思っても、分かりきれない部分があるかもしれないじゃないですか」

「そういうときは、もしかしたら失礼なこと言っちゃうかもしれないけど、悪気はないからねって言ったり」

「教えてくれたら、私も気付けるから言ってね、みたいな」

「変な誤解が生まれないように、素直に心の内を言うようにしています」

「LGBTの人も含めて、あらゆる人が『自分は居ていいんだ』っていう自尊感情が保たれる社会になってほしいと思います」

「そのためには、LGBTっていうカテゴリでくくられていて、いいと思うんです」

「カテゴリでくくることで、人は気付けるじゃないですか」

「最初はカテゴリで気付いても、最終的に個人として見つめられるようになればいいわけで」

「お互い違うけど、あなたはそれでいいし、私は私でいいよねって思い合えるのが理想ですね」

08アライを名乗ることの素晴らしさ

アライを名乗るのは怖いことじゃない

ダイバーシティ・カフェでLGBTをテーマにしたイベントを開くと、自身がLGBTだと思われることがある。

「それで、変に配慮されたりとか、変な目で見られたりとか」

「LGBTの人たちって、こういうの普通にあるんだろうな・・・・・・って、思ったんです」

「アライ」と名乗ることに抵抗感のある人は少なくないと思う。

「アライって言葉を使った瞬間に、同じ人なのにもかかわらず、急に “LGBT感” が出るじゃないですか」

「そこに、違和感を感じる人ってきっと多いんじゃないかなって」

「でも、アライってただLGBTっていうひとつの違いを認めているだけだと思うんです」

「私は違いを認めている、という気持ちに “アライ” っていう名詞がついただけなんです」

アライという言葉が仰々しく感じることもあるかもしれないが、アライを名乗ることを恐れる必要はない。

「アライって、違いを認めるっていう素敵な考えを、人から見えるようにするための言葉だと思います」

「私は、自分の考えをアライって言葉に託したことで、出会いたい人に出会えるようになりました」

「LGBTうんぬんではなく、相手と自分を大切に思える人を増やしたい、っていう考えに共感してくれる人に出会えるようになりました」

留学から帰ってきたとき、Facebookの友だちは300人ちょっとだったが、今は1,000人を超えている。

「純粋にそれだけ会いたい人に会えたし、これからも会いたい人に会えると信じています」

自分が思ってることは何でも言ってみたらいい

ダイバーシティ・カフェの活動でも同じだ。

「私が、ダイバーシティ、ダイバーシティって言ってたら、日本で最初にダイバーシティ・インクルージョンを推進してきた団体から一緒にイベントやりましょうって、声をかけていただいたんです」

自分の考えを素直に言うのは、怖いことかもしれない。

「でも、そうすることで、会いたい人に会えたり、自分が行きたい方向に導いてくれたりするんじゃないかな」

「アライっていうことに限らず、自分が思ってることは何でも言ってみたらいいんです」

全世界に向かって言わなくてもいい。
まわりにいる聞いてくれそうな友だちからでいい。
言うってことが怖い日本だからこそ、言ってみて、違いに気付いてもらったほうがいい。

あとがき
どんな声をかけても「ありがとうございます!」と満面の笑みをくれる夏月さん。“斜に構えた” の言葉とは真逆の場所にいる■「自分が思ったことは言ってみて!」は、夏月さんの実感。他者との関わりを減らした時期をへて、たどり着いた今だ■おもいを込めるほど、相手の反応にしょげたりする。でも、そもそも勝手に期待したんだとふり返ることしばしば(苦笑)。うれしさも寂しさも、自分の未熟さも・・・いつも誰かとの関わりが教えてくれる。(編集部)

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