INTERVIEW
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FTMであることをお父さんに受け入れてもらうため、今日も手紙の続きを書こう。【前編】

小麦色の肌に、彫りの深い端正な顔立ち。白のTシャツにサングラスをかけて颯爽と取材現場に現れた仙木輝海さん。洗練された都会っ子そのものだが、実は上京して1年足らず。東京は人が多すぎて、電車に乗るのが怖いと笑う。LGBTに限らず、少しでも悩んでいる人の力になれればと、FTMであること、父親との関係のことなど、自身の半生をさらけ出してくれた。

2018/12/01/Sat
Photo : Rina Kawabata Text : Shinichi Hoshino
仙木 輝海 / Yuu Sengi

1990年、フィリピン・マニラ生まれ。日本人の父とフィリピン人の母を持つ。セクシュアリティはトランスジェンダー(FTM)。1歳から26歳までの多くを岡山県で過ごし、中学・高校・大学と陸上に熱中する。27歳で上京。現在は、アルバイトをしながら芸能活動を志している。

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INDEX
01 フィリピン生まれ、岡山育ち
02 自分は女じゃないという違和感
03 陸上まっしぐらの中学時代
04 インターハイを目指した高校時代
05 自分のセクシュアリティを「直す」ために
==================(後編)========================
06 やっぱり女の子が好きなんだ
07 二十歳の誕生日、父へのカミングアウト
08 そこらへんの男より男っぽいFTMに
09 あなたは男性なんですか? 女性なんですか?
10 いつかお父さんと二人で飲みたい

01フィリピン生まれ、岡山育ち

一人称は「オレ」から「ウチ」へ

日本人の父とフィリピン人の母の間に生まれた。

1歳までは母の故郷であるマニラで過ごし、その後、岡山へ。

物心ついたときから、男の子の遊びが好きだった。

「サッカーをしたり、ウルトラマンごっこをしたりしてました」

「ゴミ袋を被って、手裏剣を作って、忍者ごっこもしてましたね」

5歳下の弟とは、ベイブレードをして遊んだ記憶がある。

「どっちかと言うと、弟のほうが髪も長くて女の子っぽかったですね」

幼少期を振り返ると、小さいながらにセクシュアリティの違和感はあった。

「幼稚園のとき、自分のことを “オレ” って言ってたんです」

「友だちに『なんで女の子なのにオレって言うの?』って聞かれたことがありました」

「同じ頃、隣のクラスの女の子のことが好きだったのも覚えてます」

小学校に入学した頃から、一人称を「ウチ」に変えた。

「家では ”オレ” って言えなかったんです」

だから、男女どちらとも取れるような言い方を選んだ。

ハーフだからうらやましがられた

フィリピンでは、女の子は生まれてすぐにピアスを開ける風習がある。

だが、日本の子どもたちがそのことを知るはずもない。

小学校1年生のとき、友だちに「ピアスして、学校来ちゃダメなんだよ」と指摘された。

家に帰って両親に話したら、両親が先生に伝えてくれた。

先生がみんなの前で説明してくれたから、それ以降、ピアスが問題になることはなかった。

「ハーフだからって、いじめられたりすることはありませんでした」

「ピアスのことを言ってきた子とは、今でも仲が良いですからね(笑)」

逆に、「ハーフでいいなぁ」と、うらやましがられることは多かった。

うらやましいポイントは、主に、彫りの深い顔立ちと、海外(フィリピン)に行けること。

「ハーフあるあるだと思いますけどね(笑)」

かけっこはいつも1位

昔から、運動神経は抜群。

特に、足が速かった。

「小学校3年生のとき、学区の運動会に出たら1位をとれたんです」

それ以来、しばらくはかけっこで負けた記憶はない。

スポーツでは、いつも親に褒められていた。

「親に『すごいね』って言ってもらえるのが嬉しいから、1位になりたいっていうのはありました」

「1位になったらゲームを買ってあげるって、エサで釣られてましたしね(笑)」

クラスのなかでも、女の子たちから憧れの眼差しを向けられていた。

「ハーフで、足が速くて、スポーツができたから、そういうところがカッコいいって、思われてたのかもしれません」

02自分は女じゃないという違和感

かわいい女の子ばかりを好きになった

小学校の頃は、ずっと女の子が好きだった。

「同じ子を想い続けてたわけじゃなくて、いろんな子が好きでした(笑)」

共通点は、顔がかわいい子だ。

「芸能人だと、北川景子とか好きでしたね(笑)」

「ちなみに今は、長谷川潤が好きです(笑)」

「大人になるにつれて、だんだん濃ゆい顔が好きになってるんですよね」

「フィリピンの血なのかな(笑)」

今も昔も、面食いだと言われても否定はできない。

かわいい子と友だちになりたいから、その子と仲の良い男の子と仲良くなった。

「それで、3人で遊んだりするのが目的でした」

「直接、女の子にアプローチするのは恥ずかしかったから、男友だちを使って近づいてたんですよね(笑)」

ただ、お目当ての女の子と仲良くなっても、それ以上に接近することはなかった。

「当時は、学校から一緒に帰るくらいでしたね」

小学校時代、本気の恋愛をしたことはなかったが、自然に好きになるのは女の子ばかり。

「深く悩むようなことはなかったけど、女の子を好きになるっておかしいのかなって」

「そういう、ぼんやりした気持ちは抱えてたと思います」

もしかして自分は男の子?

今思えば、幼少期に自分のことを男の子だと思っていたような “事件“ がいくつかある。

「家で立ちションをして、怒られたことがありました(笑)」

お父さんの様子を見て覚えたわけではなく、自然と立ちションをしていた。

「でも、構造的にうまくいかないじゃないですか。当然トイレは汚れますよね(苦笑)」

「だから、お母さんに『なんでこんなに汚れてるの!』って怒られましたね」

幼稚園のとき、男子トイレで用を足していたことがある。

「男友だちに『なんでここでしてるの?』って言われたんです」

「すぐに先生が来て、引っ剥がされて、女子トイレに連れていかれました(苦笑)」

「そのときも自然に男子トイレを使ってたし、自分にとっては普通のことだったんで驚きましたね」

小学校に入ってからも、男女に分かれるシーンでは、当たり前に女子のグループに入れられる。

「そういう区別からくる “何か違う” っていう気持ちはありました」

小学校1年生のときは、ソフトボールクラブに入っていた。

男のなかに女が一人だった。

「当時は髪が長かったんですけど、無理やり帽子のなかに押し込んで男子っぽく見せてました」

他の小学校と試合をしたとき、「なんで女がソフトやってんだよ」と言われた。

「男子に混ざっても身体能力は劣ってなかったっていうのもあるし、そう言われるのはすごく嫌でしたね」

03陸上まっしぐらの中学時代

体の変化への戸惑い

中学に入ると、自分の体の変化に戸惑いはじめる。

「やっぱり、中1くらいから胸が出てくるじゃないですか」

「お母さんから与えられたブラをしてましたけど、それが嫌でしたね」

猫背になって、胸の膨らみを隠していた。

「人に見られるのも嫌だったし、もちろん自分でも “胸がある” っていう感覚が嫌でした」

ただ、そのことで思い悩むほどではなく、仕方ないと割り切れた。

それよりも、当時は陸上に夢中だった。

「陸上のことばかり考えてたから、ある意味、体のことでそれほど悩まずに済んだのかもしれませんね」

陸上では、小学校までは男子に勝てたが、中学になると勝てなくなっていった。

「女子は胸が出てきて走ると痛いけど、男子は筋肉がついてくるじゃないですか」

「悔しい気持ちもありましたし、うらやましい気持ちもありましたね」

なおさら負けたくないと思った。

自分もがんばったら男子みたいな体つきになれるはずだと思った。

辞めたいと思ったのは一度だけ

中学時代、陸上の種目は100mと200m。

練習は、毎日の朝練に放課後20時くらいまで。

土日も午前中は練習、もしくは大会だった。

練習がきつくて辞めたいと思ったことはなかったが、一度だけ、辞めようとしたことがある。

部活内での人間関係が原因だった。

「意地悪な女の子がいて、一人ひとりターゲットにして、いじめていくみたいなことをしてたんです」

「部活内の雰囲気も悪くなるし、やりにくくなっちゃったんですよね」

父に、陸上を辞めたいと相談したが反対された。

「『陸上を嫌いになったんだったら辞めさせてもいいと思ってたけど、人間関係が理由ならダメだ』って言われましたね」

「そのときは、なんで辞めちゃいけないの? って思ったけど、今思えば、辞めなくて良かったです」

「あのとき、陸上を続けてたから今があるわけで、お父さんに感謝ですよね」

中学時代の陸上成績は優秀で、岡山県大会でも上位に入賞し、中国大会にも出場した。

恋愛やセクシュアリティのことで悩むことは少なかった

学校では、女友だちと過ごすことが多かった。

休み時間は、NEWSや関ジャニの話が中心だ。

「男は好きじゃなかったけど、錦戸くんが好きとか言って、みんなに話を合わせてました」

「当時、本当に好きだったのは、長澤まさみでしたけど(笑)」

部活では、1つ上の足が速い先輩に憧れていた。

女性だった。

「先輩にみたいになりたいって思ってたんですけど、だんだん、好きっていう気持ちに変わっていきました」

「でも、その先輩だけじゃなくて、同級生にも淡い恋をしてましたね(笑)」

とはいえ、中学時代は陸上まっしぐら。

セクシュアリティのことや恋愛のことで思い悩むことは少なかった。

04インターハイを目指した高校時代

混成競技への転向

学生時代、勉強は好きではなかった。

中学3年のとき、先生に呼び出されたことがある。

「仙木、マジで勉強しないとマジで高校行けないぞ、って言われたんです(苦笑)」

幸い、陸上部が強い高校から声をかけてもらった。

「でも、その高校の先生からも『もうちょっと成績を上げてくれないと取れない』って(苦笑)」

「最後のテスト、頑張ってくれって言われました」

「そのとき、人生ではじめて勉強しましたよ(笑)」

最終的に、陸上の強い商業科の高校に推薦で入学できた。

高校の陸上部でも、中学時代と同様に100m、200mに取り組む。

しかし、陸上推薦で入学する生徒も多い強豪校だったので、当然ながら中学時代よりレベルは高い。

「100m、200mじゃ、ちょっと勝負できないなって思いました」

「先生からも、インターハイに出る近道は七種競技だって言われて、高2から種目変更したんです」

七種競技とは、100mハードル、走り高跳び、砲丸投げ、走り幅跳び、やり投げ、200m、800mの7種目の混成競技だ。

はじめての種目に戸惑ったが、持ち前の “陸上本能” で比較的スムーズに適応した。

「そこからは、練習の積み重ねで形にしていった感じです」

「やり投げが、いちばん難しかったですけどね(笑)」

大好きな先輩から託された夢

七種競技に転向したのは、ちょっとした下心もあった。

「100mハードルで、すごく速くて、すごくきれいな先輩がいたんです(笑)」

「実力は全国でもトップクラスで、顔は山田優に似た超美人(笑)」

「その先輩みたいになりたいっていうのと、先輩と一緒にインターハイに出たいっていう気持ちが強かったので、七種競技に路線変更したっていうのもありました」

100mハードルの練習では、憧れの先輩から直接アドバイスをもらえた。

「ほんと、モチベーションが上がりましたよね(笑)」

だが、想いを伝えることはできず、先輩・後輩の関係から発展することはなかった。

「女の先輩を好きになるっておかしいって思ってましたし、もし告白しても『えー!』って引かれるんじゃないかって怖かったんですよね」

先輩のインターハイの成績は5位。

「インターハイで優勝してね」と夢を託された。

「先輩が引退するときは、めっちゃ泣きましたね」

先輩との約束があったから、先輩がいなくなってからもがんばれた。

「でも、インターハイでの成績は全然でした(泣)」

「やっぱり、先輩のほうがすごかったんだなって(笑)」

05自分のセクシュアリティを「直す」ために

好きになれる男性を探して

陸上に打ち込んだ高校時代は、セクシュアリティの悩みとも向き合っていた。

陸上部の先輩に恋をする一方で、女性を好きになるなんておかしいと思う自分もいたからだ。

だから、”直そう” と思った。

「そのために、高校時代は男の子と付き合いました」

「それまで、男性を好きになったことはなかったけど、男性と ”付き合う“ っていう経験をすれば直るんじゃないかって」

初めての男性との交際は、高校1年のとき。

プリクラを撮ったり、映画に行ったり、花火に行ったり、友だち感覚で楽しめた。

「でも、体の関係は絶対に嫌でした」

「チューまではOKだとしても、それ以上は、気持ち悪いって思ってたんです」

「幸い、それ以上のことを求めてくる人じゃなかったから、そこは安全でした(笑)」

しかし、これが恋愛なのかどうか分からないまま、7ヶ月で別れた。

「正直、男の人がダメっていう感じじゃなくて、この人じゃないんだろうっていう気持ちでした」

「だから、次もいきました(笑)」

「次の相手は野球部の先輩で、ダルビッシュに似たイケメンでした(笑)」

告白されて付き合ったが、やはり好きだという気持ちにはなれない。

「なんか違うんだよなーって思いながら、付き合ってましたね」

「自分のことをすごく好きでいてくれた人だったから、今思えば、最悪ですよね(苦笑)」

女性を好きな気持ちとは何かが違った

2人の男性と付き合ってみたものの、しっくりこない。

「でもまだ、好きっていう気持ちにさせてくれる男の人はいるはずだって思って、探し続けました」

その後、別の高校だった年上の陸上部の男性と付き合うことになる。

「前の2人とはタイプも違って、好きっていう気持ちも強かったんです」

「だから、この交際を続けていけば直るんじゃないかって」

しかし、分かったのは、女性に対して抱く感情とは別モノだということ。

「100mハードルの先輩に対する気持ちとは、深さが違うというか、質が違うというか・・・・・・」

男性との交際は3人目だったが、彼が最後になった。

3人目の彼氏と付き合っていた高2の冬、ある女の子に一目惚れをする。

後に、初めての彼女となり、それまでぼんやりしていたセクシュアリティに確信を持つきっかけとなった子だ。


<<<後編 2018/12/03/Mon>>>
INDEX

06 やっぱり女の子が好きなんだ
07 二十歳の誕生日、父へのカミングアウト
08 そこらへんの男より男っぽいFTMに
09 あなたは男性なんですか? 女性なんですか?
10 いつかお父さんと二人で飲みたい

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