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FTMとの結婚は超えなきゃならないものも多いけど、好きだから一緒にいたかった。【前編】

ふんわりとした空気感と笑顔が親しみやすく、出会った瞬間に打ち解けられた多和田帆乃香さん。「あんまり考えないで決めちゃうタイプ(笑)」と自己分析する多和田さんの半生を振り返ると、感情のままに動いた結果を、最良のものにできる人だということが見えてきた。トランスジェンダー(FTM)である彼との結婚も、特別なことではなく、自分の感情に従っただけのこと。

2019/02/28/Thu
Photo : Tomoki Suzuki Text : Ryosuke Aritake
多和田 帆乃香 / Honoka Tawata

1991年、栃木県生まれ。父、母、姉との4人家族に生まれ、幼稚園時代に大阪に引っ越し、小学校に上がるタイミングで栃木に戻る。大学卒業後は、看護師として千葉の病院に就職。職場でFTMの理学療法士と出会い、交際の末、2017年に結婚。

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INDEX
01 FTMと結婚したから知れた世界
02 無償の愛を注いでくれた家族の存在
03 トラブルとは無縁の恋人との日々
04 なんとなく嫌だった “同性愛”
==================(後編)========================
05 1人の男性と生きていく選択
06 2人の恋愛を認めてもらいたい人
07 新たなステップを踏む期待と不安
08 将来の目標と乗り越えるべき壁

01 FTMと結婚したから知れた世界

私の夫はFTM

2017年に結婚した。
夫は、元女性のトランスジェンダー。

彼と出会ってから、LGBT当事者と関わる機会が増えていった。

「彼も含めて、当事者の人たちはいろんな壁を乗り越えてきてるな、って思います」

「私が何の壁も乗り越えてないからだけど(笑)」

「当事者の人たちは、その人らしい生き方をしてる気がします」

楽しそうに生きる姿を見て、憧れを抱いている部分もある。
当事者に対する見方も、変わってきたような気がする。

「働いている病院の患者さんがゲイで、彼氏と一緒に来てたことがあるんです」

「でも、なんとも思わなかったな・・・・・・」

周りのスタッフも「ゲイなんだって」と口にするものの、避けるようなことはなかった。

良くも悪くも他人事

恋人がトランスジェンダーだから、わかったことがある。

世の中は、想像している以上に他人に無関心。

「ほとんどの友だちは、彼がFTMだって話すと『2人が幸せならいいじゃん』って言ってくれました」

「良くも悪くも、結局は他人のことなんだなって(笑)」

個々の考えは別として、友だちに面と向かって否定されることはなかった。

「ただ、恋人がトランスジェンダーだってことに悩んでいる人に、声をかけてあげることはできないかも」

「私は、結婚を直感で決めちゃったから」

「深く考えてないから、いいことは言ってあげられないと思うんです(笑)」

「そもそも私は、同性愛とか無理なんですよ」

「女の子同士でつき合ってるのとか、見るのもダメなタイプだったんです」

否定派だった私が、なぜFTMの彼との結婚に至ったのか・・・・・・。

02無償の愛を注いでくれた家族の存在

世話焼きな姉

栃木で生まれたが、幼稚園に入るタイミングで大阪に引っ越した。

「2歳上のお姉ちゃんが生まれつきの病気で入院していて、親がつきっきりだったんです」

「だから、おじいちゃんや友だちの家に預けられることが多かったですね」

おじいちゃん子だったわけでもなければ、寂しかった記憶があるわけでもない。

「でも、私がわがままで寂しんぼなのは、その頃の反響かもしれない(笑)」

小学校に上がるタイミングで、栃木に戻ることになった。

幼い頃に手術した姉は、今は何事もなく普通の生活を送っている。

「お姉ちゃんがめっちゃシスコンで、どこに行くにもついてくるんですよ」

1人でフラフラと遊びに行く自分を、いつも姉が追いかけてきてくれた。

今でも実家に帰り「近くに遊びに行こうかな」と話すと、「一緒に行っていい?」とついてくる。

「お姉ちゃんは世話焼きで、私とは性格が正反対なんです」

インドアタイプの姉は、引っ込み思案でおとなしい子。
活発でアクティブな自分に対して、いつも「帆乃香はいいな」と言っていた。

「姉妹仲はいいんじゃないかな」

高校も大学も、姉が通っている学校に進んだ。

「先輩にお姉ちゃんがいると、私の印象も良くなるし、学校生活送りやすくなるじゃないですか(笑)」

明るい母とやさしい父

両親から厳しくしつけられた記憶は、ほとんどない。

「お母さんはいつも元気で、人づき合いも良くて、みんなから好かれるような人です」

気遣いができる母は、仕事も家事も的確にこなしていく。

「近所の人も職場の人も、お母さんを悪く言う人はいないんじゃないかな」

「私もお母さんみたいになりたいけど、絶対になれないって思います(苦笑)」

「勉強しなさい」「お手伝いしなさい」と注意されたことはあるが、強制されたことはない。

「よく怒られるけど、しつこく何度も言われることはなかったです」

「お母さんと仲いいし、今でもお互いに何でも話しますよ」

父は、2人の娘に甘い人。

「何でも『欲しい』って言ったら買ってくれるし、甘やかされてますね(笑)」

「でも、一度だけ怒られたことがあるんですよ」

原因は忘れてしまったが、小学校中学年の時、父に叱られた。

ついには外に出され、玄関のカギを閉められた。

「それで怯む子どもじゃなかったから、逆に心配させてやろうと思って、親に見つからなさそうなところに隠れたんです(笑)」

近所の人も巻き込んで捜索されるほどの、大事になってしまった。

「その事件があったから、お父さんはきつく怒らなくなったのかもしれないです」

冒険しない人生

幼い頃から男女問わず、一緒に走り回って遊ぶタイプ。

「小学生の頃から、やんちゃで目立つ子だったと思います」

「率先して前に立つというよりは、気の合う子が目立つ子が多かったんですよ」

中学では、姉が入っていた吹奏楽部に入る。

「すごく人見知りするから、知り合いが多いところに行きたい、って気持ちが強いんです」

選んだ楽器は、フルート。
それしか吹けなかったから。

「中学生の時は県内のソロコンテストの出場者に選ばれて、入賞した気がします」

「負けず嫌いだから、『練習してない』って言いながら、陰で頑張っちゃうタイプなんです(笑)」

その努力が実り、推薦で吹奏楽部の強豪校に進むことができた。

「新しいことに挑戦するのが好きじゃないから、私にはフルートしかないと思ったんでしょうね」

「きっと私は、波風の立たない無難な人生を歩んでいきたいんです」

03トラブルとは無縁の恋人との日々

長続きしない恋愛

記憶にある初恋は、小学2年生の時。

「足が速い、スポーツ万能な人でした」

「学年で目立つ男の子って、女子みんなが好きじゃないですか。私もそういう人が好きでしたね」

その頃はつき合うという概念がなく、告白することはなかった。

「中学生の頃は部活中心だったから、好きな人はいなかったんじゃないかな」

朝練の後に授業があり、放課後練が終わって家に帰ると、すぐに寝てしまう日々。

「初めて男の子とつき合ったのは、高校生だと思います」

mixiや前略プロフィールといったSNSで出会った人とつき合っては、すぐに別れた。

高校2年生の時、同じクラスの男の子とつき合い始めた。

「確か、1年ちょっとで別れちゃったんだと思います」

修学旅行中、男友だち数人と話しているところを、彼が見ていた。

「その時に男友だちと何かを取り合っていて、ハグするみたいになっちゃったんですよ」

「後で彼から『抱き合ってたでしょ』って言われて、別れました」

「彼氏がいても男女関係なく接しちゃうのが、良くないんですよね(苦笑)」

主導権は彼のもの

好きになる男性の共通点はない。

「相手から『好き』って言われると、私も好きかもって思っちゃうんです(笑)」

「おとなしい人よりは、元気な人の方がいいかな。つき合い始めると、私が彼についていくタイプですね」

彼が行きたい場所があれば、乗り気でなくてもついていく。
彼が叶えたい夢があれば、良くないと思っていても背中を押してしまう。

「私のことを好きでいてくれるなら、なんでもいいかなって(笑)」

きっと結婚する人

大学2年生になり、高校時代の友だちの紹介で1人の男性と知り合う。

「違う大学だけど、同じ医療系の学科に通っている人でした」

「初めて会った時、お互いに『この人かも』って思ったんです」

その直感に従うように、自然と交際が始まった。

とにかくやさしく、「帆乃香の好きなようにしていいよ」と言ってくれる人。

「珍しく私が主導権を握る関係でしたね」

お互いの家に遊びに行くようになり、それぞれの親も交際を認めてくれていた。

「うちの親も彼の親も私自身も、この人と結婚する、って思ってました」

「『就職したら、2人でどの辺に住む?』なんて話も出てたんですよ」

彼は千葉県の病院を目指していたが、二度留年してしまった。

「その間に私は、彼が目指していた病院の近くに就職して、先に千葉に引っ越したんです」

「でも、彼が夢を諦めて、地元の茨城で仕事に就いちゃって・・・・・・」

千葉と茨城は隣同士とはいえ、学生の頃のように頻繁には会えない。

「週末は会いに来てくれてたけど、それじゃ足りなかったんですよね」

04なんとなく嫌だった “同性愛”

頭の片隅にあった職業

幼稚園の頃、将来の夢を聞かれると、決まって「看護婦さん」と答えていた。

「お姉ちゃんが入院してた時に、看護師の人といっぱい触れ合ったのが大きいのかな」

「伯母さんが看護師をやっていて、話を聞いてたからかもしれないです」

しかし、高校生になると、将来の夢はなくなっていた。

進路に迷った時、担任からこう言われる。

「看護師に向いてそうだよ」

母に相談した時も、同じ答えが返ってきた。

「帆乃香は看護師に向いてると思う。お母さんも看護師になりたかったけど、お金がなくてなれなかったんだ」

身近な大人の言葉で、再び看護師という職業を見直した。

「自分の意思というよりは、周りに勧められて決めた感じです」

「『看護師が向いてる』って言われた理由は、全然わかんない(笑)」

同性同士のカップル

医療系の大学に進み、気の合う女友だちが3人できた。

その中の2人はレズビアンで、気づくとつき合い始めていた。

「2人にはずっと『早く別れて』って言ってました」

「グループの中にカップルがいると、2人がケンカした時に面倒じゃないですか」

4人で一緒にいても、2人の世界を作られることが嫌だった。

「あと、特に理由はないんですけど、女の子同士でつき合ってる姿を見るのが嫌だったんです」

彼女たちのことは、友だちとして大好きだったから一緒にいた。

それでも、同性同士での交際は受け入れ難かった。

「私は、絶対男と結婚する方がいいでしょ、って思ってたから」

「彼女たちは普通に恋愛相談してくるから、『悩むぐらいなら男の子とつき合えばいいじゃん』って、言ってました」

男っぽすぎる先輩

レズビアンの友だちが、学内で女性の先輩と話しているところを見かけたことがある。

その先輩は、ボーイッシュと呼ぶには男らしすぎる風貌をしていた。

「男の子っぽさを極めすぎちゃってるな、って思ってましたね」

「その先輩もレズビアンだと思ったから、当時は仲良くなろうとは考えなかったです」

友だち4人でいるところに、その先輩が訪ねてくることもあった。

「先輩とレズビアンの友だちは廊下で話して、うちらは教室で待ってることがほとんど」

「何度か顔は見たけど、声を交わしたことはなかったです」

まったくコミュニケーションを取らないまま、先輩は卒業していった。

後に、先輩はレズビアンではなくトランスジェンダーだったことを知る。


<<<後編 2019/03/02/Sat>>>
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05 1人の男性と生きていく選択
06 2人の恋愛を認めてもらいたい人
07 新たなステップを踏む期待と不安
08 将来の目標と乗り越えるべき壁

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