02 学校や勉強に、なんの意味があるんだろう
03 空気が読めず、いじめのターゲットに
04 芸能界への憧れ
==================(後編)========================
05 仕事ではミスの連発
06 男の子が好き、でも「ゲイ」という言葉は知らなかった
07 ゲイだけど、一番好きなのは自分
08 「ゲイレポーター」としての活動
01まわりに合わせられない “育てにくい子”
集団行動が苦手
父は国家公務員で、母は専業主婦、4歳ずつ離れた弟がふたりの5人家族に生まれた。
「弟たちとは仲が良くて、小さい頃には一緒に仮面ライダーごっこをして遊んでいました」
ずっと弟がほしいと思っていたから、弟が生まれた時には、夢が叶ってとてもうれしかったのを覚えている。
「お母さんは、『あれをやりなさい、これをやりなさい』みたいなことは、ほとんど言わず、自由にさせてくれました」
そんな優しい母が大好きだった。
対して、父はかなり厳格なタイプ。
「お父さんにはよく怒られていましたね、すごく怖かったです」
両親や周囲の大人からは、「育てにくい子」と言われていたのを覚えている。
「とはいえ、両親のことは大好きで、ここまで育ててもらってとても感謝もしています」
だが、当時の自分は鉛筆を噛んだり手を舐めたりする癖がなかなか抜けなかった上に、幼稚園ではひとりだけ集団行動ができずに浮いてしまっていたのだ。
「みんながお絵描きをしているのに、ひとりだけ他のことをやっているとか、みんなが立ち上がっている時にひとりだけ座っている、なんてこともありました」
だから、先生にはいつも怒られてばかりだったし、友だちもなかなかできなかった。
「幼稚園に行きたくなくて、毎朝迎えのバスが来る時に泣いていました」
優しいお母さんが大好きで、離れたくなかったという思いもある。
「でも、幼稚園に行くとみんなと同じことをやらないといけないから、それがすごく嫌だったんです」
その頃から、周囲に合わせて行動するのが極端に苦手だったのだ。
悪役にだって人生がある
小さい時は、ヒーローもの、特に『仮面ライダー』シリーズが大好きだった。
「仮面ライダーがかっこいいとは思ってたんですけど、仮面ライダーと戦う悪役のことも応援していました」
その後ハマった『ポケットモンスター』でも、悪役の「ロケット団」が気になる存在だった。
「昔から、『正義は勝つ』みたいなお話があんまり好きじゃないんです」
世間一般で “悪” とされている物ごとが、必ずしもすべて “悪” だとは限らない。
「“悪い” とされているものが本当は正しい時だってあるし、一概に言い切れないなって思います」
それに、見方を少し変えれば、別の側面が見えてくることもあるだろう。
悪者にだって、人生があるのだ。
そういう考え方をするようになったのは、親がキリスト教徒だったことに由来しているのかもしれない。
「キリスト教の『どんな人でも受け入れる』という考え方が、小さい頃から身に付いていたのかもしれません」
02学校や勉強に、なんの意味があるんだろう
小学校にも行きたくない
小学校に入学した。
あいかわらず、毎日「学校に行きたくない」という気持ちでいっぱいだった。
「それでいうと、今も変わらず仕事に行きたくないと思っています」
「決められた中で、言われた通りに何かをやらないといけない、っていう状態が苦手なんです」
好きでもないことを、なぜやらないといけないんだろう?
それでも我慢して学校に行っていたのは、親に「行きなさい」と言われるから。
親に反発してまで、学校を休んだりサボったりしようとは思わなかった。
「それに、家を出るまでが嫌なだけで、いざ学校に行って友だちと遊んだりするのは楽しかったんです(笑)」
学校では、おとなしくて友だちもそれほど多くなかった。
幼稚園の頃と同じように浮いていたし、それで周囲にからわれることもあった。
「今振り返れば、幼稚園や小学校は楽しかった時代でもあるけど、その頃は身長が129センチしかなかったし、アトピー体質だったので、まわりにはよくバカにされていました」
だが、そんな自分を気にかけて、いつも一緒に遊んでくれる男子がいた。
彼は、スポーツ万能でクラスでも目立つタイプ。
「『ドラえもん』で言うと、ジャイアンとのび太が仲良くしているような感じだったと思います」
なんのために勉強するの?
学校の勉強も、ほぼ全教科苦手だった。
「歴史は割と好きだったんですけど、テストだとアガっちゃって、全然いい点が取れませんでした」
それもあって、「なんで勉強をしないといけないんだろう?」といつも考えていた。
「僕はさくらももこさんが好きで、エッセイをよく読んでいたんですけど、どうやら、彼女も小さい頃はあんまり勉強をしていなかったようなんです」
そんなさくらももこさんが、今では立派な漫画家になっている。
それに、いざ自分が大人になった現在、過去に勉強した内容が役立っているとは到底思えない。
それならやっぱり、勉強は必要ないんじゃないかと思えてしまうのだ。
03空気が読めず、いじめのターゲットに
みんなが知っていることを、僕は知らない
空手やスイミング、公文、英語など、習いごともたくさん通っていた。
「でも、それも全部意味がなかったと思います」
自分で「習いたい」と言って始めた空手。
空手の型が、ウルトラマンのポーズに似ていてかっこよかったからだ。
「でも、『空手を習い続けても、全然ウルトラマンになれないじゃないか!』って思ったんです(笑)」
空手がうまくなれば、いつか自分もウルトラマンになれるだろうと信じていたのだ。
中学生の時も同じ。
気功を習えば『ドラゴンボール』のカメハメ波が打てるようになるはずだと本気で信じていた。
「でも、やっぱり一番の夢は、仮面ライダーになることでした」
「僕は、本当になれると思ってたんです」
その頃には、同い年の子たちのほとんどが「仮面ライダーにはなれない」と、理解するようになっていただろう。
「みんなが当たり前に知っていることを、僕はまだ知らなかったんです」
サンタクロースの存在も、高校生になるまで信じていた。
高校でのいじめ
中学生の時には、背が低いことで女子に「かわいい」とチヤホヤされたりもしたが、高校生になってからは、再びいじめられるように。
「みんなを盛り上げようとして、わざと変なことを言ったりしていたんです」
「そうしたら、『調子に乗ってる』っていじめられました」
たとえば、「藤原鎌足」のことを間違えて「藤原かたまり」と言ったらみんなにウケたから、その後もずっと「藤原かたまり、藤原かたまり」と言い続ける。
すると、みんな最初は笑っていたのに、徐々にしらけていってしまう。
「ちなみに、『ざっくばらん』はつい最近まで『ジャック・バーラン』っていう人の名前だと思っていました(笑)」
「もともと性格が変わっていたっていうのもあったと思うんですけど、自分でウケを狙うこともあったので、それが気に入らない人にからかわれていたんです」
最初はからかわれているだけだったが、だんだんとエスカレートしていじめ状態に。
消しゴムを投げつけられたり、「先生にいたずらをしろ」とけしかけられることもあった。
「嫌でしたね、すごく嫌でした・・・・・・」
だが、学校でいじめられていることを、親や先生に相談することもできなかった。
「言ったら、逆に『ああしなさい、こうしなさい』と指摘されるような気がして、打ち明ける勇気がなかったんです」
母はきっと受け入れてくれただろうが、父には叱られるんじゃないかと思った。
「相談できる友だちも、その時はいませんでした」
だから、ひとりでテレビを見たりゲームに打ち込んだ。
ウツウツとした気分を紛らわせるしかなかった。
04芸能界への憧れ
昭和アイドルに傾倒
中3の時、昭和歌謡にどっぷりハマってしまった。
テレビでたまたま、渡辺美里の歌を聴いたのがきっかけだ。
「曲もいいし、何より美里ちゃんがかわいいなと思いました」
とはいえ、渡辺美里を聴いているような同世代はほぼいないだろう。
「まわりのみんなが知らないような、マイナーなものが好きなんです」
「1974年から始まった若者向けの音楽番組、『レッツゴーヤング』に出ていた今井まことさんも好きでした」
“昭和の時代感” を肌で感じたくて、レコードを集めはじめた。
「高校生の頃からずっと集めていて、今では2,000枚ほどになります」
「お小遣いも全部レコードにつぎ込んでましたね」
睡眠時間を削ってレコードを聴き漁るようなこともしばしば。
好きなことに対しては、とことん向き合う。
凝り性な性格だ。
芸能人になりたい
「仮面ライダーになりたい」と思う傍ら、小さい頃からずっと芸能界にも憧れを抱いていた。
「タレントも歌手も全部ひっくるめて、華やかな世界に憧れてたんです」
いつか芸能界に入ろうと思っていたから、高校生になって周囲が大学受験モードに突入しても、受験する気は一切起こらなかった。
それに、さくらももこさんの例もあったため、そもそも大学進学がすべてではないとも思っていた。
とはいえ、「芸能界に入りたい」という夢を両親に話しても、まともに取り合ってもらえない。
「むしろ、お母さんには『大学を受験しろ』ってずっと言われていました」
しかし、父が「大学に行かずに就職する道もありなんじゃないか」と意見してくれたことで、無事受験は免れた。
「でも、芸能界に入ることは今でも反対されているので、父も “味方” という感じではないですね」
<<<後編 2018/05/03/Thu>>>
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05 仕事ではミスの連発
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