INTERVIEW
等身大の「私」を、まだ出会っていない人たちへ届けませんか?
サイト登場者(エルジービーター)募集

結婚、出産、離婚を経て知った、バイセクシュアルとしての自分。【前編】

決して相手を否定しない。恨みごとを口にしない。誰かによって深く傷つけられたとしても、自分が傷つけられた本当の理由を探り、その人を理解しようとする。あかいゆかりさんは愛にあふれた人だ。その愛は、セクシュアリティや家族など相手との関係性の枠組にとらわれない。その信念がどのように形づくられていったのか、ゆっくりと過去を振り返りながら話してもらった。

2019/11/23/Sat
Photo : Yoshihisa Miyazawa Text : Kei Yoshida
あかい ゆかり / Yukari Akai

1979年、宮城県生まれ。父の仕事の関係で宮城県仙台市内、岩手県盛岡市、千葉県船橋市などへ引越し&転校を繰り返しながら育つ。中学3年生の時に年上の男子生徒から性的暴行を受けたことがきっかけで、日本に根強く残る性への偏見に対し疑問を抱く。いくつかの恋愛経験を経たのち、26歳で結婚し、3人の子どもに恵まれるが36歳で離婚。その後出会った女性と恋愛関係となり、愛にセクシュアリティは関係ないと確信する。現在は参加型市民劇団「ゆにぃ〜く&ぴぃ〜す」の座長のほか、各種マネージメント業を行っている。

USERS LOVED LOVE IT! 7
INDEX
01 前に、進まなきゃいけない
02 転校生は第一印象が大事!
03 まるで恋愛ドラマの主人公のように
04 知らない男性に襲われて
05 本当の愛を知った “暗黒” の日々
==================(後編)========================
06 大好きな夫と子どもたちとともに
07 うつ病に苦しんだ末の離婚
08 新しい家族として幸せになる
09 恋愛にセクシュアリティは関係ない
10 LGBTなんて普通です

01前に、進まなきゃいけない

将来の夢は舞台に立つこと

三人兄弟の長女。
小学生の頃は、3つ下の弟がいじめられていると聞くと「いじめたヤツは許さない!」と弟のクラスに乗り込んでいった。

遊ぶときは8つ下の妹をおんぶして友だちに会いに行った。

「特に親から言われたわけではないんですが、私が弟と妹を守らなきゃ、って思っていたんだと思います」

「弟は体が弱くて、喘息で入院していたこともあったし、妹は8つも年が離れていたので」

3人一緒にいるときは、弟と妹を前に、いつも何かを披露していた。

「学校で勉強したことを教えたり、エレクトーンの弾き方を教えたり」

「ソファの上に立って、歌番組に出てくる歌手の真似をすることも」

「小さい頃の夢が、先生になることか、歌を歌ったり、お芝居をしたり・・・・・・舞台に立つことだったんです」

両親は真面目な人柄。

父は誰よりも早く出社して、社員の机を拭いておくようなタイプ。
母は家族が気持ちよく過ごせるよう、常に家中を整えているタイプだった。

ふたりとも、誰かのための労力を惜しまなかった。

「小学生の頃は、父の仕事の関係で転校ばかりしていました」

「学校は6年間で4回くらい変わりましたね(笑)」

「友だちと離れたくなくて、泣きたいこともあったんですが、『転校ばっかりでごめんね』って言っている親に、とても本音は言えなくて」

しっかりと落ち込めない自分

弟と妹を守る立場だから。お姉ちゃんだから。
そもそも甘えることが苦手だった。

しかし、何度目かの転校を控えた最後の登校日、荷物を引き上げるために付いてきてくれた母に言った。

「お友だちとお別れしたくない」

母は言った。

「そんなこと言ってもしょうがないよ。次だよ、次」

次に行かなきゃいけない。前に進まなきゃいけない。
泣いたり、振り返ったりしても、意味はないんだ。

「いい意味でも悪い意味でも、自分にはそんな生きグセがありますね」

「だからこそ、本当に心が傷ついたときも、しっかりと落ち込めないところがあります」

とことんまで悲しみ切ることは、ときに必要だ。

しかし今は、そんな自分の生きグセに気づき、悲しみ切れていない自分を優しく抱きしめてあげる術も身につけている。

02転校生は第一印象が大事!

見られている意識を保つ

友だちとのつらい別れを振り切って、前へ前へと進んだ小学生時代。

新しい環境に入っていくことは、慣れ親しんだ環境から離れることよりも難しさを伴うものだ。

「転校生は、とにかく第一印象が大事なんです」

「目立つ存在なので、人気者になるか、いじめられっ子になるか、どっちかになる可能性が高い」

「だったら、絶対に人気者にならなくちゃ、って思ってました(笑)」

容姿に恵まれていたせいもあり、好印象をもたれやすい存在ではあった。

さらに、常に誰かに見られている意識を保ち、自分を客観視することを忘れなかった。

「でも、ぜんぜん人気者って感じではなかったですよ。絶対に、クラスの中心人物にはならないタイプだったし」

「友だちからは『どこかボケてる』って言われたり、内面は、ほんとイケてなくて(笑)」

それでも “学年でかわいい子” と言えば、必ず名前が挙がる。

そんなギャップが、新しい環境においても敵をつくらずに過ごせた理由のひとつだったと言えるだろう。

校庭でコンサートを

自分の内面を “イケてない” と謙遜するが、自己肯定感は低くはなかったとも自覚する。

「両親にも愛されていたし、親戚からも『かわいい』とちやほやされていたし(笑)」

「劣等感とかは、あんまりなかったですね」

さらには、周りを楽しませたいという気持ちも強かった。

「自分で作曲して、歌うのが好きで(笑)」

「昼休みにコンサートするからって、クラスの友だちを誘ったこともあります」

「そしたら、思っていた以上にたくさんのクラスメイトが集まってくれて、『やばい!』って思いました」

それまでにも数人の友だちの前で、教室の隅で自作の曲を歌って聞かせたことはあった。

しかし、その時はコンサートということで、それ以上の人数が会場である校庭に集まったのだ。

期待を込めた視線が、滑り台の上に立つ自分に注がれる。

「歌い切りましたよ。いちおう拍手ももらいました(笑)」

弟と妹に、ソファの上で歌を披露していたのと同じように、将来は舞台に立ちたいという夢が、土壇場の自分を支えたのかもしれない。

03まるで恋愛ドラマの主人公のように

ラブレターや詩を朗読

中学生になって熱中したのは “恋愛” だった。
この頃の恋愛は、まるでドラマかゲームの延長のようではあったが。

「常に好きな人が7人くらいいて、毎日そのときに一番好きな人に向けてラブレターや詩を書いて、休み時間に友だちの前で朗読してました(笑)」

「昨日はAくんが好きだと思ったけど、やっぱりCくんが好き、とか」

「あの頃は、そういうのを友だちとコソコソとやりとりするのが楽しかったんですよね」

弟と妹に歌を披露したり、クラスメイトを集めてコンサートを開いたり。
小学生のときと同じ延長線上にブレなく立っている自分がいた。

「ただの目立ちたがり屋ですよね(苦笑)」

休み時間ごとに友だちとトイレに行って、前髪をカーラーで巻いて、ケープで仕上げる。雨の日はうまくカールが決まらず、気分も落ち込んだ。

家では、爽やかに「おはよう」と言う練習もした。

同世代の女子同様、そんな自己演出にも余念がなかった。

「好きな男子がたくさんいた反面、女子のきれいな先輩にも憧れてました」

「仲のいい友だちと3人で、モテる部活に入ろうって相談して、女子バレー部を見学に行ったら、女子バスケ部のすごいきれいな先輩に声をかけられて・・・・・・」

「先輩みたいになれるかもと思って入部しました(笑)」

「そんな動機で入部したもんだから、ヘッタクソなのに練習もせず、ぜんぜんレギュラーにもなれずで」

でも、そんな風に友だちたちと、きれいになるために、あるいはモテるために行動しているのが楽しくて仕方がなかった。

手をつなぐこともできない

「中学1年生のときに、生まれて初めて告白されたんです」

「呼び出された場所に友だちを呼んで、物陰から見ていてもらって、みんなの前で断りました・・・・・・。私、すっごい嫌なヤツですね(苦笑)」

しかし友だちたちは大盛り上がり。
恋に恋するお年頃の女子は、恋愛ドラマの主人公に憧れるものだ。

告白されるところを想像したり、断り方を練習したり、または両想いになったことを想像して、デートしているシーンを思い浮かべたり。

「でも、告白されても、誰とも付き合わなかったんです」

「自分は幼かったんでしょうね。ちゃんと恋愛してなくて、告白されることが楽しかっただけなんです」

「中学3年生になって、周囲がどんどん好きな人と付き合いだしていくタイミングで、私もひとりの男の子と付き合いました」

「でも、こんな私ですが、実はすっごく奥手だったので、手をつなぐことも、キスをすることもなかったんです(笑)」

04知らない男性に襲われて

「殴れ」と言われても

そんな、まだ恋愛に憧れていただけの中学3年生の頃、事件が起きた。

夜遅く、塾からの帰り道を自転車で急いでいるとき、後ろから「ちょっと待て!」と呼び止める声があった。

振り向くと、自分より少し年上の高校生くらいの男性。
まったく知らない人だった。

「暗いところに連れていけ」

最初は何を言われているのか分からなかったが、怖くて、その言葉に従った。

人通りのないスーパーマーケットの駐車場の隅。
そこで無理やりキスをされ、相手の性器を触るように強要された。

「最後まではされませんでしたが、キスも何も初めてで」

「たぶん彼も、そんなことをしたのは初めてだったんだと思います」

「終わったあと、『俺のことを殴れ』って言われて・・・・・・」

おそらくは衝動的にとった行為だったのだろう。
冷静になってみると、自分の犯した罪を前に、居た堪れなくなったのだ。

殴れと言われても、怖さと驚きで、殴ることなんてできない。

「私のことはいいので、これからは、こういうことをしないでくださいね」

「そう言ってから、急いで家に帰って、シャワーを浴びて口の中から身体中を何度も何度も洗いました」

「親にはとても言えませんでした」

性に対する意識を変えたい

それでも、そんな目に合ってさえ、悲しみ切れない自分がいた。

「本当に怖かったし、気持ち悪かったけど、トラウマになるほどは落ち込めなくて」

「次の日には、友だちに『昨日さ、いきなり知らない男の子にさ』ってネタみたいに話したりもしました」

「周りの方がびっくりしてましたね・・・・・・」

当時付き合っていた彼も、高校生になって付き合った彼も、この出来事を話すと、「大事にするからね」とキス以上のことはしようとしなかった。

でも、当の本人である自分は、落ち込むよりも、むしろ悟ったような気持ちがあった。

「なんで、あの人は、私にあんなことをしてしまったんだろう、って考えていたんです」

「そのときは、よく分からなかったんですが、今思うのは、世の中が性的な行為をよくないものと考えて、隠すべきだとしているせいなのかなって」

「抑圧されているから爆発しちゃったのかも、と」

「人を好きになって、そういう行為をしたくなるのは、悪いことでもなんでもない、普通のことなんだって思えていたら、私に乱暴をすることはなかったのかもしれないと思ったんです」

幼い頃からの生きグセとして、前に進まなきゃと、無理やりにでも立ち直ろうとしていた自分もいたはずだ。

しかし、とてもショックな事件であったことは間違いないにも関わらず、トラウマとして心の傷として残らなかった。

それは、この体験が、性に対する世の中の認識を変えていきたいと思い始めた、大きなきっかけでもあったからなのだろう。

05本当の愛を知った “暗黒” の日々

18歳上の男性と不倫関係に

「初めての性行為は大学生のとき、高校から、ずっと私を大事にしてくれた彼と、でした」

彼のことは、優しいところが好きだった。

しかし、お互いに大学生になると、将来の目標や生活リズムにズレが生じてしまい、別れることになった。

そんなとき、友だちに誘われて、企業の重役が集まるパーティに出席することになった。

「そこで、18歳上の男の人と知り合ったんです」

「食事をしたりするうちに好きになって、付き合うことに・・・・・・」

20歳の自分には、企業の代表を務める38歳の男性がとてつもなく魅力的に映った。

今まで、誰にも甘えられないままに生きてきて、やっと出会えた甘えられる相手。

知識も経験も豊富で、いろんなことを教えてくれる人。

「でも、彼は結婚していて、子どもが3人いたんです」

図らずも、不倫の関係に陥ってしまった。

しかし、希望はあった。
彼は家族と別居状態にあり、妻とは離婚するつもりだと話していたからだ。

「彼のことを心から好きになってしまって・・・・・・」

「本当の愛を学んだのは、彼からです。でも、やっぱり彼にはまだ家庭があると思うたびに苦しくて」

「デートは、映画館かホテルだけ。友だちにも誰にも言えず、人前で会うことさえできなかったのもつらかったですね」

「今でも愛しています」

そして、苦しい気持ちを抱えながら、逢瀬を重ねる間に、妊娠してしまい、中絶を余儀なくされた。

「私がバカだったんですが、健康保険証を提出して手術を受けたことで、中絶したことも、男性と不倫関係にあることも親にバレてしまって」

両親は激怒した。
それでも、彼のことが本当に好きだと懸命に伝えた。

「最後には、親も『あんたがそんなに好きなんだったら』と言ってくれたんですが、やはり心配だと言って、彼の家に電話をかけたんです」

「そしたら、別居しているはずの奥さんが出て・・・・・・」

「別居しているのも、離婚寸前だというのも嘘だったんです」

「それで、もう別れるしかないと思ったんですが、電話のせいで奥さんに不倫がバレた彼が、逆上してしまったんです」

「親からは『もう娘じゃない!』と言われ、彼からは『お前なんか知らない!』と裏切られ、もう、人生で最悪なときでした」

大学1年生のときから、大学を卒業し、就職して一人暮らしを始め、仕事も生活も安定してくるまでの6年間。

ずっと苦しい気持ちを抱え続けた恋愛は、警察の介入によって終わった。

逆上した彼がストーカー化し、包丁を持って押し入るという事件が起こってしまったのだった。

「それでも、今でも愛しています。一度好きになった人のことは嫌いになれない」

「でも、彼のことを手放すことができてよかった」

「もう、会うことはないけれど、幸せになってほしいなとは思います」

 

<<<後編 2019/11/30/Sat>>>
INDEX

06 大好きな夫と子どもたちとともに
07 うつ病に苦しんだ末の離婚
08 新しい家族として幸せになる
09 恋愛にセクシュアリティは関係ない
10 LGBTなんて普通です

関連記事

array(1) { [0]=> int(24) }