INTERVIEW
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バイセクシュアルで、人づき合いが苦手な私だから、描ける物語がある。【前編】

待ち合わせ場所に訪れた貴田明日香さんはクールな印象だったが、街中での撮影で緊張がほぐれたのか、インタビューが始まる頃には年相応な無邪気さがチラホラ。一方で、映画監督として活動する貴田さんからは、まっすぐな意志も感じられた。しかし、「自分のそういうところが嫌い」と語る。そう感じる理由は、愛する人たちに肯定してもらえなかったから。

2019/10/23/Wed
Photo : Mayumi Suzuki Text : Ryosuke Aritake
貴田 明日香 / Asuka Kida

1994年、兵庫県生まれ。幼い頃から「物語」に強い関心を抱き、中学生で小説を書き始める。高校では演劇に傾倒し、演劇部部長や合同公演の演出チーフを務め、大学でシナリオ制作と映像作品の面白さに魅了される。大学卒業後は、制作会社で働きつつ映像作品を撮る日々。現在は、トランスジェンダーをテーマにした映画『受け入れて』を撮影中。

USERS LOVED LOVE IT! 6
INDEX
01 レズビアン寄りのバイセクシュアル
02 愛情を教えてくれた大好きな家族
03 男の子への無関心と女の子への興味
04 “依存” というコミュニケーション法
05 自分の存在が求められる場所
==================(後編)========================
06 明らかすぎる “恋” の感情
07 気持ちを受け入れてくれた恋人
08 強く心惹かれた「映像」の世界
09 親が導きたかった道と本当の言葉
10 肯定し続けてくれた人と好きになれた自分

01レズビアン寄りのバイセクシュアル

きっと私はレズビアン

「私自身のことは、レズビアン寄りのバイセクシュアルだと思ってるんです」

高校時代、竹内佐千子のエッセイコミック『ハニー&ハニー』と出会う。

女の子同士のカップルを描いた漫画。

「この作品でレズビアンを知って、大学4年生くらいまでは、自分をレズビアンだと思ってました」

純粋にエッセイコミックとして、楽しんで読んだ。
そして、自分が同性愛者であることにも、戸惑いはなかった。

「でも、基本的に私のセクシュアリティはこれ、って考えたことはないかもしれないです」

■マイノリティと親の関係

現在の目標は、フリーランスの映画監督になること。

今は、FTMを主人公に据えた映画『受け入れて』を撮影している。

「少し前に、FTMの人を好きになったんです。明るくて、悩みもないような人でした」

「でも、実際は両親に受け入れてもらえていなくて、治療が進められなかったんです」

「初めて悩んでいる姿を見ました」

自分も、同性愛者であることを、親に受け入れてもらえなかった過去がある。

自分自身とFTMの彼の境遇が、重なった。

「その時は、認めてくれない親が悪い、って思ってました」

「でも、いざ彼が治療を始めてから、体のことがすごく心配になったんです」

「彼の両親が抱いている気持ちも同じなんじゃないか、と思ったら、簡単に親を否定できないなって」

自分の両親も、頭ごなしに否定してきたわけではなかった。

親との関係性も含めて、1つの物語として世に発信したいと思った。

今描きたい作品

「『映画を通して世界を変えよう』なんて、言える立場ではないし、そういうつもりじゃないんです」

「ただ、このテーマなら人の心を打つものが作れる、って思ったから、映画にしたいんです」

『受け入れて』は、今描きたいものであり、今描くべきものだと思っている。

「人の人生を描こうとするって、失礼じゃないかな、って思うこともあります」

「だからこそ、絶対にいい作品にすることを一番大切にして、頑張りたい」

人を愛する気持ちを否定され、そして、肯定してもらえた自分だから、描ける作品があると信じている。

02愛情を教えてくれた大好きな家族

命がけで守ってくれた両親

「うちの家族、すっごく仲良しなんですよ」

父、母、自分と妹の4人家族。

毎年、誰かの誕生日にはケーキを買ってきて、『Happy Birthday To You』を歌って祝う。

両親の結婚記念日とクリスマスも、家族全員での食事を欠かさない。

「お父さんとお母さんは、私と妹が幸せに感じることを、最優先してくれるんです」

「例えば、4種類のケーキを買ってきた時は、私と妹に先に選ばせてくれます」

「さらに、『こっちのケーキもひと口食べる?』って、聞いてくれるんですよ」

「2人とも関西人らしい、明るい人です」

産まれたばかりの自分は、両親に命を救われた。

「生後6カ月で、阪神淡路大震災が起きたんです。お母さんが私の上に覆いかぶさって、守ってくれたって」

母の上にはタンスが倒れてきたそうだが、頭にたんこぶができただけで済んだという。

「その後、お父さんが私を抱っこして、お母さんと一緒に阪神高速の下を走って避難したらしいです」

「その話を聞いた時、すごくうれしかった。同時に、傷つけてばっかりで申し訳ないなって・・・・・・」

人生で最初に依存した相手

5歳の時、母に「ひとりっ子で寂しくない? 兄弟欲しくない?」と聞かれた。

「子どもだったから、素直に『欲しい!』って言ったんです」

「その1年後に妹が産まれて、お父さんとお母さんは『明日香が欲しいって言ったから、生まれてきてくれたんだよ』って、言ってました」

「妹は超かわいかったです。だって、私のために生まれてきた子だから」

「6歳の自分は子どもだけど、赤ちゃんの妹よりは大人だから、おむつ替えとかしてました」

「本当にとんでもなくかわいくて、何でもしてあげてましたね」

自分でも気づかないうちに、妹に強く依存していたのかもしれない。

「妹が、多分人生で最初に依存した相手でしたね」

生きる指針になった絵本

幼い頃は、両親がよく絵本を読んで聞かせてくれた。

「3歳の頃に読んでもらった『もりのふゆじたく』は、いまだに生きる指針にしてるんです」

森の中に住むたぬきは、ほかの動物の冬支度のお手伝いをしてばかり。

夕方になり、ようやく自分のための木の実を拾っていた時、足をケガしたネズミと出会う。

すべての木の実をねずみにあげてしまったたぬきは、途方に暮れながら帰宅。

しかし、家に着くと、動物たちからの感謝の手紙と差し入れが届いている、というお話。

「この物語を読んでから、私もみんなに還元できる人になりたい、って思ってるんです」

そして、物語を作ることにも興味を抱く。

「小学校高学年の時に不登校になりかけたことがあって、毎日図書館に通ってたんです」

「図書館にある本をほとんど読んで、作者の人とつながる面白さを感じたんですよね」

「その体験にすごく救われたから、私もお話を作る人になりたいなって」

中学生になると、小説を書くようになるが、それはまだ少し先のお話。

03男の子への無関心と女の子への興味

「パンツ丸見え!」

幼稚園に通っている頃、友だちの間で流行した遊びがある。

「自分のスカートをまくり上げて、『パンツ丸見え!』って言いながら、パンツを見せ合う遊びをよくしてました(笑)」

「当時は、それが最高に面白い遊びだと思ってたんです」

「だから、一度、両親の前でやってみました」

すると、両親は「外でもやってるんじゃないだろうな?」と、怒ってしまった。

「まさか怒られると思ってなかったから、『やってない』って、答えましたね」

「それ以降、その遊びはやめました(苦笑)」

人の体への興味

小学生1年生の頃、幼稚園から仲の良かった友だちの家にお泊りをした。

「一緒にお風呂に入った時に、私がその子の体を見たがったんですよ」

「今振り返ると、どんだけ節操ないんだ、って思いますけど、当時は何も違和感を抱いていなかったです」

「むしろ、人の体に興味があることは普通で自然なことだ、って感じていたと思います」

友だちも嫌がる素振りを見せず、「いいよ」と、要望に応えてくれた。

「でも、私が『触ってもいい?』って聞いたら、急にどん引かれたんですよ」

「これはいけないことなんだな、ってそこで初めて気がついた感じです」

言わない方が賢明なこと

幼少期から、性的な興味は、明らかに女の子に向いていた。

「男の人のことは、ほとんど考えてなかったです」

「女の子の体に興味があって、中学生くらいまでは、おかしいことだと思ってなかった」

「でも、人には受け入れてもらい難いことだから、言わない方が賢明だ、って思考が無意識的に働いてたのかもしれないです」

周囲にぺらぺらと話すようなことはなかった。

「中学生の時には、好きな男の子がいたこともあったし、あんまり深く考えてなかったですね」

「その頃、ボーカロイドが流行っていて、女の子同士の恋を歌った曲があったんです」

母に「女同士で惹かれ合っちゃうみたいな曲があるんだって」と、話した。

すると、母から「私はよくわかんないや」という答えが返ってくる。

「中学生の時は、自分がレズビアンって意識がないから、『私もあんまり良くないと思う』って、お母さんに合わせましたね」

04 “依存” というコミュニケーション法

一緒にいたかっただけ

「子どもの頃は、人との関わり方がわからなくて、ガッて距離を詰めすぎちゃう子だったんですよ」

小学生になり、1人の女の子と仲良くなった。

授業が終われば、毎日のようにその子の家に遊びに行った。

「その子に、めちゃくちゃ依存してたんですよね」

「でも、相手はそこまでの勢いじゃないから、だんだん困って離れていくんです」

「そうなると追いかけたくなって、ますます困らせてしまう関係が続きました」

「当時は、普通に友だちだと思ってたし、自分のことも友だちのことが好きなだけだと思ってました」

「でも、あんなに好きだったのは、恋愛の芽吹き的なものだったのかな」

おとなしい子だけど、面白いことを言い、オシャレなことにも興味があるところが好きだった。

何より容姿が好きで、ずっと一緒にいたかった。

「私は親友だと思いたかったけど、向こうはそう思ってなかったかもしれないです」

「その子には幼なじみがいて、私はすごく嫉妬してました」

たった1人への依存

「依存していた子が離れていきそうになった時、私の落ち込みようは激しかったと思います」

教室の中であっても、その子が離れていきそうになると、泣きわめいた。

「なんで私から離れていくの? 私にはあなたしかいないのに」と、言葉にして訴えた。

「心の中でも、私はあの子だけとしか仲良くしたくないのに、なんであの子は仲良くしてくれないの? って思ってました」

「その子だけに固執してたんですよね」

「先生から、『あの子と結婚するわけじゃないんだから、そこまで依存しなくていいじゃない』って、言われてました」

6年生になると、その子は不登校になってしまう。

「途中で違うクラスになった時は、別の友だちと仲良くできてたんです」

「でも、改めて思い返すと、1年生から6年生までその子に依存し続けてましたね」

人と関われない自分

他のクラスメートとも仲良くしていたが、自分の粘着ぶりを見て、少しずつ距離を取られていく。

「その頃の私はセンシティブで、軽い冗談にも強く反応してました」

男の子から冗談で「ブス」と言われると、「そんなこと言うな!」と、泣いて反抗した。

「小学生男子なんて、女の子全員に『ブス』って言ってると思うけど、私はまっすぐに悪い意味で受け止めすぎちゃったんです」

「そして、まっすぐに伝えすぎちゃうところもあったんですよね」

どんな感情でも、思ったままを言葉にして伝えてきた。

「直情的すぎて、人とうまく関われないことに、ずっと悩んでました」

「人に嫌われてしまう自分のことが、すごく嫌いで・・・・・・」

「中学3年の時に、これじゃダメだ、って思って、急激にコミュニケーションを取れるようになったんです」

05自分の存在が求められる場所

物語を表現する媒体

「辛い思いをした分、お話を書く人にならなきゃいけない、って思いは強くなりました」

中学生で小説を書き始め、その目標は明確なものになっていく。

進路を決める時、「脚本を書ける演劇部があるらしいよ」という話を聞いた。

「物語を作りたい、って基盤はあったけど、その表現型はなんでも良かったんです」

描きたいテーマがあり、物語として描くことができれば、小説でも脚本でも良かった。

「その演劇部は毎年オリジナルの脚本を作って、コンクールに出場していたんです」

「さらに、『1年生で脚本賞を取った人がいるらしい』ってウワサも聞いて、絶対その先輩に勝つぞ、って思いで進学しました(笑)」

勝つ予定の先輩の言葉

高校に入学し、演劇部の活動を見に行くと、恐怖を覚えた。

「みんながワーッて声出しをしてる時で、その迫力が怖すぎて、1回逃げました(笑)」

「でも、このために入学したんだから、と思って、もう1回見に行ったら、発声練習は終わってました」

「脚本賞を取った女性の先輩が現れて、話を聞かせてくれたんです」

その先輩は「演劇を始めるまでは、自分が人の役に立てるとは思っていなかった」と、話し始める。

「演劇ってみんなで作り上げるものだから、初めて自分がいなきゃいけないことを知れたし、演劇部っていい部活なんだよ」

その先輩の言葉に胸を打たれ、演劇部への入部を決意する。

同時に、先輩のことが好きだ、と強く感じる。

「それまで男の子に抱いた『好き』とはレベルが違って、明らかに恋をしたんです」

「その先輩が、初恋だったんだなって」

本気になれた演劇

脚本を書くために入部したはずが、気づけば演劇そのものに本気になっていた。

「演劇部の活動以外にも、年に一度、市内の高校生が集まって行う合同公演があったんです」

100人くらいのメンバーで予算を集め、1000人規模の会場で行う大きな公演。

「1年生の時には主演を務めて、2年生では演出のチーフを任されました」

「結構、本気だったんですよね」

高校の教師から、こう言われたことがある。

「あなたはセンシティブすぎて苦労してきたと思うけど、繊細だから今演劇で成功してる」

「センシティブな部分がきっと、これからあなたの力になるから、頑張ってきて良かったね」

自分のまっすぐすぎる部分が、演劇でようやく意味を持つようになったのかもしれない。

そして、がむしゃらに頑張れたのは、初恋という原動力があったから。

 

<<<後編 2019/10/26/Sat>>>
INDEX

06 明らかすぎる “恋” の感情
07 気持ちを受け入れてくれた恋人
08 強く心惹かれた「映像」の世界
09 親が導きたかった道と本当の言葉
10 肯定し続けてくれた人と好きになれた自分

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