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ゲイと自認して、恋のトキメキを知った【後編】

ゲイと自認して、恋のトキメキを知った【前編】はこちら

2020/04/04/Sat
Photo : Rina Kawabata Text : Shintaro Makino
藤崎 翔太 / Shota Fujisaki

1995年、福岡県生まれ。駅員としての接客業務を志して専門知識を学び、鉄道会社に勤務する。その後、大手テーマパークでのキャストを経て、航空会社のキャビンクルーとなる。19歳のときに初めての相手と出会い、恋愛を初経験。現在のパートナーとの交際を続けながら、LGBT関連の活動、YouTubeを使っての発信を見据えている。

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INDEX
01 ワイワイ騒ぐのが好きな男の子
02 トキメキがなかった最初の交際
03 カッコいい男の子に、初めて胸キュン!
04 SNSで知った、性欲とゲイ
05 鉄道会社からテーマパークへ。接客のキャリアを積む
==================(後編)========================
06 ああ、これがトキメキだ!
07 カミングアウトで気持ちが楽になった
08 輝く姉の姿を見て、キャビンクルーを目指す
09 会えばときめく、またも遠距離恋愛
10 LGBTの活動も視野に入れている

06ああ、これがトキメキだ!

初めての相手は岡山の人

初めて、男性が集まる場所に足を踏み入れたのは、19歳のときだった。

「鉄道会社に勤めているときでした。県の条例で、18歳までは性行為は禁止されているんです。だから、それまでは我慢していました」

“解禁”と同時に博多界隈にデビューし、大阪の堂山町にも足を伸ばした。

そうこうするうちに、SNSを通じて、ある人と出会った。

「岡山に住んでいる21歳の人で、頻繁にメッセージを交わすうちに、会ってみたいと思うようになりました」

初デートは、広島の厳島神社へのお泊まりコース。デートの楽しさを初めて知った。

「これだったんだ! と思いましたね。どうしても分からなかったトキメキを実感しました(笑)」

しかも、相手は性的な欲求が強い人だった。

「自分が相手のものになった、相手が自分のものになった、と感じました。幸せでしたね」

束縛、嫉妬が重荷になって破局

前の職場にも一人、ゲイと分かる先輩がいた。その人から、「藤崎君もそうなんでしょ?」と聞かれたことがあった。

「ぼくは、恥ずかしいときに、顔を隠すクセがあったんです。そういう女性っぽい仕草から勘づいたみたいでした」

「そのときは、『違います!』と、即答しました。認めたら、犯されてしまいそうだったんです(笑)」

岡山の人との関係は、誰にも打ち明けることなく続いた。

しかし、蜜月の関係は次第にほころび始める。

相手が会社員だったため、一緒にいられる時間を作るのが、お互いに苦痛になってきたのだ。

「それと、彼の束縛が重荷になってきました」

嫉妬深く、「どこに行ったんだ、誰と一緒だったんだ」と、友人関係にも目を光らせるようになった。

初めての本格的なおつき合いは、2年ほどで終止符が打たれた。

07カミングアウトで気持ちが楽になった

店子のバイトにも挑戦

テーマパークに勤めているときは、バーの店子のバイトも経験した。

「お金も欲しかったし、LGBTの人ともっと交流を持ちたいと思って働きました」

「夜更かしが好きだったので、ただ起きているのももったいないし(笑)」

店員はみんなゲイだったが、お客さんはいろいろな人が来た。下ネタばかりが飛び交う、楽しい店だった。

「最初に驚いたのは、知らされるまでは、LGBTだと分からない人が多いということですね」

たくさんの出会いに恵まれたが、バイトは1カ月半しか続かなかった。

「ぼく、ジュースみたいなお酒しか飲めないんです」

あるとき、お客さんが20万円以上するシャンペンを開けて、飲ませてくれた。

「それがお酢の味しかしなくて(笑)。これはダメだ、と思って辞めました」

キャストの同僚に次々とカミングアウト

最初のカミングアウトは、テーマパークでの同僚だった。

「とても仲良くしてくれた女の子で、こんなに親しくしてくれるなら、本当の自分を知ってほしいと思って話しました」

ところが、彼女のリアクションは、「何をいってるんですか、気がついていましたよ!」。

「知っているうえでの友だちですよ、ともいってくれました」

その一言で、気持ちが一気に楽になった。

「理解してくれそうな人には、カミングアウトができるようになりました」

職場の環境もおおらかで、心を開くにはうってつけだったのだ。

なかには気になる男性も・・・・・・。

「カッコいい人もいましたけど、つき合うまでにはいきませんでしたね」

問題は家族にどう打ち明けるか

友だちや同僚にはオープンでいられるようになった。しかし、難しいのは、家族へのカミングアウトだ。

「正直なところ、家族以外は、関係が悪くなれば縁を切ればいいじゃないですか。さすがに家族は、そうはいきません」

母親に「彼女はできないの? いつごろ、結婚するつもりなの?」と聞かれたことがあった。

「そのときは、まだ家族を持つ責任も能力が足りないから・・・・・・。とごまかしました」

一言いってしまえば終わる、と分かっていても、ショックを受ける姿を想像すると決心がつかない。

少しの勇気が沸かないというのが本心だ。

SNSなどで、「あんたが本当にゲイだったら、もううちの子じゃない、といわれた」などの書き込みを読むと、さらに気持ちが重くなるばかりだ。

08輝く姉の姿を見て、キャビンクルーを目指す

憧れだった航空業界

楽しく勤めたテーマパークでの仕事だったが、約1年間で次のステージへ進む決心をする。

「子どもの頃から憧れだった、飛行機に関わる仕事をしたくなったんです」

思えば、高校へ進むとき、自分の学力では航空関係は無理、と諦めた経緯があった。2つの職場でキャリアを積み、社会人としての自分に自信もついた。

もうひとつ、きっかけとなることがあった。

「大阪から仙台行きの飛行きに乗ったとき、すぐ上の姉がクルーとして勤務していたんです」

まったくの偶然だった。

姉は乗客名簿を見て、ぼくが乗るのを知っていたが、声をかけられたときはびっくりした。

「そのとき、初めて姉をきれいだと思いました」

キャビンアテンダントのユニフォームを着て、颯爽と働く姉は輝いていた。その姿を見て、諦めかけていた夢にチャレンジする意欲が沸いた。

電車と違って、飛行機は乗務中がサービスの見せどころだ。磨いてきた接客力をキャビンクルーとして発揮する決意を固めた。

緊張感が求められる職場

求人に応募し、あるLCCに採用が決まった。勤務地は成田だった。

「上の姉が成田でアパートを借りていたので、少しの間、居候させてもらいました」

トレーニングを受けてみると、乗客の命を預かる、責任ある仕事と痛感する。

「訓練のときは、失敗すると流れが止まりますけど、実際の緊急時ではそうはいきません」

実際、トレーニング期間に、自社のフライトが緊急着陸するアクシデントもあった。

「まだ独り立ちして半年弱。緊張感を持って乗務しています」

もうひとつ感じているのは、キャビンクルーが女性社会であるということだ。男性のスチュワードが増えたとはいえ、まだまだ女性が多い。

「合わせなければいけないことも多いですね」

生まれ育った家庭も、テーマパークも、やはり女性社会だった。うまく適応する自信はある。

「与えられた環境に順応して、常にフレンドリーな接客を提供できるように心がけています」

今は、国際線、国内線を問わず乗務している。さらに経験を積んで、信頼感あるアテンドをすることが目標だ。

09会えばときめく、またも遠距離恋愛

新しい恋人は年下の子

最初の相手と別れてから、しばらくいい相手に恵まれなかったが、昨年、ようやく素晴らしい人に巡り合うことができた。

「20歳の学生です。ツイッターで知り会いました」

今度は、5歳も年下。体格がよくて、マイペースだ。

「前の人のときは、自分が甘えていましたけど、今度は逆に、彼を甘えさせてあげなくてはいけません」

社会人と学生という、社会的立場の違いもある。

ところが、彼はリーダーシップを取ることができる人物だ。

「製菓の学校を出て、将来はフランス料理のデザート担当を志すといってます。お菓子メーカーに勤めるがゴールではないみたいです」

自分の意志もしっかりと持っている。

「気がついたら、最近、立場が逆転して、自分が甘えちゃっているんですよね(笑)」

ふたりが居心地のよくいられる関係を模索中だ。

「お互いに影響されにくいところは似ているかもしれませんね」

彼とは、またも遠距離恋愛だ。

「一度、失敗しているので、お互いに束縛するのはやめようと約束してあります」

今は、安心感よりトキメキ

学校を卒業したら、彼は神奈川の会社に勤める予定だ。そうなれば、遠距離恋愛は解消される。

「つき合い出してすぐのころは、一緒に住みたい、と思いましたけど、今は会いたいときに会える距離にいるのがベストかな、と思っています」

一緒に暮らしてしまったら、トキメキがなくなるのが怖い。

「今、メチャときめいてます!(笑)」

今は会えるチャンスが限られている。せいぜい月に1回のペースだ。

それだけに会えたときのうれしさは格別だ。

「将来的に、家族はほしいと思いますが、今すぐじゃなくてもいいかな」

家族として育む愛情、信頼感が大切なことは分かる。でも、今、体が求めているのは燃える恋愛感情だ。

10 LGBTの活動も視野に入れている

オープンにしたほうが楽

最近、積極的にLGBTに関する活動をしたいと思うようになった。

「LGBTの仲間を集めて、YouTubeでいろいろなことを発信していきたいと考えてます」

現在、4人の仲間がいる。観てくれた人が笑えるような、面白いトークショーを企画中だ。

「今は男ばかりなんですけど、できれば女性も仲間に入れたいですね」

今年、東京レインボープライドのボランティアにも、初めて応募した。

「徐々にセクシュアリティをオープンにしていきたいと思っています。LGBTERに応募したのも、そんな気持ちからです」

「自分でいうのもなんですが、人に愛してもらえるキャラなんですよ(笑)」

「だから、ゲイとバレたからといって虐められたり、変な目で見られたりはしないと確信しています!」

「オープンにしていれば、彼氏のことも話せるし、のろけることもできるでしょ。そのほうが楽だし、楽しいですよね」

これまで、セクシュアリティに関して、悩んだり苦しんだ経験はほとんどない。オープンにするハードルは、とっても低いと考えている。

カミングアウトのチャンスを逃す

他人に話すことに抵抗は感じなくなった。残る課題は、やはり家族へのカミングアウトだ。

「一度、成田の家に男友だちを連れてきた後に、『あんた、本当は男が好きなんじゃないの?』とお母さんにいわれたことがあったんです」

そのときは、食事の準備をしているときで、まさに不意を突かれてしまった。

「心の準備ができていなかったので、『何いってんの、違うよ!』と即座に否定してしまいました」

思い返せば、あのときが、「実は・・・・・・」と告白するチャンスだったのかもしれない。

そんなことをいうくらいだから、お母さんは薄々、気がついているのかもしれない。

「カミングアウトしても、『やっぱりそうだったのね、あんた』という程度かもしれませんね」

お母さんは、もともとフランクで、はっちゃけた性格だ。きっと、あっさりと理解してくれるだろう。

お父さんの反応は・・・・・・。

「分かりませんね。ショックを受けて、むすっと黙り込んじゃうかな」

いずれにしても、将来、正式に結婚かパートナーシップの申請をするときには、きちんと話す覚悟はできている。

ふたりの姉も、まだ気がついていないはずだ。

「LGBTERに出たら、姉たちは記事を見るかもしれませんね。でも、それならそれでいいかと・・・・・・」

何かのきっかけで知ってもらうのも悪くない。

「仕事のキャリアアップも考えています。すべての面で前向きに進みたいですね」

仕事、彼氏との将来、LGBTの活動。目の前に開けている道は明るい。

あとがき
挨拶は率先し、職場の雑用を進んで取り掛かる、そんな働きぶりが想像できる翔太さん。待合せ場所でお会いした時の印象と、取材の様子が激変する方はほとんどいないが、翔太さんもそう。最初に感じた親しみやすさや丁寧さは、最後まで変わらなかった■笑顔の理由、実は難しくないのでは? と思う。[今日は天気がいいからうれしいな]とか、些細な日常を拾えるかどうか、かも。翔太さんの大らかな雰囲気と感性が伝えてくれる。(編集部)

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