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私はクエスチョニング。自信を持って「わからない」と言えるから。【後編】

私はクエスチョニング。自信を持って「わからない」と言えるから。【前編】はこちら

2020/11/30/Mon
Photo : Rina Kawabata Text : Shinichi Hoshino
久保田 桜 / Sakura Kubota

1998年、宮城県生まれ。セクシュアリティはクエスチョニング。幼少期、両親の離婚により新潟県へ移住し、小学生時代はひいおばあちゃん、ひいおじいちゃんと過ごす。現在は東京で防火管理の仕事をしながら、ブラジル国籍の女性と一緒に住んでいる。近いうち、彼女を連れて新潟を訪れ、育ての親であるひいおばあちゃんにセクシュアルマイノリティであることを告げる予定だ。

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INDEX
01 夢だった消防の仕事
02 こういうのを「好き」って言うのかな
03 育ての親はひいおばあちゃん
04 おとなしいけど怒ると怖いキャラ
05 「好き」ってわからない
==================(後編)========================
06 恋愛というイベントは先のこと
07 絡まったモヤモヤは自分に向かった
08 私はストレートじゃない
09 クエスチョニングってそういうことか!
10 セクシュアリティで迷っている人に安心を

06 「恋愛」というイベントは先のこと

新潟から神奈川へ

中学進学のタイミングで新潟を離れ、神奈川へ。約10年ぶりにお母さんと暮らすことになった。

「最初は都会に行ける! って、ワクワクした気持ちが大きかったです」

一方で、親代わりだったひいおばあちゃん、ひいおじいちゃんともお別れだ。

「ちょっと寂しい気持ちもありましたね」

引っ越したばかりの頃は、眠れない夜もあった。

キラキラ女子は大嫌い

中学での友人関係は、プラスとマイナスの両方があった。

「スクールカーストの上のほうにいるキラキラ女子たちには、嫌われてました」

彼女たちは何をするにも群れて、自分より「下」の存在を見つけてはターゲットにしていた。

「いじめってほどじゃありませんが、何かと小馬鹿にしてくるのが嫌でしたね」

キラキラ女子たちは、美容やファッションに興味津々。

休み時間は、好きなモデルの話、洋服の話、アクセサリーの話で持ち切りだ。

「私はそっちには全然興味がなくて、わかりませんでした」

一方で、所属していた美術部に居場所を見つける。

「美術部にはおとなしい子が多かったので、馴染みやすかったですね」

ゲームの話など、共通の趣味の話で盛り上がることもしばしば。

「好きだった絵も、目の前のものだけでなく、ゲームやアニメのキャラクターも描くようになりました」

美術部の友だちと一緒に絵を描き、ああでもないこうでもないと話をするのが楽しかった。

他の子たちとは「時期」が違うだけ

他のクラスに、少し気になる女の子がいた。

「体育の授業とかで一緒の班になったとき、きれいな子だなって、でもそこから「好き」っていうふうにはなりませんでした」

一方で、中学でも男子に好意を抱くことはなかった。

「髪を腰まで伸ばしてたから、男子から貞子とか死神とかあだ名をつけられて、あいつに触ったら死ぬぞみたいに言われましたね」

「最初はノリに合わせて、貞子のふりをしたりしてましたけど、途中から面倒くさくなってスルーするようになりました」

男子は相変わらず「うざい」存在だ。

「まわりには付き合っている子もいたけど、私はそういうふうに思える相手はいませんでした」

「そもそも、好きっていう気持ちがわかりませんでしたから」

恋愛は、大人になったら起きるイベント。

今、付き合ってる子たちは、たまたまイベントが早かった子。

私はイベントが遅いだけで、いつかやってくるだろう、単純に、時期が違うだけだと考えていた。

07絡まったモヤモヤは自分に向かった

新しい家族

新潟から神奈川に引っ越すと同時に、家族構成がガラリと変わった。

一緒に暮らすことになったお母さんに再婚相手とその子どもがいたからだ。

「私と妹、お母さんと新しい父、そして弟二人、妹一人が加わりました」

新しい父の連れ子はまだ幼かったので、自然と面倒を見る立場になる。

「毎日が、ワイワイ、キャーキャー、遊んでよーで大変でした」

弟たちとはすぐに打ち解けることができたが、新しい父との関係はうまくいかない。

最初は優しい印象だった。

「普通に話もしてましたし、何か買ってあげようか? って聞かれたりもしました」

「でも私はいつも緊張していて、いえ、大丈夫ですって」

親近感を持てなかったから、いつも敬語で話していた。

緊張は、ある日を境に拒絶に変わる。

一緒に住み始めてほどない頃、妹が新しい父に頭ごなしに怒られているのを見た。

「急に来た知らない人が自分の妹をすごい怒ってるのを見て、一気に嫌になったんです」

それからは、何を聞かれてもひと言返して終わりの関係。

親子の距離が縮まることはなかった。

モヤモヤからリストカット

思春期の真っ只中、環境が変わり、家族が変わった。

大丈夫なつもりだったが、知らず知らずのうちにモヤモヤが溜まっていった。

「精神的に沈んじゃって、荒れた時期がありました」

「荒れた」と言っても不良になったわけではない。

自傷行為をするようになる。

「自分のなかに溜めこんだものを、自分で何とかしようとした結果が悪い方向に向かったんだと思います」

心のなかで絡まった感情は、物でもなく、人でもなく、自分に向かった。

「リストカットをする人で全然痛みを感じないっていう人もいるじゃないですか、私の場合は、思いっきり痛みを感じます」

「でも、やることによって、溜まっていたものが消えていくようにすっきりするんです、その瞬間は後悔もありません」

当時、どうしてリストカットをしていたのかは、うまく説明できない。

「今思えば、しゃべるのが得意じゃなかったからかもしれません。しゃべって吐き出せていたら、少しは落ち着けていたのかな・・・・・・」

言葉にできない自分に苛立ち、またモヤモヤが溜まっていく。

腕の傷を見たお母さんに止められた。

「そのときは、もうやめようと思うけど、途中で爆発してまたやっちゃうんです」

その繰り返しだった。
自分ではどうすることもできなかった。

08私はストレートじゃない

恋愛相談にピンとこない

高校は、地元では有名なやんちゃな学校だった。

「みんな髪を染めて、ピアスをして、スカートはわかめちゃん状態でした。でも、私はスケバンみたいに長いスカートを履いてました(笑)」

単純に、脚を見せるのが恥ずかしかったからだ。

高校に入っても、おしゃれには無関心。

「制服以外でも、女の子っていう感じの服はあまり着ませんでした。基本、ジャージとパーカーでしたね」

そんなある日、友だちから恋愛相談を受ける。

「私はそういう経験がなかったし、なんで私に?って感じでしたけど(笑)」

それでも、友だちのために自分なりにネットで調べた。

気になる彼へのプレゼントは?
ドキッとさせるデートの服装は?
告白のシチュエーションやセリフは?

「調べながら、どのネット情報も自分自身、全然ピンときてないことに気づいたんです」

調べたことは友だちに話したが、アドバイスする側が何もわかっていないというおかしな状況。

「話しながら、ドキッとするって何だろう? って」

このとき、「自分は違う」ということを、わりとはっきり自覚した。

LGBTの存在を知る

同じ頃、部活の後輩に「私、実はバイセクシュアルなんです」とカミングアウトされた。

バイセクシュアル、初めて聞く言葉だ。

ネットでバイセクシュアルについて調べ、そこから「LGBT」の存在を知った。

こういう人もいるんだ、と思うと同時に、自分のなかで何かがほぐれるのを感じた。

「今まで自分がわからなかった原因が、ここにあるのかもしれない・・・・・・」

「今まで好きとか恋愛とかに遭遇しなかったのは、LGBTが関係してるんじゃないか・・・・・・」

すぐにLGBTについて調べはじめた。

「調べていくうちに、私もLGBTのどれかなんじゃないかって思うようになりました」

最初に引っかかったのは、アセクシュアルだ。

「今まで誰も好きになったことがないんだから、私はアセクシュアルなのかなと」

自分はアセクシュアルということにして、いったん気持ちを落ち着かせた。

「でも、やっぱり当てはまらない感じがしたんです」

さらに調べていくと、次々と新たなセクシュアルマイノリティに出くわす。

アセクシュアルから始まり、ノンセクシュアル、パンセクシュアル、アロマンティック、デミセクシュアル・・・・・・。

そこからは、「これ、当てはまるかも?」「でも、何か違う」の繰り返し。

一致しそうで一致しない。次から次に揺れるセクシュアリティ。

「実際、私は何なんだろう? って」

高校時代、いろんなセクシュアリティがあることを知ったけれど、自分がどれなのかはわからない。

一つだけはっきりしたのは、「私はストレートじゃない」ということだった。

09クエスチョニングってそういうことか!

何でもいいから枠にはまりたい

セクシュアルマイノリティについて知るほど、どれかの枠にはまりたいという気持ちが強くなった。

「何でもいいから、わかるものがほしかったんです」

高校を卒業して少し経った頃、「LGBTQ」という言葉に出会う。そのときに初めて「Q」も知った。

「クエスチョニングって何だろう?」

調べるうちにわかりやすい情報を見つけた。

「自分の好きな服がわからない人もいるし、好きな曲が決まらない人もいる。それと同じで、自分のセクシュアリティがわからない人もいるそういう人を、クエスチョニングって言うんだよって」

わからない。
決まってない。
あてはまらない。

「あ、クエスチョニングってそういうことなんだ」

「私は、これなんじゃないか」

今までにない腑に落ちた感が心地良かった。

その後、「LGBTER」で渡辺 メアリー 博美さんの記事に出会う。

「好きになる人がわからなくてもいいんだよ、決めなくていいんだよっていうメアリーさんの言葉がストンと入ってきたんです」

読み終わったとき、気持ちが落ち着くのを感じた。

クエスチョニングがしっくりくる

今でもたまに「クエスチョニングじゃないのかな」と思うことがある。
だから、Twitterで知り合った様々なセクシュアリティの人と話をしたりする。

「この人の話、すごいわかるなーって思うときもあります。「そんなときは少し揺らぐけど、結局、クエスチョニングに戻ってくるんです」

LGBTを知ってから探ってきたのは、何かしらの名前がほしかったから。

「得体の知れないものだったわけで、最初はすごく名前がほしいと思ってました」

しかし、いざわかったら名前はどうでもよくなった。

「クエスチョニングだってわかったら、もうどうでもいいやって」

「やることやって満足したら、急に面倒くさくなっちゃうんです(笑)」

今は、枠にはまらなくていいと思っている。

「そもそも、クエスチョニングってわからないって意味ですしね」

お母さんへのカミングアウト

セクシュアリティがわかってから、お母さんにカミングアウトした。

「今の彼女と付き合ったばかりのときに、彼女ができたよって話しに行きました」

「だと思った、って簡単に言われましたね。昔から男の子っぽい格好してたし、何となくそうなんじゃないかって」

思っていたより、あっさり受け入れられた。

「たぶんお母さんは、レズビアンっていう認識だと思います」

「クエスチョニングについても話してるんですけど、わかんないみたいですね(笑)」

クエスチョニングかどうかは、大した問題ではない。

「話せたから、それでいいんです」

10セクシュアリティで迷っている人に安心を

ひいおばあちゃんに伝えたいこと

以前、新潟に帰ったとき、ひいおばあちゃんにさりげなくLGBTの話題を出したことがある。

「たまたまテレビでやっていて、こういう人ってどう思う? って聞いたんです」

「かわいそうだね」
「治らないのかね」
「こういう人が増えたら日本は滅びちゃうね」

予想もしていなかった答えに苛立った。

「だったらおばあちゃん、滅びた国がどこにあるか知ってるの? って」

ひいおばあちゃんは世代的に、LGBTを病気だと思っていた時代の人、良い印象を持っていないのは明らかだ。

それでも、ひいおばあちゃんにカミングアウトすることが今の切実な願いだ。

「言いにくいけど、育ての親でもあるひいおばあちゃんには知っておいてもらいたいんです」

近いうち、彼女と一緒に新潟に帰ることに決めた。

「そのときに言えたらいいですね。たとえ受け入れられなくても、そういう相手がいるってことを伝えたいんです」

病気でもないし、悪いものでもないってことを知ってもらいたい。

「相手は女性だし、外人だし、ひいおばあちゃんがひっくり返らないか心配です」

「同性のパートナーがいるってことだけでも、理解してもらえたら嬉しいですね」

セクシュアリティで迷っている人へ

「ちょっと前の自分みたいに、セクシュアリティで迷ってる人ってたくさんいると思います」

「クエスチョニングに限らず、迷ってる人に、私みたいなのもいるんだよ、ってことを知ってもらいたいんです」

セクシュアリティがわからず、調べていた時期はいろんな不安があった。

「親に伝えたら何て言われるのか・・・・・・」
「ひいおばあちゃんに何て伝えればいいのか・・・・・・」
「妹の子どもに知られたら、学校でいじめられないか・・・・・・」

そんなとき、LGBTERをはじめ、いろんなメディアや記事を見て安心できた。

「今度は私が発信して、迷ってる人や悩んでる人に安心してもらいたいなと」

「その瞬間だけでも、気が楽になってもらえたら嬉しいです」

「こういうのもあるんだ」が増えますように

LGBTQ+ の情報はニュースでも取り上げられるようになってきた。

しかし、相変わらず暗い話題が多くを占める。法律上、日本はまだまだ克服すべき課題も多い。

「今、LGBT関連の法律に興味があって、よく調べたりしています。法律的なところでも、もっと変わっていけばいいなって思います」

変わってほしいと願うのは、法律だけではない。

「女は化粧して仕事に行きなさいとか」
「男はスーツにネクタイで、足で営業してきなさいとか」
「家の中では父親が大黒柱だとか」

そんなカチコチに固まったものは、もう要らない。

「もっとやわらかく、こういうのもあるんだね、っていうのが増えていったらいいですね」

そう、あのとき、女性の消防団員がひときわ輝いていたように。

あとがき
「“こういうのもあるんだ” が増えますように」と、桜さんは願う。セクシュアルマイノリティを表す言葉は、どれも不完全。みんな違うから■これまで敷かれてきた[社会が強制する男・女らしさ]?。性は、生きるすべての人に関わるもの。当事者、非当事者なんて区別もナンセンス■取材後「・・・曾祖母とゆっくり話し合えるようにやって行きたいと思います」と、桜さんから届いた。ひいおばあちゃんに、幸せである今が伝わるといいな。(編集部)

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