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16歳のぼくは中間にいる。男女分けに感じた強い違和感【後編】

16歳のぼくは中間にいる。男女分けに感じた強い違和感【前編】はこちら

2020/10/30/Fri
Photo : Taku Katayama Text : Shintaro Makino
岡野 礼奈 / Rena Okano

2004年、千葉県生まれ。小中学校では大人しく、教室では好んで一人で過ごすことが多かった。その反面、野球、声優、演劇にチャレンジする積極性も持ち合わせる。中学3年生のときにXジェンダーを自認。家族や友人へのカミングアウトもすることができた。現在、定時制高校に通いながら、カウンセラーを志す。趣味はアニメ。

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INDEX
01 検索でたどり着いたXジェンダーという言葉
02 自由にさせてくれる優しい両親
03 一人で過ごす大人しい子
04 お父さんがコーチの地元野球部に参加
05 アニメの声優を志して養成学校に入門
==================(後編)========================
06 アマチュア劇団で役者として舞台に立つ
07 卒業式の直前にカミングアウト&告白
08 タイプの人は年上のショートカット
09 彼女を作って、結婚式を挙げたい
10 メンタルヘルスのカウンセラーを目指す

06アマチュア劇団で役者として舞台に立つ

1年に一度、文化祭で演じる

中学3年生の春、劇団に入門。発声法を学んだことはあったが、本格的な演技となると新しいチャレンジだ。

「団員の8割は大人です。数人ですけど、小学校低学年の子役もいて。ぼくは、その中間という立場です」

毎年、11月に松戸市と柏市が合同で行う文化祭があり、市民ホールで芝居を披露する。それが一番の目標だ。

「6月か7月ごろに演目を決めて、脚本がまとまります。そして、夏休みから練習を始めて、本番にのぞみます」

出し物は50分くらい。しっかりとした準備と練習が求められる。もちろん、指導する先生がきてくれる。

「これまで2回、舞台に立ちました。最初はモブキャラ(脇役)でしたけど、去年はセリフが多い役柄を演じました」

主人公の血縁関係にあたる人物で、主人公に悪い影響を与える重要な役回りだった。

「本番のときは、家族や友だちが観にきてくれましたね」

他人になり切ることが魅力

演劇の楽しさは、他人になり切ることだと感じている。

「趣味でコスプレなんかもしますけど、それに似ているかな・・・・・・」

文化祭に向けた練習がない時期でも、毎週日曜は劇団に通っている。

「主に基礎練習や発声練習をしてます。あとは、ほかの劇団の演目を観て、勉強会をしたりもします」

自分たちの過去の舞台を振り返って、反省会も行う。

「合宿を兼ねて、山登りに行ったこともあります」

劇団のなかでは、「年下の子」という印象がついている。

「みんなにかわいがってもらえて、居心地もいいです。みんな、趣味の仲間ですから、気楽につき合えるのが性に合っています」

07卒業式の直前にカミングアウト&告白

男女分けに違和感を感じる

中学に入っても、ぼっち生活は変わらなかった。

「友だちは2、3人ですかね。それでもいいやっていう感じで・・・・・・」

会話をしない代わり、人の話を盗み聞きする能力が高かった。

「こっそり聞いて、一人でニヤニヤしていました(笑)」

セクシュアリティについて、違和感を感じ始めたのもこのころだ。

「最初に『あれっ?』って思ったのは、クラスの男女分けですね」

体育の授業の前の着替えや修学旅行の部屋分け。そのほか、男子と女子が分けられることがある度に、違和感を覚える。

「小学校のときは、あまり男女分けがなかったので『こんなものか』で済んでいたんですけど、中学に入ったら、気になってしまって」

しかし、そのときは自分の「あれっ?」がなんなのか、分からなかった。それを知るまでには、あと2年ほどの時間が必要になる。

「よく制服が嫌だ、スカートが嫌だ、という人がいますけど、ぼくはスカートもズボンも履くので、その悩みはありませんでした」

髪型は小4で野球を始めて以来、ショートカット。そのせいか、ボーイッシュなイメージは定着していた。

「今日の髪が今までで一番短い、ベリーショートです(笑)」

アニメの話で意気投合

初めて人を好きになったのも中学1年生のときだ。

「美術と体育を教えていた20代後半の先生でした」

顔が小さくてショートカットにした、美人さん。とても人気がある先生だった。

「ジェンダーレスというか、ボーイッシュな人でした。先生も趣味がアニメだったので、話をすると、すぐに意気投合しました」

もし、先生が美術部の顧問だったら入部したかったが、陸上部の顧問。

「走るのは、死にたいほど嫌いなんで・・・・・・」

先生のいる職員室と教室が同じフロアだったため、たまに会いにいってアニメの話をするようになる。

それが楽しかった。

「誕生日やバレンタインにプレゼントをあげたり、旅行のお土産を渡したりしてました」

勇気を出して告白

「先生は優しい性格で、最初はlikeの好きだったんですが、だんだん惹かれていきました。恋愛半分、憧れ半分ですかね」

そして、好きになった気持ちを、いつかは告白をしたいと思うようになった。

気持ちを伝えて、もし、うまくいかなかったら気まずくなってしまう。告白は卒業式の直前にすることにした。

「部活がない日を見計らって、ちょっと話があるので、生活指導室に来てください、と頼みました」

「実は、自分はこういう感じの人で、恋愛対象として先生とつき合いたい。そういいました」

勇気を出して、カミングアウトと告白を同時にしたのだ。

「ドキドキでしたね。先生は、やっぱり、驚いたみたいでした」

先生の口から出た言葉は、「へぇー、そうなんだ。そういうのもあるんだね」。

「こういう関係(先生と生徒)だから、これからは友だちとして会いましょう、といってくれました」

結果はともかく、3年間、思い続け、「いつかは、いおう」と決めていた気持ちを伝えることができた。

「実らなくても、いえればいいや、と思っていたので、すっきりしましたね」

LINEを交換し、今もときどき連絡を取り合っている。

「いつか、ご飯、行きたいね、と話してます」

08タイプの人は年上のショートカット

新しい友だちができた

中学のときに知り合った先輩に教えてもらって、現在の定時制高校に通っている。

「アニメの趣味が合う先輩でした」

「定時制の高校に合格したよ」といわれ、話を聞くとよさそうだった。

「ぼくも同じ学校に行きます、という感じで。親に相談したら、『いいんじゃねぇ』と軽くいわれました(笑)」

午後部なので、授業は午後1時から4時半までだ。

年上の人、働いている人、障害がある人、病気がある人など、いろいろな人が同級生だ。

「多種多様なものが見えてきて、世界が広がりました」

もともと得意な国語に加えて、日本史、世界史の授業に興味を持つことができた。

「新しい友だちもできました。クラスメイトの女の子です」

入学式の日、お母さん同士が、たまたま保護社会の会合で隣の席になり、たまたま一緒に役員に立候補し、たまたまアニメの趣味も一緒だった。

「そんな縁で娘同士も仲良くなりました」

その子と話をしてみると、好きなキャラが同じで、話題が合うことが分かった。

「これまでは “ぼっち派” だったけど、一人、ふたりは信頼できる友だちがいてもいいかな、と」

休みの日には、アニメショップやイベントに一緒に出かけることもある。

化学の先生が気になる

その友だちには、自分のセクシュアリティをカミングアウトした。

「分かってもらったほうが、つき合いやすいですからね」

彼女の反応は、「へぇー、そうなんだ」。

「引かれることもなく、突っ込まれることもなく、自然に受け入れてくれました」

「つき合っているボーイフレンドののろけ話を聞かされます」

自分にも気になる人がいる。
先生だ。

「とてもかわいい人で、髪型はショートカットです」

考えてみると、好きになるタイプははっきりとしている。

「年上で、ショートカット、性格はおっとりした人がいいですね。包容力のある人がいいのかな」

気になる先生も、おっとりとした穏やかな性格だ。先生のおかげで、一生懸命に勉強するようになった。

「年下で、かわいいな、と思う子も、たまにいますけど・・・・・・」

09彼女を作って、結婚式を挙げたい

家族にはユルくカミングアウト

中3のときに、ズボンの制服を買って欲しいとお母さんに頼んだ。

「そのとき、お母さんとセクシュアリティの話をしたんです。『セクシュアリティって何?』って聞かれたので、いろいろと話をしました」

「今から考えると、それがカミングアウトでしたね」

今、彼女が欲しいと切実に思っている。

「正直なところ、誰かとつき合うことに憧れています」

弟にも、「彼女が欲しい」といったことがある。

「じゃあ、早く作ればいいじゃん、といわれました(笑)。そういわれても、困るんだけど・・・・・・」

お母さんに、「彼女が欲しいんだ」というと、「へぇー、そうなんだ」と軽く流された。
お母さんはLGBTという言葉は知っているし、理解しようともしてくれている。

「最近、Xジェンダーについて、くわしく説明しました」

「危ないイベントには行かないで」「新宿二丁目には行かないで」などと心配するが、「危険なことがなければいい」と、認めてくれている。

「お父さんには、まだカミングアウトできてません。帰りが遅いから、あまり話すチャンスがないんです」

でも、お父さんもユルいから、「へぇー」というだけだと思っている。

交流会で世界を広げたい

「18歳になったら、LGBT系の交流会にすぐに参加したいと思ってます」

運営団体によっては、オフ会に年齢制限を設けているところも多いのだ。

「今のところ、年齢制限には抗えません」

2020年は、年齢制限がない東京レインボープライドに参加するつもりだった。

「残念ながら、コロナで中止になってしまいました。来年は、ぜひ参加します!」

交流会にいって世界が広がれば、彼女ができるチャンスも多くなる。

「もし、彼女ができたら夢があります。結婚式を挙げたいんです」

タキシードを着るか、ウエディングドレスを着るか。頭の中でイメージが膨らむ。

「コスプレ的な気分ではくスカートも好きなので、どっちがいいかな、と悩んでいます」

そして、ルームシェアをして、一緒に暮らしたい。

「結婚はできなくても、パートナーシップ制を利用することも考えたいですね」

子どもを生むことは100%あり得ないが、相手が子どもを育てたいといえば、その気持ちは尊重したいと思う。

「養子縁組とか、いろいろ道はありますから」

体に対する嫌悪感はあるが・・・・・・

高校へは、制服を着て通っている。

「スカートに抵抗がないのは、コスプレをするからだと思います」

ウイッグをつけて、ちょっと化粧をして、女装をする感覚だ。
一方で、体に対する嫌悪感はある。

「胸を取りたい、子宮を取りたい、とは思いますね」

ただ、現実的には無理だと思う。

「お金もかかるし、痛いし、精神的にも勇気が出ないし・・・・・・」

嫌なのは、女として区別されて扱われること。女という性に耐えられないわけではない。それがFTMとの違いかもしれない。

「かと言って、男に見られてもうれしくないんです。女にさえ見られなければ、何でもいいんです」

10メンタルヘルスのカウンセラーを目指す

女子トイレには絶対に入らない

日常生活で困っていることといえば、トイレだ。

「女子トイレには絶対に入りたくありません。世の中に多目的トイレをどんどん増やして欲しいです」

高校に入学してから、学校のトイレは一度も使ったことがない。

「トイレが遠い人なんで、平気です。どうしてもというときは、駅前のコンビニのトイレを利用してます」

「コンビニのトイレは天国です(笑)」

イベント会場でも、一切、トイレは使わない。必要なときは、一度退場してコンビニに行く。

「本当にどうしょうもないときは、『はーっ』という感じで使いますけど」

トイレのほかにダメなものは、温泉、銭湯だ。

「修学旅行のときは、一人だけ部屋のお風呂に入りました」

そして、女子更衣室。

「体育の授業があるときは、家からジャージを着て登校しています」

SNSでカウンセラーの練習

高校卒業後の進路は、すでに決めてある。

「カウンセラーになりたいんです」

LGBTのほかにも、いじめ、虐待、セクハラ、災害後のPTSDなど、心の悩みを抱える人は多い。

「悩んでいるたちにメンタルヘルスケアをして、助けてあげたいんです」

以前から、人の悩みを聞いてあげるのが好きだった。

「友だちではなくても、『聞いてー』といって、ぼくのところにくる子がいました」

今は、TwitterなどSNSへの書き込みで、困っている人の悩みに答えている。

「解決まではいきませんけど、その人の悩みを軽減できればいいかな、と思って続けています」

コロナの影響で今年は6月から学校が始まった。制服が嫌だ、親に理解してもらえない、などセクシュアリティに関する相談が増えている。

「理解してくれない親に、完全に理解してもらうのは無理だと思うんです」

「そういう人には、カウンセラーなどのプロに、お金を払っても相談したほうがいいよ、とアドバイスしてます」

何度かメッセージをやりとりして、「ありがとうございました」と感謝されることもある。

MTFなど、違うセクシュアリティとの情報交換も楽しい。

「ますます、LGBTのオフ会に行きたくなります」

今後は、動画の配信にもチャレンジしたいと思っている。

夢に向かって走り始めた

カウンセラーを目指して、進学したい専門学校も、もう決まっている。

「入学金や授業料など、全部で300万円くらいかかるので、今、貯金をしているところです」

学校が終わって、夕方5時から9時30分まで、ファストフード店でアルバイトをしている。

「受験に向けて勉強も始めました」

意中の専門学校に入って資格を取れば、就職先を紹介してもらえる。

「10年後は、絶対にカウンセラーになっていたいです」

10年後でも、まだ26歳。そのころには、社会の仕組みも見方も大きく変わっていることだろう。

「好きな人と一緒に暮らして、好きな仕事をしていられれば最高です」

あとがき
のびのびと自由な雰囲気をまとう礼奈さんは、16歳。東京レインボープライドやLGBT系のオフ会に参加したい! 動画配信も気になる! カウンセリングも勉強したい! 彼女ができたら結婚式をあげたい! やってみたいこと、叶えたい夢は尽きない■興味のある仕事にトライすること。好きな人と手をつないで歩くしあわせも、愛する人と生きる将来も・・・礼奈さんのままに[私を生きる]。だ。SOGIが理由であきらめることのない未来へ。(編集部)

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