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「女性として女性が好き」というより、「船越美紀として女性が好き」。【後編】

「女性として女性が好き」というより、「船越美紀として女性が好き」。【前編】はこちら

2019/09/29/Sun
Photo : Rina Kawabata Text : Ryosuke Aritake
船越 美紀 / Miki Funakoshi

1995年、大阪府生まれ。父、母、妹に囲まれて育ち、小学生の頃から女性に興味を抱く。高校生の時に女性への恋心に気づき、自身は同性愛者ではないかと認識し始める。体育系の女子大学を卒業し、現在はフィットネスジムのインストラクターとして働くかたわら、LGBTに関する講演活動も展開中。

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INDEX
01 何事も周囲に合わせるおとなしい子
02 学年トップから最下位への転落
03 “ドキドキ” する恋愛としない恋愛
04 誰にも言えなかった秘密の関係
05 自分の殻を破り日本を飛び出す覚悟
==================(後編)========================
06 海外で知った “さらけ出す面白さ”
07 引っ込み思案だった少女の覚醒
08 オープンになれたから実現できる夢
09 レズビアンでもバイセクシュアルでもない
10 すべての行動の原動力は “憧れ”

06海外で知った “さらけ出す面白さ”

一歩を踏み出す勇気

大学3年で、初めて自分の意思で向かった海外。

学生ボランティアで訪れたカンボジアは、すごくいい国だった。

「行く前は、発展途上国=貧しい国って想像してたし、日本の方が絶対いいだろう、って思ってました」

「でも、実際に行ってみると、確かに貧しいんだけど、明るい方が多かったんです」

「キレイな景色も広がってるし、ゆったりできる環境で、心が和らぎましたね」

「日本よりいいところがいっぱいあるって、行ったからわかることがたくさんありました」

海外での経験は、それからの人生に関わる大切なことを教えてくれた。

「一歩踏み出すことは意外と簡単なんだな、って感じられたんです」

勉強やオシャレのように目に見える成長ではないが、内面が大きく変化した。

「あれ以来、新しいことに躊躇しなくなったと思います」

「やりたいと思ったことは絶対にやるし、やりたくなかったら『やりたくない』って、言えるようになりました」

「あなたはどっちが好きなの?」

海外への興味はさらに増し、フィリピンにも渡った。

「2週間の短期留学でフィリピンに行った時、現地の先生に『あなたはどっちが好きなの?』って、質問されたんです」

自分が好意を抱く相手については、誰にも話していなかった。

しかし、現地の教師たちは、ボーイッシュな自分を見て確信していたのかもしれない。

「フィリピンは、セクシュアリティに関してオープンな国でもあるので、何気なく聞いたんだと思います」

「私も、海外だったら別にいいかな、と思って、『女の子が好き』って言ったんです」

そのひと言をきっかけに、教師たちとの会話はさらに盛り上がる。

「初めて恋愛トークを楽しめた瞬間で、こんなに楽しいんやったら言った方がいいな、って実感しました」

「恋愛って人生のほんの一部だけど、その一部を開いただけで、こんなにラクになることに驚きましたね」

不安しかなかった未来に、少しの光が見えた気がした。

人がやらないこと

大学を卒業する前に、1人でヨーロッパ諸国を巡った。

「飛行機にバスに地下鉄、いろんな交通手段で移動して、楽しくて仕方なかったですね!」

「10日間で7カ国回って、Instagramにリアルタイムで写真を公開したんです」

「写真にコメントしてくれる人がたくさんいて、発信する意味を知りました」

人がやらなさそうなことをやると、反響が大きい。
少し変わったことをすると、盛り上がる。

「誰もやらないことを、自分がやればいいんじゃないか、って考えるようになりましたね」

07引っ込み思案だった少女の覚醒

公的なカミングアウト

フィリピンから帰ってきてから、1つのイベントの存在を知る。

「自分の夢をプレゼンする大会で、優勝すると世界一周ができる航空券がもらえるって内容でした」

海外に出たことで、経験しないとわからないことがたくさんあると知った。

自分が感じたことを、多くの人に発信したいと思い、応募に踏み切る。

「3000人くらい応募してたんですけど、関西エリアで選抜された30人に残りました」

そのタイミングで行われた選考は、ウェブ投票。

「私は、もっと日本中にLGBTの存在を広めたい、という夢をウェブ上で語ったんです」

その中で、「私はバイセクシュアルです」と、セクシュアリティを公開した。

「ほとんど誰にも打ち明けてない状況で発表したので、人生で一番怖い瞬間でした」

自分の発表を記載した記事が、SNS上で拡散されていく。

最初にして、最大のカミングアウト。

キャンパス内での反応

SNSで拡散されると、大学の中でも一気に広まっていく。

「すごく大きなイベントで、通っていた大学から出たのが私だけだったので、時の人みたいになってました(笑)」

自分のセクシュアリティに対して、周囲の反応が気になっていた。

しかし、いざ打ち明けてみると、応援してくれる人ばかり。

「『勇気づけられた』みたいに言ってくれる人もいて、すごくいい雰囲気でした」

「大々的にカミングアウトして、受け入れてもらえたから、怖いものはなくなりましたね」

話を聞いてもらう楽しさ

イベントでは、200人規模の会場でのプレゼンも行った。

もともとは、人前に立つことが苦手だった少女。

しかし、この時は堂々と、胸を張って話すことができた。

「人前に立つことが怖くなくなって、話を聞いてもらえることが、すごくうれしかったです」

「昔の私を知ってる人が、今の私を見たら、びっくりすると思いますよ」

「めちゃくちゃ人見知りだった私が、こんなにしゃべれるようになったのかって(笑)」

海外の体験が、自分を大きく変えてくれた。

内面の変化は、意識的に起こすものでも、外見を変えれば起こるものでもなかったのだ。

08オープンになれたから実現できる夢

念願のプライベート空間

大学卒業後、フィットネスジムに就職した。

「全国転勤がある会社で、最初は香川に配属されたんです」

初めて親元を離れ、1人での生活が始まる。

「ずっと1人暮らしがしたかったんです」

実家は古い一戸建てで、自分の部屋には仕切りがない。

「部屋というか、階段の途中に机が置いてある空間があって、家族が普通に通るんですよ」

「寝室も、家族4人でずっと一緒でした」

高校生になる頃から、1人きりの空間が欲しかった。

「働き始めて1年半が経つけど、今はプライベート空間ができて、楽しいですね」

「部屋の中で、恥ずかしいことをしてるわけではないんですけど(笑)」

1人暮らしで、不便を感じたことはない。

「もともとできることは自分でやるタイプだし、人に指図されない方がやる気が起きるんですよね」

セクシュアリティに寛容な職場

現在の職場では、配属された段階で、セクシュアリティのことを話している。

「『女性とつき合ってた』とか『女性を好きになる』とか、みんな知ってます」

「嫌な反応はなくて、いい感じにいじってくれますね(笑)」

男性になりたいわけではないから、トイレも更衣室も利用するのは女性用。

「街中だと、外見で男性に間違われて、『なんで?』って目で見られることはあります(笑)」

「でも、どう見られたとしても、私は私だからって思ってますね」

声を届けるための活動

大学時代、イベントの大舞台でプレゼンをした経験が、人前で話す楽しさを教えてくれた。

「働きながら講演活動をしていけたら、って想像はしてたんです」

イベントで語った「日本中にLGBTの存在を広めたい」という夢を、現実のものにしたかった。

体育教師になった友だちの協力もあり、高校での講演が実現した。

「人権教育として、生徒にも先生方にも伝えたくて、自分の生きてきた道を話しました」

「生徒の食いつきが良くて、『どうしてそんなに明るくいられるんですか?』って聞かれたんです」

「挑戦して、挫折することかな。挫折したら強くなれるから」と、答えた。

「LGBTの人たちだけじゃなくて、マイノリティの自覚を持ってる人を、全体的に救いたいです」

「おとなしい子を見ると、昔の自分と重なって、助けてあげたくなるんですよね」

うまく意見を発信できない人たちの声を、自分が拾い上げ、世の中に届けていきたい。

「難しいことだけど、これから続けていきたいです」

09レズビアンでもバイセクシュアルでもない

強いて言えばレズビアン

大学生で出場したイベントでは、「私はバイセクシュアルです」と、発表した。

「その時は、レズビアンって言って、『女性だけなんだ』って思われるのが嫌だったんです」

「バイセクシュアルの方が、全員を受け入れてる感じで、いい風に見られる気がして」

しかし、実際はバイセクシュアルでもレズビアンでもないかもしれない。

「強いて言えばレズビアンだけど、LGBTのどれにも当てはまらない気もしてます」

そう感じるのは、自分自身の性別を限定して考えていないから。

「女性の体だけど、男性っぽい格好をしてる。でも、男性になりたいわけではないんですよね」

「自分はFTXなのかな、って感じてます」

「だから、女性として女性が好きというより、船越美紀として女性が好きなんです」

「レズビアン」という言葉は、人に伝わりやすいから使っている記号に過ぎない。

母の沈黙の涙

初めての講演活動を行ってから、ようやく家族に話す決心がついた。

実家に帰り、母と2人でカフェに行った時のこと。

「この前、講演会をしたんやけど」と、切り出す。

「お母さんに『何の?』と聞かれたんで、『LGBTを広めようと思って』って話しました」

「その流れで、『私も女の子とつき合ってたんだ』って、遠回しに伝えました。恥ずかしかったんで(苦笑)」

母は「いいやん」と、活動を肯定してくれるのではないかと期待していた。

しかし、何も言わず、涙を流す母。

「なんで泣いてるの? って、ちょっとびっくりしました」

「でも、その後に『頑張ってるんや』って言ってくれたんで、マイナスの意味ではなかったのかなって」

誰ともつき合う素振りを見せてこなかった自分を、母は心配していた気がする。

「妹は彼氏がいるのに、なんであんたはつき合わんの?」と、聞かれたこともあった。

「だから、お母さんはホッとして泣いたのかもしれません」

まだ言えない相手

父には、まだ話せていない。

「お父さんは昔から、私が言うことに、絶対に反論してくる人なんですよ」

「とにかく厳しい人で、『早く風呂入れ』とか普通なことも、強く言いすぎちゃうタイプ」

「だから、今はまだ言いたくないですね(苦笑)」

父が、自分に対してどんな感情を抱いているかはわからないが、まだ時期ではない。

「ただ、基本的にオープンにして生活しているので、ずいぶん生きやすくなりました」

誰にも言えずに抱え込んでいた過去の自分と比べれば、今は解放感にあふれている。

10すべての行動の原動力は “憧れ”

憧れてもらえる人間

中学や高校での講演の予定は、少しずつ入ってきている。

「自分の経験を話すことで、LGBTも普通の人だってことを伝えたいです」

「恋愛や性別に関する感覚がちょっと違うだけで、みんなと変わらない一般人なんだ、って感じてもらいたいですね」

「自分の周りにはいない、と思ってる人が多いと思うけど、実際はいるわけだから」

学生の中には、昔の自分のように、さらけ出せずに塞いでいる子もいるかもしれない。

「そういう子には、何かを話して伝えるより、私自身を見せる方が早いかなって感じてます」

自分をさらけ出せるまでに変化してきた過程を、包み隠さずに見せていく。

その姿を見て、自分も真似してみよう、と思ってくれるかもしれない。

「そのためには、憧れてもらえる人間でありたい、って強く思ってます」

自分を高めるための目標

プライベートでは、大学生で実現できなかった世界一周にトライする、という目標がある。

「また、世界を旅しながら、SNSで発信していきたいです」

「でも、旅費が足りないんで、まずは働いて稼いでからですね(笑)」

「社会人もきちんと経験したかったんで、少なくとも2~3年は働いてから実現しよう、と思ってます」

「あと、ボディメイクの大会で優勝も目指してます」

フィットネスジムで働き始めてから、減量とトレーニングに励み、大会に出場した。

「これまで3回出たんですけど、なかなか1位が取れず、2位止まりなんです(苦笑)」

「一番いい状態の自分の体を見てみたいんですよ。腹筋が割れてる女性って、かっこいいじゃないですか」

「憧れに近づけるように頑張って、1位を取りたいですね」

コンプレックスを隠す武器

「目標を持つことは、きっと大事なことだと思います」

勉学に励んだことも、ファッションに力を入れたことも、海外に飛び出したことも、すべては “憧れ” に導かれたもの。

「その奥には、コンプレックスを隠したい、って気持ちがあったんでしょうね」

「コンプレックスを超えるスキルが、自信につながっていった気がします」

今はあらゆるコンプレックスを乗り越え、さまざまな方向で自分自身を出せるようになってきた。

「もし弱みがあるなら、強みを作って隠したらいいんじゃないかな、って思います」

誰だって、最初から強く生きていけるわけではない。
環境に応じて、1つずつ武器を備え、ちょっとずつ成長していくもの。
過去の自分が磨いてきた武器は、今も1つとして無駄にはなっていない。

あとがき
美紀さんは、一途。自分をないものにしてまで、誰かを喜ばそうとがんばったりはしない、とも言えそうだ。自分勝手とか、他者の気持ちを考えない、ということではない。今、自分のおもいに忠実に生きている■「できることを増やしたい」には実感がこもった。取材中のどの言葉も清々しかった。「憧れてもらえる人間に」と、サラリと口にする。それが有言実行だとも多分意識されていない。恐れがあっても? 自信も? [船越美紀]の手の中にある。(編集部)

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