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人生で重要なものは “最初の一歩”。【後編】

人生で重要なものは “最初の一歩”。【前編】はこちら

2019/03/07/Thu
Photo : Taku Katayama Text : Ryosuke Aritake
梅田 道子 / Michiko Umeda

1964年、北海道生まれ。両親と姉との4人家族で育ち、幼少期の頃から海外の映画や音楽に傾倒。同じ時期から、女性に恋心を抱くことを自覚していた。26歳で上京し、事務職を続けるかたわら、「東京国際レズビアン&ゲイ映画祭(現レインボー・リール東京)」に行き始める。現在は調理師として働きながら、レインボーカラーアクセサリー専門店「niji-depot」を運営。

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INDEX
01 我が道を行く “変わった女の子”
02 自分の土台を作ってくれた母の教え
03 当然のように同性に抱く恋愛感情
04 レズビアンとして生まれた意味
05 動き出すことで変わっていく世界
==================(後編)========================
06 プライドカラーのアクセサリー
07 鼻歌がぴったりマッチした女性
08 子どもたちのために食事を作る仕事
09 公私ともに欠かせないパートナー
10 外に出ることで見えてくる自分自身

06プライドカラーのアクセサリー

自作のブレスレット

30代後半に差しかかった頃、ロサンゼルスでゲイのスクエアダンスコンベンションが開催された。

参加していたサークルが、日本代表として出場することが決まる。

「当時は、国内に1つしかないゲイスタイルのサークルだったので、行くことになったんです」

せっかくロサンゼルスに行くならば、おしゃれしたい。

「その頃から6色の虹のプライドカラーは有名だったので、身につけたくなったんです」

「でも、海外にも日本にも、ステキなアイテムがなかったんですよ」

ないのであれば自分で作ってみよう、と考え、さっそく取りかかった。

「最初は、6色の石を使ったブレスレットを作りました」

「つけていったら、サークルメンバーから『いいね』って言われましたね」

評判が良く、自慢のブレスレットになった。

手探りのネットショップ

自分のために作り始めたアクセサリーだったが、売ることを視野に入れるようになっていく。

「私みたいに、虹色のアクセサリーを欲しがっている人はいるだろう、と思ったんです」

「日本でも、まだまだ虹色のものは展開されてなかったので、やってみようって」

2004年、40歳になる頃に、インターネット上でアクセサリーの販売を開始した。

「『ホームページ・ビルダー』ってソフトで、自分でウェブサイトを作っていく時代です」

「まだネットショッピングが一般的でなくて、カートとかの機能もなくて(苦笑)」

「1人で始めたから、受注を受けてから作る感じで、趣味の範囲内でしたね」

サイトには「プライドカラーは、セクシュアルマイノリティのシンボルカラーである」と、その意味も掲載。

「お店を続けていくと、お客さんからうれしいメールをいただくこともあります」

ある女性から「日本のどこかで同じものをしてる人がいると思うと、勇気をもらえます」というメッセージが届いた。

「『今日は枕元に置いて、明日からつけていきます』って書かれていて、感動しました」

意味を広めていくこと

プライドカラーを身につけることが、当事者同士のつながりを生むと感じている。

「共通のカラーを持つというだけで、特別な意味があると思ってます」

「でも、まだプライドカラーの認識は広まっていないところもあるって感じますよ」

まだ「虹って7色じゃないの?」と聞かれることは多い。

「ただの虹ではなくて、6色の虹が持つ意味を、頑張って広めていきたいですね」

「身につけていると当事者だってバレそう、っていうネガティブな感情もなくしていきたい」

「もちろん当事者でない人にも、アライとしてつけてもらいたいです」

日常使いしやすいハンドメイドアクセサリーが、生きやすい社会を作るきっかけになってくれたら。

07鼻歌がぴったりマッチした女性

広がりを見せる仲間の輪

スクエアダンスサークルに入ってから、一気に仲間の輪が広がっていった。

「外に出ないと、つながりって生まれないんですよね」

「レインボー・リール東京」に出店したことがきっかけで、運営にも参加するようになった。

そして “20世紀最後の恋” は、ギリギリでつかむことができた。

「あの広告のおかげで、サークルメンバーの女性とつき合えました」

「ただ、つき合うということはどういうことなのか、よくわかんなかったですね(苦笑)」

恋人ができたからといって、自分の性格やライフスタイルは大きく変化しなかった。

その彼女との関係は、そこまで長くは続かなかった。

21世紀の恋

女性向けのイベントに参加した時、1人の女性と知り合う。

「正直そうな人で、初対面の時から気になりましたね」

「彼女は背も高くて。・・・・・・私、大きい人好きなんです(笑)」

イベントのオーガナイザーを、彼女と一緒に務めることが決まる。

2人でイベント内容について話し合っている時に、なんとなく鼻歌を歌っていた。

その場の気分で歌っていた自作の曲だったが、合わせて歌い始めた彼女のメロディーは、自分が思い描いたものと同じだった。

「自分と同じリズム感の人がいることに、感動しました」

この人とつき合いたい、と思った。

「言葉では説明しづらい感覚の部分って、私にとってはすごく大事なんですよね」

「食事をしている時に『これおいしいね』と言ったら、『そうだね』って共感できた上で、会話に発展する人がいいなって」

「彼女は、まさにそんな人だったんです」

好意が通じ、恋人同士になることができた。

08子どもたちのために食事を作る仕事

異業種への転職

北海道にいる頃から、長く事務職を続けてきた。

しかし、自分には向いていない仕事だと感じるようになっていく。

40代後半になり、転職を決意。

「物を作ることとごはんを食べることが好きだったので、職業訓練校で調理師コースを取ったんです」

飲食業界に進むことを決め、自分に合う職場を探した。

「飲食って時間が不規則で、居酒屋とかだと夜遅くなっちゃうから、迷ったんですよね」

進む先がなかなか決まらない時に、学校給食という選択肢を知る。

「給食は勤務時間が明確に決まってるので、体に負担がかかりにくいかなって」

「衛生面も徹底されているから、やっていける気がしたんですよね」

新たな道を見つけることができた。

続けていきたい二足の草鞋

学校給食の仕事を始めて、約6年の時が過ぎた。

アクセサリーショップの運営と、二足の草鞋だ。

「今は600人規模の小学校で、給食を作ってます」

「釜で作る全身労働だけど、料理を作ること自体は大変じゃないですよ」

学校の調理室で働いているため、子どもから直接「おいしい」と言ってもらえることもある。

「子どもたちの言葉も励みになるし、残食率が低いとうれしいですね。おいしいと思ってくれたんだなって」

「私が小さい頃と変わらず、揚げパンは人気です」

ただし、一つだけ苦労していることがある。

「朝早いことだけは、ちょっと辛いですね(苦笑)」

昼までに給食を作り上げなければならないため、出勤が早く、毎朝4時半起き。

「冬の時期は、まだ暗い時間帯です」

「その時間に起きるために、夜更かしはできないですね。23時には寝たいな」

イベントなどでアクセサリーショップを出店する時は、寝ている時間も惜しくなる。

「イベントが迫ると準備に時間を割きたいけど、夜遅くなるのは辛いんですよ」

「だから、給食の仕事が休みの週末に、一気に追い込む感じになりがちです(苦笑)」

それでも、給食の仕事を辞めたいとは思わない。

「今は頑張るしかないですね」

09公私ともに欠かせないパートナー

それぞれのセンス

鼻歌で通じ合った彼女とつき合い始めてから、13~14年の時が経つ。

「ここまであっという間でしたね」

現在は同じ家に住み、生活をともにしている。

「今は彼女と一緒に、アクセサリーショップを運営しています」

「だから、公私ともに、お互いがお互いにとって欠かせない存在ですね」

彼女とは性格が違い、作るアクセサリーのテイストも違う。

それぞれのセンスを、認め合える関係を築けている。

「2人が違うことはわかっているから、一緒にいられているんだと思いますね」

仲裁役はブタのぬいぐるみ

10年以上の間、何事もなく平穏に関係が続いてきたわけではない。

「同棲し始めて少し経ってから、別居した時代もあります(苦笑)」

「その時は、彼女のお母さんに『あんたたち遠慮なさすぎ』って言われて、収まりました」

一緒に生活していれば、ケンカをする時もある。

しかし、長く引きずらないことが大事。

「うちは特殊だと思うんですけど、ケンカした時は、ブタのぬいぐるみに話しかけるんです(笑)」

“ブタのぬいぐるみを話し相手にする” が、険悪になった時の2人のルール。

自分のブタは「しんちゃん」、彼女のブタは「ちゅんぶー」という名前がついている。

「折れ時だけど謝りたくない時に、ブタに向かって『しんちゃん、今どうしたらいいかな?』って」

「そうすると、相手がブタの役になって『言っちゃいけない言葉だったと思うよ』とか会話するんです」

「『今ここで謝った方がいいかな?』『そう思うよ』って話すうちに、解決に向かいますね」

「私はケンカすると貝になっちゃうタイプだけど、ブタが出てきたら絶対答えなきゃいけないんです(笑)」

「万人にはオススメできない方法だけど、ケンカは収まりやすくなりますよ(笑)」

答えの出し方

長く関係を続けていくには、相手に答えを求めすぎないことも大事だと考えている。

「私は『落ち着いてから考えたい』ってタイプだけど、彼女は『今答えて』ってタイプなんです」

「性格が違うように、答えの求め方が違うことも、お互いにわかっていた方がいいと思います」

「大体、好きになる相手って、自分と逆のタイプじゃないですか(苦笑)」

相手がAとBの答えを提示してきても、自分はCの答えしか持っていない時もある。

互いの主張を貫き、衝突するばかりでは何も解決しない。
そうなる前にお互いの考えを把握し合い、押しつけ合わないこと。

長く一緒にいるからこそ、見えてきた関係の築き方かもしれない。

10外に出ることで見えてくる自分自身

自分自身を伝えるべき相手

幼い頃から自分自身の考えを隠さず、周りに左右されずに生きてきた。

今も恋人の話題になれば、「私は女性のパートナーがいるよ」と話している。

「でも、誰彼構わず話すわけじゃなくて、人を見て言いますよ」

「今の職場では、2人に彼女がいることを話してます」

自分のセクシュアリティを打ち明けて、相手から否定された経験はない。

家族も、当たり前のことのように受け入れてくれた過去がある。

「家族に言いたいけど言えない、って人もいると思うけど、自分をしっかり持ってから伝えた方がいいと思います」

自分自身がセクシュアリティを受け入れられていなかったり、迷いがあったりすると、本当に伝えたいことは伝わらない。

打ち明けられた家族には、抵抗感や迷いばかりが伝染してしまうから。

悩むのは世界が狭いから

自分のセクシュアリティについて、悩みらしい悩みを抱えたことはなかった。

「悩んでしまうのって、世界が狭いからだと思うんです」

「ちょっと外に出てみないことには、世の中ってわからないですよ」

「特に学生さんは家と学校しか世界がないから、考え込みやすいんじゃないかな」

勇気のいることかもしれないが、環境が変わることで、自分も少しずつ変わっていく。

「外に出るっていうのは、LGBT当事者のコミュニティに飛び込むでもいいし、趣味のサークルに入るでもいいと思います」

「人と触れ合わなかったとしても、本を読んだり映画を見たりして、見聞を広めるって方法でもいいですよね」

自分は好きな音楽や映画から、同性愛という存在を知った。

男性同士、女性同士の恋愛があるという知識を得てから、自分が同性に恋心を抱くことに気づいた。

「だから、私自身を受け入れられたっていうところが、大きいと思います」

「今の時代は情報がいっぱいあるから、私からしたら夢のようですよ(笑)」

自分は人と違って変わっている、と思ったことはない。
それでも、好きな人と一緒になれる未来はきっと訪れない、と考えていた。

そんな学生だった自分は社会人となり、今は人生をともに歩むパートナーがいる。

生きる上で重要なことは、恐れずに最初の一歩を踏み出すこと。

あとがき
自分のペースをよく知っていて、悠々としている道子さん。慌てたり、細かなことに気を揉む姿は想像がつかない。自分に必要なことを自然に取捨選択している感じ、とも言える。それは道子さんの魅力のひとつだ■はじめの一歩、行動力を示す実例も多かった。スクエアダンス、映画際、アクセサリーショップの運営・・・。共通点は、他者の「いいね!」を過度に求めないこと? 自分の[好き]を大切に人と出会うと、心地のいい場所を増やせるのかもしれない。(編集部)

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