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パンセクシュアルという私の生き方【後編】

パンセクシュアルという私の生き方【前編】はこちら

2019/02/12/Tue
Photo : Ikuko Ishida Text : Shintaro Makino
坪井 真子 / Mako Tsuboi

1997年、埼玉県生まれ。幼稚園の頃にバレエと出会い、その後、ミュージカルやダンス、ドラム演奏に親しむ。男か女かは、その人の本質を入れる器に過ぎない、との持論に行き着き、パンセクシュアルを自認。現在、大学にてメディアデザインを学んでいる。

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INDEX
01 距離が遠かった父親との関係
02 ミュージカルが大好き
03 ファッショはどんなものでも試してみたい
04 受け入れてもらった告白
05 お互いにXジェンダーだったのかな
==================(後編)========================
06 彼女はいつもそばにいてくれた
07 パンセクシュアルだよね?
08 目標はステージで表現をする仕事
09 自由な国、ニュージーランドへ
10 自分の体験を語りたい

06彼女はいつもそばにいてくれた

こころの不調と彼女への依存

高校生の頃、家庭内の雰囲気はさらに悪くなり、自分の立ち位置が分からなくなった。

「お母さんからは、お父さんやお兄ちゃんの色々で、『あなただけは普通でいて』と泣きつかれました」

母親の言葉の中に、「普通の女の子らしくして」という意味を感じた。

そして、だんだんと精神的な不調を感じるようになった。

「ひどいときは、文字を読むのにも苦労していました。帰り道が分からなくなって、立ち尽くしたりもしました」

教科書をいくら読んでも、内容が頭に入ってこない。英単語も覚えられない。

自分の悩みを相談できる相手は、ユウナだけだった。

「彼女がいないと不安。泊まらないで帰ると言われると寂しい。そんな状態でした」

ユウナとは毎日、会った。

「彼女に完全に依存してしまいました」

彼女は特別なことを言うわけでもなく、いつもそばにいてくれた。

実話を漫画アプリに投稿

学校では勉強もできる大人しい子を演じていた。
それが苦しさを助長した。

「ほかの人と関係を持つことが煩わしくて、自分自身をどんどんクローズしてしまいました」

そんな時、家に引きこもって、ユウナとの関係を漫画に描くことに喜びを見つけた。
そして、その作品を漫画アプリcomicoに投稿するようになる。

「読者からの反応があると、それなりにうれしかったですね」

高校を卒業。

大学は、自分が興味を持てるエンターテイメント系を選ぶことにした。

「パフォーマンスも裏方も勉強したいと思って、何でもできる学校を探しました」

メディアデザインを学べる大学に進んだ。

「高校が辛かったので、大学に入るときに、『このままじゃヤバい。変わらなきゃ』と、気持ちを入れ替えました」

それは、ユウナに依存していた自分を整理することでもあった。
別れる決心をする。

中学1年から大学2年の秋まで、6年半のつき合いに終止符を打った。

07パンセクシュアルだよね?

大学生活に生きがいを見つけた

メンタルも回復し、今は学校での自由な活動にやりがいを見出している。

「一学年に70人しかいない小さな大学なので、居心地がいいですね」

「今は、ライブステージの照明を学んでいます。大学にある機材を自由に使っていいよ、といわれているので、試行錯誤しながら勉強しています」

イベントでは、毎回、違うステージを設営するので、その度に機材を選んでセットを組み立てる。

「私もダンスや演奏をするので、自分自身でステージに立って、イベントに合わせたセッティングをしています」

パフォーマーも設営部隊も人数が少ないので、すべてを自分たちでやらなくてはならない。それが勉強になる。

学校の外でも楽しい経験をしている。

「コスチュームが着て接客がしたくて、コスプレオッケーのカフェ&バーでバイトをしたこともあります」

「自分で着たい衣装を持ってきていいという店だったんです。アニメが好きなお客さんが、グッズを一杯つけて来ていました」

そんな経験も舞台に役立ちそうだ。

私、パンセクシュアル?

実家を出て、生活の環境も変えた。

「大学2年生のときから親戚の家にお世話になっています」

「春日部から、安いルートで通学すると、1時間半もかかるんです(笑)。忙しい時期だと、夜11時まで学校にいることもあるので、ちょっと遠くて。練馬の親戚宅なら30分で帰れます」

新しいパートナーもできた。

「最初は恋愛対象ではなくて、ただ『好きです』と言っていたら、本気にしてくれたみたいで」

さばさばしたタイプで、ダンスがとにかく上手な女性だった。

「つき合ってはみたんですけど、あまりしっくりこなくて。中途半端もいやなので、区切りをつけよう、と思って、半年つき合って別れました」

その頃、同級生に「真子はパンセクシュアルだよね!?」と言われて、「そうなのかな」と気がついた。

「バイセクシュアルは、男性は男として好き、女性は女として好き。それで両方とも愛せるという人。パンセクシュアルは男女っていう性別を意識せずに愛せる人です」

そもそも性別って何なのか? 
子ども心に最初に疑問に思ったのは、温泉に女性だけしかいない状況だった。

「あれ、女の人しかいないなあ・・・・・・」と。

それ以来、モヤモヤする気持ちがどこかにあった。
ときどきボーイッシュな服を着ていたのは、その疑問に対する「抵抗」だった。

「男か女かは、たまたまその人に与えられた器でしかなくて、その人の本質は器に入っている中身」

「中身は男か女かには関係ないんです。目の色、髪型と同じ。そのことをようやく、言葉で説明できるようになりました」

だから、一緒にいて安心できる人なら、外側が男でも女でもいいと思っている。

ダンスチームを結成

最近、仲のよい友だちの女の子4人を誘ってダンスチームを結成した。
なんと、5人のうち3人がバイセクシュアル、1人がパンセクシュアルだ。

「私、女の子とつき合ったことがあるんだ」というと、「私もよ」と答えが返る。
話が早い。

容易に分かり合える仲間たちだ。

「発表会もたまにあって、日々みんなと練習してます」

大学生活の居心地のよさは、先生との関係もある。

「小学校4年のとき、塾の先生に『お前は馬鹿だから勉強ができないんだ』と目の前でバンバン暴言を吐かれたんです。それ以来、先生という存在が嫌いになりました」

中学に「相談室」があったが、そこの担当の人も「先生」だったから、何も相談する気にならなかった。

高校は男女交際禁止で、「世の中には女同士でつき合っているヤツもいる」と笑い話にされたこともあった。

「心の中では、ここにいるんですけど、と言いたい気持ちでした」

教師へのそんな嫌な感情が、大学の自由な校風の中で払拭された。

「小さな大学で、いろいろとアドバイスをもらううちに『先生』のイメージも変わりました」

「照明の仕事が外であるけど、やってみる?」などと、気軽に声をかけてくれる。 

一番若い先生は26歳。兄のような存在だ。

08目標はステージで表現をする仕事

将来のことは欲張りに考える

現在、大学3年生。
大学卒業後のことを視野に入れる時期になってきた。

「照明だけがやりたいわけではありません。ダンスとかパフォーマンスにも興味があります。裏方も覚えて、何でもできるようになりたいですね」

舞台で何かを表現をする世界に入ることが目標だ。

「まだ就職先は何も決めていません。ただ、自分のセクシュアリティを受け入れてくれる会社が希望です」

LGBT関連企業のインターンシップに参加してみたこともある。

「LGBTフレンドリーを謳っていなくても、オープンなところは多いと思います。プライベートを隠さなくていい居心地のいい環境で、自分らしいことを表現できればベストですね」

音楽も続けたい。
ダンスも続けたい。
裏方もやりたい。
英語もうまくなりたい。

自分でも欲張りだと思う。

「人の色に染まるよりは、自分の色を出せればいいなあ、と思っています」

ワーキングホリデーにも行ってみたい

「1〜2年くらい働いたら、ニュージーランドにワーキングホリデーに行きたいとも思っているんです」

ニュージーランドのワーキングホリデーは、両親が経験した道でもある。

「中学に上がるまでは毎年、両親と一緒にニュージーランドに行っていました。友人とふたりで行ったこともあります。もう1人でも行けるかな、と思って」

野菜やくだものを育て、羊を飼っている田舎の家庭。
そして、海軍の人なのにフレンドリーで堅苦しくない、素敵な都会の家庭。

「2軒のファミリーのところにいつも泊めてもらっていました。ニュージーランドでは、ホテルには泊まったことがないんですよ」

親しい人がいることは、心強い。のんびりとした雰囲気も気に入っている。

「親にも話したら、賛成してくれました」

英語も、子どもの頃から10年習った。

「今はまだ自由に話せないけど、相手が話している内容はだいたい分かります」

そんな自信も後押ししている。

09自由な国、ニュージーランドへ

日本とは違うルールがある国に行ってみたい

実は、ニュージーランドに行きたい理由は、もうひとつある。

「ニュージーランドは、同性婚が法律で認められているんです。きっと、私が行っても、窮屈な思いをしなくて済むんじゃないかと思って・・・・・・」

今まで、マイノリティであることが理由で辛い思いをしたことはない。
でも、おおっぴらに人に相談できなかったことも事実だ。

「一度、就職して日本の現状っていうか、社会を知ってから、ニュージーランドに行きたいと思っています」

日本では、SNSを公開するとヤジが飛んでくることもある。
直接、中傷されたわけではなくても、誰かの発言がどうしても気になる。

「この人はこう思う。あの人はこう思う。どれも間違いではないし、一理ある。どうしたらいいんだろう? そう悩むと疲れてしまうんです」

人目が気になる窮屈な世界を飛び出して、もっと視野を広げたい。
日本とは違うルールがある国に行ってみたい。

そんな想いが強くなっている。

「勝手なイメージですけど、海外では『私はこうだ!』と貫き通せるような気がしています」

「ニュージーランドに行ってから、2〜3カ国は別の国にも飛べればいいなと思っています」

広がる交友関係

今年の5月、初めて新宿二丁目に足を踏み入れた。

「ゲイの知り合いに、『行ってみる?』と誘われて、『連れていって』と頼みました」

そこでいろいろな仲間を見つけることの楽しさを知った。

「自分の細かいことを説明しなくていい。それが楽ですね」

自分のセクシュアリティを隠すこともなくなり、交遊関係が広がりつつある。

「隠したい人は隠せばいい。語りたい人は語ればいい。私も自分の体験を語ることができればいい、と考えています」

偏見を持つ大人たちに言いたいこと

みんなで集まってLGBTの権利を主張する必要はないと思っている。
でも、大人世代に対する不満はある。

「最初から偏見を持っていて、LGBTのことをよく知らないのに中傷するような暴言を吐く人がいます。知ってから言ってよ、って言いたくなりますね」

「世の中には女性同士でつき合うヤツもいる」と発言した高校の先生もそのひとりだ。

女性同士がキスをすることを想像するだけで気持ち悪い、と堂々と言う人もいる。

「漫画でも本でも読んでみてほしいですね。現実を知らないで否定しないで、という気持ちです」

10代、20代の若い世代は柔軟で、ネットでいろいろな情報を集めている。

「無理やり変えなくても、いずれいい流れはできていくと思います」

10自分の体験を語りたい

先輩としてアドバイスできることもある

同世代にも偏見を持っている人はいる。

幼稚園からの幼なじみから「気持ち悪い」といわれたこともあった。

「人それぞれの考え方がありますからね。分かってもらえないなら仕方がないです。怒ったりとか、悲しんだりとかはないですね」

「『一緒にいたくない』と言われれば、分かった、という感じです。実際に、そんなふうに言われたこともありました」

その子とは、もう遊ばないと決めたが、最近になってLINEでメッセージが送られてきた。

「もう忘れているのかもしれませんけど。それとも、軽い気持ちで言った言葉だったのかな・・・・・・。まぁ、いいかって感じです」

大学には、LGBTの当事者も多いと感じる。
ときどき後輩から、相談を受けることもある。

「その子は、男性とつき合ったことがあるけど、手をつないだだけで気持ち悪かった、っていうんです。じゃあ、女性とつき合うのかというと、そんなこともない。私って何だろう、と悩んでいました」

「答えは出せませんでしたが、『クエスチョニングってセクシュアリティもあるよ』と教えてあげました」

インターネットのサイトや役に立ちそうなSNSのアドレスも紹介した。

「相談されるのはうれしいですね」

自分の知っていることで、仲間が苦しさから解放されればいい。

「いろいろな人がいることを知ると、世界が広がって、自分が何なのが分かると思います」

頑張りたいことがたくさんある

つらかった高校時代から立ち直って、今は頑張りたいことがたくさんある。

「頑張り方は人それぞれだと思っています。私の場合は、本を読む。ダンスを見てもらう。自分の体験談を漫画にする・・・・・・。できることは、何でも試したいですね」

「人に刺さるものを表現できればと思います」

頑張ったら、認めてくれる人はきっといる。そういう前向きな考え方ができるようになった。

「でも、見返りを求めると苦しくなるから、それは期待しないようにしています」

「まずは行動を起こす。疲れたら休めばいい。自分が頑張れる環境を見つけて、精一杯やれればベストですね」

自分勝手にならないことも学んだ。

「演劇はみんなでみんなを支えていく作業です。だから余計に楽しい」

マイノリティの垣根を軽々と乗り越えて、新しい世界でステップを踏む。

あとがき
「・・・どの意見も一理あるなと思いつつ、他人の意見ばかり尊重するのはやめたい」。行きつ戻りつしているだろう真子さんだけど、心配は感じない。あんなに軽やかなステップを踏める姿も真子さんだから■先日届いたメールには、変わりたい自分に向けた決心の言葉が連なっていた(気迫満点! )。十分に考える力は備えた(準備万端!)。他人の評価とは関係なしに行動する(勇往邁進!)、を次の重点を置いてみたらどうだろう。もっともっと自由に表現できる扉は、目の前に。(編集部)

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