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何なんだろう、自分は? 本当にゲイなのか?【前編】

同級生の女の子とつき合いを深めたが、最後の一線を超えることに自分の心が拒否反応を示した。そして、年上の人との初体験・・・・・・。自分はいったい何なんだ? 本当に男性しか相手にできないのか? 自己のセクシュアリティを確認するための恋愛行動を経て、ついにゲイであることを自認。徐々に自分をオープンにしていく物語を追う。

2019/02/14/Thu
Photo : Taku Katayama Text : Shintaro Makino
仲宗根 忠史 / Tadashi Nakasone

1997年、沖縄県生まれ。年の離れた5人きょうだいの4番目として育つ。Ⅰ学年13人の小さな中学校に通いながら、バレーボール部のキャプテンに片思い。高校生のときにリアルなゲイの世界に足を踏み入れる。現在は、高知県立大学文化学部3年生。地域における就活サポート会社の起業、大都市でのイベント企画など、将来を模索中。

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INDEX
01 お菓子作りが得意な男の子
02 初恋の相手はバレーボール部のキャプテン
03 思い詰めた告白への答えは、NO
04 最後の一線を超えられなかった女の子との交際
05 初めての夜。そして、ゲイの世界を知る
==================(後編)========================
06 交際の動機はセクシュアリティの確認
07 高知にゲイは少ない。パートナー探しは卒業後
08 煩わしいと思っていた故郷が大好きになった
09 母親へどう伝えるかが大きな課題
10 目の前に広がっていく いろいろな可能性

01お菓子作りが得意な男の子

5人きょうだいの4番目

沖縄県出身。
本島北部、名護市近くの羽地というサトウキビ畑に囲まれた町に生まれた。

15歳年上の長女、14歳年上の長男、6つ上の次男、そして7つ年下の弟と5人きょうだい。

「沖縄では3人から5人のきょうだいも珍しくはなかったですね」

長女は高卒で就職、長男は高校から寮生活を送っていた。

「上の2人とは、年が離れているので、きょうだいという感覚があまりありませんでした。物心がついたころには、2人はすでに家を出ていましたから」

「たまに会う親戚の叔母さん、叔父さんみたいでした(笑)」

父親は寡黙な人で、くだものを扱う露店を営んでいた。
母親もそれを手伝う共働き家庭。

弟と2人で過ごすことが多かった。

母親は面倒見がいい世話焼きタイプだった。

「ぼくの友だちが遊びにきたら、『ご飯、食べていきや〜』と言って、いつもよくしてくれました」

自然と、父親よりは母親と話すことが多くなった。

「すぐ上の兄もアルバイトで忙しくしていました。5人きょうだいですけど、大人数でいることはほとんどなかったですね」

弟が生まれて以来、家族が全員そろって写真を撮ったのは、今年行われた祖母の葬儀が初めて。

この家庭環境で覚えたのが、料理だった。

「自分と弟の食事を作ることが多かったですね。料理が好きというよりは、必要に迫られて覚えた感じです」

クラス13人の山の小学校

小学校5年生のときに父方の祖母がケガをし、介護が必要になってしまった。
同居することになり、沖縄県本部町に引っ越す。

「そこは伊豆味という地区で、山の中。とにかく田舎でした」

一学年ひとクラスの小さな小学校に転入。
同級生は男子10人、女子3人、合計13人だった。

「小学校も中学校もひとつずつしかないので、中学3年までずっと同じメンバーのままでした。みんな、とても仲が良かったですよ」

実は13人は多いほうで、ひとつ下のクラスは3人しかいなかった。
小学校では2学年が一緒に同じ授業を受ける。

いじめなどは考えられない世界だ。

「なぜか、男子にお菓子を作るのが好きな男子が多くて、バレンタインデーには作ったケーキをみんなで持ち寄って、女の子にあげたりしていました」

得意だったのはティラミス。評判も良かった。

「将来は料理人になりたい、って思った時期もありました」

しかし、その夢は、次兄が調理師の資格を取りつつも料理人の道を選ばなかったことに影響を受けて、あえなく潰えてしまった。

02初恋の相手はバレーボール部のキャプテン

周囲に気を使う大人しい子だった

「小学校、中学校では、いつも周りを気にして真面目に過ごしていました」

両親が共働きだったので、何か問題を起こすと親に迷惑をかけてしまう。
子ども心に気を使って大人しく過ごしていた。

「リーダーシップを取ることもありましたけど、どちらかというと、縁の下の力持ち的な存在でしたね」

「誰もやらないなら、じゃあ、オレがやるか。そんな感じでした」

小学校からバレーボールを始めた。

「伊豆味に引っ越してからもバレーボール部に入りました。というか、そこにはバレーボール部しかありませんでした、生徒数が少なかったので(笑)」

ポジションはセッターかリベロ。
バレーボールは高校卒業まで続けた。

一緒にいたいという気持ちが募る

思い返せば、小さい頃から気になる男の子がいたことはいた。

しかし、明確な初恋は中学1年生のときだった。

「バレーボール部の1学年上の先輩を好きになってしまいました。部活のキャプテンを務めている人でした」

リーダーシップをとる、男らしい人だった。

「かっこいいなぁ、という憧れを超えて、だんだん『一緒にいたい』という感情が沸いてきました」

先輩は何が好きなんだろう。
今、何をしているんだろう。

「いろいろなことが気になって・・・・・・」

徐々に思いが募るうちに、「ああ、オレは女の子より男の人が好きなんだな」と、自覚するまでに至った。

それまで、気になる女の子がいなかったわけではないが、つき合いたいという感情を抱いたことはなかった。

「もちろん、告白されたことは一度もなかったですね。中学のとき4組くらいカップルができましたけど、みんなすぐに別れてしまいました」

小さな学校だけに恋愛には奥手な子が多かったのかもしれない。

03思い詰めた告白への答えは、NO

一番の親友にカミングアウト

キャプテンのクラスは、男子4人、女子3人。
キャプテンと同じクラスのある女子といつも仲良く話していた。

「きっとあの女の先輩のことを好きなんだろうなぁ、と思いながら見ていました」

「嫉妬というよりも・・・・・・、単純にうらやましかったですね」

ある時、小学校からよく一緒に遊んでいた親友に、自分の気持ちをカミングアウトした。

「『実は、オレ、あの先輩のことが好きなんだよね』と打ち明けました」

小学生の頃から、友だちの間でBLを回し読みしていた。打ち明けたのは、きっと分かってくれるだろうという男友だちだった。

彼ならという、自信があった。

「案の定、彼はぼくのセクシュアリティを理解してくれました。誰かに話したい、という気持ちも満たされて、すごく楽になりましたね」

思い詰めて自殺を考える、という話も聞くが、その親友がいたお陰で、幸いにも発散することができた。

当たって砕けろ

好きになったキャプテンへの恋は、心に秘めたまま1年以上が経過した。

「先輩が3年生になって、卒業するタイミングで告白する決心をしました」

「もう会えないかもしれないと思うと、言わずにはいられない。そんな気持ちでした」

もう先輩は卒業してしまう。
だから、当たって砕けろ、という思いだった。

親友も勇気づけて、背中を押してくれた。

告白は携帯電話のメールを使った。
「先輩のことをずっと好きでした」という、ストレートな言葉をぶつけた。

「ちょっとは期待していましたけど・・・・・・。相手はストレートだろうから無理かな、と覚悟はしていました」

祈るように返信を待ったが、答えはやはり「NO」。

「『おれは男とは無理だから』と、すぱーんと切られました。でも、それで踏ん切りはつきました」

思いは通じなかったが、心の整理をすることは出来た。

04最後の一線を超えられなかった女の子との交際

初めてのガールフレンド

名護市内の高校に進学した。

通学は母親が車で送ってくれた。
仲のいい近所の友だちと乗り合わせて、毎日2軒の家が交互に車を出す。

「自転車通学という話も出ましたが、山越えなので無理、とすぐに諦めました(笑)」

高校でもバレーボール部に入る。
あの好きだった先輩と再び同じ部活で汗を流すことになった。

「高校1年の終わりに同じクラスの女の子が好きになり、つき合いを始めることになりました」

先輩への気持ちはずっと続いていたが、「いつまでも追いかけても仕方がない。現実を見なければ」、という気持ちもあった。

「オレは男なんだから、女の子とつき合うほうが自然だ」と、自分に言い聞かせる。

初めての女の子とのつき合いは順調にスタートしたかに思えた。

もう一歩先に進めない

手をつないで歩き、ハグやキスも経験した。
でも、それから先の肝心なところには、どうしても進めなかった。

「よく考えると、恋愛のシチュエーションに憧れていただけで、本当に女の子と関係を持ちたかったかといえば、そうでもなかったのかもしれません」

「手をつなぐ、キスをする、抱き合うというイベントを3カ月ごとに頑張ってやらないと、別れることになる、というSNSの情報を忠実に守っていただけでしたね(苦笑)」

自分を納得させる言い訳がましい思いも沸いた。

「その子も男とつき合うのは初めてだったので、汚したくない、という感情も・・・・・・」

高校生になると、男同士のシーンをネットで頻繁に見るようにもなっていて。

「彼女とそれ以上、進展しなかったのも、男性との関係のほうに興味があったからかもしれません」

8カ月ほどつき合って、その子にふられる形で別れることになった。

05初めての夜。そして、ゲイの世界を知る

年上の人と過ごした初めての夜

高校2年生のときにバレーボール部がベスト4に入った。

「ちょうどそんな時期に知り合った男性がいて・・・・・・。年上の人でしたが、気があって」

ある時、彼から「バレーボールの漫画がたくさんあるから、好きなのがあれば貸してあげるよ」と言われた。

彼に家に泊まりに行くことになる。

「がっしりとした筋肉質で、好みのタイプでした(笑)。その人のことが忘れられなくて、追いかけてしまいました」

しかし、彼は興味本位で自分を誘っただけだったと知る。

「部活のときに、ぼくがゲイであることに気がついたらしいんです。分かりやすかったと言っていました」

「何で誘ったんですか」と聞くと、「ただ面白そうだったから。お前の体型はオレの趣味じゃない」ときつい言葉を投げられた。

「そんな人だったのか、と幻滅しましたが、なかなか諦めることはできませんでした」

「大学に入ってからも、しばらく引きずりました。ほかの男の人と出会っても、つい比較してしまって・・・・・・」

拒絶され、結局、つき合いたいという思いは叶わなかった。

「追いかけて、面倒くさがられて、次第に疎遠になってしまいました」

ゲイアプリを使って世界が広がる

彼から教えてもらったのが、GPS機能付きのアプリだった。

「近くにゲイの人が何人いるかが分かるんです」

沖縄にはゲイが多いことを知る。

「けっこういるんだな、と思いました。比率からいったら、東京、大阪、名古屋、福岡と同じくらいいますね」

「沖縄は、東京から移住してくる人も多いらしいです」

アプリを使うと、簡単に新しい相手と出会うことができた。

「ドライブに連れていってもらったり、ご飯を御馳走になったり・・・・・・。そうですね、まあ、楽しかったですね」

世界は容易に広がったが、深い関係になる人はいなかった。


<<<後編 2019/02/16/Sat>>>
INDEX

06 交際の動機はセクシュアリティの確認
07 高知にゲイは少ない。パートナー探しは卒業後
08 煩わしいと思っていた故郷が大好きになった
09 母親へどう伝えるかが大きな課題
10 目の前に広がっていく いろいろな可能性

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