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パートナーとの死別を乗り越えて【後編】

パートナーとの死別を乗り越えて【前編】はこちら

2019/01/11/Fri
Photo : Taku Katayama Text : Mayuko Sunagawa
松村 恵二 / Keiji Matsumura

1966年、山口県生まれ。関西学院大学法学部を卒業後、株式会社TBSテレビに入社。ドラマやバラエティの制作を経てイベント事業に携わり、現在「IHIステージアラウンド東京」の支配人を務める。自らのセクシュアリティをオープンにしている。

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INDEX
01 演劇が好き 
02 演劇に打ち込んだ青春時代
03 性への興味
04 ゲイの世界、現実の世界
05 女性との結婚生活
==================(後編)========================
06 16年連れ添ったパートナー
07 ゲイカップルのシビアな現実
08 戸籍上の家族でないと起こる問題
09 カミングアウト指南
10 過去があるから今がある

06 16年連れ添ったパートナー

大阪と東京の遠距離恋愛

32歳の時に、7つ年上の元パートナーに出会った。

クラブのDJだった彼を、出会ってすぐに好きになる。

当時彼は大阪に暮らしていたので、大阪と東京の遠距離恋愛。

平日は仕事があるので離れて暮らし、週末は大阪に行って一緒に過ごした。

「何から何まで、よく尽くしてくれる人でした」

「僕はあまり服のセンスがないので、彼が全身コーディネートしてくれていました」

「髪形も一緒に美容室まで来てくれてオーダーしてくれました」

彼の勧めでひげを生やし始めたら、毎朝ひげを整えてくれた。

一緒にいた16年間は、一度も足の爪を自分で切ったことがない。
美味しい物もよく知っているし、いろんなところに連れて行ってくれた。

「もうこんな恋愛したことないってくらい、いろいろやってくれて(笑)」

彼は初めからオープンだった。

交友関係も広く、自分のことを多くの友だちに紹介してくれた。

彼と一緒にいるだけで、セクシュアリティも含めて、すべてをオープンにできる男女の友だちが一気に増えた。

彼らとの出会いもまた、彼がくれた大切なものだ。

2年遠距離恋愛を続けた後、彼が東京に来て同棲することになる。

「彼は、大阪では名の知れたDJだったので東京でもやってみたいという気持ちがあったみたいです」

「自分も仕事が忙しくなり、大阪に通う時間がとれなくなったので、『じゃあ、一緒に東京で住もうか』ということになりました」

男性と結婚

元妻と離婚した後「再婚しないの?」と聞かれることもあったが、「向いていないから」と答えていた。

もう女性と結婚しようとは思わなくなっていた。

一度は結婚し子どももできたので、もう社会的な体裁もクリアできたからだ。

彼との同棲生活は日々幸せだった。

いつも隣にいて、手をつないだり体を寄せあったりして過ごした。

初めは一緒にいるだけで幸せだと思っていたから、彼との結婚は考えていなかった。

「自分が仕事を辞めたいと思っていた時に、彼に相談したら「そんなに辛いなら辞めていいよ。一緒に大阪に帰ろう」と言ってくれて」

「それぐらいから、こうやってだんだん家族になっていくのかなと感じ始めたんです」

2年以上付き合ったことがなかった自分が、彼とは16年も一緒に暮らした。

付き合って15年目になる8月5日に、100人の参列者の前で結婚式を挙げた。

「結婚式をあげる前から、東京に住んでいる若いゲイの子たちが、我が家でご飯をよく食べに来るようになっていたんです」

「自分のことを『お父さん』、彼がご飯を作るから『お母さん』って呼んでくれるようになって・・・・・・」

「なんか疑似家族というか、家族ごっこをしているような感じでした」

すごく幸せだった。

07ゲイカップルのシビアな現実

元パートナーとの突然の別れ

「彼はサラリーマンじゃないので、会社で定期検診を毎年受けるということをしていませんでした」

「尿酸値が高くて痛風だったり高血圧だったりしたので、体の心配はしていたんですが」

「ある時、私の会社の人間ドックに無理やり連れて行ったら、脳に小さい腫瘍があるって言われたんです」

「その時は手術する必要はないし経過観察でいいと言われたんで、そのままにしていたんですが・・・・・・」

「今思えばそれが良くなかったのかもしれません」

2016年5月16日の夜11時くらいに一緒に帰宅し、仕事で疲れ切っていた自分は先に寝た。

翌朝起きてリビングに行くと、ひっくり反る姿勢で寝ていた。

「初めは眠っていると思ったんですけど、声かけても揺さぶっても起きなくて」

「よく見ると息をしていませんでした」

「急いで救急車を呼んで、見よう見まねの人工呼吸と心臓マッサージをしました」

病院に着いてから医師が30分ほど蘇生処置をしてくれたが、結局戻らずそのまま亡くなった。

何の別れの言葉もなく突然彼を失った。

肉親の壁

「いざという時は、本当にいつ来るかわかりません」

元パートナーとの死別から実感したことだ。

パートナーの死が突然訪れた時、家族ではない自分にはどうにもならないことがたくさんあった。

病院や葬儀屋、警察などは、家族ではないと対応してもらえなかったり、信用してもらえなかったり。

「さいわい、生前に彼が家族を紹介してくれていて、彼の兄の連絡先を聞いていたので、すぐに連絡して大阪から来てもらうことができました」

「もし今パートナーがいるなら、お互いの両親や兄弟の連絡先だけは事前に聞いておいたほうがいいと思います」

「相手の家族にカミングアウトしていなくても、いざという時には『友だちです』と名乗れば、連絡しても変に思われることはありませんから」

社会における肉親の壁は異様に高い。

肉親でなければどうにもならないことがたくさんある。

08戸籍上の家族でないと起こる問題

養子縁組の相談

元パートナーとは、戸籍上も家族になりたかった。

だから、結婚式を挙げる半年ほど前に、ゲイの弁護士に相談に行ったことがある。

「たくさん税金を払っているので、扶養家族にして扶養控除を受けたかったんです」

「また、もし僕が先に亡くなった時に、今住んでいるマンションに彼が住めなくなってしまうので、それを何とかしたかったんです」

まだパートナーシップ制度がない時代だったので、養子縁組する方法を探った。

「そうなると、向こうが年上なので自分が養子に入ることになるんですが・・・・・・」

「僕は次男なので、自分は平気だと言ったんですが、彼のほうが僕の親の気持ちをおもんばかって、親に内緒で勝手に籍を入れることに反対したんです」

結果的に、ちゃんと僕の両親が納得しないと、ということになった。

養子縁組の手続きはしないまま、彼が亡くなってしまった。

「もし当時パートナーシップ制度ができていたら、利用していたかもしれません」

ゲイカップルの辛い現実

元パートナーの死によって、社会において戸籍上の家族でないと生じる問題がたくさんあることを痛感した。

「彼が倒れた後、さいわいすぐに彼のお兄さんと連絡がつきました」

「救急隊や病院の人には、お兄さんが自分と彼との関係を保証してくれたのできちんと対応してもらうことができました」

「でも、警察はダメでした」

完全に犯人扱いされ、警察からしつこく事情聴取を受けた。

「僕たちの仕事は疑うところから始まるから」と。

「普通の男女の夫婦だったらそんな疑いは起こりませんが・・・・・・」とハッキリ言われた。

彼の遺体は、検視をするため警察に一晩安置されていた。

「無機質な暗い霊安室の床にそのまま寝かされていました」

「青いビニールシートにくるまれている姿は見ていられませんでした」

「一刻も早くここから運び出してちゃんと弔いたいと思いましたが、検視が終わるまでできず警察で長い間待たされました」

09カミングアウト指南

元パートナーの死をきっかけにカミングアウト

元パートナーが亡くなった時は、ちょうど仕事が忙しい時期だった。

「亡くなったその日の朝も仕事のトラブルがあり、上司から連絡がきました」

「まだ会社にカミングアウトをしていない時でしたが、上司に『実はパートナーがいて、今仕事に行っている場合じゃない』と説明しました」

「上司は『分かった、他の人に対応してもらうからお前はいいよ』と言ってくれました。その時、『このことをみんなに話してもいいか?』と聞かれました」

「『もちろん問題ありません』と答えました。それで一気に、会社の人たちに知られたんです」

自分がゲイであることは、みんな薄々気付いていたのだろう。

葬式には局長や部長をはじめ、会社の人がたくさん来てくれた。

「業界内ではまだまだ、ゲイ差別をする人と理解する人が極端ですね。でも、僕の周りでは今までと変わらずみんな普通に接してくれますよ」

これまでカミングアウトをして不快な思いをしたことはほとんどない。

「よくカミングアウトの相談を受けるんですが、僕は上手くいった話しかできないので、本当は自分に相談しないほうがいいんです」

「カミングアウトをしてひどい目にあった話もいっぱい聞きますからね」

案外、他人のセクシュアリティの問題なんてみんな無関心なものだ。

「自分がゲイだと知っている同僚でも、何かの拍子に『あいつ、ゲイだからな』なんて他の人を揶揄しているのを聞くことがありますからね(苦笑)」

カミングアウトは相手のことも考えてから

自分のセクシュアリティをオープンにしたい、自分らしくいたいという気持ちはよくわかる。

しかし、カミングアウトをする時には、自分のことだけでなく相手のことも考えなければいけない、とも思う。

自分も社会に出てすぐにオープンにしたわけではなく、きちんと仕事で成果をあげ、周囲と信頼関係ができていた上でカミングアウトをした。

会社はきちんと仕事さえしていれば、セクシュアリティは関係ないと思ってくれているに違いない。

「いきなりカミングアウトされたほうは、『え?』と焦るでしょう」

「そんな状況で『そうなんだ』と受け入れられる人のほうが、少ないと思います」

「カミングアウトを受け入れる側の準備とタイミングも考えてあげないと・・・・・・。相手はどうすればいいのかわからなくなってしまうでしょう」

転職活動中だった今のパートナーが、採用面接で自分のセクシュアリティについて話したいと相談された時も、初めはよく考えるようアドバイスした。

「でも、彼は『自分のキャラクターを説明するには、ゲイだという説明ありきのほうがスムーズにいくから』と」

「確かにそれも一理あるなと思いました」

彼は採用面接時にカミングアウトし、無事に採用された。

今の時代、企業はセクシュアルマイノリティに対してずいぶん寛容になってきているのではないかと思う。

「ゲイにやさしい企業は、開かれた進んだイメージが付くので企業側にとってもメリットがあるのではないかと思います」

10過去があるから今がある

全世界にパートナーシップ制度を

現在、国内で同性が利用できるパートナーシップ制度を導入しているのは、9つの自治体。検討中の自治体もいくつかある。

「同性パートナーシップ制度ができた時には、中途半端な制度を作ってもしょうがない」
「何の解決にもなっていないし、差別はなくなっていない」という意見を聞いた。

確かに同性パートナーシップ制度には、男女の結婚とは違う問題がまだまだたくさんある。

「それでも制度化されたり議論されたりすることで、着実に前に進んでいっています」

「小さな一歩だけど、大きな一歩でもあります」

「一歩ずつ前に進んでいって、日本中、世界中で同性パートナーシップ制度ができる世の中になってほしいですね」

「そのためには、セクシュアルマイノリティを知らない人には知ってほしいし、無関心でいてほしくない」

「偏見を持っている人には、偏見をなくしてもらいたいですね」

友だちや人とのつながりを大事に

今、自分の性指向や性自認の問題で悩んでいる人に伝えたいのは、友だちや人とのつながりを大事にしてほしいということだ。

「元パートナーからもらった一番大きなものは、友だちや人との絆です」

彼との結婚式には100人、彼の葬式には150人が来てくれた。

「心にぽっかり穴が開いた時期もありましたが、自分の周りには友だちがたくさんいたから」

「今はいろいろ乗り越えて、笑顔で話せるようになりました」

彼との日々があるから今があると思えるようになったし、今のパートナーと出会えたことも大きい。

かけがえのない周りの人たちを大切にしてほしい。
どんなに辛い状況にあっても、支えてくれる家族や友人はきっといる。

あとがき
インタビュー内容は、人生のダイジェスト編。ドラマのようだったけど、「楽」以外の感情は控えめ、あらすじを語るように続けた恵二さん■悲しみや辛さのほとんどが人との間で生まれる。乗り越えようとする自分を支えてくれるのもまた人だ■「できる時には、カミングアウトしたいですよね。パートナーのことも自慢したいし^_^ 」。恵二さんは笑った。しあわせだって分かち合いたい。求めれば必ず出会える、打ち明けられる人に。(編集部)

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